2018/01/13 のログ
ミリーディア > 「分かった、その辺りは君自身に任せておこう。
儂が研究を進める深夜帯でさえ無ければ、大体は此処に居る」

男の申し出は、少女としてはある意味助かる。
気が向いてくる程度なら良いのだが、頻繁に来られてはのんびり出来やしない。
少女としては、その程度の理由ぐらいでしかないのだが。

「面倒だから結果だけ伝えよう。
君の持つ最も扱うに適した潜在能力は、発動中の術への干渉だ。
とは言っても、こう伝えられただけではいまいち理解し難いだろう?
直接君の記憶と感覚に刻んでやるから、どちらかの手を出し給え」

男が選んだのは自身の特性、まずはそれに簡単に答える。
続く言葉を伝えながら手を差し出して。

ケラノス > 「まぁ、アンタの時間を頻繁に潰す気はねぇから安心しろ。俺だってそのくらいの配慮はするさ」

彼女が面倒臭がりなのはよく理解したので、苦笑気味にそう告げる。
一応、その辺りの空気を読むというか配慮はこの男も最低限は出来るのだ。

「…んー確かに、直ぐにはピンとこねぇな。しかし、やっぱ俺の潜在適性は独特の方向性ぽいな。……手?ほらよ」

取り合えず右手を彼女へと差し出してみようか。直接記憶と感覚に刻む、というのはそういう魔術なのか?と思いつつ。
…いや、何となく予想できた。身構える事は無いが頭の中を意図的にクリアにしておく。
多分、この方が刻まれた記憶と感覚をスムーズに己の中で処理し易いと判断した。

ミリーディア > 「それはありがたい、他の連中も君のようだと助かるんだがね」

そうは言っても、なかなかそれが出来ないのがこの施設での事。
立場上、どうしても誰かしら来るのは仕方ないのだが…そこは一応妥協している。

「では、こうして…触り甲斐が無いのは我慢してくれよ?」

差し出された男の手を取れば、その掌を胸元へと触れさせる。
目には見えないが、丁度自分の胸元に埋め込まれた魔法石の辺りだ。
その上に両手を添えるように置く、魔法石が重なり合うように。

「あくまでも、儂が与えるのは切っ掛けだ。
知識を得て、感覚で覚えても、それだけで使いこなせる代物なんて存在しないからね」

そこまで伝えてから、意識を重ねた魔法石へと集中する。
自身の持つ、この能力を持っていた存在から解析によって形成した能力。
その能力の記憶と感覚を男の手を伝い流れ込ませてゆく。

時間間隔的には数分と経っていない。
男の記憶の中にこの能力の記憶が刻まれ、基礎的な力の行使の感覚も与えられた。
それが終われば、触れていた手を離して。

「……こんなものか。
まだ意識しないと使えないし、そう大層な力も発揮出来ないだろう。
だが、君の努力次第で力も大きくなるし、思考と共に流れるように使えるようになる。
さっきも言った通り君次第だ、頑張り給え」

ケラノス > 「まぁ、俺も別に物分りが良い優等生って訳でもねぇんだが…ま、こういう配慮の方がアンタも面倒臭くならんだろ?」

そもそも、魔族が王国の施設に入り浸り、というのも問題はありありだ。
とはいえ、魔導具製作の職人達とは何か特に意気投合していたようなので、偶にまた彼女に頼むかもしれない。

「…まぁ、女の胸に貴賎無しってな。……って、コレは…。」

差し出した右手を取られ、その掌が彼女の胸元へと触れさせられる。
更に、そこに彼女の両手が添えられて…同時、何故か右目の赤い義眼がハッキリと虹色に光る。
正確には、義眼の中に内包されている”欠片”が。男は勿論その存在は知らない。

「…わぁってる。俺は補助がないとまともに魔術も使えねぇからな。知識や感覚を身に付けても自由自在とは思っちゃいねぇさ。
だからまぁ、俺なりに試行錯誤してどうにか使える様に模索するさ。そう、アンタがくれるのは切っ掛けだからな。
それを生かせるか殺しちまうかは俺次第っていうのはよく理解してるつもりだ」

そう答えれば、魔法石からこちらの手を伝い能力と記憶が伝達されていく。
慣れない感覚にやや顔を顰める。しかもどういう訳か右目が熱い。まるで共鳴しているようだ。

(……成る程、口で説明されるよりは話が早いな…しかしまた、独自の適性だなこれ)

一通り、記憶と感覚が伝えられれば彼女の手が離れる。同時に右目の義眼の輝きもフッと途絶えるだろう。

「…ああ、これはちょいと特殊な系統ぽいから苦労しそうだが、まぁ何とかやってみるさ」

術式への干渉、を根本とした魔術へ影響を与える魔術。やり方次第では独自の道を模索できそうだ。

「ともあれ、ありがとよミリーディア。…と、後は義眼の鑑定だな」

ミリーディア > 「勿論だとも、ここに来るのは大概頭の硬い優等生だからな、気苦労が絶えん」

実際に如何かと問われれば、少女は別に気にしていたりはしない。
一般人だろうと、魔族だろうと、どれ程に腐った存在だろうともだ。
ここはそういう場所としているのだ。

潜在能力の解放中、男の右目の変化には気付いてはいる。
だが、それは後で調べればある程度の事は分かるだろうと後回しに。
そうして力を使い終われば、まずは一つと深く息を吐く。

「そう、特殊だが、使い慣れたこの力はなかなかに面白いぞ?
それもまた、君自身でいずれこなせば良いだろう」

特殊な力程、使いこなせれば楽しめるものが多い。
男がそれに到った時にでも、話を聞くのも悪くはないだろうと、そう頭の片隅に考えていた。

「そうそう、それだ。儂としてはそれが本命なのだ。
生きたる存在以外での解析、楽しめそうに感じるのは久々なのだよ。
では、少し借して貰って良いかね?」

尤も、生きたる存在の解析は、今やれば拙い事となるだろう。
残念ながら、そちらは半ば諦めている。
そう伝えれば、先ほどと同じように手を差し出す。
今度は触れようとするのではなく、受け取る形となるのだが。

ケラノス > 「頭の固い優等生、ねぇ。まぁそういう連中が柔軟思考になったら、色々と話は早そうではあるがな」

まぁ、男も頭の固い優等生は正直苦手というか、気苦労が増えそうだから避けたがるが。
しかし、先ほどからちょくちょく右目の義眼が勝手に発動している。男も流石に気付いてはいるが原因が分からない。
…いや、ミリーディアのなんらかに反応しているのは流石におぼろげに察しているのだが。

「まぁ、確かにな。術を主体とする相手にゃある意味で相性が良いかもしれない。敵であれ味方であれ」

敵の術を減衰させ、味方の術を増幅させる。基本的な使い方はそんな所だろうか。
勿論、自分の使う術も増幅などが出来るのだろうがそれは今後あれこれ試行錯誤してみるとしよう。
至るのが何時になるやら、ではあるが彼女が一考する程度には面白い力ではあるようだ。

「……おぅ、明らかにちょいとテンション上がってるぞミリーディア。
まぁ、そんな訳で……ほれ。」

無造作に右目に手指を突っ込んでからスポッと義眼を抜き出す。一応、懐から乾いた布を取り出して軽く拭き取ってから手渡す。
見た目は、それこそ硝子細工か何かのような目を精巧に模した義眼にしか見えない。

だが、その赤い義眼を彼女の手のひらに乗せれば変化は明らかだ。
勝手に虹色に義眼が輝き――彼女なら感じ取れるだろうか。少女が持つ石と同じ…正確にはその欠片が中に入っているのを。
虹色に輝くのは、どうやらその欠片を核としてそれを覆う義眼部分の独特の反応らしい。

――そして、欠片には特殊な文字が浮かび上がっている。それは古代の或る文字でこう書かれている。
……《叡智(ヴァイスハイト)》…この義眼の製作者の名前だ。

ミリーディア > 「そうなんだろうがね、ある種、そうでないと儂の相手は務まらん…そんな感じだろう」

男の言う通りの柔軟思考であったならば、まず少女に簡単に流されてしまうだろう。
そう考えれば、相手をさせるには頭の固い…寧ろ、固過ぎる相手の方が良いかもしれないか。

さて、とりあえず、男から手にしていた魔導具を手渡される。
男の言う通り、無意識ではあるかもしれないがテンションは上がっているのだろう。
知識の追求は今だその意欲に衰えはない。
それが表に出てないのは、そういった物が、存在が、現れなかったからだ。
そう考えれば、今目の前にそんな物が出されたのだ、そうなるのは仕方の無い事と言うもので。

「少しばかり本格的に調べる。
足元に浮かぶ陣から、少し離れていた方が良いだろう」

男に対し行使した解析は、まだ深くまで調べきる程のものではなかった。
だが、これから行使する解析は奥深くまで彫り上げてゆくもの。
その魔導具の作成者、効果に、作った目的、今まで渡り歩いてきた者達の流れ。
過去から現在のあらゆるものを調べ上げる程のものだった。
男に一言伝えてから、少女は詠唱を唱え始める。
あの時、男を調べた時の瞳に映っていた魔法陣。
それが足元の床に描かれていき、その中央に位置した場所へと受け取った魔導具を置く。
更に詠唱が続けば魔法陣の輝きは増していき…そこから、魔導具の情報が流れ込み始めてくる。
終わるまでの時間の長さは、その記憶や記録の情報量次第だ。

ケラノス > 「と、なると精神的に相当な石頭じゃねぇとアンタの相手は無理かもしれんな」

もっとも、そこまでガチガチに頭が固いヤツはそんなに居るもんじゃない。
ただ思考や思想が凝り固まっているだけならばそこらに居るものではあるが。

義眼を渡せば、勝手に虹色に輝き始めるそれを怪訝そうに隻眼で眺めて。
しかし、彼女は意識してないのかもしれないが矢張りテンションが違う。
こう、例えるなら眠そうだったのが急に目が覚めたかのような。そんなイメージだ。

「ん、了解。そこまで本格的に調べるブツなのか…あぁ、いや。アンタの知識欲を考えたらそのぐらいはするわな」

苦笑と共に数歩下がって彼女の詠唱を見守る。彼女の瞳にあの時、浮かび上がったモノと同じ魔法陣が浮かぶ。
それも、瞳ではなく今度は彼女の足元だ。義眼はその魔法陣の中央に置かれている形だ。
そして、その魔法陣の影響かに虹色に輝く義眼。その周りに何やら文字とも幾何学模様とも言えるモノが無数に浮かび上がる。
そこから、魔法陣へと情報が流れ込んでいくだろうか。

名称――『万象映す森羅眼』
形態――義肢系・義眼型魔導具へ擬態。
製作者――■■種…個人名『叡智』
現適格者――『剣帝』ケラウノス・シュヴェールト、剣を司る魔の最後の一人
ランク――測定不能。使用者次第で変化。
性能―――事象の測定、演算、ないし特定干渉。及び視覚作用の全能力、全魔術の無効化
作成目的――世界の可視化、観測における未来の流れの調整、操作。
補足―――現適格者同調率96、機能開放率25。

簡潔であるが、それでいて必要な情報だけがそうして彼女へと伝えられていく。歴代の適格者の名前や経歴なども表示されるだろう。
ただ、同調率が一番高いのは今、離れて解析を見守っている男がダントツであるかもしれない。

ミリーディア > 魔導具の情報が流れ込み、それが終われば魔法陣は消えてゆく。
魔法陣が消えれば、その情報は自分自身へと流れ渡ってくる。
これでまた一つ、世に残る魔導具の知識を得る事が出来た。
自然と、口元に笑みが零れる。

「叡智…そうか、なるほど…最後に面白い物を残したものだ」

そう呟くと、床に置いた魔導具を再び手に取る。

「懐かしいものだ……さて、感傷に浸る前に、君が得るべき情報は教えておこう。
君に必要なのは、その性能が何たるか、それくらいで良いだろう。
それ以外は知ったところで、君には意味が無い…さぁ、受け取り給え」

手にした魔導具を男の手へと返す。
男がそれを手にすれば、伝えた言葉の通り、この魔導具の性能が頭に流れ込んでくるだろう。
先ほどの男自身の能力と同じだ、この伝えた能力を上手く使いこなせるかは男次第という事である。

ケラノス > 「ん?終わったのか。…って、何かすげぇ満足そうな笑み浮かべてるな…。」

まぁ、知識が真理がまた一つ増えたという事だろう。彼女の口ぶりや態度からして、魔導具方面では久々のようだが。
ともあれ、床に置かれたままだった義眼を彼女が手に取りこちらに渡すのを右手で受け取り。

「――っ…!……性能…って、オイ何だこりゃ。測定に観測に…干渉?何か干渉に縁でもあるのか俺は。
…まぁ、視覚に作用する魔術や異能の無効化は分かり易いがよ…。」

正直、魔術の適性はまだしもこちらはサッパリだ。つまりこの義眼の機能を開放して見れば何かある、という事だろうか。
彼女からの伝達が終われば、ジッと手の中の義眼を眺めつつコロコロと手で転がし…やがて一息。

「ま、考えすぎて煮詰まってもアレだしな。取り合えず使いこなせる自信はねぇがやってみるさ」

改めてミリーディアに礼を述べつつ、右目へと魔導具たる義眼を嵌め直す。
一瞬だけだが、義眼は虹色ではなく男の生身の左目と同じ金色の輝きを発する。
そう、魔導具でもよく分からない性能でも、この義眼は男の目という事に変わりは無いのだ。

ミリーディア > 「知識欲を満たす事こそが、元来儂の生き甲斐だ。
それを得られたならば、満足するのは当然だろう?」

然も当然の様に男へと答え、男の反応に何か考えるかの仕草。

「知ると知らぬのでは、やはり差は大きい。
まだ理解は出来なくとも知る事が出来たのだ、頭の片隅にでも残しておけば良いだろう。
すぐに理解が出来る程に簡単な能力ではない、気長にな?」

どんな術だろうと、それは使い始めた者にとっては大体当て嵌まるものだ。
消えた魔法陣を後に、椅子へと戻ろうとするが…ふと思い出したように足を又止めた。

「さて、これで儂の仕事は終わったが…この後はどうするかね?
すぐに戻って扱う訓練に励むも良し、暇潰しに儂に付き合うのも良しだ」

振り返り、男へと問うた。

ケラノス > 「…ああ、アンタは知識欲の権化みたいな感じがするし、まだ見ぬ新たな知識はいわばご馳走みたいなもんか」

少し言い方は乱暴だが、そこまで間違ってもいないとは思う男であり。

「…そうだな。視覚作用の攻撃の無効化は分かり易いんだがな…ただ、どうもこちらはオマケみてぇに思えるし。
…ったく、剣みたいに分かり易ければ話が早いんだが、まぁそうだな。どんな性能か分かっただけでも助かるぜ」

ともあれ、魔術適性と義眼の性能が分かったのは大きい。訓練と実践次第では色々と応用の幅も増えるだろう。
とはいえ、まずは使う所からだ。そんな事を考えていれば、彼女の言葉に我へと返りつつそちらに顔を戻し。

「そうだな。あんまし長居もアレだが…ま、いい機会だしアンタに付き合うとするぜ」

訓練は引き上げてから何時でも出来るのだ。ならちょっとこの少女と親睦を深めるのも悪くない。
少なくとも無駄な時間ではない。なので、引き上げるよりもうちょっと滞在する事を選ぶ。

ご案内:「王都マグメール 王城内研究所」からミリーディアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城内研究所」からケラノスさんが去りました。