2019/01/12 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城第8師団執務室」にバルベリトさんが現れました。
■バルベリト > 式典と言う訳ではないが、この時期恒例の王族、或いは騎士団のパトロン巡り。
第8師団自体が小さな、かつ戦果ともほぼ無縁と言って良い師団の為にパトロンは貴重な存在だ。
失礼の無い様に――柄にも無いが髯も剃られ、正装に身を包んだ己。
「終わったぞチクショー!」
開口一番師団長らしからぬ声が出るのは窮屈な衣服。
慣れない挨拶や正式な礼。
或いは緊張感ではなく、相手の求めている報告を警護交じりに使っていた反動でもあるだろう。
マントを適当に肩当から外し、外套を引っ掛ける為の場所に適当に放り投げる――引っ掛からず地面に落ちて、唯でさえ雑然としている室内が更に乱れていた。
来客用のソファに腰を下ろすと、侍従だけでミシミシとソファが悲鳴を上げるが――壊れはしなかった。
「ここんとこ戦線も落ち着いてるし、なんのかんの平穏も取り戻しつつあるし。今がチャンスかもしれねぇなぁ。」
ソファに深く腰を下ろし、背凭れに背中を預けていたが。ぼそっと呟く一声。
懐から1枚のチラシを取り出して広げてみていた。
紙質は良く、窓から差し込む陽光から自らの視界を保護する役にも立つ。
そのチラシは――トゥルネソル商会のドラゴン急便の物だ。
「これ、魔族の国にでも運んでくれるのかね?
あ――――いや軍とは関係ないっつっても俺自身が師団長だから『個人の用向き』っつっても保証がねぇか……?」
ドラゴン急便の「どんな危険な場所でも」という一文から期待自体はある。
魔族の国にも運んでもらえるなら、そう。
――アイツの土地に足を運べるかもしれない。そういう思惑もあった。
■バルベリト > 壁に貼り付けられている地図と小隊単位の報告書。
物流の安全は確保され、今はあの謎のシェンヤンとの騒動も表向きは鎮静化されている。
大規模な戦火が発生しているわけでもなく、小隊単位で順に休暇を取らせることすら出来ていた。
人材不足、という点では何とかしなくてはならないが、そこは補充兵が来るのを待つしかないだろうとは思う。
出せる給料、補充できる物資、支給できる装備品。何れも他の師団が優先になっている事もあったが。
「ってか俺、商会にコネねぇな……ウチの領地内にコネ持ってるのがいるなら頼むか?」
王国軍なら、他貴族ならコネやパイプはあるかもしれないが。
個人的な依頼である事の裏付けにしたい思惑もある。
出来る限り軍や王国という線から切り離されたコネクションが望ましい。
望ましくとも、ないものはない。無い袖は振れないが、頼りない脳味噌を振り絞る様にして考える。
まず自分の身分を明かせば警戒されるだろうか?
警戒された場合、その時点で破談にならないか。
手土産、もしくは何かしらの交換条件を持ち込むべきか。
いやいやそんな事をしたら、俺が向こうの立場なら速攻逃げる。胡散臭い。
単独特攻して「すんません、男1匹魔族の国のこの都市に運んでください」なんつっても受け入れられるか。
軍と関係がない依頼でも、最悪トラブルに巻き込まれたら。
その配送してくれる龍に危害が及ばないかどうか。
「てか料金次第で俺の手持ち超える心配も必要か。――往復にしたらどのくらいに為るんだ……?」
貧乏貴族ともいえる悲哀が最後に顔を覗かせていた。