2016/12/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 尖塔の一室」にオーギュストさんが現れました。
オーギュスト > その日、もう何度目か分からぬ衝撃の報が王城内を走った。

第七師団長オーギュスト・ゴダン、叛乱の疑いで収監される

表向きはあくまで事情聴集だが、それが事実上の軟禁である事は誰もが知る事実であった。

オーギュストが先日行った富裕地区への焼き討ち。あれには流石の貴族達も黙ってはいなかった。
王都の、それも貴族達の居住区で兵を動かした挙句、一区画を通達もせず焼き払ったのである。本来ならば極刑をもって処するべき所だ。

だが、第七師団の特殊性と、先ごろまでの魔族戦線の醜態が、オーギュストの処刑に待ったをかけた。
つまる所貴族たちには、オーギュストのほかに対魔戦線の総司令官を任せるべき人材のアテが無かったのだ。

オーギュスト > となると、オーギュストを処刑するわけにもいかない。
降格も出来ない。
かといって、これ以上野放しにしては自分達にいつ矛先が向くとも分からない。

というわけで、しばらくは王城に軟禁。
処分をどうするかを検討という所に落ち着いたのだ。

「しけた所だな。なんか娯楽はないのか」

オーギュストはふてぶてしく看守に言う。
看守はといえば、うわさに聞く鬼将軍に対し「規則ですから!」としか言わない。よっぽど報復が怖いのだろう。

「ふん……」

部屋はそれなりの広さで、ベッドと机があり、書き物も出来る。
食事は日に3度、窓から。便所は外。

囚人としては、破格の待遇であろう。

オーギュスト > 第七師団は全員兵舎で謹慎。
ただしサロメの引渡しは師団が「病気療養中につき」との理由ではねつけた。
断れば師団ごと本当に叛乱しかねない勢いだったと言う。

「やれやれ……」

オーギュストは寝台に寝転がりながら考える。
サロメはじっくり治療するしかない。
ならば優先すべきは……キルフリート遠征。

「と、言ってもなぁ」

今度ばかりはどうなるか。
この男にもまったく読めなかった。

ご案内:「王都マグメール 王城 尖塔の一室」にテイアさんが現れました。
テイア > かつ、かつと尖塔の階段を登る足音が響き、扉の前に立っている見張りの兵がそちらへと視線を向ければ白いキャップを目深にかぶった侍女姿の女が見えるだろう。
その手には籠が下げられ。

「オーギュスト将軍への差し入れをお持ちしました」

女性にしては長身のその侍女は見張りの兵にそう告げる。
規則で差し入れは禁じられていると、建前を言う兵士。
実際にそれは本当に建前でしかない。
貴族が幽閉された場合、その人物が有力者であればあるほど差し入れは多く、下手をすれば塔の外に下手な貴族よりも豪勢な幽閉生活を送る。

「まあ、そう言わず。見張りのお役目お疲れ様です。これはほんの主人からの労いでございます」

そういう侍女が、兵士の手にその白い手を触れさせる。
ちゃり、と小さく金属の擦れる音がしたあと、兵の手に握らされた金貨数枚の入った革袋。
それの重みを感じた兵は、少しだけだぞと言って扉の鍵を開ける。
中のオーギュストにも、鍵がかちりと開かれる音が聞こえることだろう。
次いで開いた扉から入ってくる侍女の姿。
黒い髪を結い上げてキャップを目深にかぶる侍女は、一礼して

「オーギュスト将軍への差し入れの品をお持ちしました。」

そう告げる後ろで扉が閉じられ、再び鍵がかけられる音がする。

「……全く、次から次へと話題の尽きぬ男だな」

その瞬間、礼を解いた侍女が侍女らしくない口調でオーギュストへと言葉を投げかけた。

オーギュスト > 何やら話声。
見張りを買収しているらしい。まぁ、こちらが呆れるくらいあっけなく買収されるものだ。
第七師団の兵だったら、少なくとも金貨10枚は出されなければ便宜は図らないものを。

「よう、助かる。酒はあるか?」

これまた気楽に声をかける。
どうせ差し入れなど方便だろうと思っているが。
期待するだけならタダである。

テイア > 机の上へと籠を置くと、中からワインの瓶とつまみのチーズなどを取り出し。

「そなたが、こんな状況で一番欲しがるのは酒だろう」

ワインの瓶をもってオーギュストへと掲げて見せながら、そう問いかける。
さて、口調を隠しもせずに話しかけているが、外見はだいぶ異なる。
誰か見破ることができるだろうかと、変装は解かぬままその場に立って。

オーギュスト > 「出来ればきつい酒が良かったが、贅沢は言ってらんねぇな……助かるぜ、テイア」

見破ったのにはワケがある。
ワインとつまみを見ながら嬉しそうに、彼女に向き

「あぁ、変装は解かなくていいぞ。一度抱いた女は匂いで分かる」

この言い草である。
サロメが見つかってから少しは気が楽になったのか、かつての調子を取り戻しつつある男であった。
書類仕事をしなくていいのが良かったのかもしれない。

テイア > 「どうせ一本では足りないだろう。そう思ってほかにも持ってきている。」

かごのなかにはまだアルコール度数の高い蒸留酒の瓶が数本入っている。
この男なら一晩で飲みきってしまいそうな量ではあるが。

「…犬か。そなたは。」

言い草に呆れたようにため息を零す。
初めから隠す気もないから、口調を早々に戻していたわけだが、まさか匂いで見分けるとは。

「しかし、随分と酷いことをしたものだな。」

オーギュスト > 「いやぁ、話の分かる奴で助かるぜ」

しばらくは楽しめそうだ。
なにせ、こんな娯楽も何も無い所である。酒でも無いとやってられない。

犬か、といわれれば、にやりと笑ってみせるのみ。
まぁ、そう言われても仕方ない特技ではあるが。

「あん、娼館の事か」

が、話がそちらに向けば不機嫌そうに。

「あぁ、中途半端な事をした。
どうせなら貴族ども全部巻き込んで焼き殺すくらいの火にしとくべきだった」

テイア > 「そうなんども差し入れをする気はないからな。大事に飲めよ」

辺境の小競り合い程度の戦闘が頻発している状態。
自身の城にもなかなか帰れなかった。
それ故に第七師団の話題が女のもとに届くまで、タイムラグができて今に至る。
さすがに、娼館を含む富裕地区の一部地域が全焼した事件は王国中をすぐに駆け巡ったが。

「無辜の民を巻き込むのは、いただけないがな。」

酷いことをといったのは、それをさしてだ。
理由がなんにせよ、罪のない者まで巻き込んだ所業に対しては厳しい眼をオーギュストに向けて。

オーギュスト > あぁ、大事に飲むと言ったが。
その厳しい視線を受け止めれば、不適に笑う。
無辜の民を巻き込むな。あぁ、それは正しい。
だが。

「それを気にするには、俺は磨耗し過ぎた。
――阿呆な貴族どもへの見せしめに必要だったから殺した。それだけだ」

その罪が彼を討つなら、それも良い。
己の求めるもの、欲するもの、それを手に入れる為に手段は選ばない。
それが、男の、どうしようもない答えだった。

テイア > 不敵な笑みに厳しい眼を向けたまま、オーギュストの言葉を聞く。
言葉に視線を逸らし、かごから、コルク抜きを取り出すとワインのコルクへとそれを突き刺して回し始める。

「老婆心からの忠告だが、それではそなた…そなたの嫌う阿呆な貴族と同じになるぞ。」

きゅ、きゅ、とコルクのまわる音を響かせながらそう告げる。
軍人として、人として。
本来守るべき民まで見失ってしまっては、腐敗し民を食物にする貴族と同類だ。