2023/06/21 のログ
エリシエール > 兄の声が脳裏で再生される。

『カルネテル共が胡坐をかいて怠けている今、我々ヴァエルフィードがこの事態を収束せねばなるまい』

兄の大義名分はもっともだが、肉親の人物像は近況を知らずとも長く過ごした
自分たちには手に取るようにわかる。

……彼の口にする”ヴァエルフィード”に自身が含まれているのは今この一瞬、
事が収束するまでの間のみ。

今回は渋々招集に応じたが、これは兄に協調・賛同する訳でもない。
むしろ、兄がタダでさえ過激というのにこれ以上変な事をしないかを心配しての面が強い。

邪魔になれば、消す。兄は、良くも悪くもこの混迷する王宮に巣食う王侯貴族の典型なのだから。


「…………考えるのをやめましょう。疲れました」

女はそういうと、堅苦しい儀礼服の上着を脱げば腕にかけて、風を浴びようと屋外に続く道へと歩んで。

ご案内:「王都マグメール 王城/会議室前」からエリシエールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にアマーリエさんが現れました。
アマーリエ > 長期間にわたる出征を終えて、戻ってきても――世の流れがさほど変わっていないのは、安堵すべきか否か。
現状維持という停滞は、戻るべき場所が変わらぬ安堵を抱けないわけではない。
だが、其れでも多少は何かしらの変化を期待する、考えてしまうのは、色々と思うことが多いからだろう。

「……とは言え、真っ正面から功を上げずに戻ってきたと言われるなんて思ってもなかったわよ。
 何なのよあの禿茶瓶。温くなった紅茶でも頭皮に恵んであげれば良かったわ……」

王国国境沿い、その地を収める領主と隣国の内通、共謀が発覚し、早期対処のために第十師団が差し向けられた。
それ自体は良い。速力、移動力重視の編成の兵団とは、もとよりそうした対応を考慮している。
問題は、対応が長引く、長期化し、補給経路が紐のように伸びるかの如き戦況が生じたことである。
周辺国もマグメール王国軍をよくよく研究している、と褒められなくはなくとも、結果として軽視し難い損害を被った。

映えある王国の軍であれば、百戦百勝して然るべきという認知に毒されているのか。
それとも、家柄のみで竜騎士に登用せよと送り込んできた三男坊を、“可愛がった”のを恨んでいるのか。
手っ取り早く適性を見るために竜に括り付け、アクロバット飛行を連発しただけなのだったが。

――と、諸々を思い返しつつ、卓上に突っ伏す姿が夜の王城のバルコニーの一つにある。
バルコニーに置かれたテーブルと椅子に長い金髪を夜風に揺らしつつ、卓上に突っ伏する姿の後ろ姿は一応は騎士らしいもの。
しかも、襟章やマントの刺繍を見れば、将という肩書が分かるものが、愚痴めいた言葉を零すのは如何なものか。
知ったことか。知られたところでなけなしの予算がまた、削られるだろう。その程度だろう。