2017/05/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 資料室」にクロエさんが現れました。
クロエ > 夜の静けさに満ちた王城、その一室――資料室に少女は居た。
目的は、以前邂逅した男が騎士から渡されていた書類の特定。
手練れの男を捕らえる事は無理だが、今から書類を改め、報告書を認める事は出来る。
ついでに、内々で情報漏洩の糾弾をするべく、書類の山を片付けていた。

「……ふむ、そもそも、紛失扱いの書類が多すぎないかな、これ」

過去の書類を検める奇特な者は、中々いないものらしい。
一日仕事で確認してみた所、騎士団に関する資料だけでなく、帳簿やら何やら、様々な種類の書類が、紛失扱いとして届けられている。
届け出に目を通す者も、よく確認したのかと問い詰めたくなるほどに雑だった。
紛失の事由が未記入であっても構わず花押が押してあり、承認済みになっている。

「……んー、帳簿類とかは騎士が持ち出さないだろうし……お貴族様が、って感じかな?」

とりあえず、テキパキと紛失資料を種別に合わせて、日付と共に書き控えて一枚の表を作る作業。
精緻な文字で紙面を埋めながら、少女は作業に没頭していた。

ご案内:「王都マグメール 王城 資料室」にオーソンさんが現れました。
クロエ > やがて出来上がるのは、それなりな量の表だった。
全てを漁るのは大変だからと直近三か月程度で絞ったのだが、それでも一枚の羊皮紙を埋め尽くす程度には紛失した書類がある様子。

「……んー、都合の悪いものを握りつぶしたのか、それともこの間みたいに横流しをしたのか」

しかし、利口なら書類そのものを渡さずに、内容を筆写して渡す方が証拠がないだろうに、と内心で呟く。
表を作り出した中から、さらにピックアップするのは騎士団関連の資料だ。
特に、巡回のスケジュールや、街道方面への見回り予定などをよく検める。
ここ三か月でも無くなっている、或いは歯抜けの櫛のように抜けている書類が数点。
情報流出の明らかな証拠だが、恍けられてしまえば追い詰められないのが問題で。

「……ってことは、これ以外の紛失書類は……」

帳簿や大まかな輸出入関連の書類、税に関する物などがちょくちょく無くなっているのはどうしてか。
疑問を浮かべながら、何となく触れると痛い目を見るような気がして、まとめる程度にとどめておく。

オーソン > 夜半まで続く書類の決済の合間に過去の報告量と見比べる必要が出たため資料室へと足を運ぶ。
日中であれば誰かしらに持ち運ばせるのだが日が暮れれば部下に仕事を終えさせたことに僅かに後悔を持ち。

「この時間では誰もいないだろうな」

持ち出す手続きができないだろうと考え記憶をするか書き写すかと手段を考えつつ資料室の扉を静かに開く。
確か必要なものは奥にあったはずだと真っすぐにそちらへと足を向ける。
その途中に人の気配を感じとりそちらを見ればこんな時間に仕事をしている人影を見つける事が出来て。

「このような時間にご苦労だな。何か急ぎの書類でもあったか?」

夜になり調べる以上日のあるうちでは調べれないものか。
そんな興味を持ち後ろから近づくようにして何かがまとめられた羊皮紙を覗き込もうとして。

クロエ > 表の空白に詰め込むのは、紛失した書類の詳細。
憶測ではあるものの、何が何枚なくなっているか、などを丁寧に記載して。
書き上げた表は羊皮紙の一面が殆ど黒で埋め尽くされるような状態に変わる。
書く場所がなくなって、少女は一息吐こうと長い息を吐く。
その刹那、資料室の扉があく音とともに―ー。

「こんばんは、少々隅をお借りしてます」

入ってきた者には、先に一角を利用している旨を告げる。
貴族やその側近達も使用する場所だから、珍しく丁寧語での返答だ。
そしてふと、誰かしらと疑問に思いながら顔を上げると。

「……ぇ、えー、と?」

どこかで見たような気がする――確信できなかったのは服が違いすぎるせい。
故に少女は目を丸くし、一瞬固まる。逆に少女の出で立ちは以前とほぼ同じだ。
閑話休題。過日に純潔を捧げた相手が、将校服を着てここにいる、などというのは完全な不意打ちだった。

オーソン > 「固くしなくていい、こちらが邪魔をする立場だ」

丁寧語の挨拶に気を抜けばいいよ言うように返して資料を眺めるように歩き。
後から覗き込めばそこに書かれているのは恐らくはこの資料室にあり、そして失われたものなのだろうと。
掛かれたいくつかは過去に探し見つからなかったものが含まれていたからだ。

「クロエだったか。こんな時間にまで真面目に努めているとは感心できるな。
俺を見忘れたか?」

顔を上げ視線が合えば目を丸くして固まる少女に忘れたか?と言う様に問いかけ。
声を掛けた本人は将校と冒険者の二面生活に慣れているだけに変わりはない。
だが少女とは初めてこの姿で会うという事を完全に失念しているという事で。

クロエ > 「いや、いやいやいや、ちょ、ちょっと待って!?
 わ、忘れてないけど、その、ぼ、冒険者じゃなかったの!?
 と言うか、その、え、えぇ……り、理解が追い付いてないよっ!?」

覗き込まれた目の前の顔に、驚愕の色が隠せない。
無論、自身の純潔を捧げた以上、忘れようとしても忘れられない。
酒と魅了で絆されて掠め取られたような気もするが、それすら憎めない男が、目の前にいる。
しかも、自身よりも遥かに上の位を示す服を着て――上官の上官、とでもいうべき立場で。
驚く所の話ではなく、少女はすっかり目を回していた。
やがて少しの時間をもらって、落ち着こうと深呼吸。意識を切り替えると。

「……はぁ、お陰で、なんて呼んだらいいか分からなくなっちゃったよ。
 それと、うん。オーソンさんがそういう立場なら丁度良かった。こっそりご報告があるんだけど」

そう前置きして切り出すのは、騎士の内の一部が情報を外部にリークしているという情報。
具体的に騎士の名をあげることはしないが、櫛抜けになっている書類と以前王都の路地裏で目撃した密会の様子を細かく告げて。

「――と言う訳で、どうにか対策できないかと考えていたところ、って感じかな。
 正直、自分だけだと打てる手が限られてるから、前に言われた通りにコネを頼ろうと思ったのだけど……そう言う事だったわけね」

全く、と溜息をつきながら、纏めた書類を差し出した。
なんだかどっと疲れたような気がするが、気にしないでおくこととする

オーソン > 「慌てなくてもいい、こんな時間ではめったに人も来ないぞ。
あぁ、そう言えばあの時は冒険者ではあったな、それが慌てている理由か」

少女が己の事を忘れていない事にほんのわずかに安堵を見せ、驚愕の理由が判れば納得を見せる。
確かに冒険者だと思っていた相手がこの服装、よりにもよって将校の服装をしていれば慌てるのも道理だと。
慌てた状態では話も出来まいと少女が落ち着くまで時間を取り。

「何、他の目がなければ呼びやすい呼び方で構わんよ。堅苦しいのは好かんからな。
報告というのはその件か?」

軽く羊皮紙を指し、切り出された騎士の一部により情報のリークがあるという話。
この少女の事だからその騎士も知ってはいるが名前を上げないのはその方が良いと考えたからなのだろうと追及はせず。
櫛抜けになった書類、そして密談の話を聞けば感心するように頷く。

「対策は正直難しいだろうな。俺も手駒に対処はさせてはいるが下位の騎士ならばまだしもそれを纏める上級騎士、下手をすれば貴族、それも高位まで絡んでいる。
個人でここまで調べられるなら大したものだ。この前に言った事を信じたのなら力にはなろう。ただ……相応のリスクは覚悟しているな?」

少女がまとめた書類を受け取り目を通し、思った以上に情報が抜かれている現状に呆れを見せる。
後手の自覚はあったがここまでとは思っていなかっただけに…これだけの事を一人で纏めた少女を労う様にそっと頭を撫でていく。

クロエ > 「慌てているというか、こう、嘘でしょって感じなのだけど!
 ってことは、あの時言ってた秘書ってのもそういうことかぁ……
 全く、人が悪いよ、もう。あの時の愚痴、全部上官に文句言ってたようなものじゃない」

げんなりした表情で呟くと、次いで真面目な顔に戻りご報告。
全てを話し終えると、男の返答には残念そうに落胆を隠さなかった。

「やっぱり、そうなんだね。んぅ、見回りの情報を抜かれてたら、悪いことし放題なんだけどなぁ。
 自分達だけは襲われない、なんて思ってるのかしら?裏切られた時に、味方がいないなんてことになりそうなのに。
 ……ちょっと現場を目撃してしまったものだから、放っておけなくて、さ。
 ――リスク、なんて今更だけど、何をする気?そこが肝だと思うのだけど」

既に追手には逃げられ、自身もまた襲われた上に土産すら残されたのだが、それは固く秘しておく。
頭を撫でられると、少女は力を抜くのが癖になっているらしく、ふにゃりと机に突っ伏しながら、程よい疲れに身を任せていた。

オーソン > 「冒険者の立場として騎士が真面目に職務に励んでいるかの抜き打ちと思えばいい、実際に職務怠慢の酷さを知るには丁度いい手でな。
クロエほどに真面目な騎士ならば情報を売り渡すなどするまいと思ったのでな。
あれには助かったぞ。上官に対して文句を言える騎士など先ずいないのでな、現場の声というのは貴重でな」

げんなりとした少女に冒険者に扮していた理由を告げ、真面目な報告には一つ一つ吟味し耳を傾ける。
少女の報告は実に有意義で必要なものではあったが己の権力では逆に潰される可能性が高いのも同時に長い経験で感じてしまい。

「情報を売り渡す騎士、その上官を纏めて処分をすれば一時的には解決するだろうが…それでは手が足りなくなり大物が姿をくらます。
かといって大本を狙うには権力の中枢という貴族もざらだ。証拠を集めていくしか現状ではできんな。
情報の買い主の犬でいる間は保証されるのだろう、その後を考えずに…。
現場を見つけたのか、それでどうなった?捕まえる事は出来たのか?
現状ではこの書類を元に確実に外部にリークされた情報から捕まえるぐらいしかできんか…」

捕まえたとしても貴族と繋がっていれば捕まえた騎士が罰せられた例があると告げて。
机に突っ伏し力を抜いた少女を見下ろして。

「ご苦労といっておこう、その目撃現場には手勢を送って調べさせておこう。
……男の前でそんな姿を見せて持ち帰られても知らんぞ?」

クロエ > 「抜き打ちねぇ。それにしては、サクッとボクに手を出す程度に強かじゃない。
 まぁ、嫌じゃなかったから良いんだけど――それなら、お給金が上がるって思っていいのかな、なんて」

最初から期待などしていないし、そもそも金には困っていない。
それでもどこか意地悪く、少女は問いかけてみるのである。

「ん、後ろにいる本当の黒幕は捕まえられないってことだね?
 それならやっぱり、対症療法で防いでいくしかないのかなぁ……
 ぁー、残念ながら逃げられちゃったよ。この町の街路を知り尽くしてたみたいだし。
 手を出すな、と言われると釈然としないけど、懸命なのは理解できる、かな。
 職務に真面目て、小うるさく嗅ぎまわってる騎士もいる、となれば少しは用心して頻度も減るかな、とは思うけど」

自身が罰せられる分には、それを耐える意思はある。
心も体も傷つきはするし、痛みもするが、それでも時にはやるべきなのだ。
ともあれ、今夜は一日中頭を動かしっぱなしで疲れているらしく、男のからかい半分の言葉にも顔をわずかに上げるだけで。

「ん、それじゃ、調べるのはお任せするよ。ボクは露骨に避けられそうだし。
 ……エッチなことする気力はないけど、正直寮に帰るのも面倒だなぁって。
 ボクの初めてを奪った、素敵な嘘つき冒険者さんは、家まで送ってくれない感じ?」

冗談じみたお道化た口調で問いかけると、立ち上がり体を伸ばす。
こきこき、と小さくほぐれる音がして、一呼吸を置いて息を吐いた。

「っと、オーソンさんはまだお仕事?それなら邪魔しないように、一人で帰るけど」

どうする?なんて問いかけながら、少女は楽しそうだった。
男が送ってくれるのか、あるいは仕事に精を出すのか。
どちらにせよ、少女は寮にたどり着けば、ベッドに身を預けて眠りにつくことになる。
服も着替えず、ぐっすりと。翌朝になって、わずかに汗の匂いのする肢体を恥ずかしがりながら拭き清めることになるのは、また別の話である――。