2018/10/02 のログ
レナーテ > 「ここからは一例として、魔法銃士隊に配属になるまでの訓練となります」

前置きと共に映像が進むと、再び阿鼻叫喚の訓練が幕を開ける。
新品の戦闘衣に身を包んだ少女達は、自分と似たような格好となっていた。
ブラウスとハイウェストスカート、ブーツと言ったところは皆同じだが、それぞれの色合いが好みによって異なり、首元もネクタイかリボンタイ、スクールリボンと千差万別。
足元もハイサイソックスかタイツのどちらかというところか。
耳を隠すためのベレー帽は大体同じだが、そんなことよりも既に映像の少女達の両腕が震えている。
腕に鉛のリストバンドを巻いた状態で、幾度も待機の構えから射撃体勢へ移り、即座に撃つ訓練を繰り返していく。
どんな状況下でも、直ぐに魔法弾を放つための即応性をつけ、命中精度を上げるための反復練習である。
そのために前腕部に掛かる負荷は高く、震えると狙いもぶれて当たらない。
しかし、実戦ではそれぐらいに腕が酷使されていても当てねば殺られるのだからと、連続しての命中回数がクリアされるまで、取り憑かれたように少女達は魔法銃を振り回す。
その次は銃剣術のトレーニングへと移り、長い小銃を小型の槍のように振り回す訓練だ。
突き、薙ぎ、銃床で至近距離を撃ちつけ、全体で突き飛ばしてから追い打ちに突く。
一連の動作を幾度も幾度も繰り返し、そして互いに武器をふるい合っての組み手。
硬い革を張り合わせて作った銃剣と、芯となる部分に木材を用いた、綿と革の模擬銃の組み合わせで殴り合うとはいえ、生傷は耐えない。
愛らしい少女達が、まるでゴミ捨て場の裏手に響く野良猫の叫び声が如く唸り、猛り、ぶつかり合う。
勝ち抜けで訓練が終了するが、最後まで残った敗者は道具の後片付けをというペナルティがまっている。
これだけヘトヘトにされた挙げ句、余計な労力をかけたくないと必死になる彼女達は、連れてこられた時のいたいけな奴隷の目などしていない。
良くも悪くも、戦う女豹へと変わり果てていた。

「基礎の魔法銃射撃、銃剣術を終えると、今度は山中の行軍、水上訓練、鳥達の連携を兼ねての空中からの降下訓練、乗馬と馬上射撃の訓練と多岐にわたります」

鎧と武器を与え、適当に訓練をして最前線へ放り込む兵士達は全くと行って異なる。
一人ひとりが高い身体能力、技量、精神的耐久性等を兼ね備えた、上等な戦闘要員へと変わっていくのだから。

『今日こそは後片付けから脱却だぁぁぁっ!!』
『がふっ!?』

魂の叫びを響かせる訓練生が、相手の少女に懇親の顔面ストレートパンチを叩き込む。
鈍い打突音が響き、鼻血が飛び散りながら上体が崩れる少女へ、体の捻転を込めたフルスイングの銃床を叩き込む。
どしゃっと派手に地面に叩きつけられた少女は、痛みに小さく痙攣を繰り返す中、今日の後片付け当番が決まった。
毎日が本気の命懸けといった訓練に、貴族もドン引きである。

『よ、よくこんな生傷の耐えない訓練に耐えるものだな……』
「……檻に閉じ込められて、性処理の道具にされて殺されるのと、衣食住を確約され、個室を与えられて生活できるのでは、大きく異なると思いますが」

時折映像に挟み込まれる食堂の映像は、傷だらけの少女達が炊き出しの如く配給される食事にがっついている。
まずは美味い飯を食わせること、美味い飯で胃袋を満たせる幸せは、奴隷として閉じ込められていた少女達にはこの上ない幸せだろう。
衣類も同じく、可愛らしい格好ながら機能美のある装備を着せれば、自身が女であることを再認識させられる。
貴族娘が家から放り出されて苦しむのは、意外とお洒落ができないことだという話があるが、それもその一つかもしれない。
風呂についても、大浴場が備えられており、共同利用ながらも清潔にいられるのも心を満たせるというところか。
最後に住処、年頃の少女達というのもあり、手狭にはなるが、ベッドと小さなテーブルセット、クローゼットを備えた小さな部屋を与えられる。
組合内での階級が上がれば、少し大きな部屋へ移れるが、そこもだいたい夜には仲間のたまり場となって騒がしくなるが。
一人にかけるコストが多大であることが伝わったところで、映像は消えていく。

「その為、一人減れば補充に時間がかかります。前回大量雇用の資金をいただきましたが、その面々もやっと訓練行程を完了した頃合いですね」

その分はティルヒア方面のメンバーで補充しているため、要望の戦力は維持している。
しかし、それでも国が抱える軍勢に比べれば微々たる存在なのは変わりない。
今宵の報告は、幾度も貴族達の肝を冷やしながら、終わりを迎えるであろう。

ご案内:「王都マグメール 王城 講堂」からレナーテさんが去りました。
ご案内:「王城 地下牢獄」にニアさんが現れました。
ニア > 冷たい空気が蔓延する王城の地下囚人禁固室
そこの最下層に位置する狭い個室に鎖に繋がれた盗賊が一人。
魔力も無効化された牢獄内に囚われ数日。
既に体力の限界はすぐそこまでと、来ていた。

久し振りに貧民地区の自宅に顔を出したところを待ち伏せしていた憲兵達に囚われ今の現状に至っているわけだが
この状況下では自力で抜け出すことは不可能だろう。
油断していたとは言え、この様とは…

彼女は小さく舌打ちを発し、牢獄内を見渡した。

ご案内:「王城 地下牢獄」に黒須さんが現れました。
黒須 > 「…参ったな…どこだここ?」

(師団関係の仕事により、護衛を頼まれ王城にやってくるも、初めて見た城内のためどこへ向かえばいいのかとわからず、結果的にこの牢獄へ来てしまった。
薄暗い中でも、敏感な鼻を使い視界の変わりに道を歩く。)

「…あ?なんだ?女…?」

(しばらく鼻を動かしていると、女の匂いを鍵つけて眉を上げる。
そのまま牢屋の前へ立ち、鉄格子を掴んで匂いを嗅ぐ)

「…誰かいんのか?」

(低い声で声をかけ、牢獄の中に居るニヤに話しかける)