2023/03/13 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城/広間」にヴァンさんが現れました。
ヴァン > 一か月ぶりにさる王族が主催する昼食会に出席する。
立食形式、会費あり、いわゆる交流会。

「えぇ……付与魔術師でしたら、知り合いに。費用もそれなりにしますが……」

このパーティーは人脈を広げるだけではなく、知己と旧交を温めるという側面もある。
雑談の中で気になった点を拾い、商機に繋げる。

「今日はこれくらいかな……?」

男はやや顔色が悪い。疲れたのか、壁際に並べられた椅子に腰かけ、右手に持ったグラスの中身を口に含む。
炭酸水に果汁を混ぜたものだ。参加者の一人が主催に寄付したらしい。
ぼんやりと周囲を眺めているこの男に話しかけようとする者は、はたしているだろうか。

ご案内:「王都マグメール 王城/広間」にベルナデッタさんが現れました。
ベルナデッタ > 「あら、ごきげんよう?」

そんな男に話しかける女が一人。
一見すればノーシス主教の修道服に身を包み、
相応に穏やかな雰囲気の笑みを向けている。
しかし、その服の紋章は、彼女が異端審問官であることを如実に表している。
ヴァンとも因縁深い組織であろう。

「まさかこんな所でお会いできるとは…。
初めまして、図書館の聖騎士殿?」

異端審問官は恭しく頭を下げる。
その笑みは、まるで真意を読み取らせまいとするように変わらない。

「ベルナデッタ・マルケッティと申します。所属は…言わずともご存知でしょう?」

ヴァン > グラスが空になって、お暇しようか考えたところ。
女性から声をかけられて顔をあげる。

「これはこれは……マルケッティ司祭殿。遠目に見かけたことはあるが、お話をするのは初めてですね」

場違いな場所で会ったな、というのが第一印象だ。
礼拝堂ならともかく、交流会の場で会うことになろうとは。

「ヴァン=シルバーブレイドだ。……あぁ、だから戸惑っている。
教会が貴族や商人に資金援助を頼むことはあるが、君のいる所はそういうのとは無縁だと思っていた。
俺はここには実家の名代としてここに来ている。もっとも、誰もがそう受け取ってくれる訳ではないが」

一部の騎士階級や主教関係者は男に対し否定的な視線を向けている。不名誉な二つ名が独り歩きして、男に負の印象を投影する。
一方で、その上でなお名代として指名されたことが彼等を苛立たせている。目の前の女司祭はどうだろうか。
女性を立たせて自分は座っているのもまずかろうと、手で椅子に座るよう勧める。

ベルナデッタ > 席を勧められれば、異端審問官はお淑やかに、しかし遠慮なくそこに座る。
彼女の飲むグラスの中身は、恐らくヴァンが飲んでいたものと同じだろう。

「おや、そう思われますか?
ですが…主教の信徒の居る所に、我々と無縁の場所など無いのですよ」

そう言ってベルナデッタは遠くを見る。
その先には何人かの貴族と親し気に話す主教の高位司教の姿。
彼は主催者とも親しく、また清廉潔白な人格者として知られていた。

「要は護衛ですよ。私が隣にいれば、主教の人間が親しくするとまずい人間は向こうから離れていきますので」

つまりは、異教や異端、魔族と繋がりのある貴族。
貴重な人材が彼らに取り込まれるのを防ぐために、異端審問官は時折こうして目を光らせる。

「名代ですか…なるほど。ご実家と仲がよろしいようですね?」

それは明らかに、目の前の男とその父親の、以前の関係を知っている上での言葉だった。
ベルナデッタの見透かすような澄んだ青い瞳が、興味深げにヴァンを見る。

ヴァン > 「言ってみただけさ。道端で偶然会った訳じゃない」

秩序だった組織の行動には基本的に何らかの意図がある。
視線の先を辿ると、主教関係者の姿。あぁ、と頷いた。

「天敵にとっては抜き身の刃を持ったお付きがいるようなもの、か。便利だねぇ、紋章ってのは」

挙動不審になった相手は監視対象になるだろう。平静を装っていてもそれを見破るのが彼女の仕事だ。
男自身は魔族に対し無関心だ。人間やミレー族、他の亜人種と同じように扱う。
実家について言及されると微かに眉があがった。

「親父ももう歳だからな。素直にならないのが映えるのは、恋愛小説だけで十分だ。
じじいとおっさんの行き違いなど、見て面白いものではない」

肩をすくめ、冗談めかして答える。
ラインメタルへの帰省で実家と和解したのは副産物に過ぎない。主たる理由は知らない筈だし、鉄槌局の領分でもない。

ベルナデッタ > 「家族仲を修復できたのは幸いなことです。きっと、神々の思し召しがあったことでしょう。
…まぁ、主教としては貴方ほどの騎士が貴族側に寄るのは少々残念ですが」

冗談めかすヴァンに微笑み返して答える。
いつの間にか、ベルナデッタのグラスも空になっていた。

「貴方こそ、貴方の経歴を知れば震え上がる者も多いでしょう。
特に、あの頃の貴方を知った上で生き残っている者は」

ヴァンが所属していた特命部隊の名を、目の前の女は知っているようだった。
勿論、彼女自身の年齢では直接見た訳ではないだろう。
しかし、所属を考えれば知っていてもおかしくはないだろう。

「私としては、貴方のその腕を活かせる場所は、
他にいくらでもあると思うのですが…」

じいっと、青い瞳がヴァンを見る。