2019/01/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 中庭」にジナイアさんが現れました。
■ジナイア > 夜の闇を天高く輝く真円に近い月が煌々と退けて、その威厳に他の星々さえも委縮してしまっているような夜―――
噴水を中心に、生垣で造った迷路になっている中庭。冬の事とて生垣全体で花が咲き乱れては居らず、花の香りなど聊かもしないが、所々、紅いもったりとした花をつけているものもある。
その噴水のある中心に、灯りを持って足を踏み入れる人影が一つ。
灯りを足元に置き、噴水のごく傍に立ちすくんでみて、空を仰ぐ。月自体は故郷のものとは変わり様がないはずだったが、向こうにはない寒さのせいなのか、一層白々しく、冷たい光であるように感じる。
「…面白いな……」
――わずかに開いた唇から漏れるものが、白くけぶって天に霞んて行く様子に、人影――白い装束の長身の女は、翠の双眸を細めた。
ご案内:「王都マグメール 王城 中庭」にキニスさんが現れました。
■キニス > 「………」
男は焦っていた。
一応長年冒険者をしているだけはあり、王族や貴族との関係も少なからずある彼は今日も今日とて明日を生きる為の賃金を稼ぐために王城へ来ていた。
要は依頼の達成報告と次の依頼の受注なのだが、その帰りに少し寄り道をしようとした時だった…
「ここはどこだーー!?」
迷路になっている生垣の中で、半ば泣きそうになりつつそう叫ぶ
興味本位で入るべきではない、と思ったが後の祭り。完璧に迷子状態のまま生垣の中を疾走する
ガサゴソ、と走り回ると、ようやく出口…だと思ったら中央の噴水へと出てきて、小さな段差にこける
うつ伏せに倒れて、いたたた、と顎をいじる男であった。
■ジナイア > 人の声が聞こえた…ような気がした。訝しげに其方の方へと視線を投げると、明らかに何か――大きさからして、ヒトだ――が生垣の間を疾走している。
自分のようなもの好きでなければ…不審者だろうか?腰に『飾り』で吊るしてある細剣に手を掛けて、物音の方へと足を踏み出した所―――
「…何だ、キミか……キニス、だったかな?」
噴水の広場に転がり出た(転び出た?)男の、見覚えのある白髪にそう、半ば残念そうな色を帯びた声を零す。
「どうしたんだ?こんな夜に…こんな所で」
■キニス > 「あ、アンタはいつぞやの…ジナイア、だったか?」
以前、ハテグ主戦場の近くにある雑木林で邂逅した女性
光る赤胴色の肌と翠の瞳、そして熟れた唇がセクシーな彼女の名前を呼ぶ
そそくさと立ち上がりつつ、何故だか残念そうにしている彼女に少しだけムッとする。
「道に迷ったんだよ。やめろよ、そんな駄目男を見るような視線と声をぶっ放すのはよ。…アンタこそ、お月見でもしてんのかい」
頭を抱えて、彼女の気持ちも分からなくはないがやめろと苦い顔をする
そういう相手は何をしているのか、純粋に気になり、彼女の横へやってきて問いかける
■ジナイア > 「いや…不審者だったら、遠慮せずに済ませられるかと思ったんだ」
『何を』遠慮したのかは言わず、気にするな、と手を振って熟れた唇を笑みに変える。そうして横に並んだ男から再び天へと視線を転じた。
「月見…のつもりではなかったんだがね。友人を訪ねた時は未だ夜の藍と夕の赤とが混ざり合う時間だったんだ。変わらぬうちにここへ足を運ぼうと思ってたんだが…遅くなってね」
視線を落とし、噴水の元へ置いていた灯りへと滑るように歩み寄って拾い上げ、その中の灯りを吹き消した。
辺りは一瞬暗くなったように感じるが、2度も瞬きをすれば十分視界が戻るくらいには、月明りが満ちている…
「まあ、結果的にはそうだな…月見をしている」
そう言って、緑の双眸を綻ばせて微笑んだ。そうして、キミは?と少し首を傾げる。黒髪がストールの合間から零れ落ちて、女の輪郭が少し闇に溶ける。
■キニス > 「い、一応、夜中の草迷路で叫んでる俺は不審者じゃあないのね…」
彼女の気持ちを察したのか、その『何か』は問わずに、安心したように胸を撫で下ろす。ま、大方予想はできるのだが、口に出すのは流石に野暮だろう
「王城に知り合いが居るんだな。やっぱり王国側の人間だったのか。…まぁ、確かに今日はいい月だしな。寒さを考えなければ最高の月見日和だ」
季節も季節。夜の肌寒さは少し厳しいものはあるけれど、それをかき消してくれるほどの月輪に自分も目を奪われる。
そして彼女の問いに対して答えようとそちらを見れば、月明かりと闇のグラデーションに溶けて、微笑んでいる彼女にドキッとしつつ
「や、まぁ!俺も知り合いを訪ねてきててな!うん!…あ、そうだ!あの黒い馬、しっかりと王国の騎士様に受け渡したぜ!」
顔を少し赤くしつつも、そのように答える。
■ジナイア > 「心底『王国側』かと問われると、答えには困るがね…」
溜息のように言葉を紡ぎ、視線を落として零れ落ちた黒髪をすくい上げて耳に掛ける。そうして『彼女』の消息を聞くと、弾かれたように翠の双眸を上げた。
「…ああ、そうか。…ありがとう」
騎士たちの元へ戻されたとあれば、また戦場へ駆り出されるのだろう…とはいえ戦場の馬として育てられた『彼女』にはそれ以外生きる場所はなく、あとは次の彼女の主人が『勇者』であることを祈るばかりだ。
安堵のような憂いのような光を翠の瞳に宿らせて再び視線を落とし、男には再びありがとう、と零した。
「……しかし、キミを知合いに持つものが、王宮などに居るものだな?」
そう言いながら上げた顔は、いつものしれっとした顔だ。
■キニス > 「ふむ…」
彼女の言葉を聞き、これ以上所属について問うのは無作法だと察する
でも、とりあえずは『彼女』の話を出したのは正解だったようだ
安心したように翠の瞳を向ける彼女にこちらも笑顔を向ける
「まー、長く生きてりゃ…というか、『生き死にを繰り返し』てればな。騎士様とかさまざまな癒着も出来るものよ」
しれっとした彼女にこちらも何の気もなく返す。
彼女にはもう既に伝えているだろう。呪いのことは。
死んでも生き返るなんて安寧のない呪いの影響か、いい知り合いも変な知り合いも多くできてしまった。
王宮の騎士や貴族、王族もその中の一つの要素である。
■ジナイア > そうだったな、と苦笑めいた笑みを零す。
「『癒着』、ね。凡そ『騎士様』とはそぐわない響きだが…まあ『いいように使われる』という体であれば、私も似たような存在だな…
そういえば、傷はすっかり良いのか?」
一つ瞬きをして、彼を伺うように首を傾げた。確か、かなり回復まで辛い様子ではなかったろうか…また黒髪が零れ落ちて、金の耳飾りが揺れる。
■キニス > 「あんまし、嫌味ったらしく言わないでやってくれよ。騎士様も生きるのに必死なんだ。…あぁ、すっかり元気だ。この通り!」
彼女の発言に庇ってるのかどうか分からない言葉を返せば
元気が戻ったと言った風に両手に力瘤を作る。
やはり歴戦の剣士だからだろうか、少し分厚いコートの上からでもその筋肉が伺える。
「ところで……いい耳飾りだな。純金製かい?」
首を傾げた拍子に揺れる金の耳飾りのことに触れる。
正直言って見惚れていたのは黒髪の方であったが、流石に黒髪の方を褒めたりするのは気持ち悪い。
故に無難に耳飾りの方を褒め、そこに話題を転換する。
まぁ、彼女のことだろうから髪に触れてもあまり気にはしなさそうではあるが……
■ジナイア > 「嫌味なつもりはないんだが…不甲斐なくてな」
珍しく、そう言って少しだけ不満そうに口を尖らせる。が、男の様子に直ぐに呆れたような、安堵したかのような笑みを浮かべた。
全く、あの時『殺してほしい』などとそそのかされ…危うく手に乗るところだった。武術は好んで嗜んでいるが、殺生が目的ではない。
そうして、耳飾りの事を訊かれればこれか、と其れに触れる。
「いや…近しいと思うが、もっと軽い『何か』だ…あまり価値は付くまいよ」
残念だったな、という音を声音に忍ばせて答える。彼の思惑など微塵も気付かず、また反対側へ首を傾げて
「……そんなに金に困っているのかね?…」
真剣な表情で工面の算段を考えている様子だ…
■キニス > 「そういうもんさね。人のふり見て我がふり直せ。お前はそうはなるなよ?」
大きく伸びをして、口をとんがらせた彼女を見て笑う。
死んでも生き返ること以外は普通の人間と同じだ
傷は寝れば治るし、長く生きてれば老いる。その結果死んだらまたこの年齢まで戻ってくるだけだが
「あ、いや!?別にその金銭面とかいやらしい意味で聞いたんじゃなくてな!?お前の髪が綺麗で、それに見惚れてたのを…あっ!」
彼女の言葉を聞けば、必死にそのように返す
まさかそんなに金にがめつい貧乏人に見えたのだろうか。必死に挽回してれば、つい彼女のことに対して思ってることをぶちまけてしまい、ハッとした表情へと。
■ジナイア > 男からの『小言』に、口元に拳を当てて堪えるような笑みを浮かべながら頷きを返す。
それから彼がぶちまけた『本音』らしきものに、唖然と眉間を緩めて……やがて緩く、肩を竦めて、口元を覆ってくすくすと笑い出した。
「はは…何だ、キミの髪とは正反対の色だからな……珍しいのかね?」
耳飾りとはまた、遠回しだな…と呟くように言ってから顔を上げれば、少し頬は紅潮して目も涙目だ。
「切って渡す事は出来ないが…触るくらいならば構わんよ…」
目の端を指で拭いながら、笑みの残る唇でそう、男に告げる。
■キニス > 顔が少し赤くなり、それを隠すように手で口元を覆う。
久しぶりにこんなに恥ずかしい想いをした、と彼女の笑顔を見ず空を見上げる。
「珍しいっていうか…綺麗だな、と思っただけだ」
そんなに泣くほど笑うなよ、と口を尖らせれば、彼女の次の言葉に驚く
いや、髪は女の命。剣士にとっての剣。貴族にとっての金だろ。
そんなに易々と触らせてくれるなんて……と思いつつ、またと無い機会。
とりあえず触らせていただくことにし、手を伸ばす
「サラサラで良い色だな……それに、良い匂いだ」
彼女の髪を傷つけないように、慎重に触りつつ、そう告げる
特別女性の髪が好きでたまらない訳では無いが、なかなかに良い髪質でビックリしており、放つその匂いについ言葉が漏れる。
■ジナイア > 「…長い年月生きてきて、女の髪に触れた事が無いという訳でもないだろう?」
特に手入れをしていることも無いがね…と言葉を継ぐものの、褒められて悪い気がする訳ではない。
実際、この男から時折感じる老練めいた言葉と、兎に角間の抜けた―良い意味で、と付けておこう―仕草がどうにも興味深くて堪らない。
「……触れた代償には、何を呉れるつもりだ?」
髪に触れるその手のひらの下から、翠の双眸で見上げてしれっと問いかけてみる…
■キニス > 「や、まぁ、そりゃそうだけど……最近はこういう機会もなかったからよ」
これで手入れしてないのか…とビックリする。
彼女が何を思っているのかは大体は理解出来る。さしずめ、自分が奇異な存在であり、それが面白いとでも感じているのだろう。
実際その認識は間違ってはいない。自分のような呪いを掛けられてる人なんてそうそう居ないだろう。
「な、何かやらんといかんのか………そうだな。俺のキスとかは?」
髪に触れつつ、見上げて問いかける彼女に困惑すれば
少し気障っぽいセリフを思いつき、勢いで言ってる。
ただ、これがなかなか恥ずかしい。自分で言っといてなんだが、普通に照れくさいし、ちょっと冷や汗が出てきて体の温度も上がった。
■ジナイア > す、と翠の双眸が細くなる。
男は気障な台詞を自分で言って、自分で照れている…ようだ。言い慣れて居ないのだろうが
「……発想が貧困だな」
減点だ、とくすりと笑いながら手を伸ばして男の唇に指で触れる。そうして髪に触れる男の手をくぐる様にしながら、置いていた灯りを拾い上げた。
「…寒さも厳しくなってくる。風邪もひかない訳ではないだろう?取り敢えず暖かい場所へ移動しようか…」
広場から迷路へと続く入口へ先立ち、彼を振り返る。そういう女の言葉が唇の端から白くけぶれば、また月明りに消えてゆく…
■キニス > 「ひ、貧困って言うなよ!」
割と頑張って引き出した言葉を一蹴され、少し腹が立つ。
怒鳴ろうとした瞬間に唇に指で触れられ、素直に下がれば、彼女の髪から手を離す。
「お、オイオイ待ってくれよ。俺も連れてってくれよ!」
寒さに耐えかねたのだろうか。
とりあえずここで一人になればまた道に迷うことは必須。
寒さも相まって流石にまずいと判断したのか、迷路へと入っていく彼女の後を追っていった。
■ジナイア > 「置いて行ったりはしないさ」
笑い含みの声が答える。それでも彼の半歩ほど先を行く速さで歩みを進めて、月光降り注ぐ中庭を後にする―――
ご案内:「王都マグメール 王城 中庭」からジナイアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 中庭」からキニスさんが去りました。