2015/12/26 のログ
リュドミーラ > 夜色のカーテンが垂れ下がった頃合い。
相も変わらず、いつもと何ら変わらぬ貧民地区の街。
鮮やかな月色をひどく汚したような髪の女はゆらりと路地裏に姿を見せた。
夜風も冷たいのに着る服はみすぼらしくてありやしない。
それが当然であったゆえに、女はそれに何も言わない。

――が。

「ッ、死んじまえ、アイツも、みんなみんな死んじまえばいいッ……!
 アタシをモノか何かかと勘違いしてやがる。
 死ね、死ね、誰でもいいからアイツをブチ殺してくれればいいのにッ……!」

病的なまでに白い肌をしたボロボロの脚にドロドロの白濁液が伝う。
彼女は娼婦であるがゆえにこれは当然でありいつも通り。
そして、この貧民地区では当たり前で誰もが気にもしないのかもしれない。

リュドミーラ > 呪詛のように漏らす言葉は変わらずひとつ。
たまと通りかかった貧相な服装の青年すらも目を逸らした。
薄汚い娼婦が壁に向かってただ一人言葉を漏らす様はそれは随分と珍妙怪奇な光景。
これが少しでも皆目麗しい少女であれば掛かる声もあったかもしれないがそんなことはなく。

「……――つか、いつか、」

目つきの悪いメイド服の女では興も削がれる。
豊満な身体つきをしていなければ甘やかな声すらもなし。
ただその口から出る声は呪い言。

ガン、と思い切り壁を蹴る。
細い脚は壁を揺らすことなぞなく、ただ乾いた音を撒き散らすのみ。
そんな乾いた音も、深夜の貧民地区の喧騒には負けて掻き消された。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にネスさんが現れました。
ネス > 哀れだな。いつ来ても、ここの人間は哀れで惨めだ。

(呪いのような言葉を吐き捨てる人間の前へ一人の魔王は降り立った。涼し気な顔を浮かべ、彼女の顔の前でしゃがみこみ、顔をのぞき込むように)

ここの人間の血は吸っても美味しくない。

(みすぼらしい服装の少女へ、相変わらずの表情で呟き捨てる。今日の食事はもう既に済ませており、そうでなくてもここのやせ細った人間の血など吸いたくもない。そんな言葉を口にし、ハンカチを取り出せば彼女のボロボロの足に付着する白濁液を拭き取る)

人間、そんなに憎いか?苦しいか?辛いか?

(首を傾げ、幼き魔王は彼女を見つめる。月明かりが魔王の顔を照らす)

リュドミーラ > (ふわり降り立ったその存在にただの人間が何を出来る訳もない。
 ゆえ、彼女の言動には何もいわない。何も答えない。
 痛いことをされるより、無理矢理乱暴されるよりも幾分もマシだ。
 哀れで惨めな人間は、ギギ、と重苦しく首を彼女に向ける)

……なあに。
またアンタも同じなんでしょ?
殴って、ブチ犯して、吐かせてって、そうやって、――

(言いかけた言葉が止まった。
 首を向けた先にいたのは想像していた体格のいい男性ではなく、
 幼い少女の装いで。
 変身でもされていれば男性の可能性もあったかもしれないが、
 今の彼女にそんな思考を回す余裕なんてありやしない)

なに、してる訳。
汚いモノには触らないほうがいいって習わなかったの?
――ッは!これが苦しくなく見える?楽しそうに見える?
見えるンなら一回くらい、頭の中切り開いてグチャグチャにした方が賢明だと思うわ。

さいッッッこうに苦しいわ!

(自嘲混じりに笑って、彼女の触れた脚を大きく引いた)

ネス > そんなものに、興味なんてないさ....。貴方を痛め付けても私にはメリットなんてない.....。

(彼女の自傷の混ざる言葉に冷静に答える魔王。ハンカチで汚れたその顔、服を丁寧に拭い、言葉を止めた彼女へもう一度顔を向ける)

汚い?私にはそうは思えない。汚いのは...そうね、あなたにそんな仕打ちをするこの男達の方だと思うけれど。

(パチン。指を鳴らせばネスの背にある壁が歪み、闇の空間が、その空間から雪崩落ちるように出てきたのは彼女へ暴行を奮っていた男の死体。冷めた目つきで男の死体を見つめる魔王は、一言汚らわしいと吐き捨てる)

いいえ、見えない。気を悪くしたのなら謝ろう。

(ペコリと頭を下げる幼き魔王。大きく脚を引く彼女へ優しく微笑を見せる。今度は右手を闇の空間へ伸ばし、取り出したのは真赤な林檎。それを彼女の前へ差し出した)

貴方の苦しみは、私にはわからないけれど、とりあえずこれを食べなさい?こんなところで暮らしているのだから、どうせまともなもの食べちゃいないのでしょう?

(優しい声色。最近、何かがおかしい。冷酷で冷徹な魔王がこんな貧しい地で、人間の役に立とうとしていた。心境の変化ではあるが、それを半分受け入れていた)

リュドミーラ > (魔王の選んだ言葉も行動も、きっと他の娼婦であれば喜ばれたことであろう。
               ・・・・
 ただ、生憎にも皮肉にも選んでしまったのはリュドミーラだった。
 魔王の心境の変化など知りやしないただの薄汚い人間はその差し伸べられた手を振り払う)

なあに。
哀れな子羊に手を差し伸べてなにがしたいの?
アタシを痛めつけるのとオンナジくらいあんたにはメリットがないんじゃない。
そんな慈善事業なオナニーなら他所でやってもらえるかしら。
アタシは汚いものなの。それに、

(ばだばだと落ちるその死体を、魔王が汚らわしいと吐き捨てた男を薄目で見遣る。
 そろりと近付けば、その冷たくなった四肢に黙ってキスを落とす)

アタシはこうでもしないとお金が稼げないの。
あんたの常識で、あんたのオナニーできっとアタシは3日分の飯が減ったわ。
ブチ殺してやりたくても、死んでほしいと願ってもそれが仕事。
神様の真似事がしたいなら、もっときれいな女を探すべきじゃないかしら。

(差し出された優しい声色も、真赤なその果実も乱暴に振り払った)

ネス > 貴方の言っていることは正しいかもね。確かに、貴方に優しくしても私には何のメリットもない...

(でも、それでも放っておくことが出来なかった。何故?わからない。彼女の言動や憎しみの篭った瞳。きっとそれが答えだろうか)

ふふっ、面白い例えね。でも、なんだか放っておけない...

(お節介と解っていても、彼女に乱暴に振り払われた言葉を気にすることもなくちょこんと彼女の隣へ座り込む。彼女の比喩にクスクスと笑みをこぼす魔王は空を見上げた)

貴方みたいな、人間は何人も見てきた。その殺意の篭った瞳を私に向ける者もいた。何百年と生きていると、人間は皆同じではないと気付かされる。

(そこが人間の面白いところで、私が唯一愛する人間の箇所。そうぼやく幼い少女は、外見遥かに自分より年上の彼女へゆっくり手を伸ばす。腕、首などにうっすら残る自称の傷跡に目を細め)

貴方の生き方に、口を出すつもりは無いわ。でも、自身を傷つけるのは良くないと思う。魔族の私では説得力がないかもしれないが、自分を傷つけるほど罪なことは無い。

(床へ転がる林檎を拾い上げればカプリと1口口へ。爽やかな果実の香りが広がる。長い髪を耳に掛け、もう一度彼女へ顔を向けた)

私は嫌いじゃない。貴方のその憎しみの瞳、そのひねくれた性格。

(相手にとってみれば、初めてあった人間にこんな事言われたくない。そう思われるだろうが、さすが魔王といったところか。最近会得した心情を廻る目。彼女の心の中、そして記憶までも透視し、全てわかった上で言葉を紡ぐ)

リュドミーラ > ……あハ。

(女は、魔族だと自分を指した魔王を見て忌々しげに笑った。
 目は薄く見開かれ、口元には林檎のように鮮やかな赤い月が浮かんだ)

口を出すつもりはない?
口を出すつもりはないのに自傷はやめろだって?
あッははは!すごいわ。こんなに笑える冗句そうそう拝めない。
自分を傷つけるよりも罪なことはないって?

女を殴って犯すことよりもアタシは悪いことをしてるの?
そのまま死にそうになるまで、殺してしまうよりもアタシは悪いことをしてるの?
………、うふふ。それならそれでも構わないわ。
ほら、汚いでしょ?

自分を傷つけることよりも罪なことはないなら、アタシは大罪の極悪人!
笑えちゃう。

(夜の帳も降りた深夜に、ただただ女の高笑いが響く。
 ぎょろりと横に座り込んだ少女にゆっくりと視線を向ける。
 それは覗き込むように、淀み切った目で少女を睨みつけて)

アタシはね、人を救えもしないカミサマも、そんなのに縋る馬鹿も。
女を買って殴って吐かせて犯すアイツらみたいな男も。
人の家に火を点けて中の女を根こそぎ売り払うような商人どもも。
それよりもカミサマヅラしてるあんたみたいなヤツが大っ嫌い!

(ちらりと尖った犬歯を覗かせて、徐に立ちあがる。
 そのままくるりとその場でターン)

人助けだなんて素敵な趣味ね!

ネス > えぇ、貴方の生き方に口を出すつもりはない。でも、その行為だけは許せない。

(さっきとは打って変わって真剣な表情になる魔王。幼き童顔も、ここまで真剣な表情をするとどこか凛々しく、美しく見えるほど)

そうかもしれない。貴方は、さっきの男達より最低な行為をしていると思うわ。

(他人を傷つけるより自分を傷つける人間。そこが1番人間の嫌いな箇所。そう呟く魔王は女の高笑いを聞いても依然と表情を変えることは無い。ここまで墜ちた人間に救いの手を差し出して何になる?昔の彼女なら、とっくに目の前の人間を殺していることだろう。しかし、今は特に危害を加えることもせず、彼女の意見をおとなしく聞いていた)

カミサマヅラ?あら、笑える。私を見くびらないでちょうだい?こう見えても魔王。神にだってなれる....

(ガリッ、そんな音を奏でながら魔王は自らの人差し指を噛みきった。流れ出る血液は弓の形へと姿を変えそれを手にした魔王は空高く弓矢を引き抜いた。刹那、轟音と共に矢の周りに吹き荒れる豪風。それは街の全てのものを巻き込むように吹き荒れ、建物や木々などを破壊していく。そして、空高く爆散した。立ち上がった彼女へ視線を向け、こう口にしたのだ)

私は神様ではないけれど、神様にもなれる力くらい持ってるわ。もちろん、人を助けることも力の使いようではできるでしょうね...

(クスクスと笑を零す少女は町の惨状を見て、もう一度少女へ顔を向ける)

それとも、神様でもない貴方がこんなことできる?この腐りきった街を、弓矢一つでここまで崩壊させられるかしら?

(さっきの優しい笑みとは打って変わって意地の悪い挑戦的な笑み。彼女の手に掛かれば、人を殺すことも、人を生かすことも、そして街一つ消すことも簡単なのだ)

リュドミーラ > (美しき気高い魔王の姿をちらりと視界に捉えた。
 "美しく"、"凛々しく"、"力"を持った存在を見遣れば、更に口元は吊り上がる。
 彼女はそんな魔王とは正反対。
 "汚く"、"生き汚く"、"無力"な娼婦。ああ、どうしてこうも。
 ――どうしてこうも、)

ならあんたの最初の言葉は間違いね。
私にはそうは見えない、ってあんたはアタシに言ってくれた。
けど今はさっきの男よりも最低な行為を、うふふ、ふふ、あはははははは!!
してるんでしょお!? ねえ!?

(世界は不平等で、どうしてこうも狂ったように優しいのか)

(ぶちりと裂ける魔王の指先。
 だらりと垂れる赤黒いその血液が形を変える。
 神にだってなれると囁いた少女は、さながら破壊神か何かか。
 薙ぎ倒され、悪平等に破壊される家屋をぼんやりと薄く開かれた目で見遣る。
 めきめきと鳴った家屋は、それはそれは大きく音を立てて崩れ落ちる)

あは、えへえええ、あッは。
できないわ? だってアタシは人間だもの。
あんたは何がしたかったの? 壊して、めちゃくちゃにしてアタシを脅したつもり?
アタシはどうやって反応すればいい?
いいよ、なんでもやってみせるよ。殴られたってアタシは喘げるから。
ここで泣いたっていいよ、土下座だって幾らでもして見せるけれど。

(崩しに崩れ、めちゃくちゃになった表情をふ、と戻す。
 完全に、圧倒的な無感情を孕んだアルカイックスマイル)

壊して、何か変わった? 楽しかった?気持ちよかった?
ねえ、壊すのって気持ちいいの?

アタシ、ずうっと壊される側だからね。
壊すことなんてわかんないんだ。

(こてん、と。薄汚れた笑顔とともに首を傾げた)

ネス > そうね。よく貴方の発言は矛盾していると言われるわ。でも、貴方が汚い存在なのか、貴方が最低な行為をしているのか、それは私の中では全く別の問題なのよ?

(あぁ、これもまた矛盾なのかもしれない。しかし、我儘で自己中心的な魔王は口を止めることはしなかった。目の前にいる人間を、今の自身は見逃すことなんて出来なかった)

苦しい、辛い、憎い....、貴方はそれを背負って生きているのだから、無力ではないと思う。

(悟ったように口にする魔王は、優しく笑みを零す。そして、こう言うのだ)

私には力なんてない。街一つ、国一つ、それを壊してしまえる力があっても、誰かを助けるための力なんて持っていないのかもしれない。

(壊れた街を見つめ、口を開く。どこか切なげな表情でもあるのだが、それは彼女の自虐的な言葉によってすぐに崩される)

私が求める貴方の反応、か。別に脅しているわけでもないし、泣いて欲しいわけでもない。土下座なんて見たくない。

(ただ、と一つ言葉を漏らせば透き通るような瞳で彼女を見つめる。ふわりとした風がネスの髪から漂う果実の匂いを彼女の鼻へ届ける)

私は、貴方とお話がしたいだけかな。

(にっこりと微笑んだ魔王。何がしたいのか、何を言いたいのか、自身全く答えが出ず、それでも彼女を引き離さないための口実。助けたいなんて言葉を素直に伝えても、きっと目の前の人間は変わらないだろうから)

私は貴方を壊したりなんてしないよ。私が壊すのは、私にとって邪魔なものだけだから。

(パチンと指を鳴らせば、矢によって崩壊して板街が元の姿へ戻っていく)

リュドミーラ > ごめんなさいね。
アタシはそんなよくできた生き物じゃないから。
弱くて身体を売って、そうやってやっと生きられるような汚い生き物だから。


それに、

(指先の音ひとつで元に戻る街。
 それは自分自身の身体を貫いた杭を引っこ抜けばそのまま戻るのと同じ。
 それは自分自身の身体を切りつけた傷もすぐに治るのと同じで。
 あまりに似すぎていて、あまりに当たり前のような話で、)

アタシね、力がある癖に弱いなんて嘯くひとが大嫌い。
矛盾させるくらいなら最初から優しい言葉なんて掛けなきゃいいのよ。

――……それこそメリットなんてありゃしない!
あッッッははは! でしょ? 違う?

あんたみたいな強くて力があって、力を振り翳すような奴が大嫌い!
もっと力があるならふんぞり返って偉そうにしてればいいのよ!

なあに、力なんてないって。

……。

(暫しの静寂。黙り込んで、ゆったりと顔を上げる。
 その表情に浮かんでいるのは先程と同じ狂ったような笑顔。
 ひどく優しい笑顔)

嘘吐き!

(それだけ吐き捨てれば、娼婦は夜の街に溶けた)

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からリュドミーラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からネスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にネスさんが現れました。