2020/09/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」にマレクさんが現れました。
マレク > 「どうにも、困りましたね」

 緑のダブレットにホーズ、皮の短靴を身に着けた貴族風の優男が、王城の廊下で立ち尽くす貴婦人へ微笑んでみせる。

「先日の貴女は……実に積極的で、楽しい時を過ごしていらした。それを今日になって、全て無かったことにして欲しいというのは……いやはや、困ったものだ。先方は、貴女に再会するのを楽しみにしているのですよ?」

 眉を片方持ち上げた男は、そう言って相手の目を見つめた。貴婦人の哀願に涙が混じる。3日前に男が仲を取り持った不義密通。それを彼女の夫が嗅ぎつけ、問い詰めたのである。離縁の危機に陥った貴婦人はこの男、マレクに泣きつき、どうにか問題を収拾して欲しいと頼み込んだのである。

「いやいや、私の所為とはおかしな話。あれは全て、貴女のお望み通りにことを運んだのです。お忘れですか?何もかも、貴女が欲したのですよ?」

 そう言って男が見せたのは、眼球型の記録装置。貴婦人と一夜の相手の、決して他者に知られてはならない一部始終が収められた代物。

マレク > 「まあまあ、どうか冷静に。手段がないとは申しません。幾人かの仲介を経れば、全て有耶無耶に出来ます。ただ人を頼むというのは……高くつくのです。そして我が小家には余裕がなく……」

 遠回しに金を無心するその行為は、要するに強請集りと大差はない。貴婦人は溜息を付いた後、自分の中指から大粒の宝石を填めた指輪を抜き取ってマレクに握らせた。笑みを深めた優男は小さく頷く。

「確かに受け取りました。吉報をお待ち下さい」

 男が請け負うと、貴婦人は何度も念押しした後、逃げるように廊下を歩み去っていく。その後ろ姿を見送った後、鼻を鳴らした。彼女から手切れの仕事を請け負ったのはこれが初めてではない。ああいうのは何度でも誘惑に負け、何度でも過ちを犯すのである。だからこそ、良い臨時収入になるのだが。

「さて、と」

 自分もまた、薄暗い城の廊下をゆっくりと歩き出す。ここは上辺ばかり煌びやかな、陰謀渦巻く場所だ。醜聞と腐敗には事欠かない。つまり利益を得る機会が幾らでも転がっているということ。月光差し込む窓辺で一度足を止め、夜空に浮かぶ冷たい光を見上げた。

マレク > 「皆、気楽なものだ」

 月光を見上げながら呟く。外に魔族、内に血の旅団の問題を抱えていながら、国の舵を取るべき貴族達は我欲に憑かれ、互いの足を引っ張り合うことばかり考えている。
 実力をもって国難を排除するべき軍人らもその多くが腐敗し、そうでない者は腐敗を嫌って国政から身を置いている。結果、この国を改める者はいなくなった。
 忠勇なる騎士団長は名声を妬まれ勝ち目のない戦を強いられ、高名なる女将軍は王族達の性玩具に調教されたという。そう考えれば、明日滅んでもおかしくはないのだが。

「そういう国が相手だというのに、まったく……」

 独り、嘲笑する。放っておいても内側からずたずたにされそうな国を攻めている魔族もまた、近頃は勝利を掴めていない。北にある魔族の国では、今も変わらぬ権力闘争が行われているのだろう。高位の魔族は個々の能力を誇る余り、力を合わせるつもりがない。

「茶番だ。お互いに」

 同心円状の溝が刻まれた目を細め、吐き捨てた。

ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」にアンジェリカ・アーベルハイドさんが現れました。
アンジェリカ・アーベルハイド > きらびやかな王城は今日もまがまがしく光り輝いている。
廊下もまた、明かりが多く灯り、きらびやかであり、またところどころに深い闇が潜んでいる。

そんな王城に来るというのはそう珍しいことではないのだが、気が重かった。
だいたい彼女が呼ばれるのは、奉仕という名の凌辱劇を受けるときと決まっているからだ。
何度もてあそばれ、何度悲鳴を上げたか、もう既に分からなかった。
今日はさて、何の用事なのだろうかと思いながら、憂鬱に廊下を歩いている。
見たことのない男性が廊下にいるが、まあ、知らない人間の方が多いだろうアンジェには特に気にもしなかった。