2016/08/25 のログ
レン・レイト > 「…うぅ。もちろんです。それは…僕のせいですから…」

彼女の傷の話をすれば曇る表情。それは当然のことだ。
との傷をつけたのは他ならぬ少年なのだから。
取り返しのつかないことをしてしまったと、傷が残ったらどうしようと。
なんてことをしてしまったのだろうと打ちのめされる。
しかし起きたことは変えられないことを少年はよく知っている。
だからこれ以上悪い方に行かないようにと、しっかりと彼女の治療を手伝うのだと、頭を切り替える。

雨風をしのげるだけの場所というが、人生のほとんどを野外で過ごしてきた少年からすれば、それだけでそこは上等な寝床だ。何も不満はない。
それに…

「ありがとうございます。いただきます」

そういって彼女が炙ってくれたハムをもらって口にするだろう。
初めはゆっくりと味わうように。そして少しづつがっつく様に。
基本的な食事事情は彼女が察する通りかもしれないが、それでもパン屋ハムを食べれる日もある。

ただ、どうしてこんなにもおいしく感じるのだろうか。
どうしてこんなにも暖かいのだろうか。
答えは明白だった。
独りではない、誰かと食べる食事はこんなにも暖かくて美味しいのだと彼女と出会ってから気づかされて。
それがまだ慣れなくて、食べながらまた小さく。泣き出してしまって。

レイカ > 「あ……すいません、攻めてるわけじゃないんです。
あの時は仕方がなかったわけですし…。」

そう、仕方がない。
私が不注意だったとか、そういうわけじゃない。
あのときの彼の怯えよう、いままで誰かに助けてもらったことがないならば、私を敵と認識しても仕方がない。
自分の身を護るために、私に刃を向けたのならば…それは立派な自己防衛だ。
だからこそ、私は何も言わないし咎めるつもりもない。
逸れに、傷をしっかりと手当してくれる彼が、少しだけ愛おしく感じてしまう。
異性として認識しているわけではなく、弟や息子といった感覚だけど。

「あ、あんまり急いで食べると喉につまりますよ…。
誰も取ったりしませんから、ゆっく……り…。」

少し炙ったハム、それをパンの上に乗せて彼に手渡す。
香ばしい臭いが漂い、とても食欲をそそる。
私も少しだけハムを炙り、パンの上に乗せて食べようとした。

最初はゆっくり、だけどだんだんと早くなっていくペース。
だけど、私はそれよりも――――彼がまた小さく泣いていることに気づいた。
今まで孤独割った彼が、誰かと一緒に食事する。
それだけのことと、私は思っていた。

だけど、彼は違うのだろう。
たった一人だけの食事が、どれだけ寂しいのか…私は思い知らされた。
子供を孤独にした、そんな世界が少しだけ、恨めしくなる…。
少しだけ、頭を横に振り私は彼の横に座った。

「……大丈夫ですよ。私はここにいます。
ゆっくり、しっかりかんで食べましょうね?」

レン・レイト > 「それでも、僕が悪いんです」

…それは卑屈になって行っているわけではない。
確かに、死に戻りにより気が動転していたとしても。
例え自分が優しい言葉を信じられなかったとしても。
武器も構えず抵抗すらせずに自分を救おうと言う人を傷つけたのだ。
虐げられる側の人間だからこそわかる。
それは尊いことで。
そして抵抗しない人間を傷つけたことも同じく虐げられた側からすれば許せないことなのだから。
これは彼自身の気持ちの問題だった。

だからこそ、一生懸命に治療を手伝うのだ。

「ごめんなさい…すごく、すごく美味しくって」

この温もりをくれる相手に答えたくて、泣いているままじゃだめだと何とか顔を上げて。
それでも泣き笑いになってしまったけど、感謝を伝えたくて見せた笑顔。

彼女にが横に座ってくれれば、よりその心に灯る温もりは増すだろう。こくりとうなづいて、ゆっくりと食事を続けた。

レイカ > 卑屈になっているとは思わないし、それを咎めるつもりもない。
虐げられ続けていたからこそ、誰も信用できなくなった。

そんなこと、私だってあった。
昔、心を壊してしまって自暴自棄になり、誰も信用せずに消えたくなったことだっていくらだってある。
それでも、結局私を救ってくれたのも――――結局は人だった。
だからこそ思う、彼に必要なのは一緒にいられる誰かなのだと。

治療を手伝ってくれる彼が、本当に一生懸命で。
自分がしてしまったことを償おうと必死になっているのが、よくわかって。
だからこそ、私はこういうのだ。”自分を責めないで”と。

「……ええ、とても美味しいですからね、慌てて食べなくても、誰も取ったりしません。
そのパンとハムはレン君のものです、だからゆっくり食べましょう?
あ、飲み物もありますよ。オレンジジュースでいいですか?」

もしかしたら、此れは彼は口にしたことがないかもしれない。
だからこそ買ってきた飲み物だけど、口に合うだろうか。
隣に座るのは、化け物でもなんでもない。…ただの、寂しがりな子供なのだから。

泣いているその顔、食事中であまり好まれる高位じゃないけど、私は布キレでその涙を拭いてあげた。

レン・レイト > 「…ありがとう」

…自分を責めるなというその言葉は決して投げやりなものではない。
その言葉に込められた意味の全ては少年はきっと知りえないけど。
それでも少なくとも、彼を思っての言葉たということだけは理解できたから。
小さく、だがはっきりと礼を言って受け止めるだろう。

「…うん、ごめんなさい。つい美味しくて。…嬉しくて。誰かと一緒にご飯を食べたのなんて本当に小さな…父さんと母さんが生きてた時以来だから。だから嬉しくて…誰かと、…レイカさんと一緒にご飯を食べられるのが」

泣き笑いのまま、素直な言葉を述べるだろう。
心開けた相手との食事がこんなにも暖かく美味しいと思えるのを思い出した。
それは、彼女が心を開いてくれたから。彼女が一緒にいてくれるから。

「…ジュース!」

そのようなものを飲むのはいつ以来だろう。
少年だってまだ子供。やはり甘いものに目がないのか目を輝かせて。

そして、涙を拭われたのならそれが何か少年の琴線に触れたのか。
折角拭って貰ったに、ぽろぽろと後から後から涙があふれ、とうとう泣き出してしまった。

嬉しさがいっぱい過ぎて容量が、超えてしまったのだ。そして今までの辛さとの対比を思い後から後から止まらなかった。

レイカ > 自分を追い込んで、責任感に押し潰されないように。
捨てられるかもしれないと、躍起になって私のために何かをしようとすること。
そのことで、もしも彼を危険な目に合わせるのであれば…私は自分を恨むだろう。
それが例え、少年が望まないことであっても。

「…そのうち、もっと沢山の人とご飯を食べられますよ。
沢山笑って、沢山遊んで……あ、いえ。レン君の場合、戦うほうがいいでしょうか?
それなら、私が組している組織で、町の防衛を任せるのもいいかもしれませんね…。」

彼には、人のために役に立つ喜びを味わってもらうほうがいいかもしれない。
自分が皆を護っている、そういう感覚を憶えてくれれば…きっと、彼ももう寂しいと思うこともなくなるかもしれない。

「ええ、ジュースです。」

…どうやら、飲んだことはあったらしい。
考えてみれば、彼にもまだ両親と暮らしているときがあったのだから、飲んでいないほうがおかしい。
輝く瞳に、相応の子供らしさを感じながら、私は―――。

「………え!?ご、ごめんなさい、何か痛かったですか!?」

慌てた。まさか涙を拭いてあげたら泣き出してしまうなんて。
嬉しすぎることで涙を流している、との事には気づけなくて…私は少しだけ慌てながら、彼の頭を撫でた。

レン・レイト > 「戦うのが好きって訳じゃないです。誰だって…痛いのは嫌だから。でも…僕は強くなりたいから。…そのお仕事、してみたい…かな」

傷を負えば痛いのは自分も相手も同じだから。必要だからやっていたことで決して相手を傷つけたいわけではない。
ただ悲しいことに、長い苦しみが、傷つけられるならその前に相手を傷つけるようにと考えを改めさせたのだ。
それでも、彼女が言う仕事には興味があった。

そして痛かったのかと聞かれれば涙を流しながら首を振って否定するけど、頭まで撫でられたのならもう本当に歯止めが利かなくなって。
声を上げて泣き出してしまって。

「ちが…うれし、くて…。レイカさんがぁ…あたたかくってぇ…!」

彼女が驚き手を引っ込めてしまったのなら、必死に湧き上がる感情を抑え、嫌なのではなくその逆だと、泣きじゃくりながら伝える。

幼子といえる時分に両親を亡くし、辛く荒んだ生を負わされてきたのだ。
本当は誰かにずっと褒めてもらいたかった。優しくしてもらいたかった。
頭を撫でて抱きしめてもらいたかったのだ。

レイカ > 「強くなりたい…ですか……。レン君、強いって言うのは…いろいろな姿があります。
レン君がほしいのは、どんな強さでしょうか?」

誰かを護ってあげる強さ。
相手を踏み躙って、圧倒する強さ。
誰に何を言われても揺るがない心の強さ。

いろいろな強さがあると、私は思っている。
そして、私は…残念ながら、どの強さも持ち合わせてはいなかった。

「……レン君。」

いままで、だれにも優しく、抱きしめてもらうことが出来なかった。
拒んでいたわけではないはずだ。ただ……助けを請う相手がいなかった。
だから、私は彼を抱きしめ、頭を撫でてやりながら耳元で囁く。

「大丈夫です、”お姉ちゃん”がここにいますよ……。
もう、独りで泣くことはありません。怖いことがあったら、お姉ちゃんに言いなさい。
お姉ちゃんが、その怖いものを全部吹き飛ばしてあげますから…。」

レン・レイト > 「……正直、今はわからなくなってきました。…初めは、自分を守れるように強くなりたかった。でも自分を守るために沢山傷つけてしまう」

自分を守るために強くなりたかったのに…ある程度に力を手に入れた今は、その力がまだまだ未熟であるがために、本来自分を傷つけるものに、それをそのままぶつけ返すことしかできない。
彼女に触れて…それが正しいことではないように思えた。
だから

「だから…レイカさんみたいに…優しく、誰かを救える強さが…欲しいです」

そういって彼女の目を見つめるだろう。自分を救ってくれた彼女に、その目には憧れと、そして何より感謝が込められていた。
彼女がどう思うかはわからない。しかし少なくとも少年には…彼女が…彼女だけが自分に手を差し伸べてくれたヒーローなのだ。

「あ、あぁ……あぁぁぁ…!!」

姉を頼れと、優しく抱きしめ撫で、包んでくれる彼女。
それは、それこそは少年が欲しかったもの。
家族。
自分を愛してくれる人。自分が愛する人。
その当たり前のような温もりが、少年は何よりも欲していたのだ。

「おねぇ…ちゃん…怖かったよ!怖い人たちが…沢山いて、みんな僕に酷い事して…!!誰も助けてくれなくて…!辛くて、苦しくて、寂しかった…!」

ぎゅっと赤子のように、縋るように抱き付いて。
彼女に頬を埋める様に摺り、全てを吐き出すように泣きじゃくる。

レイカ > 自分を護れるだけの強さ、確かに必要だろう。
もしも、昔の私にも自分を護れるだけの強さがあれば、彼とは違った形で出会っていたのだろうか。
もっと――――彼のようなものを護れる…そんな力を手に入れられていたのだろうか。

後悔はいくらでもある。
だけど、今はその後悔は信念と覚悟に変えて立っている。
今は其れでいい、誰かを救えるならば私のこの強さは――――本物だ。

「……そうですか、じゃあ…沢山友達を作りましょう。
友達が沢山出来れば、誰かに優しくすることを覚えることができます。
そして…その優しさに飲まれないように……強くなりましょう。」

私も、まだまだ強いとは言えない。
ふとしたきっかけで、この心がまた折れるかわからない。
だから…せめて強がりでも強いように見せようとしているだけだ。
その強さは、もし彼の助けになっているならば、間違っている強さではないという事だ。
結局――――私も彼に、救われているのかもしれない。

胸の中で大泣きする”弟”を、私はしっかりと抱きしめていた。
怖かった、辛かった、寂しかった。
全て、吐き出すように泣き喚く弟を、放すものかと誓った。

「ええ……辛かったですね…。
大丈夫ですよ、もう誰もレン君を苛めたりしないし、させません。
私が……私が護ってあげますからね。」

泣き喚くその子は、決して特別ではなかった。
呪いがどうとか、そんなものは関係ない。怖がりで、泣き虫な子供だ。

レン・レイト > 「友達…すぐには難しいかもしれないけど……頑張ります」

友達。…人を信じれない自分にとってはとても難しい存在。
もちろん今までもいたことがない。…それでもそれで彼女のように強くなれるのであれば、自分も…頑張ってみようと思った。
それに…友達と聞いて思い浮かんだ先日あった少年の顔。
自分と年は変わらなさそうなにしっかりとしていて、そして気持ちのいい奴で。
きっと…自分は彼と友人になりたいと思っているのだと気付いた。

「———く、…っぐ、うぅ…」

嗚咽を零しながら、「姉」に甘えるように縋りつく。
誰かが、彼女が、自分の名を呼んでくれる。
誰もまともに読んでくれなかった彼の名を。
まるで深く、暗く、凍えるように冷たい深海の底から救いあげられるようで。
希薄だった自分という存在が、確かに存在していること、証明されているようで。
彼女が…強く、優しく包むように抱きしめながら護ってくれるというから。

少年の心は確かに洗われていく。
救われている。

レイカ > そんなに、すぐにできるようなものではないのはわかっている。
だけど、彼がほしいと願うのであれば、きっとできるかもしれない。
胸の中で嗚咽をもらす弟に、もしも友達が出来たら、それはきっととても喜ばしいことだ。
涙を流し、嗚咽を漏らすその顔。
抱きしめているその体を離し、しっかりと顔をもう一度、布キレで拭いてあげる。

「あまり泣いていると、男前が台無しですよ…?
さあ、もう寝てしまいましょう。明日も、私は一緒にいてあげますから。」

彼らを、まずは護ってあげてほしい。
私は弟にそう伝えるが…彼が、ミレー族をどう思っているのか…。
一つの気がかりはそのこと、そしてあまりにも大きな気がかりだった。
そのことさえはっきりとすれば…彼を集落に連れて行けるのに…。

「……お休みなさい、レン君。」

彼が眠るのであれば、私はその傍で座る。
もう少し…彼が完全に寝付くまでおきているのが、今の私。
いずれ彼が、私がいなくてもぐっすりと眠れる日が来るまで…せめて。
こんな地獄のような場所で、数少ない安らぎを味わってくれるならば。

私は、ひそやかに願う。
どうか、この子の苦しみが明日になれば和らぎますように…と。

レン・レイト > 「…うん」
彼女が布でもう一度顔を拭ってくれれば、鼻をすすってこれ以上泣くをこらえる。もうだいぶ落ち着き始めていたのもあってそれはうまくいくだろう。
それに彼女が明日のともにいてくれると、それだけで、勇気がわいてくるのだ。

「…彼ら?」

彼女がいう彼らが誰かはわからなかったけれど。彼女のように強くなるために。彼女は自分にその彼らを救い守ってほしいというのだろう。
今の自分の力ではきっとまだ無理だけど…必ず、強くなってその彼らも…この姉も守れるようになろうと固く誓った。

彼女がミレー族について聞けば、少年は何の偏見も持っていないだろう。
少年にとっては彼に害する者たちはミレー族だろうと人間だろうと魔族だろうと皆敵で。
それに少年も奴隷時代があった。ミレー族の苦しみは多少わかるだろうし…それに、今思えばミレー族に害されたことは一度もなかった。

「おやすみなさい…レイカお姉ちゃん。…手を、握っていてもいいですか?」

お休みといってくれる人がいて、いう相手がいることがどれ程の安らぎか、きっと人は知らないのだろう。
そして彼女が手をつなぐを許してくれるのなら、両手で包み込むように、祈るようにして。…姉の存在に触れながら、深い微睡に落ちていくのだろう。

ご案内:「王都マグメール 廃墟地区」からレイカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 廃墟地区」からレン・レイトさんが去りました。