2017/11/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城2」にサロメさんが現れました。
■サロメ >
王都マグメールに鎮座する王城
その回廊を早足に、肩をいからせて歩く騎士の姿が一つ
「………」
表情は強張り、眉を顰め
その溢れる怒りオーラに、普段ならば嫌味を投げかけてくるであろう貴族達も彼女をスルーする
まっすぐに歩き向かうは、第七師団の執務室である
■サロメ >
「(一体何を考えてる…あの男!!)」
グリーブの音も甲高く、足が早まる
ハテグへの遠征から自分が部隊を引き連れ帰還してみれば、
第七師団の状況がまるっと変わってしまっていたのだ
魔族の国へ打って出るための数々の作戦や下準備、それらの全てが凍結
それだけに留まらず、タナール砦の出兵すらも停止していた
騎士団としてまるで機能が麻痺してしまっているのだ
一部の隊が独断で動いているものの、総指揮が完全に止まってしまっていては、
師団の存続自体が危ぶまれている事態である
■サロメ >
元々、王国貴族に敵の多い第七師団である
隙あらば付け込もうとする連中ばかり…王城に来ることすら正直気が引ける
……今こそは女騎士の気迫に退けられ、貴族達は距離をとっていたが
早足で歩を進めながら、手元の書面に目を通す
師団の機能がほぼ麻痺しているにも関わらず、
ダイラスの商団から嗜好品などを買い込んでいる
承認しているのは師団長であるオーギュストに他ならない
「(──わからん。何か考えがあってのことなのか…?)」
しかしだからといって、これまで主導権をもち進めてきた、
魔族の国への本格侵攻のプランまで完全に捨て去ってしまうものか
腑に落ちない点ばかりである
■サロメ >
此処に来るまで得た情報は、散々である
悪いものだけでも、根拠のない憶測も含めれば数え切れない
一部には死亡説まで流れていたようだが、それはない
書類に調印しているのは紛れもない師団長本人であった
オーギュストの邸宅に訪れた際、小間使いからその確認は取れている
……もっとも屋敷には通してすらもらえなかったのだが
「(そうだ、その点もおかしい。おかしすぎる……)」
訪問客と会わないことを徹底させている
副将軍である自分ですらも、彼の邸宅の従者達は一切通すことがなかった
今は情報が足りなさすぎる、正しい情報が───
■サロメ >
そうこうしているうちに執務室へと辿り着く
入り口にはいつも通りに見張りに立つ兵士
そのいつも通りの風景に、僅かに安堵を憶える
「将軍はおられるか」
一声そうかけ、ドアへと近づく
兵士は何かを答えようとし、バツが悪そうにその視線を外す
不敬な態度ではある、しかしそれが何を意味しているのか
……推してわかってしまうというのも癪な話である
「入るぞ」
ドアを開け放ち、第七師団の執務室へと踏み入る
■サロメ >
この部屋へ入った時の記憶と言えば…
『遅ぇぞサロメ』だの何だのと、普段の自分のルーズさを差し置いて文句がまず一つ飛び、
続いて処理が面倒な、束になった書面をどさりと渡される
そうしておいて自分は娼館へなりなんなり、王都城下へ遊びに出歩き、
自分は机にかじりついて事務仕事を淡々とこなしてゆく
時には将軍の客人達を交え、真面目な話をしたりもするものの…大体はそんなものである
「……自身の邸宅になど、気紛れにしか帰らなかった男が……」
肩を落とし、溜息が漏れる
執務室には誰もいない
お決まりとなった、机の上の書類の束もなく、
ヤツが仕事をしながら飲んでいた酒の匂いすらもない
■サロメ >
「………」
机の脇へと帯剣していた剣を立てかけ、
いい加減クッションも悪くなった椅子へと腰掛ける
「…こんなに机がすっきりしていては、逆に落ち着かんというものだ」
置かれた羽ペンを手にとって眺めれば、
最後に使われたのは…それなりに前だろうことがわかる
「───……まずい、な。
どうする……? 原因はわからんが、このままでは……」
手を組み、顔を伏せる
あの将軍が大怪我をしたり、いなくなったことはある
その時は自分が…至らないながらも代理を努めなんとかこの団を維持しようと試みた
結果として余計迷惑をかけることになったこともあったが…
それでも最後はしっかりあの男が収まりをつけてい
■サロメ >
第七師団はその出自を問わない
自分な王国の正統騎士もいれば、傭兵崩れのような隊士も多くいる
故に統率はあの男、オーギュストでなければ取るのは難しい
そして突出した戦力と、大胆不敵かつ綿密な戦略戦術により魔物を駆逐する
決して縛られない、対魔族特化戦力としての在り方が第七師団の評価とされるところである
それがあるからこそ、荒くれ集団とも揶揄される
この大雑把な構成の師団の存在を王国が切り捨てられない理由となっているとも言える
当の師団長をはじめ、問題行動を多く起こす者がいても、必要とされるから在る、という言葉の通りの集団だった
「(……オーギュストが行方不明となった時でさえ、
その隙につけ入り師団を潰そうとする貴族どもが大勢いた…)」
嵐の前の静けさか、はたまた…最早手を下すまでもなく、空中分解することを見越しているのか
「…どの道、対魔族の特化戦力として動けなくなれば、首を切られるのは目に見えている」
■サロメ >
「オーギュストが動けなくとも、師団の在り方を示す必要がある、か」
引き出しを開け、書面を用意する
「現状魔族との交戦・防衛が主に発生するのはタナールをおいて他にない。
王城内部に入り込んだ魔族も大多数は見目がついた…こちらは一段落だ、となれば…」
やはり、要はタナールの砦
魔族が侵攻の動きを見せないのであれば、第七師団の力を示すにはあそこしかない
しかし、あの場所は……
「……過去に魔王の出現も幾度も確認されている。
更に、将軍率いる大部隊が壊滅、将軍自身も行方不明になる…という失態を過去に残している」
将軍の指示なく動かせる部隊だけでは…万が一の場合に悪戯に死人を増やすだけになりかねない
「タナールは分が悪い、か…。
で、あれば…あとは人との争いで武勲を示す他ないが……」
頭を悩ませる
結局の所、王国貴族に第七師団という存在の必要性を認めさせるには力を示す他ありはしない
しかし、状況がなかなかそれを許すものでもなく
「気が重い…先が思いやられるぞ」
師団長の代わりに自分が奮起せねばならない
それは重々承知しているものの……責任感がないわけではない
ただ、どうにも…勢いがつかないのだ
■サロメ >
「はあ……」
椅子の背へと体重を預ける
ぎしりと音がした、この椅子ももうだいぶくたびれている
「くそ…一体どうしたというんだ、あの男は…」
天井を仰ぎ、師団長を呪っておこう
あの血気盛んな男が突然邸宅に引きこもるなど、何があったかも想像がつかない
正直な話、彼さえ動ければ王国貴族を説得することなど容易いのだ
会議の場で怒鳴り散らし、気迫で圧倒する姿を幾度も見てきた
……自分に同じことが出来るか?絶対に無理である
■サロメ >
…しばし天井を仰いでいた
その間脳裏に浮かんだのは、これまでの数々の…将軍とのやりとり
そして騎士の家系に生まれ…この国の腐敗を嘆き
第七師団を志願し、荒波に揉まれ……副団長となり…
自分のこれまでには、往々にして"誰か"が道筋となって在った
魔族の国…キルフリートの城への侵攻
それを目指して準備をすすめる中では将軍は自分が落命した後のことを、零したことがあった
「………」
ギ…と椅子が音を鳴らす
「もとより、将軍不在の際は私が全権を委任されるのだ。
……ヤツが噂通り腑抜けてしまったのならば、私がやるしかない」
彼の真似事など出来るかどうかもわからない
しかし、毒を喰らわば皿まで───
立ち上がり、立てかけていた剣を帯剣する
「……一先ずは、貴族達に啖呵を切るところからはじめるか」
マントを翻し、部屋を後にする
再び、第七師団の執務室は無人となるのだった
ご案内:「王都マグメール 王城2」からサロメさんが去りました。