2018/04/16 のログ
■ヴェルム > 「さて、いろいろ準備しなきゃな」
一通りのチェックが終わればもうすっかり夜も遅い時間になっていた。
あとは拠点に戻って受け入れ準備を指示し、訓練などの予定を組むなどやるべきことはいろいろある。
とりあえず今夜は拠点に戻るのは遅いので、明日戻ることにしよう。
一晩過ごすのにも街に出て宿を取らなければならないのも、この師団の悲しいところではあった。
ご案内:「王都マグメール 王城2」からヴェルムさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城/回廊」にフェイレンさんが現れました。
■フェイレン > 闇に没した回廊の上、等間隔に配置された燭台が橙色の光を放っている。
磨き抜かれた大理石の床面を、青年は音を立てぬよう一歩一歩、慎重な足取りで進んでいた。
今日の任務はとある貴族の屋敷から指定された書類を盗み出すことだった。
家人のスケジュールを調べ上げ、不在の隙に潜り込み、ただの物盗りに見せかけた工作も難なく済んだが、
新しく庭に放たれた番犬の数については把握出来ておらず、脱出の際に想定外の反撃を受けてしまった。
その証拠に、肩から膝までを覆うマントの、左の下腕部には深い噛み痕が刻まれており、滲んだ鮮血が赤黒いシミを作っている。
慣れてしまったせいで痛みはほとんど感じないが、人目につけば言い訳は難しいだろう。
主人の息がかかった門番の助けで密かに城内へと入れてもらったものの、主人の私室まではまだ遠い。
どうせ人気の少ないルートだ。男は多少警戒を緩めると、足早に道を進んだ。
ご案内:「王都マグメール 王城/回廊」にベルナデットさんが現れました。
■ベルナデット > 青年が気を張っていたならその気配に気付けただろうか。
渡り廊下の窓から夜空を見上げていた少女は、ただ静かにそこに佇んでいた。
窓から降り注ぐ月光が暗闇の中に真っ白な少女の姿を浮かび上がらせる。
純白の髪がキラキラと輝き、そこはまるで絵本の一場面を切り抜いたかのような空気を醸し出していた。
「……?」
ふと、何かの気配を感じたのか、少女はゆっくりと渡り廊下の先へと空色の視線を向ける。
そして、そこにはいつ現れたのか黒の青年の姿があった。
その姿を見て少女は優しげな微笑みを浮かべると一言も発することなく洗練された優雅な所作で頭を下げた。
■フェイレン > 時間帯のせいもあり、男は常よりもいくらか油断していたのだろう。
注意怠ったまま曲がり角を折れると、降り注ぐ月明かりを一心に受け、白く輝く一画があった。
初め、本当に絵があるのだと思った。見たことのない純白の少女の肖像画だと。
そのあまりの眩しさに青年が息を呑み、吸い寄せられるように歩み寄るうち、
絵の中の少女は穏やかに微笑み、こちらに向けて一礼をしてみせた。
――しまった。
不用意に近づいた己に落ち度があるとはわかっているが、姿を見られた以上手を打たなければならない。
「……ここで何をしている」
青年は二、三歩後退り、優美な彼女とは反対に、険しい表情で相手を睨みつける。
拳を握り締めると左腕の傷口から血が溢れ、ぽたぽたと床へ滴り落ちた。
■ベルナデット > 青年が険しい顔で近寄って来ても少女の微笑みは消えず、まるで大事な客人を出迎えるかのように長い睫毛に飾られた空色の瞳を笑みの形に細めたまま青年を見つめ続ける。
「……。」
青年の問いかけには嬉しそうな笑顔を浮かべ、窓の外を指差す。
その先、夜空には零れ落ちんばかりの星屑が広がっていた。
それがどれほど素晴らしいか、その感動を伝えようと両手をドレスで強調された豊かな胸の前に組んで身体を左右に揺らして見せる。
「……っ!」
と、不意に驚いたように瞳を大きく見開き、片手を口元へと当てる。
その視線の先は青年の左腕。
ドレスの裾が乱れるのも気にせず慌てて駆け寄り、そっと小さな両手で青年の左手首を持ち上げ、心配そうに鮮血滴る腕を見つめる。
ただ、それだけで青年のゆっくりと和らいでいくことだろう。
■フェイレン > 唐突な問いかけに、少女は柔和な笑みを湛えたまま夜空を差して見せる。
豊満な胸元を揺らして声を上げずにはしゃぐ姿は、城の庭園にある白百合が月光に愛され、
人の姿を得たものだと言われても納得出来てしまいそうな無垢な美しさに満ちていた。
染みひとつない白の両手が、ためらいなく青年の穢れた左手を掬い上げる。
驚きのあまり一拍遅れてしまったが、青年は反射的にその細い手首を掴み上げ、彼女の身体ごと壁際へと押し付けた。
「……ッ、触るな!」
純白の髪と装束、まろやかな春の空を思わせる大きな瞳。
少女の特徴的な姿は、青年の脳裏にさる名前を呼び起こしていた。
――ロマルティアの聖女。
己の主人が常々、彼女と親交を――当然、下卑た意味合いでのものを――深めたいと言っていたのを思い出す。
「……お前が、あの聖女か」
傷口の痛みは薄いでいたが、それだけでは信じがたい。
男はもう一方の手で彼女の細い顎を掴み、強引に上向かせて瞳を覗き込む。
■ベルナデット > 「っ!」
乱暴に壁へと押し付けられ堪らず息が漏れる。
背中に感じる壁よりもなお冷たい視線に晒されながらも少女は苦しそうにしながらも可憐な唇を微笑みの形に青年の闇よりも暗い瞳をまっすぐに見つめる。
今にも折れそうな華奢な見た目に反して頑固なのだろう、両手は青年の手首を握ったまま離さず、気付けば痛みだけではなく鮮血も滴らなくなっていた。
「……。」
青年の血が止まったのを確認するとそっと右手を上げ細い人差し指を伸ばす。
それは闇夜に妖精のダンスのように舞い踊り、光る軌跡を残す。
――ベルナデット・クェルハ――
幼女のように無垢な笑顔が、聖女ではなく名前で呼んで欲しいと告げていた。
■フェイレン > 乱暴にその身を壁へ追いやられて尚、彼女は恐怖に顔を歪めることも、視線を逸らすこともしなかった。
この世のすべてを許すような優しい眼差しが、温もりを知らずに育った男にはひどく恐ろしい。
白魚のような指先が紡いだのはやはり、例の聖女として聞いていた名だったが、
それを知っても未だ、男は信じ切ることが出来なかった。
間近に見る娘からは、咽ぶほどに清廉と貞淑の香りが伝ってくる。
話しに聞くのがただの聖女であったなら、疑いもしなかったろう。だが、件の聖女は違う。
ありとあらゆる調教を施され、夜毎様々な男にその身を捧げる女だと言う。
男は観察するように彼女の瞳から薄い唇へ、豊かな胸へ、華奢な腰へ――
そして隠された秘所へと視線で撫で下ろし、顎から離した手でドレスの裾を掴み上げた。
「証を見せろ。お前が本当に……ただの聖女ではない証を」
瞳に訴えかけられ、一瞬その名を呼びかけたが出来なかった。
このまま主人の元へ連れて行けば、彼はもろ手を挙げて喜ぶだろう。
強引に理由をつけて彼女を自身の手の内に閉じ込め、散々味わい尽くした後は政敵を丸めこむのに利用する。
そうすれば二度と、夜空を見上げて微笑む彼女の姿は見られなくなる――。
それを惜しく思うのは何故なのか、今の青年にはわからなかった。
■ベルナデット > 青年の視線は鋭い。
さらにはこの時間に鮮血が滴るほどの傷を受けていたことから彼が普通ではないことが推測出来る。
しかし、少女には青年がまるで何かに怯えているように見えてしまった。
故に、少女は自らの名を描いた手をそっと青年の頬へと当て優しくなでる。
普通の娘ならば嫌悪感や恐怖を感じるであろう全身を這い回る視線にも竦む様子すら見せず、ただ静かにまるで母親が幼子にそうするかのように優しく優しく撫で続ける。
「…………。」
スカートの裾を持ち上げられ、自らの淫乱の証を立てろとの命令に、慈愛の表情を浮かべていた少女の頬に朱が走る。
青年が持ち上げた裾を両手で引き取り、ゆっくりとそれを自ら持ち上げていく。
名を呼んで貰えなかった悲しみと羞恥と期待に涼しげだった空色の瞳がまるで水面に小石を投げ込んだかのように揺れる。
白いサイハイソックス、扇情的なガーターベルト。
そして、雪のように白い肌……下腹部を包む白い下着。
曝け出した下着には不自然にリボンが飾られ、小指の先ほどの大きさの真珠がその中央に飾られている。
よく見ればそれは少女自身の肉の色だとわかるだろう。
恥ずかしい……少女の表情はそう訴えながらもそこはひくんと震えてしまう。