2017/02/06 のログ
ステファン > ドアをノックする音に首を傾げる
何か緊急を要する事案や裁決を必要とするものか、追加の事務仕事であろうとソファから立ち上がる
自分には思案に昏れる時間もないらしい、と苦笑気味にソファから立ち上がるとドアを開いた来訪者の顔を見て、
反射的に背筋をしゃっきりと伸ばした

「閣下…っ、ハッ、18師団を預かるステファン・リュング子爵であります」

王都軍人や騎士で知らぬものは無いであろう男がそこにいた
武人の誉れ高い父ですら一目置いた男である…とは言っても、自分は面識はなかったのだが……

「……して、閣下。このような場所に何か…?」

はて。
自分は何かやらかしたであろうか?とは言っても、覚えはないし、職務を至極真っ当に熟していたはずである
配置転換や免職であれば、人事を司る貴族がやって来るであろうし、後任人事が決まったのであれば、
それもまた同じであろう…彼が来訪した意図がさっぱり理解できず首を傾げるばかりであった

オーギュスト > 「あぁ、んな固くならんでくれ。同じ師団を預かる者同士、立場は同じだ」

将軍職と代理とでは違うが、それでもオーギュストは、同じく師団を預かる者に敬意を払う――腐ったお飾りは別だが。

「――リュング殿は、残念な事だった。葬式に行けなくてすまなかったが、忙しくてなぁ」

直接面識は無いが、立派な武人だったと聞いている。彼の武名を背負うというのは、大変な事だろう。
もっとも、魑魅魍魎はびこるこの王都でなんとかやっているそうで、結構、才能ある若者なのかもしれない。

「今日はな、ちと相談に乗って欲しくてきたんだ。
これを見て欲しい」

オーギュストはそう言って、彼の執務机へと近づく。

ステファン > 固くなるな、と言われても彼は正規の将軍であり、自分は自分を残して責任者が
すっぱり死んでしまい偶然、生き残りその後を任されたものであるから彼の言葉も無理からぬものであった
些か、緊張したまま敬礼の姿勢を解いても、その場に姿勢良く立ったまま彼を見据える

「戦場で敵に囲まれ、泥に塗れて逝けたのであれば父も兄も本懐を遂げたものと思います」

実際の所、父の死生観に触れる機会はあまり多くはなかったが想像するに、あまり家庭を省みない父であった故、
戦場で命を散らすのは本望ではなかったろうか?兄はまた、話は別なのであろうが―――
そんな事をぼんやり考えながら、相談、と聞けば首を傾げて

「…私でよろしければ…若輩ですが、拝聴いたします」

何事であろうか、厄介事でなければ良いのだが…と思ってしまうのは先程の招待状の事が頭を過るからだ
彼がどこかの派閥に属している、などという話は聞かないが、それでも、権謀渦巻く王城である
用心に越したことはない

オーギュスト > 「――話ってのはな、これだ」

手に持っていた地図を広げる。
それは、王都からタナール砦までの地域を示した、軍用地図。
地図上には、いくつか印がしてある。それは、王国軍の都市や、軍の補給基地であった。

「知ってるかもしれんが、うちの師団は、主にタナールの奪回を任務にしている。
だが、タナール周辺の王国北方は、街道の整理が後回しになってる――貴族どもは、自分の領地の事にしか興味が無いからな」

そう、貴族たちには自分の領地以外のインフラを整備するという思考がない。
王国は万年予算不足だ。王都内部でも、貧民地区などは石畳がめくれている所ばかりである。
そんなインフラの整備を第18師団は担当している、というのをオーギュストは覚えていた。インフラ整備は地味だが、この上なく重要な事だ。

「そこで、だ。お前さん所、第18師団に、タナールまでの街道整備を頼みたい。
引き受けてくれるなら、俺の方から師団の兵員・予算補充を上申しておく」

例の缶詰の上がりがある。
そんなに多くは出せないが、第18師団も多少は楽になるだろう

ステファン > 「…拝見しましょう」

机の上に地図が広げられれば眼鏡を手に取り掛けた
王都からタナール砦方面の地図であり、所々に記された印は補給基地や都市、あるいは関所のようであった
ふむ…と、地図から視線を上げて彼へ視線を向ければ、彼が言葉を続ける
どうやら、政争とは無関係な所で、補給や進軍の効率化の為の街道整備の話を彼は持ってきたらしい

「それはもちろん構いませんし、我々の隊の仕事ですが…」

インフラ整備や王都守備は自分の率いる部隊の仕事である
しかし、砦から王都へ伸びる補給路を整備するとなると、1つ懸念事項が思い浮かぶ

「…将軍、タナール砦は情勢が安定せず、王軍、魔軍と持ち主のよく変わる場所です
 補給路を整備すれば、魔軍に砦が陥落した際に要らぬ欲を掻き立てさせる可能性がありますが…それについて、
何か対策がありますか?」

現状、整備がされておらず、侵攻が困難である故に、魔軍が砦を奪取した際にそれ以上の
侵攻を思い止まらせていると、仮定した場合、この整備に寄って魔軍がタナール砦を超え、王都付近にまで
侵攻してくる事を懸念し、彼にそんな疑問をぶつけてみた

オーギュスト > 「懸念はもっともだ」

やはり、昼行灯という彼の評価は正しくない。
冷静に現状を把握し、目先の利益につられる事なく、そして軍人としての本分……国を守るという事を叩き込まれている。

「が、それに関しては問題ない――というよりも、考えても仕方がない事だ」

彼は一枚の報告書を執務机に置く。
それは、過日におこった、吸血姫ロザリアにより、北部都市ひとつが丸ごとアンデット化し滅びた事件の顛末が記されている。
つまり――

「奴らがその気になれば、補給路を整備なんぞしなくとも、明日にだって王都郊外に魔族軍が現れたっておかしくない。
――むしろ、補給路を整備する事によって、北部都市の安全は改善する」

そう、魔族が何故タナールを超えてこないか、それは謎に包まれている。
教会の言う「神の加護」とやらを、オーギュストは欠片も信じていなかった。

ステファン > 考えても仕方ない、と言うのは彼らしからぬ無責任な発言に思える
どういうことだ?と疑問に思いながら、彼が提示した報告書を一言、告げてから手に取り目を通す
北部の都市が魔族の手により壊滅した事を記す書類を眼に目を通せば、手にした書類を机に起き、ふむ…と
思案顔を浮かべる

「なるほど…街道1つ整備した所で現状は変わらない、と…」

参ったな、と思わぬではない
現状、必死に魔族とタナール砦を取り合っているがどうやら彼ら魔族には然程、それは重要ではないらしい
ともすれば、なぜ魔族がタナール砦に拘泥するのか、という疑問が思い浮かぶのだが、
それは今、考えても致し方のないことのように思える

「……街道の整備に関しては了解しました
 1つ、意見具申してもよろしいですか…?先程の報告書を見る限り、魔軍は神出鬼没です
 故に…ここと、ここ…更にはここに、緊急時に対応する即応軍を配置してほしいのですが…」

彼の持参した地図に記された印、街道沿いに建設された補給基地や小さな砦を幾つか指差し伝える
本来ならば王都守備に当たる自分の隊を配置するべきなのだが、如何せん、兵は子供や老人、戦傷兵ばかりである…

「…我々だけでは如何ともし難く、閣下のお力添えをお願いしたいのですが…」

どうでしょうか?と首を傾げて彼の言葉を待つ
自分よりも彼であれば他方に顔が利くであろう、そういう計算がなかったとは言わないが、
不意に現れた敵をタダ黙ってみているよりは幾分かマシなはずである

オーギュスト > 納得してくれたようで何より。
インフラ整備は重要な仕事だが、いかんせん、彼の第七師団はそういう事にまったく向いていない。

「ま、そういう事だ。なら、整備して軍の移動をすばやく出来る事の方が役に立つ」

そして彼の意見を聞けば、深く頷く。
場所は完璧だ。この戦略眼は、ここで腐らせておくのがもったいない程である。

「あぁ、良い案だ。俺から駐留部隊を編成するよう進言しておく。さしあたりは、俺の師団から兵を派遣しよう」

ステファン > 一先ず、街道整備に関しては了承した
予算の方も潤沢、とは言えないかもしれないが、幾らか彼も負担してくれるらしい
その金がどこから出たものかは深くは考えない事にする。街道を整備すれば補給も立ち行き、国内での物流も
少し上向くはずである

「助かります、閣下の精鋭が駐留してくれるのであれば、有事の際の初動も安心できます」

そして、自分の意見も通り一安心した
魔軍を警戒して、ということであるが、街道筋に精鋭が駐留している、となれば山賊や盗賊に対する
牽制にもなる…

「…では、街道の整備に関しては追って計画書をお届けしますので…早くとも春前には着工できるでしょう」

…つまり、また新たな屋敷にも帰れぬ日々が始まるのである
はふ、と息を吐きながらこれから始まる忙しい日々を思うと、ゲッソリしてくるようであった

ステファン > ―――こうして諸々の相談を済ませ彼の退室を見送れば執務をする机に向かい、忙しく仕事を始めるのだった…
ご案内:「王都マグメール 王城2」からステファンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城2」からオーギュストさんが去りました。