2020/09/05 のログ
■マレク > 具足が立てる硬い音を聞き、其方を振り返った。胸元と太股を晒した、装着者を守るつもりがなさそうな鎧を着た1人の女性が、此方に向かってきていた。
「ははあ、なるほど……」
顎に手をやり、呟く。あれが名高き、という悪名高き奉仕隊か、と呟いた。しかも銀髪を靡かせた、いかにも誠実そうな顔立ちには覚えがある。確か王族だった筈なのだが、一体何の陰謀に巻き込まれたのだか。
「これはこれは、アンジェリカ・アーベルハイド様。お待ち申しておりました」
更なる混乱を引き起こす手段として使えそうだ。そう考えた男は憂鬱そうに歩く彼女の前に立ち、胸に手を当て恭しく頭を垂れた。
■アンジェリカ・アーベルハイド > 「こんばんは。何か御用でしょうか」
具体的に用がある人間、というのはいないだろう。
ただ、彼女がなぶられること、犯されること、犯すことを望む人間は多い。
魔道具で録画されたものも出回っていくと聞いている。
彼もそういったものだろうかと思いながら、逆らうことはしないだろう。
「すいませんがお名前を伺っても?」
直接の面識はなかったと記憶している。そのため名前を聞くのだった。
■マレク > 「ああ、失礼をば。ラノエール家のマレクと申します。以後お見知りおきを」
微笑を保った男は名乗った後、相手の表情を窺う。なんともまあ、嫌悪感を通り越して虚無感さえ漂ってきそうだ。ノーシス教の組織というのは、恐らく聞いた通りの酷さなのだろう。
「……実は、アンジェリカ様の任務を補佐するよう頼まれたのです。今日、貴女と……その、会見をされる方々から」
犯すという言葉は使わなかった。相手も、いちいち訊ねはしないだろう。
「いわく……奉仕隊の任務は過酷を極め、アンジェリカ様の心労が溜まっているだろう、とのこと。そこで私に、アンジェリカ様の緊張をほぐすよう取り計らえと、まあ、このような次第です。さあ、こちらへ」
言い終えた後、先に立って廊下を歩きだした。
■アンジェリカ・アーベルハイド > 「ありがとうございます。マレク様」
どうせろくなことではないだろうと思うのだが、素直についていく。
パーティ会場で何人何十人もに犯されるよりはよほどましであろう。
綺麗なカテーシーを取ってお礼を言ってから、マレクに素直についていく。
「マレク様は私のことをどの程度ご存じで?」
と世間話を始めるかもしれない。
■マレク > 「いと尊き王族アーベルハイド家のご息女にして、身も心も信仰に捧げた慈悲深き姫君、と存じております」
応えた男は、廊下に並ぶドアの1つを開けて中へ入った。ベッドやテーブルなど最低限の家具、そして浴室が用意された殺風景な部屋である。
「また、奉仕隊に所属する女性を深く案じており、彼女達の救済を企図しておられる、との噂も聞きました。まさしく貴人の鑑と愚考します」
笑みを浮かべたまま言った男は、質素な椅子を手振りで示し、着席を促す。
■アンジェリカ・アーベルハイド > 「よくごぞんじでして。で、何がお望みで?」
素直にその質素な椅子に座る。警戒など何もしていない。
椅子や周囲に何か仕掛けがあれば、抵抗もできずにその仕掛けにはまるだろう。
美辞麗句を並べられると、すなわち実態も知っているだろうことは容易に想像がついた。
故に何が起きるかもだいたい予想が出来ている。
■マレク > 「貴女は奉仕隊の隊長であらせられる。その御立場を活用すれば、目的は遂げられるでしょう。ただ、その硬く強張ったご様子を改める必要があるとも考えますが」
切り付けるような問いかけには涼しい顔で応じる。その後、大きく息を吸い込んだ。
「そこで、如何でしょうか?あなたとシスターを苛む者達を欺くために、男を誑かす淫乱女の演技を学ぶ、というのは?」
■アンジェリカ・アーベルハイド > 「…… それが、神のお導きならば」
拒否はしない。正確には拒否する権利が彼女にはないのだ。
実際地位や権威を使えば、断ることも簡単だろう。
だがそれで待ち受けるのは、奉仕隊のシスターたちが売られる未来だけだ。赤子たちも売られかねない。それだけは防がねばならず、彼女は素直に相手の提案を受け入れた。
■マレク > 「神の?……あ、失礼」
思わず吹き出した後、非礼を詫びる。まさか魔族である自分が、神の導きという下りを聞かされようとは。
「結構。それではまず、貴女がどれだけ魅力的かお教え頂きましょう。何時ものように、雄を誘う姿になって頂けますか? 必要なら、ベッドもお使い下さい」
微笑みつつ、男は魔道具を呼び出した。宙に浮かぶ目玉が王族の娘を見下ろす。
■アンジェリカ・アーベルハイド > 「申し訳ございませんが、どのような格好になればいいかを教えていただけませんか?」
マレクにそう尋ねる。
裸がいいという相手も言えば、鎧で無残に犯されるのがいいという相手もいるので、何が誘う姿なのか、単純にわからないのだ。
■マレク > 「……何と仰いました? まさか何の助言も受けていないのですか?」
まばたきしつつ、逆に訊き返す。相手の好みは様々だろうが、それでも何か手順のようなものがあるのではないか、と。ただ相手の様子を見る限り、本当にないらしい。
「まあ何もないというなら仕方がない。着ているものを全て脱いで頂きましょう。そして、他のお訊ねもします。まず、これまでの経験人数は?」
魔道具に記録させつつ、目の前の相手に声を掛ける。
■アンジェリカ・アーベルハイド > 「はい、わかりました」
服を脱いでいく。丁寧に鎧を外し、レオタードの紐を解きながら脱いでいくその姿には、どことなく艶めかしさを感じるだろう。
手順のようなものは一切ない。基本的には何でもやられても受けるだけなため、相手の好み次第なのだ。
そうして裸体が露わになる。後ろに軽く手を組み、秘所も乳房もあらわになる。滑らかな肌や、蠱惑的な肢体も隠すことない。
「私の経験人数は、124人です」
単純に今までの出産経験と経験人数がイコールだから数えられるだけである。
■マレク > 「……それ程の経験をお持ちなのに。もしやとは思いましたが、ただされるがままなのですか? 何か相手を求めるようなことを仰ったり、ご自分の好み、などは……」
年齢不相応なほどの肉感的な熟れた身体を見つめ、溜息をついた。なんという美の浪費だろう。豊かな胸と尻を見下ろしつつ。
「乳房を使った奉仕や、肛門で性交された経験はありますか?」
事務的な相手に対し、此方もつい機械的な問いかけになる。その後、妙な興奮を覚えて背筋を軽く跳ねさせた。これまで彼女を犯してきた男達も、この無表情と無抵抗に劣情をかきたてられたのだろうか?
■アンジェリカ・アーベルハイド > 「はい、神の御心のまま、皆さまの望むようにご奉仕するのが私の使命ですから」
好みなどない。皆手ひどく、欲望のまま犯すのみである。それを受け止めるのが彼女の聖女たる仕事であった。
「もちろんございます。どれも慣れておりますので、ご希望ならばおこないますよ」
事務的な反応をするのは、実はこういった風に希望を聞かれたことが全くないのも理由の一つである。
彼女にとって奉仕とは、性交渉であり、性交渉はすべからくすべて凌辱であり、彼女の意思など全くなかったからである。
■マレク > 「なるほど……」
初めて出会う類の女性を前にした男は、呟くように相槌を打った。先程までに見せていた憂鬱そうな様子は最早ない。完全に、奉仕隊という役柄に入り込んだからか。
「……ええ、希望します。貴女の肛門で楽しませて下さい」
男はそう言って、後ろで手を組んで立つ彼女に歩み寄る。まず右手を伸ばして股間をまさぐり、指を濡らそうと。
■アンジェリカ・アーベルハイド > 「んっ♡ んんっ♡」
股間をまさぐられるとすぐに濡れていくだろう。触り心地は処女の肉だが、その反応は完全に娼婦のものだった。
再生するからだと心はすさまじく乖離していた。
また凌辱されるのだろうという諦観の元アンジェは犯され続ける。
もし違うことをするのならば、それは彼女にどのような影響を与えるかはまだわからない。
■マレク > 「敏感なのですね。では、力を抜いて下さい」
割れ目をなぞって、たっぷりと愛液を掬い取った男はその直ぐ後ろの穴に中指を押し当てる。窄まりにぬめりを塗りつけながら、相手の表情を窺おうと。
「これから時間をかけて、貴女には淫売の演技を覚えて頂きたいと思います。あたかも、自分から男を求めるかのような。ですから、また私に会いに来てほしいのです。よろしいですか?」
指を動かして後ろを弄びながら、相手の目を見て訊ねる。
■アンジェリカ・アーベルハイド > 「わかりました。ただ、私たちは支援が必要なのです」
何やら変な感じがする。目を通して、何かを刷り込まれるような、洗脳されるような……
悪意ある改変は聖紋がそれを防ぐが、知識を塗りこむようなものならば対象外として可能かもしれない。
力を抜いて、会いに来ることも同意するだろう。あくまで支援があればだが。
なお、彼女たちにする支援は、そう高いものではない。一般的な貴族はもとより、商人でも容易に支払えるだろう。
■マレク > 「勿論、その都度寄付はさせて頂きます。貴女がたは奉仕隊なのですからね。ですが覚えておいていただきたいのです」
後孔に濡れた指を沈めながら、男は奇妙な左目で彼女の瞳を覗き込んだ。
「貴女は、教会の手先で終わる御方ではない。他の修道女を救う為に、奉仕隊としての偽りの振舞いを身につけるのです。その為に私を利用する。利用する為に、私と会って、犯されるのです。よろしいですね? アンジェリカ様」
小さな穴の中でゆっくりと指を動かしながら名前を呼び、噛んで含めるように言い聞かせる。噂が正しければ、男は彼女の望みをそのまま口にしている筈だった。
■アンジェリカ・アーベルハイド > 「……わかりました」
ぼんやりとそう答える。彼の左目に見つめられるとそう答えてしまう。
なんとなくふわふわとしており、少し変な気分だ。
触られながら、少し気持ちよさそうにしている。
愛撫に体が反応しているのだろう。
優しい愛撫、という経験がなく若干ほだされ始めていた。
■マレク > 「有難うございます。アンジェリカ様」
相手が肯定すると、男は微笑む。掌で秘所を刺激しながら、折り曲げた指で尻の中をまさぐる。
「言葉も大事だと思います。アンジェリカ様は、性交の際は丁寧な言葉遣いを使われるのがお好みでしょうか?それとも、品の無い言葉で嬲られるのがお好きなのでしょうか。どちらの方が、演技しやすいでしょう? 例えば」
相手の腸内に入れた指で、膣の裏を擦りながら耳元に囁きかける。
「肛門とケツマンコ、どちらがお好きですか?」
■アンジェリカ・アーベルハイド > 「下品な言葉は、嫌いです……」
アンジェは別にマゾではないのだ。むしろ精神は少女的な、夢を見ているに近い。
ただ、それを残虐に踏みにじられてきただけなのだ。
それがまた男を煽るのだが、それに気づくことはないだろう。
だからこそ、彼女はどんな状況でも丁寧な対応をとるのだ。周りに流されまいとする彼女の維持であった。
彼女の望みはお姫様のように優しくされることなのだ、性交自体を否定しているわけではないが、とにかく優しく包んでほしいことが分かるだろう。愛の言葉なども望んでいるのかもしれない。
■マレク > 「なるほど。では、お尻とだけ呼んだ方が良さそうですね」
頷いた後、男は指を引き抜いた。そして顔を近づけ、相手の額にキスを落とす。
「ずっと立たせたままで申し訳ありませんでした。どうぞ、ベッドへ。私も脱がせて頂きますね」
そう言って笑いかけた後、ダブレットに手をかける。細く白い、無毛の身体を露わにしながら、相手に向かって手振りで誘う。
「貴女に出会えてよかったと思っています。今日はこのまま、私と一緒に居て頂けますか?」
微笑を保ったまま、小首を傾げて。
■アンジェリカ・アーベルハイド > 「ええ、よろこんで」
優しくキスをされて、少しうれしそうにそう答える。
初めて生の感情が見えたかもしれない。
そのまま一緒にベッドへと行くと、横たわる。
「さて、どうしましょうか?」
■マレク > 「どうしましょうね……何はなくとも、私はアンジェリカ様に悦んで頂きたいのですが」
ベッドに横たわった彼女の肩を抱き寄せた男は、頬にキスした後、鎖骨にも唇を触れさせる。そうしながら、また右手を大きなお尻の谷間へ滑り込ませて。
「少し、声が明るくなりましたね?」
抱き寄せ向き合ったまま、男は微笑む。そうしながらも右手は動いて、人差し指と薬指でむっちりとした尻肉を広げた。
■アンジェリカ・アーベルハイド > 「優しくしてくれればうれしいです」
優しく触られたことも、気持ちよくしてくれるのも初めてであり、少しほだされていた。その先に破滅が待ち受けようとも。
尻肉を広げ、尻穴をいじれば、気持ちよさそうに体を震わせる。
少し強く刺激すればすぐにアナル絶頂するだろう
■マレク > 「決して無理はしないつもりですから、痛かったり苦しかった時は、直ぐに仰ってください。よろしいですね?」
そう言った男は、相手の目を見つめながら尻穴に中指を差し入れる。経験があるという言葉通り、こなれているし敏感のようだ。震える身体を抱き締めながら、直腸をゆっくりと掻き混ぜる。
「綺麗ですよ、アンジェリカ」
絶頂間近の相手を見つめながら囁きかける。愛液で濡らした後ろの窄まりを優しく掘り返し、水音を立てさせた。
■アンジェリカ・アーベルハイド > 「んっ、いきますっ♡」
気持ちよさそうにアナルでイってしまう。
すぐにきゅうん、と締まる。
「ありがとうございます。マレクさんもかっこいいですよ」
快楽に染まった瞳でそう答えた。
■マレク > 後ろで達したばかりの相手をきつく抱き締めながら、指で腸内の熱い締め付けを堪能する。
「……そう、ですか?ありがとうございます」
容姿を褒められれば困惑気味に応えた後、微笑んで唇を重ねる。
「今日はアンジェリカ様を気持ち良くする日にしましょう。何度も何度も、お尻が閉じなくなるまでイく所を見てみたいです。……四つん這いになって頂けませんか?」
抱く腕を緩め、身体を離しながら要求する。無抵抗、無表情で犯されるだけだった相手を、少しずつ変えていこうとしていた。
■アンジェリカ・アーベルハイド > 唇を合わせてキスをする。キスも娼婦のように艶めかしく、舌を絡ませるだろう。
「わかりました」
四つん這いになり、どんなことも素直に受け止めるだろう。
そうして尻穴をいじめられ続け、何度も何度も絶頂してしまうだろう。
少し反応と感情が出てきたように、思うところもあるかもしれない。
■アンジェリカ・アーベルハイド > そうして二人は、凌辱とは違う、楽しい時間を過ごしただろう……
二人の関係がどうなるかは、また別の機会に
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■マレク > 「しかし驚きましたよ。秘伝の魔導書と言われた巻物が、読み解いてみれば東国の料理本だったのですからね。まあ少なくとも、海を渡った甲斐はあったわけですが」
城内に設けられた小さなサロンで男が話を締め括ると、同席者の貴族たちから笑い声が上がった。歴史に明るい好事家にして探検家という表の顔で王城を出入りする男は、今日も今日とて土産話を披露した後、ティーカップを摘み上げる。
「そこで、皆さん。如何でしょう? 来週にでも、東方風の魚料理を試してはみませんか」
そう誘った時、別の貴族が足早にサロンへやってきた。そして人々が彼の名前を呼ぶ前に、興奮した様子で口を開く。さる騎士団長が失脚し、騎士団も解散。要求していた軍事費が浮いたので、中止になっていた宴会が開ける、と。
その報せに高貴な生まれの人々が拍手する中、男は微笑と共に酒精入りの紅茶へ口を付けた。
■マレク > 失脚した人物は、その高潔さで知られていた。腐敗を憎み、賄賂を受け取らず、付け届けもせず、宴にも出ず、ひたすら軍務に励んで国の盾となっていた人物だった。
皆、満面の笑みを浮かべて失意に沈んでいるだろう彼を気の毒がり、下世話な男性貴族は婚約話が駄目になりそうな騎士団長の令嬢について、いささか不適切な感想を述べた。
「あるものですね。思わぬ災難というのが」
調子を合わせ、目を細める。実を言えば、男はその高潔な人物に会っていた。警告さえした。陰謀が迫っており、対抗措置を取らねば地位と名誉は勿論、指揮する団にまで被害が及ぶ、と。
しかし彼は聞き入れず、男が話し終えるより早く、剣に手をかけ屋敷から追い出した。その時の状況を思い出して溜息をつく。
■マレク > 彼が聞く耳を持たなかったのは、男を陰謀を巡らせる腐敗貴族の仲間と決めつけたからだ。実際にそうだったので、男の否定や釈明は意味を為さなかった。しかし結局のところ、それが彼の命取りとなったのだった。
遠交近攻、友を身近に置き敵はより近くにおく、というのは戦略の定石だが、「実直な軍人」や「高潔な騎士」という人種は、何故か政争にこの概念を適用しない。
いわく、王宮の低俗なお喋りに興じる暇はない。いわく、堕落者と和合する気はない。そういう態度が彼らを政治から遠ざけ、陰謀の回避を難しくする。結局、何一つ知らされぬ内に耳目を疑うような決定が王城で下され、マグ・メール王国は忠勇の士を1人、また1人と失うのである。
「惜しいことですね」
呟くように言う。任務を考えれば王国の弱体化は望ましいが、事はそう単純ではない。腐敗貴族と癒着した騎士団長は往々にして戦力を王都と最前線のタナール砦に集めがちであり、そうなると魔族としても攻め辛い。この現象が、200年の膠着状態の一因になっているのだ。男はそれを変えようとしていた。
「本当に、惜しいことですよ」
ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」に小藍さんが現れました。
■小藍 > 王城内のサロン
連日のように貴族たちが茶会を開くその場所では、今日も数人の貴族たちが会話に花を咲かせている。
そのこと自体は、シェンヤンでもそう変わるものではない。
政において情報は武器に他ならないのだから。
だから、こうして他国の侍女である少女も、この国のメイドに混じって給仕をしているわけで。
ただ聞こえてくる話の内容は、実のない与太話ばかり。
着慣れない王国風の女給服姿で、空いたカップに紅茶を注ぎ入れる。
そんなことを続けていると、何やら興奮した男がひとりサロンへと駆け込んでくる。
その男が告げた騎士団長とは面識こそなかったものの、他国の自分でも名前を知るくらいの人物だった。
往々にしてよくある話―――ではあるものの、情勢は変わるかもしれない。
騎士団がひとつ再編されるという情報を聞いた貴族たちが、どう反応するのか。
茶菓子をテーブルへと並べながら、さりげない仕草で彼らの顔色をそっと窺って。
■マレク > 長く密偵などやっていると、ある能力が身に付く。自分と同じか、似た立場の者を見分けられるようになるのだ。
「おやおや!これはまた!」
なので、とある女給がガラス細工の入った皿とその上の菓子を持ってきた時、男はわざと大声を上げた。貴族たちの顔色を窺おうとした彼女の前へ回り込み、胸に手を当て右足を後ろへずらし、頭を垂れた。
「驚きましたね。シェンヤン帝国の麗しき姫君が、メイドの真似など! とんだご無礼を致しました」
勿論だが、男の言っていることは最初から最後までデタラメだった。単に、給仕に紛れようとした相手を目立たせる為の行為だったのだから。それでも、周囲の目は一気に彼女へ集中する。中には男の嘘を真に受け、礼をしようとする者も。
■小藍 > テーブルの上に、無駄に豪華な装飾の入った皿を置いた瞬間に、先ほどまで話題を提供していた黒髪の男性が大きな声を上げる。
周囲の貴族たちが何事かとざわつく中で、自分に向かって丁寧な礼をしてくる。
あまつさえ、姫君などと素っ頓狂なことまで口走る有様で。
「――――私はしがない女給にございます。」
何を言い出すのかと、頭が真っ白になってしまった。
周囲の視線がこちらに向いてしまうのは仕方がない。
問題は、目立ってしまったこの状況をどう切り抜けるか。
しばしの黙考の後に、主の名を騙る不敬よりはと、相手の言葉を否定する方を選んだけれど。
はたしてそれはそれで、ただの女給が貴族の顔に泥を塗る行為に他ならない。
悪意さえあれば、その正誤などどうとでもなるというのが貴族社会。
どうしたものかと背筋に嫌な汗をかきながら、ただただ平伏するのみで。
■マレク > 「お戯れを!私達外国人の話に何かご興味を引かれたのですか? さあ、そのような所に立たれず、どうぞ。さあ!」
ついさっきまで自分が腰かけていた椅子を手振りで示すと、他の貴族たちも釣られて次々に席を立つ。最初の内は悪ふざけと思っていた者もいたが、もし本当に帝国の姫だった場合、下手をすると取り返しのつかない失点になるからだ。
「殿下のような高貴な御方との同席が叶い、光栄に存じます。ああ、私はラノエール家のマレクと申します。どうかマレクとお呼びを」
奇妙な左目を持つ男が畏まって名乗るも、その顔は笑っていた。そうこうしている内にも、他の貴族まで恭しい礼と共に名乗り始める。