2016/05/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 娼館」にナルラさんが現れました。
■ナルラ > その日、貧民地区にあるとある娼館は騎士たちに囲まれていた。
薔薇に顔のない髑髏の旗章はマグメールの王立騎士団のものではない
カルネテル王家のとある王子の私設部隊である。
娼館の主は震えていた、どこで間違ってしまったのかと
あの時エルフの娘の忠告を聞かなかったからか
それとも、良い出物があると富裕地区の酒場に務める男が持ってきた少女を買い取ってしまったからかは判らなかった。
ただ目の前に立つ男に許しを請うことしか今はできない
娼館である、無論何人もの護衛や用心棒を雇っている
厄介事や逃げ出す女を捕まえるために、雇った屈強な男たち。
だがそんな用心棒たちも、騎士団が乗り込んだ瞬間に全て無力化された。
ある者は壁に埋め込まれオブジェのようになり、またある者は四肢の感覚を失いその場に倒れている。
恐らく娼館の主が雇った用心棒の中で無事だったのは、旗印を目にし一目散に逃げた連中だったであろう。
主人の目の前に立つ男、この騎士団を率いるカルネテル王家の王子、先の動乱にて多くの武勲もあげ、きな臭い噂もある男。
「もう一度聞こう、我の妾をどこへやった?」
真紅の瞳で王子は娼館の主を睨みつける。
主は体内を駆け巡る血液が凍るような感覚に、首を振っていた
『し、知らなかったんだ、あんなガキが、いえ、お嬢さんがあんた、あ、いや、貴方様のお妾様だったとは!』
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 娼館」にレイカさんが現れました。
■ナルラ > 「それは……答えにはなっていないな」
王子の瞳が鈍く輝く、娼館の主にはもはや手足を動かすことはままならないだろう。
だが売り飛ばした先を言う訳にはいかない、言ってしまえば命はない。
アサシンに命を狙われることになる、そんな事は売り飛ばした男自身がよく判っているのだ。
『ひぃ! あ、ど、奴隷ならお好きな娘をお好きなだけ……お持ち帰り頂け』
その次の瞬間娼館の主の首元に何かがこすったような気がした。
主が視線を下ろせば、衣服はすでに血に染まっていた
「貴様、我を愚弄する気か?」
『め、滅相もございません……ただ』
王子はその様子にため息をつき、娼館の主に近づいてくる。
そのまま王子は主の顔を鷲掴みにし
「口で言うのが煩わしいなら、直接頭から聞いてやろう」
主はこの時、得も知れぬ感覚に襲われただろう、思考が次々と浮かんでくる
あの少女を買った時のことを、エルフの娘から忠告を受けたことを
そして<秘密社交倶楽部>へ少女を売り払った事も。
「ほう、前から目をつけていたあの場所か」
■レイカ > 「…………。」
ずっと、気になっていた。あの少女のこと。
無垢で、何も知らない少女がずっと気になっていた。
マスターには、『これ以上かかわるな、お前のためにも』といわれた。
だけど……だけど、やっぱり助けたかった。
その思いで、つい足を運んでしまった。
以前来た娼婦の館、その場所へと―――。
「…………これは?」
だけど、その娼婦の館は異様な雰囲気に包まれていた。
この状況は一体なんなんだろうか?
以前来た娼婦の館はほぼ壊滅状態。おまけに周りには王国軍ではない場所のところの旗が掲げられている。
―――まさか、本当にあの子は貴族の娘だった?
何も知らなかったけれども、まさか自分の嘘が本当だったとは―――。
そのまま、私は駆け足でその娼婦の館へと走っていった。
■ナルラ > この娼館に一人の少女が近づいてくる、娼館の主の思考を《解析》した王子にとって、それは誰かは判っていた。
話を聞いてみたいとも思う、娼館を騎士たちが取り囲んでいるが、エルフの少女が通るならばそのまま騎士たちは通す事だろう。
「とある王族や貴族が関与しているという<秘密社交倶楽部>か、それで我の妾を売り、いくら手に入れた?」
すでに解析を済ませ、判りきっていることの質問を主に投げかける。
娼館の主は冷や汗を流し、そして失禁し股間を濡らしていた。
『そ、それは……』
いまだに口ごもる、よほどその王侯貴族とやらが恐ろしいらしい
いや、それが関与しているギルドが恐ろしいのかもしれないが
「我の前に隠し事は無駄だぞ……もうお前が売り渡した相手、それに金額は把握している。
我はお前に贖罪のチャンスを与えたのだ、だが愚かにもお前はそれを無下にした」
『…………』
「もう少し判れ、その王侯貴族や闇ギルド、それと我々のどちらが恐ろしいかを」
■レイカ > 「………?」
やけに、騎士たちがすんなりと通してくれた…。
これだけのことをしているならば、部外者は確実に通してくれないと思っていた。
だけど―――通してくれたという事は、まさか自分のことを知っている?
―――いや、この目の前の光景を見ているならば分かる。既に店主が私のことを…。
「……………。」
目の前の光景。そして旗を見る。
自分の忠告がこうして現実のものとなっていると思うと、確かに小気味いい。
だけど―――このまま店主が死んでしまう野を見るのは、どこか忍びない。
「…………話してください。」
ぼそり、と呟いた。
「…店主さん、話してください。そうでなければ、本当に死にます……。
私は言いました。一時の利益を望み絞首台を望むのか…と。」
死にたくはないはずだ。だから、私も道を示してあげた。
この男は悪党なのに…つくづく甘い性格の自分がどこか憎かった。
■ナルラ > 店主はそう、また選択を間違えてしまったのだ
声にならない声、口をモゴモゴと動かすときに聞こえてきたのは
エルフの女の声、だがこの店主は腐っていた、腐敗しきっていた。
自らの助かる手段を求め、また間違った選択を行ってしまう。
『そ、その女だ! その女が、あ、あのお嬢様を連れて行ったんでさ』
店主は感覚のなくなっていた腕をあげ、部屋に入ってきたエルフの少女を指差した。
王子はため息をつけば、騎士たちがシーツを被せた椅子を持って来て、そこに腰掛けた。
「言ったはずだ、我に隠し事はできぬと……この女はその身を挺してまで、我の妾を救おうとした恩人ぞ」
そう思考を完全に《解析》した以上嘘は無駄な抵抗である。
「安心しろ、命は取りはせぬ……ただ」
そう言って王子は己の座っていた椅子のシーツを剥ぐ
「こんな話がある、
とある富裕地区の酒場、そこで1杯50ゴルドの酒を舐め、意識を失った少女がいた。
その少女が金を持っていなかった為に、身元も確認せずこの店に少女を売り飛ばした輩がいる」
その椅子は、人であった、椅子の形はしているが人であり、死んではいない意識はある。
椅子はボールギャグを外されれば、しゃべりだす『お願いだ、金は返す、あのお嬢様を返してくれ、お願いだ、金は返す』
「人の大事な妾を勝手に売り飛ばした者だ、勝手に家具に加工してこのまま秘密社交倶楽部のオークションに売り飛ばしても構わんだろ?」
娼館の店主は言葉を失っていた、顔を青ざめさせていた。
「だが、テーブルセットのほうが高く売れる、テーブルになりたいか?」
店主は静かに首を振り
『は、はい、うりまひた、秘密社交クラブに……取引方法は』
涙ながらに、判りきっている取引方法まで白状しだしたのだ
■レイカ > 「っ………!!」
私は恐れた。店主にじゃない、この男にだ。
妾という……そのことにも驚きはしたものの、その驚きも消えてしまった。
私も、そんなに血生臭いのが苦手と言うわけではない。
だけど、この男はきっとこのままシラを切り続ければきっと―――。
妻を売り払われた怒りと言うよりも、この男から感じ取ったのはむしろ「冷たさ」だった。
「……………。」
ついに店主が折れた。
だけど、その程度で済むとは思っていない。
それ以上のこと、取引方法なんかじゃない。
問題は『どこに売り払ったのか』だ。
■ナルラ > 「まあ、我の妾を抱くぐらいなら許すのだが……」
そう静かに店主に近づけばその手を取り、身体を持ち上げる
「我以外が売り飛ばす、刺青や余計な魔術改造などを行われたなら……我は許せんぞ」
そのまま店主は人間でありながら、そのままテーブルへと形を変えていく。
『や、約束が違う』
そう店主は叫ぶが
「そんな約束をした覚えはないな。私はテーブルになりたいかと聞いただけだ?
マリアージュの意思を確認せずに、貴様達は売り払ったのだろう?」
そのままテーブルセット一式が完成すれば、そのまま店主のテーブルと、酒場の店員の椅子は運ばれていく。
「さて、この娼館だが、店主不在となった……このままではここにいる女達の生き場所はなくなってしまうな」
このバにはもう、王子と女しか残っていない。
この言葉はそう、女に向けてかけられた言葉。
「どうする、自由にするにしても働く先がなければ、ここにいる女達は他の娼館に行くだけだが」
■レイカ > 「……っ!!ま、まっ―――」
止めようとした。そこまでする必要がどこにあるのかと言おうとした。
だけど―――この店主のしたことを考えれば当然の報いだった。
命を金で売り払い、私利私欲を満たそうと―――いや、満たしていたのだから当然だ。
だけど、やはり傷つけることはなかったのではないのかと思う。
……だけど、止める前にこの男は店主をテーブルに変えてしまった。
不恰好で、とても醜い肉のテーブル。見ているとどこか吐き気さえ覚える。
思わず、目を背けながらただただ、店主の悲鳴を聞いていた。
「…………こ、ここまで……ここまで、する必要が……。」
久々に、こんな感情を憶えてしまった。
恐怖―――そんな感情を。肩が震える。足が震える。
ダメだ、この男に逆らってはいけない。私の頭は、この男に対して猛烈に警戒音を発していた。
店主のいなくなったその奥を見やる。―――あの店員も、同じような顔つきだった。
――――――。
「……え?」
一瞬、誰に向かっていっているのだろうと目を開いた。
周囲を見て、その男の声が此方にむいているのに、一瞬だけ時間を要した。
そして、はっと―――私の頭は、警戒音を少しだけ小さくする。
「………私は……彼女たちの選択に委ねようと思います。
たとえ私がここで道を示したとしても……その責任を、私は負えませんから。」
だから、身を挺してあの子を救おうとした。
ここで店主を傷つけるのは簡単だった。自分だって少しは戦える。
だけど―――その後を考えると、その踏ん切りが付かなかった。
あの子達にだって、生きていくためにはお金が必要なのだから…。
■ナルラ > 「ここまでする必要? 我と我が妾を愚弄し、我のものを勝手に売り払ったのだ、命があるだけマシではないのか?」
そう冷たい声が聴こえるだろう、この男は冷たく怒る。
軽く目を伏せ、静かに息を吐く。
「ただ、やり過ぎかと言われればそうかもしれぬ、だが次に戦う相手に対しては、あれぐらいのハッタリがなければならん」
判るか? そう彼女に問いかける。
次に相手にするのは、あの店主より深い闇の住人、それを脅しつけるにはあれぐらいのパフォーマンスでもしなければならないと。
「そうかでは、選択できないものはどうする?
薬で意識を奪われたものもいる……エルフのご婦人、貴方が身を挺して私の妾を救おうとした勇気には、礼をいいましょう」
男の口調は徐々に傲慢なものから柔らかくなっていく、少しは発散したのか顔つきも柔らかく感じるかもしれない。
ただその評定には疲労が見えているが
「さて、この店は主人不在、私の財産を脅かした罪で、その罰金をココの店主は払わなければならない。
まあ、ココの店主についた値段……それで当面の金にはなるかもしれない
重ね重ね面倒を頼むが、手付金を渡しておこう」
そう言うと一人の騎士が金貨の詰まった袋を持ってくる。
「落札金額はいくらになるか判らん、とりあえずこの金でここの娼婦たちの面倒をみてやってくれないか。
特に私はミレー族に嫌われているのでな、そちら方面には特に頼む」
ナルラ王子は猫嫌い、ミレー族を嫌い、特に厳しく接することからそう呼ばれている事を、彼女が知っているかどうかは判らないけれども。
■レイカ > 確かに―――そういわれればそうかもしれない。
やりすぎたのはむしろ、店主のほうなのかもしれない。
「……秘密結社クラブ…でしたか………。」
かねてから噂は聞いている。
表向きは貴族の社交場となっているらしいが、実際にはお金で買った女たちの体を何人もの男で輪姦しているだとか。
以前からその話は聞いていたものの、それを調べることはご法度とされていた。
―――そこに売られたのだとしたら。
「……………。貴族を敵に回すのは正直、賢い方法だとは思えません。
相手は所謂国家権力相当の力を持っている。……ですが。」
あなたはそれでも行くのでしょうね、と軽いため息を漏らす。
まあ、当然と言えば当然だ。彼の怒りを感じたのだから―――。
「……偶然です。ただ、あの子の無邪気な顔を見てしまった。
それに、礼等必要ありません。…私は、何も出来なかったのだから。」
少しだけ、肩を落とした。自分に力があればとあの日からしばらく考えた。
外套の下に忍ばせているナイフ、これを使うことも考えた。けれど―――先を越してくれた。
だから、礼を言うのはむしろ私のほうだった。
「解りました、薬漬けにされた方々やミレー族の人々に関しては…此方で手を打ちましょう。」
だけど、その金貨の詰まった嚢は―――彼の言葉通り受け取ろう。
最も、これが売れるとは少し思えないのだけれども……。
「それと……。私からもひとつ頼みがあります。
あの子の救出は、私も参加させていただけませんか?」
高額で売り払われてしまったのは、元はといえば自分の言葉が原因。
ならば―――その付けも、私は負うべきだと考えた。