2020/09/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」にタピオカさんが現れました。
タピオカ > 争いはどこでも起きるらしい。
大型の魔導機械を開発するにあたっても、王冠争いと同じように貴族お抱えの研究者同士が牽制しあってるのだとか。

冒険者ギルドに舞い込んだ依頼は、技術競争に巻き込まれたとある貴族の警護だった。
警護といっても、おおっぴらに物々しい護衛を雇うとかえって場を刺激してしまうらしい。

ということで、依頼主から支給されたメイド服を身に着けている。

「廊下よし、窓よし……っと。
怪しい気配は今のところ無いかな。
今のところ、僕はただの雇われメイドだね。あは」

昼下がりの王城、午睡にまどろむ時間。
初秋の日差しもうららかだ。
暗殺者や偵察の人影も見えない事を確認する。
愛用の曲刀はギルドに預けておいた。
得物は、腿に潜ませたナイフと体術のみ。

どちらにも自信はあるものの、何事も起きないのが自分にも依頼主にも一番だ。
小さく笑むと、護衛対象が居る部屋の前に立ち。
両手をおへその下で組み。
通りかかる通行人に軽く頭を垂れる、貞淑なメイドで居る。

ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」にマレクさんが現れました。
マレク > 血の旅団の蜂起は様々な人々に脅威と機会をもたらした。アスピダ攻めの為の魔導機械開発もその1つ。軍の開発局は現在、純粋な火力を叩きつける砲台型、真正面からの突撃で将兵を援護する戦車型の試作品開発を急いでおり、双方派閥を作って内輪揉めの真っ最中。

貧乏貴族の男もその一派、というか技術者のパトロンである有力貴族に取り込まれ、ある人物が保管しているという設計図を……まあ、何というか、こっそり一時お借りしてついでに写しも手に入れるべく、城内の通路を歩いていたのだが。

「やあ、ご苦労様です。日々のご精勤、頭が下が……タピオカ?」

これまた非常にやり辛い所に立つメイドを見つけ、男は笑顔を作る。駄賃でも握らせるか、面白い見世物があると言って誘い出すか、などと考えながら近づいていたその時、相手の正体に気付いた。間の抜けた声を上げる。

タピオカ > 冒険者ギルドでの依頼者の話を思い出す。
――近頃うちの設計図を狙う者が居るようだ。
君等にとってはただの幾何学模様と数字が書かれた紙切れだろうが、それは砦の塔を兵士ごと破壊できる、怪物の母胎なのだ――。

そんな話を思い出しながら、しゃんと背を伸ばすメイド姿は油断なく周囲を伺っている。
明らかにただ通りかかるだけの人物には挨拶と笑みを。
そしてその中に、靴音もかろやかな優雅な足音が交じるとそちらを見上げ。

「公主さま。こんにちは。おそれいり……。……マレク!?」

依頼を受けた時にいくつかメイドとしての挨拶レクチャーがあった。その通りに言葉を返そうとした矢先に不思議な瞳を持つ貴族の、見知った姿に気づいて声音が跳ねた。
以前踊り子として城に迎えてもらい、広間で踊りを披露しながらしばらく豪奢な生活をしばらく送ったきっかけになった相手だ。
驚いた声の後は、偶然の再会に喜ぶ顔つき。頬緩ませ。

マレク > 「これはこれは……何という偶然。お久しぶりですね。お会いできて嬉しいですよ」

軽く頭を下げ、微笑む。初めて彼女と出会ったのは確か、ダイラスの繁華街ハイブラゼールの競売会場だったはず。そこで踊りの技を見せられ、彼女なら王城で踊るに相応しいだろうと思い、紹介者となったのだった。

「お元気でしたか? 城でのお勤めに馴染めていれば良いのですが。今日は……それを着て、踊りを?」

メイド服を手振りで示し、小首を傾げる。そうであってくれ、と願った。当の貴族は勿論自分と保管する設計図が狙われていることを知っている。ゆえに護衛も雇っているだろう。そう予測してはいたが……

タピオカ > 「うん!……スイートルームでマレクと過ごしてたのはまだ夏のはじまりの頃だったから……。しばらくぶり、だね」

ワンピースの両裾を指で摘んで社交界の挨拶をすると、仕草も改めて踊り子のものとなる。こくんと嬉しそうに頷くと、彼との甘いひととき思い出すように目元を赤らめ。

「元気してるよ!ううん、今日は……」

ここで一度言葉を切った。自分は依頼主の警護中だ。
そのためにメイドに変装している。
当然誰に聞かれても、その依頼の話をしてはいけないだろう。
心と身体許した相手へ、どこまで正直でいるべきか。
わずかだけ、視線が反れる。

「……マレクのことは信じてるから、これは内緒ね。
僕ね、今日は護衛のお仕事してるんだ。
この部屋に居る人が、僕の依頼主」

再び瞳を同心円へと向け、人差し指を唇に当てて片目を瞑る。そして自分の今の立場を打ち明け。……そのことが、彼にとって事態を難しくする事とは知らぬままに。

マレク > 「……今日、は?」

言葉を切った相手を見つめ、返答を待つ。嫌な予感がした。男は女性の身体と心を奪いとることに悦びを覚えるゲス野郎なのだが、目の前の女性のように奪い取るどころか何もかも無防備に譲り渡してくるような相手には滅法弱い。共感能力の副作用である。

だから、彼女が不利益を被るようなことには手をつけたくなかった。

「ああ、護衛ですか。……ああ、この部屋……なるほど」

片目を閉じて秘密を打ち明けてくれた相手に対し、か細い声で相槌を打つ。どうしようか。ステンドグラスから差し込む陽光を見遣る。ああ、困った。

「それは……何というか……容易ならざるお務めですね。これはタピオカだからお話しするのですが、最近は城内も物騒でして。確たる証拠はないのですが、暗殺事件すら起きているのですよ」

言いながら彼女の隣へ立ち、怪訝な顔をして通り過ぎる他の貴族に愛想笑いを振り撒いた。

タピオカ > 「そう、護衛。……ほんとは、部屋の前に誰も立ち止まらせちゃいけないんだけど。……マレクは、特別だよ?」

研究機密に神経質にならざるおえない依頼人からのお達しを軽々しく舌の上に乗せるのは、それだけ相手を信用している証拠であった。何やら物憂げな視線を陽光透かすグラスの色へと向けるのを、不思議そうに見遣り。

「そっか。……だから依頼人も警戒してるんだね。
研究ばかりでちょっと気難しい人だったから、心配しすぎかと思ってたけど。気を引き締めなきゃ。
どこから刺客が来るかわからないもの」

もたらされた情報に納得顔になる。
自分や依頼人への危険がはっきりとしたものとなると、
どこか少し楽しげな様子で不敵に笑む。
剣を帯びる者として、戦の気配が近づくとワクワクするのだ。

ひとまず、他の貴族が通り過がると彼の横で淑やかにお辞儀をした。顔見知りと挨拶をしているだけだと言わんばかりに。余計な警戒心を抱かせないため。
一番、警戒しなくてはいけない人物が自分のすぐ横に居るとは思いもよらず。

マレク > 「私を信頼して下さっているのですね。嬉しく思いますよ、タピオカ」

無邪気とさえ言って良いだろう相手の物言いに、胸が痛む。心臓に錐でも捻じ込まれるかのようだ。小首を相手の方へ傾げ、微笑むその口の端がヒクつく。

「ところで、凄腕の暗殺者について聞いたことはありませんか?外で警備する者に全く気取られることなく、標的を仕留めるのです。寝込みか、何かの手段で無防備にさせ、その隙を突くのでしょうね」

笑みを消し、声を落とした男が続ける。

「ある不幸な人物は万全なる警備が敷かれる中で殺され、丸二日経って暗殺が発覚したのだとか。つまり護衛は2日間、死体が横たわる家を見張っていたのです。恐ろしいとは思われませんか?」

顔を近づけ、神妙な顔で話を締め括った後、ひとりで頷いて見せた。

タピオカ > 相手の声のトーンが下がると同時に、少しずつ褐色肌のメイドからも笑顔が消えていく。
話をしている内容は、護衛依頼で潜り込んでいる王城の廊下に響いて良いはずのものではない。渡されたメイド服の、元々の持ち主がつけていたらしき花の香水の香りが相手の鼻先くすぐるほど身を寄せ。

「そんな、夜風にしかできないような暗殺をする人の噂は何人か聞いたことがあるよ。でも、その丸2日護衛が気づかなかったっていうのは初めて聞いた。――マレク。僕不安になってきたから、今から一緒に部屋の中に来てくれない?依頼人が死体になってたりしたらきっと、その暗殺者も部屋の中に隠れてるかもしれない」

彼の話は妙に現実的に感じられた。
そういえば、先まで部屋の中で何やら研究資料をまとめたり机上で簡易的な実験をする物音を立てていたのに静かすぎる気がした。
念の為、と依頼人の部屋を改めようと背後の扉へ向き直り。
――設計図を狙う彼からすれば、ひとつのチャンスかもしれない。そんな提案浮かべ。

マレク > 近付かれ、香水と髪、そして肌の匂いが鼻孔をくすぐる。欲望が首をもたげ、それを誤魔化す為に相手に気付かれないよう深呼吸した。

「それは……名案です。ですが先程のお話によると、誰もこの部屋の前で立ち止まらせてはいけない筈。一緒に入ると、そのことでタピオカが非難されてしまうかもしれません。ですので……」

自分を欠片も疑っていない相手に笑いかけながら、男も疑問に思い始めていた。色々な人物の部屋に忍び込んだ経験からして、たとえ主が眠っていても、何かしらの音は聞こえるものだ。まして今は昼。無音というのは妙である。

「……ですのでまず、タピオカ1人で入ってはいかがでしょう?その後私が、偶然通りがかったかのように続きます。こうすれば、曲者を見つけることも追うこともやりやすくなると思われますが……?」

如何?と貴族の男がメイド姿の女性にお伺いを立てる。2人同時に入って揃ってびっくりするより、時間差を利用した方が良いという、ある意味で当たり前の話。

タピオカ > 「うん。そのほうが良いね。……じゃあ、護衛の僕が妙な物音を聞いて慌てて部屋の中に入って、依頼主の様子を確かめる……っていう体で先に入るね。扉は開けっ放しにするから、そんな不用心に不審がって偶然通りかかったような顔でマレク、入ってきて。
……行くよ」

彼のよくよく、心得た手際の良さを聞いて尊敬顔になる。
時間差なら不自然さも緩和されるはずだ。
こうして手はずを整え、一度相手に向き直って。部屋の扉を、彼にとって設計図という宝物庫の扉を開いた。

「クァンタム様……?クァンタム様……!
居ない……。
――って、……あは。向こうのパラソルの下でお昼寝してるみたい。風も冷たくなってきたし、あのままだと風引いちゃう。毛布をかけないと」

依頼人の名を呼びながら、広くも雑多なもので囲まれた部屋の中へ入っていく。貴族のくつろぐ部屋というよりも実験室だ。部屋の中央にある大きな机には試薬やフラスコ、数式書き殴られた大判の羊皮紙。そんな部屋主といえば、実験や思案に疲れたのかガラス戸の向こう、バルコニーに設えられたパラソルの下のロッキングチェアにてこっくりこっくりと船を漕いでいた。そのまま背もたれに沈む依頼人へ、手近な毛布を持って背を向けるメイド姿。

――後から入ってくる相手の視界には依頼人と護衛者のやりとりの一部始終と。机の端に無造作に置かれた1枚の設計図が見える。その場での複製は無理だが、彼が魔道具を精製し眼球に似た半生命の道具をこっそりと生み出せば設計図の仔細は動画としてコピー出来うるスキがある。