2023/01/20 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城/練兵場」にヴァンさんが現れました。
ヴァン > もう少しで夕方といえそうな、晴れた昼。

普段やる気のない騎士や兵士が多い練兵場は、一種異様な熱気に包まれていた。
その中心にいるのは銀髪の壮年男性。黒い木刀を持ち、にやにやと笑いながら周囲を見渡す。
少し遠くの長椅子には男が3人。顔は真っ赤だったり、青ざめていたり。

「……それで?次はいないか?16万だ」

時は少し遡る。

稽古をしている駆け出しの騎士に、戯れを装って三本先取の賭け試合を申し込んだ。掛け金は5千ゴルド。
平民なら慎ましく生きれば1か月は生活できる大金だが、騎士ならば1週間分程度の金額だ。
接戦の後、男がなんとか勝利した。不完全燃焼の騎士は掛け金を倍にして再戦を申し込む。
今度は軽くいなすと、ようやく男にカモられたと気付いたらしい。
駆け出し騎士は先輩騎士に泣きつき、掛け金は倍になり、接戦の後にまた再戦。先輩騎士は小隊長に……
小隊長は賢明だったようだ。自尊心など無用と、1回の敗北で退くことを選んだ。

「まぁ、これだけの蓄えがある者も少ないか。女なら金の代わりに一晩でも構わんぞ?」

普通の騎士ならば半年分の給金になる。特に若い騎士には魅力的に映るだろう。
とはいえ、小隊長を負かす程度には実力がある相手との戦いを天秤にかけると、尻込みする者が多い。
煽ることでプライドやら、正義感やら、とにかく戦う動機を引き出そうと周囲の騎士達に話す男だが、さて。

ヴァン > しばらく周囲を見回したが、賭けに乗ってくる者はいないようだった。

「ふーむ。ま、無理強いはしないさ。わけのわからん強さの相手に正面から戦わず様子を見るのも賢い行いだ」

木刀をくるくると回すと、騎士たちの輪から遠ざかる。誰も座っていない長椅子に腰掛け、腕を組んだ。
騎士達は遠巻きに男を眺めている。男を蔑む異名が集団の中からちら、と聞こえてくる。

「日が暮れるまでは挑戦者を募集する。三本先取だと実力差が出るから一本先取にするか」

掌を上にして、くいくいと招くように動かして挑発。
挑発に乗ってくるように場をヒートアップさせたつもりだったが、思った以上に彼等は冷静らしい。
リスクとリターンをしっかりと計算している。中には迷っているような者もいるが、結局は退くだろう。