2015/11/01 のログ
ルーキ > 「それもそうだ」
あっさり同意する。肩を揺らして笑った。

「……ふむ。だから、上を通っていたと」
「次からはしっかり、下の道も確認してから下りるといい」

別段仕事の内容やら、仕事について詳しく訊く気は無い。
知らないながら、一応忠告を一つ紡いでおいた。

「善良では無いな。―――そもそも、人間でもないが」

含み笑い。両手を広げて、己が姿を月光の下に晒す。

シオン > 「仕事が上手くいって、浮き足立っていたのかなと…今度は同じ失敗はしないようにします」
今度から出来る限りは注意することにしよう…次こそは牢屋行きの可能性が高い。

「人間じゃない…魔族さんとかですか?」
ミレー族には見え無い、瞳のオッドアイ。
人間に居ないとまでは言えないとしても、かなり珍しいはずで可能性として一番高いのは魔族だった。
人間であろうが、人間で無かろうが特に気にはならなかった。

「僕のお客さんにもそういう人いたみたいですし、深くは聞きませんけど…そういう風に両手広げられてると、抱きつきたくなっちゃいますよ」
冗談めかしてそんなことを言ってしまっていた。
あの胸に顔を埋められるなら魔族なんて問題でもなかった。
殺そうとしてくる人はごめんだが、そのつもりが無いのだろうし、話してみて良い人、良い魔族だと分かっていた。

ルーキ > 「それが良い」
言葉短かに頷いた。反省したのならば、もう此方から口出すことはない。

「魔族。正確に言えば、人間から魔族になった身かな」
「自己紹介しておこうか。ルーキ……わたしの名だ」

相手の名を聞きだす心算は別に無い。
相手方から切り出すのが良かろうという腹積もりだ。

「こらこら。誰彼構わずそういうことしてると、危ないぞ?エロガキめ」

笑いながら言ってのける。
広げていた両手をぽん、と下ろした。別段抱きつかれることは問題でもないのだが。

シオン > 「人間から魔族に…そういう人もいるんですね、知らなかった」
「僕の名前はシオンです、何でも屋やってます。よろしくお願いしますね、ルーキお姉さん」
相手が名前を名乗ったならば、こちらも名乗るのが礼儀であればしっかりと名乗っておく。

「誰彼構わずなんて、人聞きが悪いです。良いなと思った女の人限定です」
自慢することはではないのだが、胸を張ってしっかりと宣言していた。
今回出来なかったのは状況的な問題で、もう一度両手を挙げたなら遠慮なしに抱きついてその胸の顔を埋めるだろう。

ルーキ > 「珍しくもないと言われていたがなぁ」
「シオン……か。あぁ、よろしく。なんでも屋とはまた、変わったことをやっているんだな」

あくまで自分の中で、だが。
思わずそんな評価を下してしまう。

「中々口の上手いヤツだ。気に入ったよ」

褒美というわけではないが、再び両手広げる。
抱きつくくらいなら許してやろうと言いたげ。

シオン > 「僕が知らないだけです、わざわざ人に種族とか聞かないですし…」
人間と同じ姿をしていれば、魔族であろうが分からない。
人間から魔族になったかなどもっと分からないのでm字分には珍しかったのである。

「何でも屋…何でも引き受けるんで、お気軽にどうぞ」
自分が根城にしている宿の名前を教えておくが、早々頼むことがあるとは思わなかった。

「抱きつきたくなるっていったのに…」
傍まで行けば顔から胸に飛び込むようにして、抱きついた。
胸の感触は幸せで胸の谷間に顔を埋めてつい、顔を左右に動かしてその感触を堪能してしまっていた。

「この感触さえあれば、仕事の一回ぐらい割り引き出来ちゃいます」
ただにしないのは生活のためで、そのあたりはしっかりしていた。

ルーキ > 「それもそうか。仕事上は種族も関係ないんだな」

時には人ならざる姿形をとる魔族もいるのだろうが、自分は紛れもなく人形である。
その点はあまり考慮してなかったとばかり、手を叩いた。

「よしよし。……ま、たまにはこういうのも悪くない」

夜の細道で抱き合う二人。端から見ればどう思われるだろうか。
顔が左右に動く、その感触に擽ったげな笑み零す。

「……はは。じゃあ、いつか助けが必要になった時は訪ねるとするよ」

それがいつかは自分にも分からない。
不明確な約束を交わして、ぎゅっと再度抱きしめた。

シオン > 思った以上に、抱きついて胸に顔を埋めているのに歓迎されてしまった。
嬉しい誤算ではあるが、このままでいるといろいろとまずいのだが、抱きしめられている状況を捨てて離れるという選択肢は無い。

「はぅ……」
気持ちよさそうに一度息を漏らして、身体を少しだけ動かす。
抱きついて抱きしめられている状況では身体はしっかりと密着しているので、ズボンの下で硬くなってしまっているのがばれるのも時間の問題かもしれなかった。
少年とはいっても、男であるのだからこればかりは意思でどうにかなるものではなかった。

ルーキ > この状況を捨てるという行為に及ばないのは、特別意外なことではない。
しっかり密着した身体、うち下部に何やら硬い感触を感じれば――

「………おや」

驚いたように瞬いた後、思わずと笑みを深めた。

「……悪いな。やりすぎてしまったか」

ぽん、と軽く背を叩いてから、一旦身を離そうとして――

シオン > 気付かれなければ、それで良かったのだがそう上手くいかないものだった。

「やりすぎじゃないです…」
身体を離そうとする相手の身体を抱きしめたままで、特に離すつもりは無かった。
気付かれたなら隠す意味はないし、身体の反応はともかくこの状況を手放すのは惜しかった。

「うぅ……」
この状況の心地よさで抱きついていたが、この状態のままでいつまでもいられるわけも無く、抱きついていた手の拘束を弱める。
これで相手に離れる気があればいつでも離れられる。

ルーキ > 「まぁ確かに……ごく普通の反応ではあるな」

手の拘束が緩むのを感じれば、一旦身を離し――
相手の顔の高さまで腰を落とす。視線が絡み合う。

「……また今度、だ」

そう囁けば、その頬に。――避けられなければの話だが、軽いキスを贈る。

シオン > 「んっ……」
視線が絡みあい、近づいてきた顔を避けることはまったく考えることは無かった。
キスをしっかりと受け止めて、今はそれで十分満足出来る。

「今度のときは絶対に離してあげません」
それは相手の言うとおり、また今度で良いということと、次のときはもっと先までするからという宣言だった。

思ってみれば、この場所であったときはそんな雰囲気はまったく無かった。
むしろ最悪の場合は逃げることも考えていたことを思い出して、笑みが浮かんでしまった。
自分は本当にこういうことに関しては欲望に素直すぎるなと…。

ルーキ > 「……ふふ。それは楽しみだ」

宣言にはいっそ満足げに笑ってしまう。
その顔立ちに垣間見える欲望への素直さに、どこか惹かれるものもあった。
無論、次いつ会えるか等分からないことなのだが。

「参考までに……魔族の抱き心地はどうだったかな?」

人形の肌は、主から与えられたものだけに心地好さは人間と大きく異なる。
滑らかさ、きめ細かさは他の追従を許さぬ程と言っても差し支えなかろう。

シオン > 「楽しみにしててください…僕のほうがもっと楽しみなんですけど…」
これは嘘偽りの無い言葉だった。
ただ出会えるかどうかは誰にも分からないで、本当に偶然に期待するしかないのかもしれない。

「抱き心地ですか?」
自分が離れなかったのだから聞くまでも無く、最高だったのだが聞かれたのには何か意味があるのだろう。
少し悩んで、先ほどの感触をしっかりと思い出して言葉を纏める。

「柔らかくて、すべすべで、良い匂いがした気もしました。うーん、一言で言えば最高です」
服の上からであの心地よさなのだから、実際に触れ合ったらどれほど気持ち良いのだろうと一瞬考えてしまった。
心で、それは今度もお楽しみともう一度言い聞かせる必要があったのは、相手にはたぶん分からないはず…。

ルーキ > 「……中々、正直だな?」
「まぁその期待に応えられるかはわからないが」

惚けたような声。
王都に住んでいれば恐らくは、いずれ顔を合わせる日も来るだろうと。

「……そうか。褒めてくれて嬉しいよ」

主――友から直に貰った身体。良く言われて悪い気などする筈もない。
色白い腕を擦りながら笑った。

シオン > 「こういうことは正直に言わないと損をする気がするんです」
なんでも正直に言うことが必ずしも良いとは言わないが、やはり正直になるほうが良い場合もある。

「んー、じゃあ、僕はその身体と抱き合わせてくれてありがとうございます」
自分は褒めることの出来る身体と抱きえたことのお礼を言いたくなった。
でも、その身体を褒められるは多いだろうと思う。
それが抱き合っていなくても十分魅力的なのだから…。
きちんと知り合った相手に褒められたから嬉しいのかも知れない。

ルーキ > 「他ならともかく……それは確かに、的を射てる気もするな」
使い分けは無論のこと必要だが、正直になるのも大切なことである。

「…そんなことで礼を言われたのは初めてだな」

どういたしまして、と笑った。
見た目だけでも魅力的、というのは己が友もそうである。
未だ多くの人に褒められた――というわけでもないが。

「……さて。わたしはそろそろ失礼するよ。散歩の続きと行こう」

シオン > 確かに、こういうことでお礼を言うのもかなり珍しいだろう。
もしかしたら自分も初めての経験だったような気がする。

「そう言えば散歩の途中だったとか言ってましたね。それじゃあ僕も宿に帰るとします」
思ってみれば結構長い間ここにいたような気もする。
仕事帰りの身体は休みをは欲しがっているようで幾分眠気が襲って来ていた。
「それじゃあ。、また今度です」
そのまま相手と別れて宿へと足を向けたのだった。

ルーキ > 「あぁ。ゆっくり休むといい」

またな、と言うと彼とは別方向に向け歩き出す。
緩やかな足取りは先程と何ら変わることなく。
間も無くその姿は夜の闇へと消えて行った―――

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からルーキさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からシオンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にフォーティアさんが現れました。
フォーティア > 場所としてはあんまり安全ではないのだが、そんな地区で営まれていた骨董屋に少女は居た。
目的は当然だが共通語ではない文字で書かれた書物。
まあ、それ以外には目を引くものがあるのなら購入しても良いかな、とは思っている。

目的の物は最後にとっておき、店内に並んでいる商品をまじまじと眺めていた。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にキスカさんが現れました。
フォーティア > どう使うのかよく分からない形をした小道具のような物、不思議な形をした置物。
普通に売ってそうな装飾品もあるが、こういう場所だから何かしらあるのかもしれない。
触れても大丈夫そうではあるのだけど、触れる度胸も無く眺めているだけ。
触れて何かあったら大変だろうし、それで良いのかもしれないけれど。

とはいえ、こうやって色々と考えながら何かを眺めているのはつまらない、という事はない。
これはどういう用途で使うのか、どういった意味があったのか。
そういう事を色々と考えるのは楽しいし…なにより人が混まない場所なのが良い。

キスカ > 「えー? だめだめ、もう一声! どうにかなんないかなー」

店の奥から聞こえる元気な声。
手のひらサイズの小さな彫刻をはさんで店主と対峙する後姿が垣間見えるだろうか。

「見てよこの細かさ! ぜったい珍しいものだって!!」
「ほら、この色って象牙でしょ? で、この謎動物だよ。ただならぬものを感じるよね…」

フォーティア > ふと奥から聞こえる声、自分とは違い、物事をはっきりと伝える元気な声だ。
こんな場所で珍しい…そう思えば、ついそちらへと顔を向けてしまう。

視線に入るのは自分と同じくらいの身丈か、年齢は…たまに見た目とは違う人も居るのだし、考えないようにする。
ともかく少女だった。

そして同じ視界の中に入るのは店主と、少女が手に持った彫刻。
さすがにこの距離ではっきりと形を理解は出来ないが、何かの動物らしい。
大体の物を見終わったから、後は書物だけとなり…そうなると、残りの見てない辺りか…その2人が話している近くに行く事になる訳で。

キスカ > 「私もいろんな怪物に会ってきたけどさ、こんなの見たこともないよ!」
「海の怪物…水辺の生物とか? ケルピーってこんな感じじゃなかったっけ」

鹿みたいな角が生えていて、にゅっと伸びた長い顔はトカゲと馬の子供みたいな感じ。
鼻の穴のそばからは太いひげが伸びていて、よく見ると身体じゅうに鱗が生えてる。
まさしく謎のクリーチャー。いわゆるUMAに違いない。

彫刻自体はとても艶々としていて、得体が知れないレベルで古いものに見える。
飾り紐を通すような穴があいていて、お店のご主人は「根付」というものだと教えてくれた。
貴族の持ち物かもしれないが、普段使いの日用品だから大した価値はないと言われてしまったりもして。

「そんなぁ…じゃあいいよ。もういい。お金持ちの学者さんに買ってもらうんだから!」
「あーあーもったいないなー! こんな不思議な生き物の飾りなんて二度とみつからないのになー」

フォーティア > 側までこれば、その手に持っていた彫刻がちゃんと見えるようになる。
何をモチーフにした彫刻か、まではさすがに分からない。
そして、店主が言うように根付だというのは分かった。
誰が作った物かは分からないが、作りからしてそれなりの価値はあると思う。
…買い手を選ぶ美術品としての商品になってはしまうが。

まあ、そうは思うのだけど、それを伝えてあげるだけの度胸はやはり無い。
2人のすぐ側に並べられていた書物へと辿り着き、こういった場所の珍しい客人をちらりと見遣る。
さすがに他人をまじまじと見ているのも悪いので、そこにあった書物を手に取って中身を確認しようとした。

キスカ > まあ待ちなさい、と示された金額に表情が曇る。
豪遊とまではいかずとも道具の手入れ代くらいは期待していたのに。
三日分の宿代にもならないと気付けば、低く唸ってますます眉が寄っていく。

ならばと代わって示せるカードを持っているわけでもなく、手詰まりを感じた。

「残念だけど、交渉決裂。またヘンなもの見つけたら持ってくるから」
「次はよろしく。乞うご期待――――――わぁ!?」

根付をつまみあげてその場を立ち去ろうとした刹那、目の前にほかのお客さんが現れた。
………というか、元からいたのだけど交渉に熱が入ってしまって気づかなかったのだ。

まともにぶつかってしまって、世界の果てに住まう霊獣―――索冥の彫刻が宙を舞う。
体勢を立て直しながら、とっさに手を伸ばす。根付ではなく、大人しそうな女の子の方へと。

フォーティア > もう終わるのだろうが、こうやってよく交渉なんて出来るものだとそう思う。
きっと、自分だったらよく分からないと思う物をこんな風に話し合いで売り渡すなんて出来はしない。
二束三文で買い叩かれてしまうのがオチである。
…ある意味で羨ましくはあると思った。

隣の少女は交渉に熱が入りこちらに気が付かなかった。
そして、こちらは書物に意識が向いてしまい、そういう動きをするだろう予想が出来なかった。

「………あっ…!?」

相手は正面からか、こちらは横を向いた状態でぶつかってしまう。
そんな衝撃に耐え切れる訳もなく、か細い体は簡単にぐらりと傾く。

書物を取ろうとした手は空を切り、かけていた眼鏡が外れて落ちる。
唯一の救いは、バランスを失って倒れる前に少女の手がその体に届く事だろうか。
支えようと考えていたのなら、その体は予想よりも軽く簡単に支えれるものであって。

キスカ > 手ごたえあって、倒れてゆく細い身体を引き止められた様子。
けれど、見てしまった。眼鏡が外れて落ちていくのを。

根付。眼鏡。この一瞬の動きで救わないといけないものが多すぎる。
それは冷たい方程式。目にも無惨な二律背反。
眼鏡。根付。眼鏡。根付。根付…眼鏡。眼鏡!!

眼鏡は大事。守るべきもの。
ローブの裾を持ち上げて、ふさふさの長いしっぽが眼鏡のつるを巻き取って掬いあげる。
同時にめいっぱい手を伸ばして、艶々と光る白い彫刻に人差し指の先が―――届かない!

「っ……!!」

カラコロ音を立てて転がっていく根付。
さいわい白い欠片は見当たらず、ほっと胸を撫で下ろした。

「はぁ……よかったぁ…ごめんね、怪我はない?」

フォーティア > 倒れそうだった体が、がくん、と揺れて倒れるのを止められた。
少女の手が自分の体を支えてくれたのだが、今この瞬間では気付かない。
それよりも、揺れていた視界が一気にぼやけた事で眼鏡が外れた事に気付く。
慌てたように視線を下へと向け…その先に、なんとか見える程度に尻尾に引っ掛かるようになっている眼鏡が見えた。
その尻尾をゆっくりと辿り、それが上に向けば…先程に横で交渉していた少女だと分かる。
少女から見れば、上目使いに見上げている相手が見えるだろう。

「あ………あの、え、っと…あ、ありがとう…ございます…」

あまりにもいきなりすぎて、言葉に一瞬詰まる。
それでも、その少女が自分をその手で支えてるのに気付けば、しどろもどろにお礼を言って。
わずかに顔が赤くなるのが分かる、これだけ近くで誰かと対面するのは…慣れない。

キスカ > ほんの一瞬だけ訪れた均衡と静寂。
吐息がかかるほどの距離から上目づかいに見つめられていた。
ちょうどこんな風に腕の中で息を引き取った人々の顔が脳裏をよぎり、頭を振って振り払う。

「ううん。いいのいいの、どういたしまして!」
「………そういえば眼鏡!! 壊れてないといいんだけど」

取り落とさないようにしっぽを動かし、眼鏡を受け取って検分する。
ガラス玉の枠をつまんで、見ず知らずの少女の顔にそろそろと近づけていく。
壊れ物を扱うみたいに、この場合は女の子と眼鏡の両方に細心の注意を払いながら。

つるの先が耳に乗った感触があって、鼻梁の上、動かないことをたしかめてそっと手を離した。

「見えてる? 大丈夫?? えっと―――」

名前。知らない誰か。大人しそうな眼鏡の子。
店主の咳払いに飛び上がり、身体を離して一歩の間合いをとる。

フォーティア > 「は、はい…もう少し…その、注意を…払う、べきだった、ので…
…あ、そ、そういえば…」

申し訳無さそうに呟きながらも、眼鏡の事を指摘されれば、自分も大丈夫だろうか?と視線をもう一度眼鏡に移す。
尻尾から少女の手に移され、少女の手から自分の顔に戻される。
自分で受け取ってかければ済む話なのだが、それを口に出すのも躊躇われ、大人しくかけて貰った。

と、その途中でふと気付いた。
尻尾?となると、相手のこの少女はミレー族だったのか、と。
もっとも、自分にとっては客として会った事もある。
見た目が違うだけで、人間とそうは変わらないというのが印象だ。
なので、だからどうだと気にするつもりはない。

「………あ、あ、はい…だ、大丈夫です…」

はっきりと見えるようになった視界、かけた感触も違和感は無い。
別の方向へ向いていた思考を止め、こくりと小さく頷き、答える。

店主の咳払いにはこちらも反応してしまう。
びくりと肩を跳ねさせるも、気が付けば一歩距離を置いている少女。
ゆっくりと、深呼吸をして気を落ち着かせる。

キスカ > 「気にしないで。こっちも不注意だったから……」

ふと獣の耳に視線がいった気がして、反射的に両手で隠す。
しっぽが出てるということは、耳も出てるということなのだ。

「……あっ!! あんなところに激レアのお宝本が!」

指さした先は適当な本棚。
お宝って人それぞれだから本当にある可能性もゼロではないけれど。
引っかかってくれればよし。くれなくてもすることは同じ。
遅ればせながら教団の秘術をつかって耳としっぽを消し、まれびとと同じ姿に変わる。

「うーん気のせいだったかなー」

根付を拾い、埃を払って傷ついた場所がないかたしかめる。
たとえ二束三文でも、壊れたままにしておくのは嫌だっただから。

「ものしりハカセちゃん的にはさ、これってどう見える? いいものかな!」

フォーティア > 「そ、そうですか…はい、その、分かりました………?」

返す言葉の途中、目の前の少女の頭を両手で隠す仕草。
次いでに飛び出す自分に向けられた言葉と、指差す行動。
彫像の価値が分かってないのに書物の価値が分かるだろうか?
そんな疑問が浮かんでいるところで、目の前で耳と尻尾が消えた。

あ、なるほど、理由が分かった。

それなら釣られたふりをした方が相手の為なのだろう。
そう思って、指差す方向に顔を向けた。
…相手から見れば、明らかにばればれな演技だったかもしれない。

「………え、っと…そう、みたいですね…?
あ、でも、その…これと、これだけを…」

書物を手に取り、確かめる…今度はふりではなく、実際に開いて中の文字を確認した。
共通語以外の文字は2冊、タイトルからそこまで重要そうなものでは無さそうなのは分かった。
とはいえ、暇を潰せる程度にはなるかもしれない。
その2冊だけを、購入しようと手に取った。

「…え…?…あ、その………そう、ですね…
ど、どちらかと、言われれば…良い物、とは、思います…」

問われれば、その問いに正直に答える。
ただ、売る相手は考えないといけない事を付け加えておいて。

キスカ > ワンテンポ遅れて指さしたほうを見るハカセちゃん。
いい人オーラが溢れすぎてて目に見えるみたいな感じだね!

Q. 見られてましたよね?
A. ばっちり見てたね!

それはそれで別に構わないのだけれど。

「じゃああげる!! 大事にしてあげて。またねー!」

会計が済んだ本たちの上に奇妙ないきものの根付を置いて、お店を出ていく。
私はあまり興味がないし、いいと思った人が持つべきだから。

お店の外。陽だまりの中から手を振り、雑踏の奥深くへと―――。

フォーティア > 「…あ、え…で、でも、これ………あう…」

売ろうとしていた物のはずである根付、それが手に持った書物の上に置かれた。
そして投げかけられる言葉。
慌てて返そうと声をかけようとするが…見えたのはすでに入り口を出て行く少女の姿。
手には書物、乗せられた根付、手を振り返す事も出来ず、去っていく少女に小さく頭を下げるのであった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からキスカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からフォーティアさんが去りました。