2019/01/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城2/鍛錬場」にアマーリエさんが現れました。
アマーリエ > 今日の執務は多いように思えて――意外と少なかった。

過日の砦の防衛は後続の隊に引継ぎ、その後に本拠に戻っては損耗を計上し、兵に休息を命じる。
いつ、出撃が必要になるかどうか分かったものではない。
定期的な業務の一環として、竜騎士を国境警備と偵察のために飛ばしているが昨今の情勢を鑑みて一旦停止している。
出足が早く、かつ単独の戦力となり得る駒は手元にあるに越したことは無いからだ。
現状確保できている予算内での遣り繰り、資材の補充の手配、資金繰りの一環として学院に竜の生態の資料の提供、等々。
外回りが必要になることが今日は少なかったのが、どうやら幸いしたらしい。

「――ン、良かった。今は空いているわね」

だから、合間を見るように身体を動かす時間を確保する。
否、朝夕の鍛錬は欠かさない。欠かせない。しかし、冒険者だった頃に近いだけの時間は出来得る限り作っておきたい。
心中に溜まった諸々を吐き出すために、飲み食いやら娼婦を買うということをしない訳ではない。
かつて遇った使い手は日々の生活こそが鍛錬であるとも嘯いていたが、流石に書類仕事を鍛錬とするには我慢強さしか養えまい。

足を運ぶ先は近衛騎士団やら、王城に詰める兵士などが使う屋根のない広場だ。
実際、鍛錬場という程華々しい何かが揃っているわけではない。使われない時は即席の荷物置き場等にも供される場所でもある。
しかし、四方を囲う高い壁に沿って打ち込み用の木杭やら、片付けられていない木剣や木槍等が無造作に置かれているのが見える。
日中使っていた兵士等が片付け忘れたものだろうか? 歩み寄り、木剣を拾い上げては左右に振り、重さを確かめる。

ご案内:「王都マグメール 王城2/鍛錬場」に織機セラフィナさんが現れました。
織機セラフィナ >  
(警邏から帰ってきて、次の仕事まで少し時間が空いた。
 一応貴族の娘だから、と言うことなのか、割り振られる仕事は当り障りのないものばかりで。
 別に危ない目に遭いたい、と言うわけではないのだが、実戦経験も積まねば立派な騎士にはなれないだろうとも思う。
 稽古だけは空いた時間を見付けて欠かしてはいないのだが、稽古ばかりの道場剣術でこれから先やっていけるのだろうか。)

――あっ、どっ、失礼します!

(そうして訪れた鍛錬場に先客の姿を見付けた。
 それが騎士でしかも王国軍の師団長だということに気が付き、びしりと姿勢を正す。
 所属は違えど相手は師団長だ。
 新人騎士の自分が失礼な態度をとってはならない。
 直立不動で大きな声を出して挨拶。)

アマーリエ > 「……丁度良いか」

手にした木剣の造りとしては正直に言えば、粗雑の類だ。
使い込まれた結果というよりは元々、乱戦想定で使い潰す前提で束で買いこんでおいたのだろう。
折れれば、そのまま薪にでもしたのか。苦笑を滲ませたのも束の間、その剣の模造品を右手に提げながら一瞬目を閉じる。
左腰に佩いた愛剣は抜かない。使い馴染んだ重量には違いないが、今は違った重さ、手ごたえを欲する。
呼吸を整え――、否、整えるまでもない。意識を切り替えるまでもない。
平時から戦闘への力の運び方の切り替えをわざわざ行う程度では、戦場に即応できない。敵は待たない。

無造作に剣を振り上げる。だが、見るものが居るとすれば気づくだろうか。そこに僅かな力みはない。
目は前方の虚空を見据えながらも、意識は並行して内面を見詰める。
筋骨の動きと緊張、血管と神経を伝って脈動する魔力の流れ――、人体を一つの世界と定義するなら、如何に無駄なく循環させるかを思う。

「ッ!」

振るう。風が鳴る。
振るう。音が消える。

手を振れば大気をかき混ぜる。その延長となる剣を握ればまた然り。
だが、ただ振るだけではない。同時に肉体内で作用する力を御する。
石の如く地に足を付けたまま、摺り足のみで身体を動かすとなれば肩の線は揺れない。風を生み、返す刃でその風を断って打ち消して。
その手ごたえに柳眉を顰め、考えこもうとしかけた――刹那に。

「あら。 ……楽にしていいわよ。けど、見かけない顔ね。城の近衛騎士かしら?」

声が響く。木剣を下げ、身を向け遣れば直立不動の騎士らしい姿を見つけて、会釈と共に言葉を返そう。

織機セラフィナ >  
(実のところ、声をかけるまでに少し時間があった。
 平隊員だと勘違いしたわけではない。
 師団長の一人だ、見ればわかる。
 ただ木剣を振るだけのその姿が、あまりにも綺麗だったのだ。)

は、はい!
王国聖騎士団の織機セラフィナです!

(名乗る声が裏返る。
 自分のような新人が普段話す相手はせいぜい二つ三つ階級が上のものぐらいだ。
 いきなり師団長と相対して緊張するなと言う方が無理だと思う。
 休め、と言われたので足を開いて手を後ろで組む。)

アマーリエ > 「オリハタ――あ、あの家柄かしら」

くるりと右手に持つ木剣を回し、左手に鞘に納めた剣の如く持ち変えながら響く声に思考を回す。
貴族名鑑を頭の中に全部叩き込んでいるわけではないが、東国風の響きにはあれか、と思い至るものがある。
内心でぽんと手を叩きなながら、真面目にも休め、の姿勢を取る姿に目を瞬かせ、小さく笑い声を零す。

「そんなに緊張しなくていいわよ。師団長に遭ったら取って食われる、とか思ってたかしら?

 第十師団の長、アマーリエ・フェーベ・シュタウヘンベルクよ。
 いいから、同期の子と喋る位の心積もりで楽にしなさいな。公務でもない限り、疲れることは嫌いなのよ私。」

もしかしたら、噂程度は流れているかもしれない。女好きの男女だから喰われるぞ、という位は。
流れていてもどうということはないが、遠目からしても綺麗な顔立ちと食べ応えがありそうな胸元は気になる処である。
歩み寄りながら、名乗った上で、「ね?」と念押すように相手の近くで立ち止まり、顔を寄せて笑おう。

織機セラフィナ >  
あ、はい。
おそらくその家系であっているかと……。

(商人上がりの成金貴族。
 一部の貴族の間でされているそんな噂を彼女も聞いたことがあるかもしれない。
 そこのお転婆一人娘の話も。)

は、存じております。
――あ、いえ、師団長の方にそんな、――
えっと、あの、こんな感じで、勘弁してください……。

(いくら本人からそう言われたとはいっても、立場の違いというものがある。
 固辞しようと思ったのだが、近寄られて綺麗に笑われては断り切れない。
 最終的に押しに負けて、若干砕けたような口調になってしまった。
 噂のことは幸か不幸か、知らない。)

アマーリエ > 「はねっかえりなお転婆娘がいるとか聞いたけど、ね」

成金等、貴族社会では別段珍しいコトではない。
少なくとも窮して後がない貴族よりはずっと活きがよい、と言えるだろう。
人間窮すれば色々と見境が無くなる。仁義等も考えなくなるとなれば、いよいよ以て貴き身分にあるとは言い難い。
さて、かの家の評価の一つとして成金云々とお転婆な子息があるということを聞いた気がする。此の彼女だろうか? 

「そ、じゃぁしょうがないわね。それでいいわ。
 前任者の推挙で師団長になったと言っても、元々は在野で冒険者をしてた身よ。あんまり畏まらなくていいわ。

 ――で、こんな時間に此処に来るってことは、あなたも鍛錬かしら?」

鯱張った言いぐさになってくれなければ、いい。
傅かれる事もある血には違いないが、在野の冒険者気質が抜けきらないとなるとどうにもこそばゆい。
背筋を戻し、己より少し背丈の低い相手の目を見て笑い掛けながら、この場に至った用件を聞いてみよう。