2016/05/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にエターナさんが現れました。
エターナ > 「ここなら、だれも、いない…」

人気のない暗い路地裏でぼそぼそと呟きながら、白髪の少女はゴミ捨て場のような場所を漁っていた。
貧民地区の暗い路地裏、と言っても、表通りに出ればそれなりに明るい。
娼館が軒を連ねているこの辺りは、それなり以上に人の出入りもあり、客引きの声や酔漢の笑い声も聞こえてくる。
だが、そんな貧民地区なりの喧騒からは離れ、1人でこんなところにいるのは――残飯を漁るためだった。

「おなか、すいた…おなか…」

野菜の切れ端、パンのひとかけ、そんなものでいいから何か無いものかと歓楽街の裏側で廃棄物を漁るが、見つからない。
前に、安酒を出す酒場の裏でやったときは店主に運悪く見咎められ、しこたま痛めつけられたのだ。
誰かに見られると罰を受ける…そんな強迫観念に苛まれながらの行為ゆえに、表情には空腹の苦痛と同時に焦燥が浮かんでいた。

エターナ > 少女の容姿は、今は薄汚れているが、磨けば娼婦として有望なだけの器量ではある。
だが、それで金銭を得るという発想が少女にはない。

身を売ることに対する抵抗感もある。
しかしそれ以上に、人間が怖いからだ。
少女にとって、他人とは自分を痛めつけて何かを奪っていくものだった。
そんな他人と関わり続ける仕事は、恐ろし過ぎた。
こんなところで餓えを凌ごうとするほどに。

「…!」

誰かの足音が聞こえた気がして、びくんと背筋を伸ばして固まった。
遅れて長い白髪が揺れる。

(見つかった…おこられる?いたいことされる?)

冷や汗が吹き出る。恐ろし過ぎて振り向くこともできない。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にマルティナさんが現れました。
マルティナ > 今日も何人かにナンパで声をかけていたが、なかなか上手くいかず結局誰も引っかからなかった。
目標人数まであと9人だがそこから遅々として進まない。
一旦休憩して出直そうと喧騒を離れて路地裏に入ったところで、誰もいないと思っていたのだがどうも浮浪者がいたようだ。

「ああ、なんだ浮浪者ですか」

盗賊ギルドやチンピラと鉢合わせ、という事態でないのなら問題ない。
見たところ体格も小さな少女のようであるし、危害を加えてくる様子もないので一言呟いた後一応彼女が視界に入る程度の位置で腰をおろし休憩に入る。
おやつ用に買っておいたパンをちぎっては少しずつ口に放り込んで、ぼんやりとこれからどうしたものかなあと思いを巡らし。

エターナ > “なんだ浮浪者ですか”

完全に固まっていた浮浪者エターナの耳に届いたのは、自分とそう年も離れていなさそうな、屈託の無い少女の声。
ほんの少し安堵して硬直が解けた。
すると、少女らしい人並みの好奇心が持ち上がってきた。
こんな時間に、こんな場所、どんな人だろうか。恐る恐る振り返る。

「…ひぅ」

変な声が漏れた理由は3つ。
1つ目は、予想を超えて麗しく思える人だったこと。
2つ目は、見たこともないような変わった服装だったこと。
そして3つ目は、その口に運ばれているモノ。

「ぁ…ぁう…」

口の端から涎が垂れそうになりながら、その視線はパンに釘付け。
いざ目の目に表れると、ものすごい勢いで、体が空腹を主張し始める。
パン。パン。あれがあれば、ほんのひとかけだけでも、空腹がその分紛れる。
エターナは、空腹による苦痛でふらふらになり殆ど四つん這いのようになりながらも、ゆっくりと歩み寄っていった。
そして――意を決して、というにはあまりにも欲望と切実さに後押しされる形で、声をかけた。

「すみ、ません…おねぇ、さん…」

か細いが、相手に届くだけの声は出てくれた。

「どうか…どうか、ひときれ、だけ…パンを…めぐんで、もらえませんか…?
 何でも…します、から…」

縋るような思いで、地べたで頭を下げた。

マルティナ > ぼんやりとパンを噛んでいたら突然頼み込まれ少し驚いたが何でもする、というのは今の自分にとっては非常に魅力的な提案。
そのぐらいでいいのならとパンの見返りにちょっとしゃぶってもらうなり体を使わせて貰おうなどと考えたが、ここで少し問題が。
売春による場合カウントはされないという条件であったが、パンを渡した見返りという時点で取り引きになってしまい売春と同等なのでは?
普段なら対して見返りも考えずちょっと食べ物を恵むぐらい問題がないのだが、今の自分の状況もあり少し考えこんでしまう。

「うーん……、ええとごめんなさい、それはちょっと……」

とはいえここまで切羽詰まり衰弱した少女を放置してさようなら、というのも少々寝覚めが悪い。
何かうまい方法はないものかと、更に考えを巡らし。

「一応聞いておきますけど、何でもって本当に何でもするつもりですか?」

エターナ > パンを食む少女の考え込む時間は、永遠に近いほどにも思われた。

「…!」

実際には程なくして放たれた言葉。それは、拒否を意味していた。

「ぁ…う、ぁ…」

大きな瞳いっぱいに涙を溜めたが、駄目なものは駄目だと知っている。
そこで食い下がれず、苦痛を長引かせるように精神を作られているのだ。

「わかり…ました…」

蚊のなくような声で答えた瞬間、難しい顔をしていた金髪の少女は、立ち去るでもなく邪魔だぞ蹴りつけるでもなく何かを考えながら問いかけてきた。

「は、は、ぃ…!}

一縷の望み勢い込んで頷く。

「ぁ…でも、ひ、ひとを、きずつけるのは、できなぃ、です…」

その後で、申し訳なさそうに付け足した。

マルティナ > まあこの調子では人を傷つけるなんてとてもじゃないが無理だろう。
そもそもそんな事をさせる気は毛頭ないのだが。
そして次はもっと直接的な質問を投げかける。

「それじゃあセックスはできます?フェラチオでもいいですけど、そういう技術や仕事は分かりますよね?」

パンを食べる手は一旦止めて、目の前の彼女がどれだけの事が出来るか改めて確認。

エターナ > 「!」

何でも――と言った。確かに言った。
だが、それには抵抗があった。
経験自体はあるが、それは全て無理矢理だったから。奪われる記憶だったからだ。
そして本人は知らないが、もう1つの理由があった。
何度犯されようが貞操観念を持ち続けるように精神を作り上げられていたのだ。
だから即答できない。口をぱくぱくさせて、創造主の悪意ある仕様と、現状の空腹の狭間で苛まれる。

「あぅ…あ…」

目の前の少女は、今まで出会ったどの人間よりも穏やかで優しい雰囲気をしていたが、明確に答えられないのだった。

マルティナ > 「ふぅん……。どういう事をするかぐらいは分かってるみたいですね?その身なりや様子からしてレイプされた経験でもあります?」

言葉による返答こそなかったものの、色々と推測は出来る。
とはいえあんまり得意そうではないし技術の方も期待出来そうにない。
そもそも抵抗があるのだろうか、そもそも乗り気ではないようだ。

「私としてはあなたを助ける理由も見捨てる理由もないのですけど、何も出来ないというのであれば本当助ける理由がないので、この話しはここまでですね」

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からマルティナさんが去りました。