2016/02/28 のログ
ご案内:「王城 庭園内水場」にグールドさんが現れました。
グールド > 滅多に見られぬ王侯貴族の庭園を刈ってみないかと上司に誘われるまま、実際は手を揉むだけの内容。
仲間共と己はまともな上着で身を覆い、下手に飾るより無難な形式に身形を整え脇に控える従者らのように佇んでいる。
本殿から噴水を眺めて後ろ側に当たる場所で花飾りなき侘しい緑をつついていたら、ヴェイルで顔を半分覆った喪服姿の貴婦人に手を取られた。
背の低い貴婦人は、ちょうど自分の隣から手だけをしげしげと見詰めている様子。細い指が庭師である己の手に食い込んで簡単に剥がさない。

「御機嫌よう?」
言葉より手に興味を示し続ける素振りが多少、心をざわつかせて瞼を薄めるが顔を覗き込もうと整形された枝を外手で掴んで。漆黒の上着が裾を垂れて夜の帳に長い丈を落とすが構うことなく流水は同じ速度を保ち流れ落ち続けて。

グールド > 他人の目が光る王族の敷地で身分なき存在が下手な事はできないと歯列を少々噛み締めて小さな音が鳴るが、噴水の音色で遮蔽されて周囲からは余程耳のよい者でなければ聞き取ることは難しいだろう。
喪服の貴婦人に手を掴ませたまま身を反転させて噴水の縁石に腰を落として座るとどういうわけか上手く回ることができたため、変わらず片腕を同じ高さで上げたままだが自由に首などを巡らしてみるが。婦人の指の力が強くて爪が刺さるようだが顔を見上げる限り害はなさそうなので黙って任せていることとして。
向こう岸か庭木の影となる真下か密やかな情交が当然のように。まだ薄い花の匂いが突いて真開いた目を更に凝らして見。

「天啓と魔力が刺し違えているようだ。」
夜明かりが流水に反射して、不自然な木々のざわつきを淫靡なものに見せている。

グールド > 世を乱す司祭の祈りはアーメンでなく猥褻な文句がぴったりだろうか。天蓋の煌きが十字を切った風に見えて胸へ掌を置いて祈りを捧げ。
まだ離して貰えないと喪服を探すと桜貝の爪形をくっきり残して消えており。夜の冷気が温度を下げたことかと熱い頬へ手の甲寄せて冷まし。苔蒸す湿度が存在した口の縁を拭って目のはしも同じようにしてみたが濡れることはなかった様子。
石を重ねた水場の縁で上半身の力を抜ききって重力に任せると頭が天地を違えて傾ぐ角度で停止し水の中に頭頂の毛髪がわずかその繊維を浸す程度。だらしなく膝を曲げて地面へと伸ばし開いた足元に存在がいてもいなくても今は意に介すことなく噴水の向こう側を仰いで。喪服の黒とよく似た夜を彩る水彩が細かな鱗粉を飛ばしたので目を瞬いたが痛みはなくぼうっと歯列が並ぶ口をわずか開いて、意味のわからない微熱を冷ましてくれる存在へ身を預け。石が頭と背中の下で冷たく心地よい。

グールド > 闇と水の隙間で踊る身が透けた存在は水霊か。腕を持ち上げて水を掬うとスッと冷えていった気がし。息を深く吸い込んでは再び身の外へ放し。
起き上がりたくない、鈍い頭と冷気以外の感覚を捉えたがらない背中を肘と手首を支柱に、踵を引いて身を起こし。藪を睨んで、水に湿った舌で口を搔いて。
「腹、イタ。」
感覚の薄い肉体が筋肉痛を訴えて、さきの喪服淑女がつけた爪跡に歯を立てるが気持ちの収束は見出だせず。腰を低く折り曲げてから立ち上がり、庭園から抜け出すのは容易い。茂みを静かに歩いて行って。

ご案内:「王城 庭園内水場」からグールドさんが去りました。