2018/05/02 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城研究室」にバルベリトさんが現れました。
■バルベリト > 王城の中であろうと危険な箇所とされる所は覆い。
特に牢へとつながりやすい地下通路や、人の出入りが極端に少ない区画。
それとなく衛兵の目が光るだけではない。衛兵以外の――例えるなら暗殺者の目さえ幾つも向けられるような区画が王城の中にはある。
こつん、という足音は頑丈なレンガ造りの地下通路には驚く程好く反響する反面――この足音は外には漏れないように、煉瓦の一つ一つに防音。封音。更には魔法による遠視等への強烈なジャミングが施される仕掛けが幾つも施されている。
一種のブラックボックスとも呼べるような地価研究室につながる通路だ。
――白い衣装はどこも汚れている様には見えない。暗い地下。人通りが少なければ埃が舞うだろうに、埃一つ己の体には附着していない。
守衛代わりの――見張りなのだろう。自分の背後に音も無く忍び寄っていた何者かに、小さく合言葉を話す。
――自分の身体を弄られるのは不快感極まりないが、さりとて此処で抵抗してどうにかなる者ではない。
資料や映像記録の類を持ち出していないこと、そして強烈な魔力を全身に浴びせさせることで魔術による映像の録画や写真等を消滅させるような仕掛けを経て――ゆっくり、『表向きの』研究室へと戻ってくる。振り返れば、既にその入り口はただの壁となんら変わりない。
王城の装飾を破壊しようとしなければ――表に出せない、研究室。研究区画にはおいそれと立ち入ることも出来ないだろう。
「――やれやれ、肩が凝る。」
分厚い木材を丁寧に削り出して作られた大机の上に数冊の研究本を並べながらそう、ひとりごちていた。
包囲戦術、過去の戦場での記録等等――この部屋に、表の通路から入るときに他者から見咎められていた場合でも、戦術研究のためにずっとここにいた、という言い訳作りのようにも見えるか
■バルベリト > コロン、と机の上に転がされたのは、先ほどの身体検査を受けて尚持ち出しが認められた唯一の魔法道具だ。
己は攻撃する為の魔法等は兎に角疎い。
単騎で戦場を暴れる事が出来ても、それでは戦局を変える事は出来ない。人外人外した戦闘力の連中に比べれば、自分は師団長、代理や上席などに比べても一枚落ちるだろう。
それを補う為の魔法道具――と、いう名目で。
非常に血なまぐさい研究の成果の一つを預かっていた。――今は各戦場の戦線が落ち着いているのにも関わらずだ。
深紅の色。見るものが見ればルビーではない、宝石ではないと一目で看破出来よう。
感じられる者が感じ取るならば、そこには負の魔力が凝縮されている事がわかるだろう――。
さらに。鼻の効く者が居れば―――それは―――。
「問題は協力者選び、か。俺の能力と相性がいいなら――うーん、アイツなんだが。俺はアイツを知っているが、アイツが俺知ってるとは限らねぇしなぁ…」
机の上に無造作に転がされている紅玉を指先でつまみあげる。
ずしりと重みを感じるそれは、魔法を吸い込み、一度だけ増幅して開放させる事が出来ると言う物だ。
倍率は――闇市に転がっている似通った効果とは比べ物にならない。
例えば風の魔法でも、そよ風を起こす程度の魔法を詰め――開放すればそれはすべてをなぎ払う暴風となり、氷結魔法ならば付近一帯を凍土にすら一定期間変えてしまう。
真っ当な物ではないものの貸与が認められた以上、そこにあるのは真っ当ではない任務。――騎士ならば唾棄すべき仕事。
■バルベリト > 「魔法ギルドか、どこか当たるほうが無難か」
そもそもの任務の問題もある。第2師団はこの紅玉に魔法をつめるならば確かにうってつけだろう。精度が高く威力も凄まじい魔法を使える人間―――人間じゃないのも、まぁいるが。
そういう存在がゴロゴロとしている。が、無理に巻き込み第2師団の立場を悪くさせるのは、まぁ人としての良心こそ薄れているが――打算的な意味でしのびない。
ギルド経由の方がまだ情報封鎖の意味でもお互いにとってのプラスにはなるだろう。後は――だ。
机の上に広げられる1冊の書物。この王都周辺の地図を制度高く記された地図だ。
王都から見ての東部。周囲を岩山に囲まれ、更には王都の警戒網から僅かに外れ。
さらに周辺貴族領からもすっぽりと抜け落ちている空白地帯。
そこには自然と――身寄りをなくしたミレーや、仕事を失った人間。表には顔を出せない人間達が独自に作り上げた――うらぶれた集落の存在がある事が報告されている。
そして、ある有力な貴族はその集落にこそテロの主犯が匿われているのだと声高に主張し――その貴族からではないが。その傍流からさらにギルド伝いに他の貴族へ。他の貴族から王族を経由し、最終的に貧乏くじを弾かされた貴族が「これは命令である!」とばかりに一枚の命令書を己に手渡したのが数時間前。その命令書は受諾した後で破り、修復不可能にして『飲み込んだ』
■バルベリト > 5年も活動を続けているテロの主犯、いや頭領とでも呼ぶべきか?
そんな存在が総簡単に捕まえられるとも思えない。足跡さえ掴むのが困難ではないか。
――テロの恐ろしい所はこれだ。先ず、疑わしきを弱いところから。力ない場所から罰する。
中途半端に――手心を加えれば。そこで生存した生命は、心に負の思念を抱え込み、テロに手を貸す存在に「なりかねない」
善意は常に悪意を駆逐するとは限らず、悪政とてまた一つの政。
少なくとも政を行なう今の王により人類も奴隷にされているとはいえミレーも魔族の脅威から生存を続けているのだ。
これも一つのシステムとしてなら評価が出来る。――なら、今はこのシステムを。たとえ根が腐り果てていようが護るべきであり、それにより保護され続ける生命もあるだろう。
貴族や王族が居なければ、どういう世界になるのか、というのはかなり悲観的な想像をしている。
重量のある紅玉を指先で弾き――そして皮袋の中にしまいこんだ。
ゴルドや他の宝石と混ざっているなら、多少は感知されにくくもなるだろう。
「―――。―――。」
声にならない命令を出す。自分の騎士団ではない、誰かの貴族の子飼の暗殺者であり――今回の任務の間だけ、自分の忠実な部下となる相手に。
その集落を見張れと。集落の内に入る者は見逃し、外へと出る者は『選抜』せよと。
■バルベリト > 薄壁一枚向こうの暗殺者には自分の意思を伝える手段は持っている。
――そして一つの気配が消え、二つの気配が消え――室内と、壁の向こう側の区画と隔離された――どういう仕組みかは判らないが。接続する道や扉はある程度可変構造のようだ。
ゆっくりとした動きで地図や戦術書を仕舞い込んで行く。
棚には無数の書物があるが、念のため幾つかの本の所在を入れ替える。
読んでいた本や書物が何かを、自分が去った後の入室者に悟られぬようにする為の小細工だった。
そして表へと続く通路に向かい足を向ける。――忙しくなるだろうが、後味のよくない任務であれば。
それは一刻も早く終わらせるべき事でもあった。扉を開き、ランプの灯りを消し――陽の当たる王城へと身を翻し歩みを進めていった
ご案内:「王都マグメール 王城研究室」からバルベリトさんが去りました。