2022/11/26 のログ
メイラ・ダンタリオ > 昼の王城外
冷たい空気の中 馬息は当然のようにない
そこにあるかのように声が聞こえるだけの、首無し馬。

衣を纏い、寒さを軽減している分厚い体は、細身の脚ともソリ引きとも違う
鎧を乗せ、鎧を身に着け前進する肉体は、表面に触れればきっと熱い筋肉が脈動している。
妖馬はどうかと言われれば、その属性は獣よりも寧ろゴーストに分類されるだろうか。
こうして衣を着せていること自体、お互いの自己満足でしかない。

そんな触れ得る愛馬と少し散歩をする。
食むこともできない身は、それ以外の場所で手綱を持つだろうか。
しかし今は、お互い示す必要もないように、馬糞もない馬が駆ける柵の中で歩く。
白い吐息がメイラから零れながら、コートは羽織るだけのように身に着けていても
身を震わせることもない 冷たい雨や雪で苛まれそうな金属の鎧に身を包む行為や、汗が凍っていくかのような
あれに比べればまるで今の時間はまだまだと言える。

豪雪すらまだない土と短い草が揃う場所を歩きながら、跨る素振りがないのはメイラ自身
その身に着ける衣が普段の外着なロングスカートの装いのせいか。
しかし、不意に愛馬が目の前の道を塞ぐように先を歩き、体を低くする。
乗れ というかのように身を屈めて催促する仕草。
メイラも、刀の柄に手を乗せながら数回パチパチと瞬きするものの
最近愛馬は活躍がないせいか、ゆっくり休んでていいのだと述べることもできない。


「横乗りは趣味ではありませんのよね。」


スカートを摘まみながら、愛馬の前で乗馬の姿にならなかった
自身の落ち度かと、気にすることもないようにスカートを摘まみ、広げ直して腰を下ろす。
鞍すら身に着けていなかった裸体に身を乗せると、スクリと立ち上がった様子
足で軽く腹部を押さえつけるようにしながら片手を背中に乗せるだけ。
なんとも不安定な体勢でも、なんのことはない 走るわけでもないからと
蹄の地面を凹ませるトストスとした音と共に、ゆっくりと歩き出そうか。


「どうせなら鞍をつけてデートにでも出かければよかったですわね。」


今日は、特に血の気があったわけではないせいか
こうして触れ得たくなった気分のせいで準備不足
ブルルと聞こえる返事は、気が利かないとでも言いたげだ。


「次は一緒に街道沿いをのんびり散歩しましょうか。」


そう言ってポンポンと首の付け根を撫でてあげながら
馬に身を任せてゆっくり歩き、周回していく。

ご案内:「王都マグメール 王城 周辺地区 馬舎」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。