2016/08/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 廃墟地区」にレイカさんが現れました。
■レイカ > 「……………。」
瓦礫の岩の上に座り、私はじっと目を閉じて精神を集中させていた。
風の声を聴き、大地と会話するための瞑想―――。
ゆっくりと、深呼吸しながら静かに声を聴いていた…。
「すぅ―――…はぁ……―――。」
大きな大きな深呼吸。
”心を落ち着け、無にして誰にも聞こえない声を拾え”。
まだ、私がこの技術を会得しきれていない頃に教えてもらった瞑想法。
私は、この静かな時間がとても好きだった。
自分以外の存在―――いや、自分という存在すらも掻き消えてしまったかのような感覚。
まるで、風や大地、自然と一体になったかのような心地よい時間が、とても落ち着く。
ご案内:「王都マグメール 廃墟地区」にレン・レイトさんが現れました。
■レン・レイト > 槍を肩に担ぎ、人のいない廃墟地区を散歩する少年。
「……っ」
少年がぴたりと立ち止まって数秒。左右の廃墟から男がニ、三人現れる。
誰も住んでいないということは後ろ暗いことをしている物も寄り付きやすいのか。
いかにもチンピラ然とした彼らは下卑た笑いを上げながら、手にしている武器をわざとらしく誇示しながら、これまた以下にも三下らしい言葉を少年にかけてくる。
が。
「ヒュ…ッ!」
次の瞬間三人の内背の高い男の顎を拳が殴りぬけ、流れるように、横にいた太っている男の顔面も蹴り飛ばされた。
一瞬の出来事に唖然とする残った中肉中背の男。
この一瞬で仲間が二人のされた事を理解すれば嫌な汗が頬を伝う。
そして小さな少年とは思えぬ恐ろしい形相に、ひっと小さな悲鳴を上げると、また三下らしい捨て台詞を吐いて二人を引きずりそそくさと夜の闇に消えていった。
……普段の少年であれば二度と逆らう気が起きないように徹底的に痛めつけたのだろうが、一撃で気絶するにとどめたのは少年に心境の変化があったからだろうか。
ただ、のした男たちから財布を抜き取ることだけは忘れてない。
予想より入っていたのか、いがいそうに少し雰囲気が明るくなる少年。
■レイカ > 「……………。」
自然と一体になる、そのことは即ち空気の微妙なぶれも感知できる。
先ほどまで、静かで何の波も立たなかった風が一瞬にして、大きな波を立てた。
地面が振動し、それは2度続く。
誰かが誰かを打ち倒した音―――それが私のところまで、十分に届いた。
いま、この場にいるのは私ひとりだけ。
かつては、少しだけにぎわっていた場所だけども、今ではすっかりと静かなもの。
だけど、この数日の間に―――招いてはいけない場所に、一人の少年が紛れ込んでいた。
そして、その少年は―――とても、孤独だった。
だからこそ、私は再びこの場所にいる……。
いや、いなくてはいけない。
「…………はぁ、またですか。
此れで何人目でしょうね…。」
元気なのはいいことなのだけれども、元気が少しありすぎるのも困りもの。
治安の最悪なこの場所だと、仕方がないことなのかもしれない。
けれど―――ドラゴンフィート、私が拠点にしている集落に連れて行く前に、あの手癖の悪さは何とかしておかないと…。
■レン・レイト > 「…………ッ!!」
鼻歌交じりに上機嫌を見せる少年の人の気配に身体が突然ビクンと跳ね、硬直した。
少年もまだ未熟ではあるが「気」を使うため、人の気配には敏感である。
それでも気づくのが遅れた理由は二つ。
彼女が先ほどまで瞑想を行っているときはそもそも気配は完全に周りと同化していたこと。
二つ目は自分が財布の中身の確認で気が散っていたこと。
故にいつの間にかすぐ近くまで来ていた「彼女」の気配に気づかなかったのだろう。
恐る恐るといった風に、まるで悪戯現場を親に目撃された悪餓鬼のような、ぎぎぎとぎこちない動きで振り向くだろう。
■レイカ > レン君―――とても孤独な、呪われた男の子。
私はこの子が、泣いているところを目撃してしまった。
そして気づいた、この子がとても怯えていること、怖がっていること。
それは私にではない、彼が孤独と言う名前の魔物に怯えているのが。
だからこそ、私はいま、ここにいる。
少しでも彼が寂しくない、一人じゃないと思えるようになるまで。
「………2つ…、大人用の財布ですね、それ…。
襲ったか襲われたか、どっちですか?正直に言うなら、許して上げますよ?」
こんな場所だ、盗み盗まれなんていくらでもある。
私だって、ここで何度もすりにあってきたのだから。
だが、重要なのはそこじゃない。
襲って財布を奪ったのか、襲われて返り討ちにして財布を戦利品として受け取ったのか。
前者ならば、この子にはお仕置きをしなければならないが…。
■レン・レイト > 「襲われたので返り討ちにしました!マム!」
先ほどまでの幽鬼の如く様はどこへやら。
ビシイ!と背筋を伸ばしまるで訓練兵のように答える少年。
誰にも見せなかった弱さをすべてをさらけ出した相手だからこそどうもいつもの調子が出せない少年。
といっても、彼女の前にいるときこそ少年がありのままを見せている、素の状態なのだろう。
相手がゆっくりと穏やかに訪ねてくるのだがそれが余計に恐ろしい。
といっても今までのような他者に対する濁り濁った恐怖ではなく、それはおそらく、叱られることを恐れる子供のような純粋なもの。
厳密にお仕置きとかされた事はないけど絶対に怒らせたら怖いと思う。
そして冷静に考えたらまだ襲われてなかった。冷汗がだくだくと流れ必死に弁明。
男たちが武器を誇示しながら囲んできて、有り金出せとかお前を売るぞとか言ってきた。
僕みたいな子供が何言っても聞かないので先手必勝させてもらったと身振り手振り焦りながら必死に語るだろう。
■レイカ > 「……でしょうね。」
襲われた、というのは実は大体察していた。
この場所だと、弱いと思われるものは大体蹂躙されるか、根こそぎ奪われる。
レン君のような子供ならば奪いやすいから、大人たちは必ずこういう子供か、女を狙う。
まあ、彼らの誤算は、レン君がただの子供ではなかったというところか。
「………………。」
身振り手振り、ジェスチャーを交えながら必死に弁解する。
曰く、男たちが武器を出しながら脅してきた。
曰く、子供が何を言っても無駄だったから実力行使した。
曰く、曰く、曰く――――――。
そんな、いいわけめいた言葉を腕を組み、見下ろす。
まるで母親になったような、そんな気分だった。
―――もう、子供の埋めなくなってしまった私には、あまりに新鮮で嬉しい気分だった。
「…ふふっ、わかりましたよ。今回はお仕置きはなしにしてあげます。
ですが、もうじき連れて行ってあげる場所では、そういう暴力沙汰は絶対にダメですからね?」
あそこは平和な楽園だ、彼の怯える要素なんか一つもないはずだ。
逸れに、傭兵だというなら”あの人”に任せてもいいかもしれない。
レン君ならば、実力も申し分ないはずだから。
■レン・レイト > 彼女が悪戯っぽく笑い、お仕置きもなしといってくれれば、ほっと胸をなでおろす。
ただ叱られなかったことだけに安心したわけではない。初めて自分をさらけ出し、そしてその上で自分を初めて受け入れてくれた人だから…嫌われたくないと、そう強く思っているのだ。
そのしぐさも含めて、それこそ、彼の年相応な子供らしい反応かもしれない。
「大丈夫ですよ。僕だって自分から危険な事好んでしたいわけじゃないんですから」
なにも決して好きで暴力をふるうわけではないと弁明する。今まではそうしなくては、自分はより悲惨な目に合うから、力をつけ、それを行使しようとしていたのだと。
故に自分から喧嘩を吹っ掛けることはない。
…なかったはず。
いや、一度だけあったかも。…まぁ大丈夫。メイビー。
■レイカ > 私は、彼を見捨てることなど出来ない。
こんなに孤独で震えているのに、もし私が彼を見捨ててしまったら―――。
ここで、『怪物』を造るわけにはいかないのだ。
いや、それだけで彼を助けているわけではないのだが。
「…それなら安心しました。あまり危ないことはしないようにしてくださいね?」
わかっているつもりだった。
ここでは、力がないものは皆蹂躙される。
まるで権利がないもののように、奪われて身につけるものすらなくなる。
―――それを護るために、私もまた身を壊したのだから―――。
「さて……お腹はすいていませんか?
瞑想する前、平民地区でパンとハムを買ったので…食べますか?」
ここでは、ろくな食料すら手に入れるのは難しい。
それはなぜか―――、襲われて奪われるからに他ならない。
あんな状態だったのだから、彼はろくな食事すら取れていなかったのではないだろうか。
■レン・レイト > 「…はい」
小さくだが確かに返事をした。
彼女にとっては何気ない言葉なのかもしれないが、少年にとっては心配してもらえてるのがとても嬉しかった。
「あ…頂きます。…でも、その……お金…」
そういって財布の一つを差し出そうとする。
彼女に出会ってからこうしてお世話になりっぱなしだから。
施しは受けないだなんてそんな傲慢なことは言いっこない。
ただ、お世話になりっぱなしなのが悪い気がして。
彼女の負担になってしまうのではないか。
嫌われたらどうしようと。
そんな感情がないまぜになった、何とも言えない顔をしているだろう。
■レイカ > 何のことはない、あんなところを見た後ならばこの子が特別な子供だとは思えない。
人と同じように泣いて、寂しいから助けてといわれて、手を差し伸べたのだから。
「結構です、そのお金は大事に自分でしまって置いてください。」
たとえ奪ったお金であろうとも、奪おうとして返り討ちにしたのだから。
奪われる辛さを知れば、彼らもきっと改心してくれるだろう。
―――復讐するという可能性も無きにしも非ずかもしれない。
だが、そのときは私が盾になればいいだけの話だ。
先日、とある友人に”逃げることも忘れないで”と諭されたけれども――――。
彼女も、気づいていたのかもしれない。私が―――自己犠牲の強い人物だという事を。
私は、それをただの偽善だと思っているけれども。
「…私の負担だと思っているならば、その考えは忘れてください。」
なんとも言えない、そんな辛そうな表情。
嫌われたくない、棄てられたくないという思いが見え隠れする表情。
私は、そんな表情を和らげるために右手を差し出した。
「大丈夫ですよ、私はここにいます。幻でも何でもありません。
…さ、早くいって、一緒に食べましょう?」
ちゃんと、暖かさを感じられるはずだ。
決して棄てたりしない、と笑みを作って。
■レン・レイト > 「…分かりました。」
とっておけと言う彼女の言葉はどことなく暖かくて。
そういわれてしまえば少年もそれを収めるしかない。
ほんの少しだけ、納得のいかない様子。
「…でも、僕がレイカさんのために出来る事があったら何でも言ってください」
それは彼の本来の質なのだろう。
誰かによくしてもらったら、何かを返したいと。
自分に出来る事をしてあげたい。
彼自身には自覚はないだろうけど。心の奥底に沈んでしまったそれを彼女が救いあげてくれたのだ。
きっと自分はまた怯えていたのだろう。それを察したように、温もりをくれる彼女。
差し出されたその手を取ると、包まれるような暖かさを感じて。
また、自然と涙がぽろぽろと零しながら、こくりとうなづいた。
■レイカ > お金は大事なものだ、おいそれと誰かに渡していいものじゃない。
彼が、私に何かをしたい、恩返しをしたいと願うならば別の形で頼みたい。
例え集落に戻っても、お金は必ず使うことになるのだから。
「そうですね…じゃあ、ご飯を食べたら包帯を替えてもらえますか?
一応、私も女ですからね…傷跡が残ったらいろいろと拙いんです。」
彼に受けた傷は、痛みこそないが包帯をしておかないと、雑菌が入って跡が残ってしまう。
戦い続けている身だけれども、やっぱり女を捨てているわけじゃないから傷跡は…少々。
包帯を巻いているけれども、その取替えを彼にお願いした。
右手を取れば、また泣き出す…。
本当は怖がりで、寂しがりで、泣き虫な男の子。
だけど、それをずっと押し隠してきたのだろう。
だからいまは、まだまだその涙は止まることはなさそうだ…。
拠点、というよりも雨風凌げるだけの場所。
石壁に囲まれて、天上にあたる場所にはただ単に布を貼り付けているだけの場所。
そこで、火を起こして食事を取るのがしばらくの生活スタイルになりそうだ。
私は、傍らにおいていた袋から、更に透明な袋に包まれているパン。
綺麗に包装されて、小分けされているハムを取り出した。
「ちょっと待ってくださいね、こういうのは少し炙ると美味しいんです。」