2016/03/09 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にヴィールさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にイアさんが現れました。
イア > (貧民地区の歓楽街に、最も客足の増える時間帯。
男娼として街角に立つ少年は、無差別に道行く人々へと声をかけて客引きをしていた。
相手は問わないために、老若男女問わず、目前へと人影の過るたびに俯きがちの視線で言葉を投げる。)

俺のこと、買ってくれない?

(通りかかった少し小柄な人物へも、同じように生意気な声音を向けた。
それが見覚えのある人物だとは、まだ思いもせずに。)

ヴィール > 貧民地区をうろついていたのは、例によって邸宅を抜け出してきていたからだ。
疎らな人波に流されるようにして歩いていれば声がかかる。自分と変わらぬ年頃の、少年の生意気な声。

「……悪ィけど、他を当たってくんねぇ―――」

ため息と共に、けんもほろろに追い払おうとして振り返った瞬間、言葉が止まる。
俯きがちに此方を見る眼差しは覚えがある。

「………何やってんだ。お前」

呟くように問うて、鋭い眼差しがじっと彼を見つめて。

イア > 断りの言葉が聞こえても、ああ、またか。と思うだけだった。
が、振り向いた相手の呟くような問いかけに顔を上げて、鋭い眼差しとかち合った。
その切れ長の瞳や、気位の高そうな顔立ちは記憶の中にある面影と同じもので。
三白眼気味の目を、尚更大きく見開き、驚きを表情に浮かべた。

「お、まえ……まさか」

それは数年前の、まだ奴隷の身となるよりも前の記憶にあった顔。
見られたくなかった、あるいは見たくなかった。
そんな色を瞳に映して、震える唇が彼の名を紡いだ。

「ヴィラル・バロッツォ……こんなとこで、何してやがる」

ヴィール > かち合った三白眼の猫目とその顔立ち。
大分前のことではあるが、確かに記憶している。
立ち去りかけていた足を止め、彼の方へと向き直った。

「久しぶりだな。……俺のことをバロッツォとは呼ぶな、イグライア」

家の名を出されると舌打ちをする。
しかしすぐに、高慢な態度を顔に顕し始めた。恐らくイアにも見覚えがあるだろう、貴族の表情。

「何でもねぇ散歩を楽しんでいたら、久しい顔が釣れた……ってか?ハッ」

イア > 名前を呼んでしまったことを、すぐに後悔した。
知らぬ顔をしていればよかったのに、あまりに不意のことで、ついかつてのように言葉を投げてしまった。

「ああ、本当に久しぶりだ……。その名で呼ぶな。今の俺は……イアだ」

舌打ちには、肩を竦めて見せて。
自身の懐かしい名を呼ばれれば、眉根を寄せて、視線を斜め下へと逸らした。
けれど、視界に入った貴族らしい高慢な表情と、返された答えに口角を片方だけ上げて歪んだ笑みを作る。

「そうかよ、そりゃ邪魔して悪かったな。とっとと散歩の続きに戻ればいいだろ」

犬でも追い払うような仕草で手の甲を向けて軽く振り、自身も背を向けようとする。

ヴィール > 「……イア、ね。……ふん」

眉を寄せる、その表情の変化に瞳を細めた。
何せ昔馴染み、他者に対してならば幾らか自制出来る高慢さは歯止めが利かない。

「……っとと、待てよ。久しぶりに会ったんだ、もう少し話そうぜ」

背を向けようとする彼の肩を掴んだ。
勢い距離も詰まり、意地の悪い笑みが寄せられる。

「どうせ散歩してたって、面白いことなんかありゃしねぇんだ。付き合えよ」

イア > 彼が切れ長の瞳を細めれば、一層鋭い表情となる。
かつて顔を合わせていた頃から見えていた高慢さは、どうやら立派に成長しているようで、鼻持ちならず再び眉を顰めた。
栄養不足で発育不全の華奢な肩を掴まれれば、仕方なしに視線を向ける。
詰まる距離、意地の悪い笑みを間近に見ることとなって不快そうに顎を引いた。

「退屈を持て余すお貴族様と違って、今の俺は自分の食い扶持を稼がなきゃならねぇんだよ。付き合って欲しけりゃ金払え」

突き放すつもりで、そんな言葉を吐いた。
その口調は挑むように生意気なものだったが。

ヴィール > 一層鋭くなった表情を間近に迫らせる様子は、まるで嫌がらせのようで。
掴んだ肩は離さない。距離を取られることを避けるかのように。

「……ふん。買ってくれ、なんて言ってたな。別にいいぜ?食い扶持出してやるよ」

挑むように投げかけられた言葉にも、楽しそうに笑うだけ。
対抗するように挑発的な言を浴びせかけて反応を見守る。

イア > かつても親しいとは到底言えないような相手だったが、今現在の自身との差を見せつけてくるようで、尚更気に入らない。
手入れが足りず毛先の荒れた己の黒髪と、美しく整えられた彼の漆黒の髪を見比べてしまい、うんざりとする。
離れようと足を下げるが、肩を掴まれたままでは、それも叶わない。
まったく、なんの嫌がらせか。

「げ。本気かよ……」

思わず嫌そうな声を漏らした。
相手の浮かべた楽しげな笑いと、挑発するような物言いに隠すことなく表情歪め。

「お前が客だなんて、ぞっとする。大体、俺が何やってんのか知らねぇだろ」

言外にやめておけ、と含ませて挑発し返す。
どちらが折れるか。はたまた引けない売り文句を口にしてしまうか。
既に自身は容易に退けない線引きをしてしまっていた。

ヴィール > 年が近いから親しいかと思いきや、事実は全く逆。
幼少の頃などは顔を合わせればお約束のように反発し合っていた。
彼の方から離れようとしているのを見れば、しっかり肩を捕えて離さない。

「……ハハッ。いいねぇ、その顔」

歪む表情に気を良くしたような声音。半ばチキンレースのような様相を呈して来た。
挑発には挑発を。あくまで口元に浮かぶ微笑は絶えない。

「知らねぇが大体予想はつく。……やめとくのか? 俺が相手じゃ、よくする自信ねぇか?」