2017/05/30 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城2」にアーヴァインさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 王城2」にシャーロットさんが現れました。
■シャーロット > ディスペルが通らない
その結果を確認した魔術師は即座に干渉する存在がその場にいないことに気づく
──同時、シャーロットの従者達は一様に同じ行動を取る
ある者は剣を捨て、ある者は盾を、刃を捨て
その身を呈し、壁となり
9つの槍を、阻んだ
「───……!」
その状況を目撃した少女は目を見開き、一歩後ろへと下がる。そして───
「何をやっているの!!?」
「あれを殺せと言ったでしょう!!」
「私を優先して守れだなんて命令は下していないのよ!?」
シャーロットにはまだ切り札が在った
しかしそれは、従者達すらも知らないこと
───ドレスの裾から小さな蛇が顔を出し、そしてすぐに引っ込む───
故に、従者達は知る限りで"最善"の行動をとったのだった
■アーヴァイン > 槍が彼女へと集中した瞬間、それを護衛の9人が命を賭して阻んでいく。
一瞬の出来事ながら、それはあっけなく過ぎ去っていく。
倒れた彼らには槍による外傷はなく、ショック死したような状態へと陥るだろう。
彼らが倒れる音と共に、部下達は息を荒げながら一斉に彼女へ狙いを合わせる。
「……終わりだ、シャーロット・アン・エル・フェルザ。カルネテルの命の元……死んでもらおう」
雷の槍を再び掌に生み出すと、彼女へと振りかぶっていく。
分裂したそれは、先程のように無数の雷となって力を蓄えていくのを部下達は見守り、貴族達は恐怖に慄きながら見ているのだろう。
(「終わりだ、これでこの女とケリをつける。これで……」)
この女が生きているだけで、どれだけの人が地獄を味わっただろうか。
どれだけのミレー族が無意味に殺されただろうか。
その憎しみを全て叩きつけて終わらせてやる、その瞬間……自身の視野に黒い文字が流れ込む。
自分以外には見えない、自分の存在が黒く染まろうとするコードが紡がれようとしていた。
『……シャーロットと俺の決着だ、他の奴は一切関わるな』
その言葉の瞬間、周囲の空間が一瞬だけ光りに包まれた。
二人はそこにいるが、部下や貴族達、肉親のように深いつながりを持たぬモノには関われない理。
それがこの世界で当たり前のように、一時的に書き換えられれば、雷を収めていく。
「……改めて聞く、今でも一瞬の享楽にしか楽しめないのか?」
ただの兵士から名を得て、場所を得て、力を得て、人を失い、人為らざる何かに変わった。
変わらないといい続けた世界でも、一つぐらいは変化が作れたと思いながら、何時もと変わらぬ仏頂面になりながら彼女に問いかける。
■シャーロット >
「───はっ…」
少女は、その言葉を笑い捨てた
命を賭して自らの命を救った者のことなど歯牙にもかけず、
まるで撓んで歩みの邪魔となった絨毯を蹴均すに足蹴にし前へと歩みを進める
「……こんなところで例の話を飲むことになるとは思っていなかったわぁ…」
玉虫色の瞳に渦巻く泥のような闇
それはもう人間の眼だと言うのも憚れるほどに醜悪で、邪悪で、悪意に囚われている
少女、シャーロットが右腕をゆっくりと掲げ───
『──そこまで』
近しい者以外誰も入れない筈の、二人の周囲
そこに踏み込む、窶れた男の姿があった
その場にいた貴族達は、その男のあまりの風貌の変わりぶりに一目ではわからなかっただろう
しかし男の手にした、華美な意匠が凝らされた一本の杖
過去に王からその働きを認められ寄贈されたという誉れ高いその一品を手にする者は、この王国に一人しかいない
「──お父様!?」
それを眼にしたシャーロットは、その日もっとも動揺を顕にした声を発した
『この場を収めてもらえんかね。
フェルザ家を相手にそれだけ立ち回ったのだ…。
ルーアッハが目をかけているとはいえ、末恐ろしい男だな』
痩せ細った男は僅かに目を細め、そう言葉を紡ぐ
時折り湿った咳を漏らすその様子は、健常であるとは言い難かった
■アーヴァイン > 「……」
彼らも運命が違っていれば、輝かしい栄光の果てに終りを迎えただろう。
それがまるで炉端の石の様に蹴飛ばされる姿は、あまりにも哀れだ。
それでもまだ抗う、そういうのであればと……義父が望むとおりに、切り離す他ない。
口を開き、符号を紡ごうとした瞬間、お互いにしか認識できぬ世界に別の声が入り込めば、そちらへと視線だけを向けた。
(「まだ正確にコントロールできていないのが仇になったな」)
存在を指し示す符号を絞りきれなかったがゆえに、彼女と血の親しいものは、符号を通り抜けることが出来る。
その結果、現れた彼女の父を見やれば、申し出にすっと彼女を指差した。
「義父が殺れといった以上は殺らねば俺の勝ちが失われる、それは分かると思うが…。この場を収める対価がなければ、話にならない。牙を向いたなら、有無を言わさず殺せと言われている」
従うか抗うか、その結果刃を晒したことで、殺害リストに載せられたのだと語りながら、改めて彼女の方を見やる。
まだ何か隠し持っている様子があるのもあり、気は抜けず、青色に変わった瞳が睨みつけるように彼女を見据えた。
「義父は国の頭がどうであれ、国を維持することが望みだ。貴方の御息女が、その意志に従っているとでも?」
国を維持するための財力は大切だが、それを生み出す民を食い潰すのは愚の骨頂だ。
彼の栄光と、現状の収益から悪事の限りは目を瞑られているも、腐らせるとみたなら、義父は赦さない。
今こうして相対するのが、まさにその理由だろう。
■シャーロット >
「っ──無礼な口を…!!」
『黙りなさいシャーロット』
アーヴァインの言葉に激昂するシャーロットを諌め、
何度か咳き込みながら、男は二人へと歩み寄る
「君はルーアッハに随分と義理立てをしているようだね…。
国を維持することが望み…それは良かろう。国がなければ人で在れぬ者も多い。
──しかしルーアッハの望みでしかない」
わかるね。と、男は痩せた肩を竦める
「王位の継承から遠ざかった彼の言葉は、例え王族と言えど我々フェルザ家への強制力は持たない。
無論、彼の考えに賛同しない王族も多くいる。…彼の影響力が大きいことに変わりはないがね。
一枚岩でないその上で、全てを御することは出来んよ。
長らく王国の財源を支えてきた我がフェルザ家とて同じこと、ではあるがね…。
我々はルーアッハとは彼の性質上繋がりはないが、それ以外の王族とは未だ懇意にさせてもらっている。
──理解できるなら、これ以上は踏み込まぬことだ。…こちらとしてもルーアッハと関わり合いになどなりたくはない。
フェルザ家から君達の組織への干渉をやめさせよう、……君に与えられる対価など、その程度のものだよ」
男が話を続ける間、
少女、シャーロットは憎悪の炎が灯るような眼を、実父へと向け続けた
要するに、自分に折れろと言っているのだ
『それで足りぬと言うのなら一つ鉱脈をくれてやろう。
君の組織が根城にしている九頭竜山脈のそれなりに近くだ。
悪い話でもないと思うがね……』
■アーヴァイン > 普段ならもう少し丁寧な口調でも語れただろう。
だが、今は体に傷を負った祟り神の継ぎ手なのだ。
神がそうそう頭を垂れていいものではないと、言い聞かされている。
激昂する彼女を見やるも、咳き込む彼女の父の様子が気になればそちらへと視線が戻っていき、ある意味蚊帳の外のような扱いか。
「義理というよりは、利害一致の関係だ。俺が動き回ると、義父としても望ましいというところだ」
国を維持し、金を巡らせ、人を活かし、国を栄えさせる。
国とはそのうえで成り立ち、頭など、時代に寄って変わる飾り物というのが彼の考えだ。
続けた言葉には、一理あると小さく溜息を零す。
義父は王位を争わぬ代わり、自分に関わるなと王族に申し伝えたのだ。
義父が仕事をすれば、潤った国が手に入る。
だからこそ、こうして彼女の生死が関わるまで誰も口を出さないのも、また事実だろう。
「とはいえ、此方は弟の妻を手篭めにされているのもある。互いに干渉しないで、義父も納得しなければ、弟はブチ切れて何をするかわかったものじゃない」
もし今宵のことを知ったら、弟はもう我慢の限界を通り越すだろう。
彼女を自分が殺す、妻を犯した部下は八つ裂きにして地獄に引きずり落とす。
一族郎党、命に変えても皆殺しにすると復讐の悪鬼と変貌するだろう。
何せ……魔族を食らって、同等の力を得てしまった狂者なのだから。
彼女の怒りが、ひしひしと伝わる中、提案の言葉に軽く肩をすくめた。
「分かった、だがこうしていただきたい。決闘は終戦、度重なる義父への反故は、その鉱脈を以って償ったと。そうすればお互いに面子は保てると思うが、いかがだろうか?」
先程よりは丁寧になった口調は、素の自身を晒したということだろう。
苦笑いを薄っすらと浮かべながら、改めて提案をした後、ちらりとシャーロットを見やり、彼へと視線を戻す。
「御息女が納得するかは分からないが……」
■シャーロット >
『ふむ、あの男の代行で動いているのならば愛憎程度で激昂する身内は御し給え。
それが出来ぬようでルーアッハの養子は務めるのは骨が折れるぞ。──しかし自ら動かないとはあの男も年かね』
痩身の男はくるん、と綺羅びやかな杖をまわして床を叩く
『決闘などというものはフェルザ家には似合わぬ舞台なのだがね。
出来れば最初からなかったことにしてもらいたいものだが、流石に虫が良すぎるだろうな。
──立場上ルーアッハへの思想への反故など今にはじまったことでもないのだがね。
まぁそれであの男が納得するかはわからないが、納得しないようであればアドルフの首を取りに来いとでも伝えてくれ給え。
痩せ細り枯れた首などいらんと笑うだろうが』
──初めから交渉材料に使うつもりだっただろう
懐から出した書面には九頭竜山脈麓の鉱脈の所有権利を示す旨の文言が記されている
「……………」
シャーロットは、ただただ黙ってその様子を見ていた
父であるアドルフの背を見るその眼は親を見る眼…ですらなく、もはや人を見る眼ですらもない
『あれも思慮浅いとはいえ、私の代以上に王都の財源を潤してきた娘だよ。
…やり方は君達の流儀にはまったくそぐわないだろうが、フェルザ家の担う役割を見ればこそ結果がそこにあれば良い。
フェルザ家が絶えればどうなるかというのも今ならばすぐに結果は出るよ。
…ルーアッハもそのあたりはわかっている筈なのだがね、こうなることを見越していたとしても彼ならばあり得るのが腹立たしい。
───シャーロット』
再びくるんと杖をまわして床を叩く
「……はいお父様」
『ちゃんと聞いていたね?フェルザ家に私怨は必要ない。
銀行や金山を管理し、請け負った徴税監査を遂行する。
仕事に私情を挟まないことだよ。──それさえ滞りなく遂行していればプライベートの遊びに文句を言うものは王族とて居はしないのだからね』
「………」
男…アドルフは再びアーヴァインを振り返り、小さく一礼しその背を向け、部屋の入り口へと向けて歩いていった
■アーヴァイン > 「あれは父似で沸点が低い、これでも何度諌めたか分からないぐらいに。そんなところと察していただけるならありがたい」
決闘と言わぬなら、殺し合いとも果し合いともなるが、それでは一層血なまぐさい。
名誉をかけた決闘程度なら、話のネタには出来るだろうが、まさかここまでの争いが起きるとは誰とて思わなかっただろう。
そう思えば、準備のいい彼女の父の手際に、苦笑いも溢れる。
「此方と争ったのは既に知られている、こちらの威厳が落ちなければそれ以上はいらない。俺も貴方の首は取りたくない」
書類を受け取りつつ、小さく頷けば、背中に感じる視線は更に暗く濁っていた。
彼女は一体、どれだけ人の情を受けず育ったのか…そう思えるほどで。
しかし、彼の言葉に彼女が何も言い返さないのは、父と娘の関係ぐらいはあったのだと見える。
歪で、不可思議な領域、そう思いながらも、言葉に耳を傾け、二人を見やりながら書類をしまう。
「全ての可能性を考えて動く人…とはいえれているが、何処まで呼んでいたかは、俺にもわかりかねる」
アドルフの礼にこちらも頭を下げて見送れば、彼女の方へと振り返る。
まだ憎しみは残っているのだろうか、しかし、これは決闘であったことにする必要が残っている。
憐れむようにも見える視線を向けた後、すっと躯になった彼女の部下達へと近付いていき、片膝を付いた。
■シャーロット >
父、アドルフ・ゼン・ディル・フェルザはそのまま部屋を後にする
アーヴァインが自分との約束を即座に破り捨てるような男ではないと見たからか──
……廊下からは遠ざかる足音と、何度か咳き込む声が聞こえ…やがてそれらも聞こえなくなり、静寂が訪れる
「───…お父様…どうせ、どうせ此処へ来るなら、
フェルザ家の精鋭を全て集結させて、こんなやつら、蹂躙してしまえばよかったのに…」
ドレスの裾をぎゅうっと強く握ったまま、顔を伏せてぶつぶつと声を漏らす
自分の部下へと歩み寄るアーヴァインのことすら、気に留めない様子で
ただ小声で、何かを口の端から零し続けていた
■アーヴァイン > 「……君の父親は聡明だった、ただ権力や面子といっただけの話ではないと思う。薄っすらとだが…俺が何をしたか、気付いているかもしれない」
彼が自分を信頼するなら、自分もその期待に答えるとしよう。
そうすることで互いに害がないのであれば尚更だ。
未だに自分と争う気概を失わぬ彼女の前で、彼は死に絶えた精鋭たちを一瞥していくと、瞳を閉ざす。
口ずさみ始めたのは、この男が知りもしないはずの精鋭たちのフルネームだ。
スラスラと、9人の名前を紡ぐと、掌に金色の糸が生まれていく。
『戻れ、君たちの居場所は、君たちの体だ。寿命を全うして朽ちるといい』
その一言と同時に、破壊された体の部分は霧のように傷が消えて治っていき、死した筈の彼らが蘇るだろう。
同時に、彼女のアクセサリーで犠牲になっていた貴族も同様に、わけも分からぬまま意識を取り戻し、血の味に驚くかもしれないが。
蘇生を終えれば立ち上がり、小声で呟く彼女の方へと歩み寄り、その姿を見下ろした。
「もう終わりだ。君は今まで通り仕事をすればいい、こちらの領域に踏み込まない限りは何も言わない」
『それでも君が俺たちに害なし、関わろうとするなら…君は認めたことになる。俺たちを認識できず、感じれず、日常の景色にしか感じられないようにと』
それは時限性の符号だ、宣言した条件をそれでも満たそうとするなら、訪れる未来を宣言する。
それこそ、彼が使役した隼が担っていた、神の言葉を届けるかの様に。
実際は、神などとは遠く及ばぬ、世界の符号を触れられる程度に弱りきった残滓が体に巡ったものだが。
憂いを秘めた声と表情が、静かに彼女に告げれば、これで全て終わりだろう。
そう思い、瞳を伏せながら小さく溜息を零した。
■シャーロット >
キリ…と小さく歯噛みする音が聞こえる
フェルザ家の現当主は自分である
それでも貴族として、貴族の中で育てられたシャーロットにとって、
父親…ご意見番の言葉は絶対に近いものとして"刷り込まれて"いる
──次々に息を吹き返す、部屋の中の躯達
これは魔法なのかどうか、そんなことはわからなかった
いや、それよりも…そんなことはどうでも良かった
「───覚えてなさい」
小さな溜息をつくアーヴァインに向けられた言葉は呟くような、小さな言葉
父が取り決めた、相互不可侵
当然、従う他はない
──父が生きている間は
するりと立ち上がり、僅かに乱れたドレスを直す
絹のような髪をかきあげればそこには狼狽していた少女の顔はなく、
絶対的な自信と権力の中にある威風堂々たる表情を取り戻す
…少女の中でも、一つ決着がついたのだろう
「そちらこそ、忘れないでねぇ…?
狂犬には、きちんと首輪をつけておくことよ…♪」
■アーヴァイン > 部下達が息を吹き返し、これで死者は居ない。
恨み辛みが残ることはないだろうと持っていた矢先、未だに執念を燃やす言葉に、改めて呆れたようにため息を吐いた。
「……まだやる気か」
これでは愚者だ、彼女の父が不憫に思えるほどに。
顔を上げれば、あの自信に満ちた顔が見えるものの、これだけの結果に何故そう誇れるのかすらわからない。
だが、もう符号は打ったのだ。
彼女がどうしようと、どう反撃を練ろうと…今日のように刃を見せた瞬間、世界に溶け込んだ符号が、自分と仲間たちを彼女の認識から薄れさせる。
それに気付かぬ彼女へ、憐れむ瞳を反らしながら小さく何かを呟くと、光の膜が広がっていく。
部下と貴族達が此方を認識できるようになれば、急に現れたかのような状態となり、慌てふためくのも見えるだろう。
「勿論だ、俺の記憶から先程の悔しがる顔を見せて、溜飲を下げさせるとする」
彼女のような高慢ちきに一泡吹かせたとなれば、弟も胸が晴れるだろう。
部下達に撤退とハンドサインを出せば、蜘蛛の子を散らすように消えていき、彼もその後ろへゆっくりと続き、扉へと近付いた。
「良い夜を。そして次似合う時は……さよならだ」
振り返り、きざったらしい言葉を言うが、それが本当なのだ。
苦笑いを薄っすらと浮かべると、扉を開いてその向こうへと消えていくだろう。
薄暗い王城の廊下に、無数に広がる符号の嵐に、自身が何者になったのか……噛み締めながら。
■シャーロット >
「──えぇ、さようなら。カルネテル興。
次に会うときは…えぇ、さようなら。ね……」
眼を細め、その背を見送る
「マリアベルを呼んで。
あの子にも色々と言っておかなくちゃ」
肩を竦め大きく息を吐き、未だ状況が飲み込めていない部下と貴族を置き去りに、早足でその部屋を後にするのだった