2016/12/07 のログ
■ティアリシア > 「口が裂けてもそんなこと言えませんけどね。
特にリーシャ隊長の耳にでも入ったら…」
わざとらしく肩をすくめて見せた。表情の端に共犯者的な笑みを浮かべながら。
この辺りを臆面なく口にするのが彼女らしさかもしれない。
本人は自然なつもりのごまかしを笑って気にしないと暗に伝えながら
彼の眉間に刻まれた皴が解けるさまをみてほっとしたような笑みを浮かべる。
近頃ずっとそんな渋面を浮かべながら書類の山と格闘していたのだろう。
「ええ、お忙しい合間にお時間を割いていただけたことに感謝を」
すこしでも清涼剤にでもなれたなら幸いだ。
どうせすぐ仕事の山が舞い込むことになるのだから多少は好き放題いう時間があってもいいと思う。
「ええ、自由になって初めてその不自由さが分かった気がしますが飛び出したことは後悔しておりません。
…軍属の方の前で言うには幾分か配慮が足りない台詞かもしれませんが」
にっこりと笑みを浮かべ胸を張る。
せめて自由に焦がれる人物の手前、胸を張るのが最良と信じて。
そうして渡された書類に目を通す。不備などあるはずもない。
「大丈夫ですね。そうたいしたものではないのですけれど…確かに受理させていただきました
お忙しい中本当にありがとうございます。また機会がありましたら是非お食事でも」
冗談のように付け足しながらそのまま正式な礼をし、部屋を出ていこうとする。
扉を開け……ふと足を止め半身だけ振り向いた。
柔らかい笑みをこぼしながら唇を小さく動かす。
「…ああそうそう。あの日散々揶揄われていましたけれど」
初めて会った日の夜を思い出す。
確か前線に近い場所だったはずだ。
開戦前の夜、ぼそりとつぶやいた吟遊を
耳にしただれかの酒のつまみにされていた。
そのとき彼が口にした詩を思い出し、懐かしむように反芻して
「私は結構あれ、好きでしたよ
それではどうぞご自愛ください。良い夢を」
そう告げていたわる様な笑みを残し、そのまま執務室から去っていった。
■ステファン > 「…黄薔薇殿も、一軍を預かる身
この程度、笑って済ませる度量は持っているだろうさ…」
とはいえ、稀に顔を合わす程度の相手
それ程親しいというわけもなく、黄薔薇騎士殿の人となりについて熟知しているわけでもない
すーっ、と血の気が引いていくのを手元の事務仕事に意識を向けることで考えないことにした
「構わないよ、私自身、子供が居るわけではないから完全にお父君の気持ちが判るわけではないけれど、
甥がいるからね…半分くらいは子を思う親の気持ちも理解できるさ」
大袈裟に感謝すること無いさ、と笑ってみせる
そもそも、仮にとは言え師団を預かっているから彼女の父に面と向かって伝えるほどの時間は取れないだろう
「…君は軍属ではないから気にする必要はないよ
君が健やかで壮健であってくれればそれが何よりさ…何もしてはやれないだろうけど困った事が、
訪ねておいで?」
笑みを浮かべ胸を張る彼女をどこか眩しそうに見つめながら、良い娘に育った、などと思ってしまう
少なくとも、のびのびとやっているようで、やはりそれが羨ましくもあり、ほんの少し嬉しくもある
彼女が書類を受け取り、それを確認するさまを眺めながらうんうん、と1人頷く
「いや、仕事ですから…此方こそ、何のお構いもできず、申し訳ない…
ああ、何でもティアの好きなものをご馳走しますよ」
諸々の手続きが済み彼女を見送ろうと立ち上がる
急な事務仕事であったが、思いがけない再会があり気分も良い…気をつけてと口にしようとすれば、
聞くに難い恥ずかしい愚作を彼女が口にし、すっ、と今度こそ、血の気が引いていった
「…ティア、出来ればそれは私の前以外で、口外しないようにしてくれると嬉しいな
昔のよしみ、ということで1つ…」
ドアによればキョロキョロと廊下を行く人物が又聞きしていないかを確かめる
人影がないことに安堵すれば、しーっ、と口元へ人差し指を持っていき
「大変だとは思うけれど、君も健やかに
スカーレット卿の悲しむ顔は私も見たくはないから、良いね?」
彼女の去り際にそんな言葉を彼女の背中に伝えれば、去っていく彼女の背中を見送るのだった―――
ご案内:「王都マグメール 王城2」からティアリシアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城2」からステファンさんが去りました。