2016/12/01 のログ
■テイア > 若い兵士は、書類を受け取るために執務机のほうへと向かっていった。
そこで、ようやく男が顔をあげれば一瞬なりとも視線を合わすことができるだろう。
少し驚いたような表情を浮かべられれば、少しだけ首をかしげて。
そうすれば、さらさらと絹のような銀髪が流れる。
目礼に対してこちらも目礼を返して、兵士に指示を出せばまたすぐに視線は書類へと下がってしまう。
「…そうでもない。以前に比べれば王都に来る機会が最近は増えたよ。」
こちらを知っているような口ぶりに、少し考えるように間があったあと澄んだ声が答える。
赴任先が辺境守護部隊になってからというもの、確かに王都から足は遠のいていた。
しかし、ここ最近貴族の捕縛や第七師団将軍の捜索隊派遣のための上申などを行うため王都に来る機会も少し増えた。
軽くそのような事を話して
「しかしながら、すごい書類の量だな。一人で処理できる量ではなさそうだが…」
書類から目が離せないほど、仕事に追われている様子に微かに苦笑まじり言い。
■ステファン > さらさら、と書類に走るペンの音が小さく響く
自分が彼女を知っているような口振りで話せばどこか不思議そうにする彼女の様子が
視界の隅の方で見て取れ、すこし表情が緩んでしまった。彼女は自分が長年、王国に仕えている事を、
忘れてしまっているのではないだろうか、と…
「ご苦労を為さっているようですね…これは、人材不足、というのはあながち嘘でもないのかな…」
彼女の話を聞きながら苦笑を浮かべる
辺境を守る彼女が王国狭し、と右往左往するような事態である。王国には余程、人がいないのだろうか?と
思うのだが、よくよく考えれば、ポッと出の自分が未だにこの執務室で将軍職の代わりを努めているのだから、
当然といえば当然な気がする
「…まあ、人手が足りてませんから?
かと言って、使える人間は前線に優先的に送られますからね…」
度々、上申はしているのですが、とちらりと彼女に苦笑気味に視線を向ける
その間も手は、まとめた書類をどさ、と許可、と書かれた箱の上に重ねていった
以前は副官も配属されてきたが、すぐに転属してしまい、この有様だ、と笑って見せる
器用にも、手は動かしたままであった
■テイア > 「勝手に私が動いているだけだ。
どちらかというと、勝手に動く部下に振り回される団長のほうが苦労しているのではないかな。
人材不足、というのは否定できないがな。」
ふふ、と苦労を背負っているだろう聖騎士団長を思えば小さく笑い。
さぞ自分は団長にとって扱いにくい部下だろう。
とはいえ、指揮をとる人間が少ないのは事実だ。
様々な騎士団や軍に分かれているのがひとつの要因だろうが、メリットも見られるためなんとも言えない現状。
「悪循環だな。微かな人員補充がされても、その量を処理しきれずにやめていく。せめて秘書を雇ったほうがいいのではないか?」
書類の処理ができなくとも、分別や整理をしてくれるものがいるだけでも大分楽になるだろう。
秘書なら個人的に雇うこともできるだろうと、手を動かし続ける男に提案して。
■ステファン > 勝手に、と聞けば眼を丸くしてふるふると頭を振った
人は見た目によらない、と笑い声を零してしまえば、こほん、と誤魔化すように咳払いを一つ
「あまり好き勝手をして上司を困らせたらダメですよ?
騎士の規範たる人が好き勝手をしたら、若い騎士たちに、
示しが付きませんし…」
くつくつと堪えきれなかったか笑い声を零しながら冗談交じりに彼女にお小言を口にする
彼女に説教など出来る立場ではないのだが、彼女も笑って流してくれるだろう、と勝手に思っていたフシがある
「雇いたいのは山々ですけど…一応、機密情報や軍に関する事なんで…
雇う人間の生まれやら経緯、その他諸々を調べるとなると一苦労ですよ…
貴族の子弟にツテがあれば良いのでしょうが…リュング本家も存亡の危機を乗り越えたばかりで…」
色々大変なんです、と再び書類に視線を落とす
思い出したように、応接用のソファを指差せばよろしければお使いください、と続けた
■テイア > 「そうだな、ここ最近団長も目に見えて老け込んできているから気をつける。」
一度咳払いをして誤魔化したようだが、
結局笑いをかみ殺しながらのお小言に、肩を竦めて自重する。と笑ってみせて女も冗談を返す。
今頃団長はくしゃみでもしているだろう。
「ああ…。そうなると、条件が絞られてしまうな。リュング本家、か。色々と大変だったようだな。
まさか前当主や、その後継者があんなに急に亡くなってしまうとは思わなかった。
優れた騎士であったのに…。」
軍の機密となれば、気軽に扱うわけにもいかないか。
…と、そこで出たリュング家の名前。
昔から優れた武人、騎士を排出する名家だ。
女も時代が移り変わる中で、何度もリュング家の人間と肩を並べたことがあった。
前当主も、その長男も優れた騎士だったが戦死してしまったのを悼むように二色の瞳を伏せて。
「…となると、そなたはリュング家前当主の次男か。」
確かあそこは、前当主の甥が継いだと聞いた。
記憶を探って、当てはまる人物を思い浮かべてそう問いかけを投げて。
ソファを勧められればそちらへと腰掛けながら。
■ステファン > 「偶には肩などを揉んで差し上げたら如何です?」
彼女が冗談を返せば、悪ノリ、とまでは思わないが更に冗談を重ねていく
かの聖騎士団、団長も歴戦の勇士にも関わらず、歳若い娘にも見える彼女に肩を揉まれれば心中はさぞ、
複雑なものであろう…想像するだけでも、笑いが溢れてきそうであった
「武門のお家ですから、父も兄も覚悟はしていたでしょうが…残されたものは大変です
優れた騎士ばかりが生き残る、というわけにもいかないのが戦場ですし…仕方のないことです」
彼女が自分の家名を知っていたのには少し驚きもするが
彼女が声音が少し静かに、先程までの声音よりトーンが落ちれば、重ねて仕方のないことです、と告げる
彼女が父や兄を思い、優れた騎士、と称してくれたのはありがたいことではあった
「申し遅れました、ステファン・リュングです
非才の身ですが、以後、お見知り置きください、テイア殿」
書類に向かっていた手を止めて立ち上がれば身なりを正し、畏まって彼女に頭を下げる
立ち上がった際にうず高く積まれた書類が崩れ掛かればあわや、という所で手を添えて
こんな身なりで申し訳ないのですが、としばらく家に帰れず所々、薄汚れ着崩れた軍服の非礼を詫た
■テイア > 「…うーむ、私は別に肩を揉んでやるのは構わないが、逆に肩を凝らせそうだな。」
元団長であろうが、長く生きていようが今の団長と部下という立場を弁えているつもりではあるが、それでもやはり団長の自分に対する姿勢は硬い。
条件反射とでもいうのか…。
そんな自分が肩を揉めば、緊張しすぎて逆に肩をこりそうだと苦笑が漏れる。
今度申し出てみるかな、などと一体どんな顔をすることやらと笑いながら言って。
「そうだな。強いものが必ず生き残るわけでも、優れたものが必ず勝つわけでもないのが戦場だ。
その家に名を連ねる者は皆覚悟しているだろうが、それでも残される者の辛さは計り知れないな。」
仕方のないことだと告げる男の言葉に頷きつつも、散ってしまった命を惜しむ。
残された者の一人である男の方を、気遣うように見て。
「よろしく、ステファン。名を知ってもらっているようで光栄だ。テイア・ルア・ルミナスだ。」
男が名乗り、立ち上がれば女もソファから立ち上がる。
書類の山が雪崩をお腰掛けたが、なんとか手でそれを防いだのをみれば苦笑を零して。
薄汚れ気崩れた軍服から、家にも帰れず寝食を惜しんで仕事に打ち込んでいるのが伝わってくる。
すっと手袋を外すと相手に向けて、握手のために片手を差し出して。
■ステファン > 「団長殿もさぞ、お喜びのことでしょう」
申し出てみる、という言葉を聞けばぜひ、と念を押す。その表情はとても悪い顔をしていたはずである
彼女と団長殿の関係性に特に詳しいわけでは無かったがなんとなく、想像はつく
さぞ、面白い光景が繰り広げられるのだろう、と内心思いつつ面白がっていた
彼女が手袋を外し、わざわざ手を差し出してくれれば、此方もそれに応えて手を差し出し握手する
この手が、幾度も戦場を超えてきたのだな、と思えば感慨深いものがあったが、
眼の前の彼女はどう見ても自分より年若い女性にしか見えない…なるほど、と聖騎士団団長の
心労もなんとなく判るような気がしないでもない
握手を済ませて再び席に付けば、ふう、と息を零して再びペンを手に取る
幾枚かの書類に署名を施せば、書類の束を彼女に向かって差し出し
「さて、テイア殿、お手隙でしょう?
此方の書類、全て署名を終えたので各部署へ届けていただけると助かるのですが?」
にっこり、と笑みを浮かべて彼女へ視線を向ける
再編された第18師団では、立っているものは親でも使え、という鉄の掟があるのだ…
ノウノウと、歴戦の騎士に従卒にさせるような仕事をさせようとする
■テイア > 「さぞ肩も凝っているだろうからな。」
念押しとその悪い顔に女も乗る。
さてさて、一体どんな顔をすることやらとクスクスと笑い
恐らく緊張張り詰める空間になることは間違いないだろう。
くっと軽く握って握手をする手は、男よりも随分と小さいものだっただろう。
ただ、剣を握り手綱を操るその手は貴族の女ほど柔らかくはなかったけれど。
「ん?まあ手は空いているが。ほう、他の部署に所属の者までこき使うか。構わんが、高くつくぞ。」
握手のために外した手袋をつけていれば、すっと書類の束が差し出される。
書類を受け取りながら片眉をあげて笑みを浮かべ。
騎士団から持ってきた一枚の書類を代わりに男に手渡すと、パラパラと捲り届ける先の部署を確認して。
■ステファン > 思いの外、あっさりと了承される此方の申し出に少し驚いた
私にそんな仕事をさせるのか?と怒り出す…とまでは、思ってはいないが、少し位、
嫌な顔をするのではないかな?と思っており、彼女の表情に笑みが浮かべばニヤリと笑みを浮かべ
「あまり高望みされても、私も持ち合わせがあまり多くはないですから…」
笑いながら返事を返す
彼女が差し出した書類を受け取り、立ったままの姿勢で書類に目を通せば、ふんふん、と何やら頷き
そのまま、ペンを取ればさらさら、と手早く署名を済ませ、こちらもどうぞ、とそのまま書類を彼女に差し出す
彼女が書類の確認を終えれば、ドアの所まで付いていき、先んじてドアを開き、どうぞ、と彼女を促す
「こんな事を頼んで大変、心苦しいのですが人手不足ですので…
申し訳ありませんがよろしくお願いします
それと…大変遅くなりましたがお子様がたもお健やかにお育ちのようでリュング家当主に
成り代わり、お祝い申し上げます…後ほど、祝いの品などお屋敷に届けさせますので…」
廊下に出ればそんなやり取りを、最後にもう一度、すみません書類をお願いします、と頭を下げ去っていく
背中にパタパタと手をふって見送るはずで
■テイア > 「今は一騎士だからな。雑用もするさ。
問題ない。必要な時に体で払ってもらうからな。」
少し驚いた顔を見れば、手が空いているからなとふっと笑い。
さて、この労働に対する対価はまた後日必要になった時に請求させてもらおう。
その対価がどれほど高くつくかは、その時になってみないと分からない。
手渡した書類に署名をして返されると、これには少しだけ嫌な顔、とまではいかないが視線が動いた。
帰るついでに届ける予定だったものだったからだ。
結局また団長のもとに戻らなければならなくなった訳で。
「まあ、そなたもよく働いているようだからな。仕方ない。
………。ああ、ありがとう。気遣いは無用だ。」
子供のことに触れられると、きょとんとした表情を晒してしまった。
まさかそこまで知っているとは思っていなかったようで。
祝いの品をとの言葉にそう返すと、頭を下げる男にひらりと手を振って他の部署へとお使いに歩みだす。
届けられた部署は、驚きに騒然となったことだろう。
団長のもとにもどれば早速肩もみでもしましょうかと申し出て、団長を凍りつかせたりしてみたり。
そして全て終えれば、屋敷へと帰っていった。
ご案内:「王都マグメール 王城2」からステファンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城2」からテイアさんが去りました。