2022/10/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ > 王城 夜 天候 雨


外では疎らな雨が降る
雲は一瞬途切れることはあれど 厚みの違う雲が広がり強くもあれば弱くも降る日だった。
メイラは、戦場へと戻る手前 指揮を執る猛者や老将らと隊に対する装備の状態報告
欠員に対する補充 食料 ポーション 物理的治癒術に対する治療器具など
戦場に対する全てを整えていく話し合いに参加していた後だった。

金庫からの算出だの計算だの メイラのような性格には必要はなくとも
何が必要なのかは 現場に出ている者らこそが良く知っている。
どこを誤魔化し どこを重要視するか 金は無限ではなく、時には国を潤わすわけではない
むしろ害にしかならない場所を摘発し、金を集めていき 必要な悪は残し不必要な正義は潰すといったことさえする。

戦争は 金と力 の権化

メイラは、その力に固執し、金は勝手に後ろから着いてきた。


「…、…垢に塗れた 髭も伸び切った盗賊の首も 且つての英雄も それらを守るあの都市も


     全て  全て

                あ の 御 方 に 相  応 し く な い 。」


底冷えするような声が、ギザ歯から零れ出る
白い吐息が出る 冷え始めてきた日から深まった気温。
メイラは黒の一張羅で、愛刀を腰に差した姿で窓辺から雨に濡れた真っ黒な都市屋根の群れを見ながら
赤い瞳は満ちた潤いを見せ、腕を胸下で組みながら 無意識か 半魔の血か
その膝まで延びる長い黒髪の一本一本ですら力みが伝わるか
ふわりと揺らめいて、メイラの感情を示す。


「後 ―――日。」


もうすぐそこまで、城壁が待っている。
感情は冷たくて 心は冷たくて 脳味噌すら冷たい
体だけが熱く高ぶっていて、何度も背中が ブルッ ブルッ と震えている。
どれだけイカれと言われても どれだけ狂ってると言われても
自身とそれに群れる塊があそこへぶつかれば 士気は回復し、勢いは戻ると自負できる。


「―――久しぶりですわね あの御方の声が、恋しいなんて。」

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にコルボさんが現れました。
コルボ > 「いくら怪力令嬢でも、あんま晒されてたら風邪引くぜ」

 それはかつて狂人に飼われることを断った一羽の烏。
 忠義ではなく敬意を以て相対するそれは、王城に紛れて軍閥であるかのような出で立ちで唐突に現れて。

 時折客将、意見役として周囲からの、敵陣の情報も収集して軍議に紛れ込み、
 その後は狂人の周囲を俯瞰して情報を集め、飛び回り、また狂人の肩にいざという時戻ってくる。

「……金の流れ、探ってみたら試算より悪くなってる。
 特に戦を期に物資、特に食料周りの商会が値を吊り上げにかかってる。

 ……予定より二割くらい現場の飯が減るけど、どうする?」

 貴女の隣にしゃがみ込む。元より変装の一張羅、今着る分だけに興味はないように構わず濡れて。

「後はポーションはさっき文飛ばして予定の三割増し確保できる、荷馬車も。
 現場で補修用のミスリル、ダマスカス、霊銀の板金も予定より二割増しで確保できる。
 両方資金が据え置きでな。

 お嬢がGOサイン出してくれたら動けるぜ。
 後はなんかオーダーないか?」

 ギザ歯を剥き出しにした狂人相手に、どことなく遠くを見る貴女に何も構わず接してきて。

メイラ・ダンタリオ > 王城 戦場 街 郊外
いろいろな場所でこの黒い鳥は自由に飛び回る。
賢く 眼が利き 遠くに転がった胡桃を視界に入れてその爪で獲っていく。


             黒い怪物の肩には、黒い鳥が寝床を作っている。
             止まり木ではない 寝床だ


現在のメイラとコルボの関係性を謡う一文は、時折話に出るそれだった。
必要な時だけ傍にいて 無駄に友好的にはしない
気分次第の止まり木ではなく、寝床という呼び名は確実性によるものだろうか。
それとも、メイラが受け入れる姿勢によるものか。

最も、そんな話よりも現実を見た方が早く、体を濡らしていつからか傍に来た黒い鳥
メイラに話しかけるそれは現在状況に対する付与された事柄
戦場と災害は材木屋を渋らせ 食料屋を空にする。
儲かった金の使い道よりも、手元に残ったものを考えなければいけない者もいる中で
その状況と共に、行ったり来たりで済ませず、その場での修繕を踏まえた話をメイラは更に追加する。


「伴う専属のミスリルを扱える鍛冶屋を手元に呼ぶか
 ミスリルの穂先を用意継続させ、現地に運ぶか
 新しい武器を渡せば済む話も、まるで裂けた布を繕えと言う部分もありますわね。」


必要なら金を寄越せ
至って単純明快な商売の理 それを無碍にすれば 商人はここにいる意味を薄れさせる。
現物を用意させる手間よりも、現場でちまちまとやらせるほうが金にならず
死ねばその場で報酬も無駄になるからと考える、肥え豚貴族もいる。

事が終わった後での保管ではなく売買転用に考える払い下げでもあれば
後から隙間を埋めることもできるだろうものの
それは勝ったらの話だ。

メイラは、三つ編みの片側の房をくるくると黒いガントレットに巻き付けながら小さな声で
お互いに口ずさみながらも、冷たい廊下窓 そこで佇んでいるメイラに風邪が云々というコルボに
バサリと黒い革の外套を頭から被せた。
先ほどまでのメイラの体温が移った革の衣 じんわりと、無自覚な肌の上で伝わる温もりに
コルボは少し体の冷えを取り除かれようか。


「食料の穴埋め、か。」


窓辺の視線から、くるりと向き直り、屋内の廊下壁へと視線を変える
窓枠に寄りかかりながら、深く鼻で息をするメイラ。


「買いすぎるのもダメですもの タナールとハテグもあるし。」


三つ編みをいじるまま、狂気的な発想を実は浮かべているものの 口にはしない
それは追い詰められた畜生道への末路である。


「港湾都市の干し魚や錬金術師の友人の相談して、栄養剤や活性ポーション
 カロリーポーションでも作る方がいいでしょうね。」


病人用に用いられる、丹の一種
喉を通らない食事の代わりに与える強い栄養丸薬
穀物を練って作る忍者食にも似た携帯食
安い3等小麦で作る乾パンや航海ビスケット

金はかかるものもかからないものも、いろいろと浮かぶものだと
そう言いながらも使い捨ての駒同然に対するそれにはぼそりと


「●●族を加工するまでいかなければいいけれど。」


これは、コルボにしか聞こえないセリフである。

コルボ > 実際、烏に定住の地はない。
宿か、野宿か、女のベッドか。

特定の住処を持たず、財の類は巧みに隠すか預けてある。

その中で、唯一戻る場所が、皮肉にも自分以上に女を抱く女の肩。
心の奥底で国を変える、変革を望む意志を有して、情報を、流通を怪力令嬢の方へと収束させて台頭を目論む。

幾度か、令嬢と相対する軍閥の類に金で勧誘されたこともある。
元より上の者へも顔が効く情報屋、その顔通りも良く、飼い慣らしたい者は多く。

そしてその多く、否、全ては没落、もしくは処断に追い込んだ。
国内の対立等令嬢の手間を取らせる必要もないというように。

「鍛冶屋でいいなら、ドワーフ10人でいいなら抑えてあるよ。
 前々から、視られるならお嬢の戦いぶりと刀の切れ味を拝みたいってのが結構いてな。
 許してくれるなら試作の移動式溶鉱炉も持参するとさ。

 板金じゃなくてインゴット、現場で補修加工用の資材にすれば
 出費はドワーフ込みで……、多分二割減、他に予算を回せるようになるが、そっちにするか?」

 商売の理。その横から槌を持って殴りかかり押し寄せ、工房では得られぬ経験、感銘を得たいという狂人めいた職人を勧誘していて。
 死ねばその場で金にならず。大いに上等。死中に活を得て新たな武器の構想が得られるなら本望とでも言うような者をかき集めていて。
 令嬢の戦いの準備の中で、要望に応える手札を既にいくつも備えていて。

「って、おい。大将が自分の体調そっちのけで端っぱのこと気にする奴があるか」

 外套をかぶせられれば、その熱を感じて、逆を言えば、その熱をいまから奪われることを考えて、
 かぶせられた者を剥ぎ取って突き返し。

「ったく、そういう優しいところもっと周りに出せばいいのによ。
 ただ戦果上げてるだけで狂人だのなんだの……。」

 ただの狂人であれば軍議など開けぬ、誰でもわかろうというものなのに、
 男からすればただの戦果、いくら猛進しようが、いくら傷を負っても前進しようが、
 それはまごうことなき正面を切り開く最適解。

 ただ、それを選べぬものが少ないだけで、それを選べる黒い怪物が狂人呼ばわりされるのが気に入らず。
 故にそう陰で囁く軍閥を葬ってきて。

「カロリーポーションか……。俺あれ長期探索で使ったことあるけど、以て半月だぜ。
 やっぱ人間飯を食わないと頭おかしくなってくるってか。

 ……あーでも、お嬢のところの奴等なら一月はいけるか?」

 携帯にも適した合理的な栄養食。聞こえはいいが味気ないを通り越した流動食の親戚。
 既に合理的に自らを実験台にしている男はそう試算して。
 令嬢配下の兵士達は令嬢ほどではないにしても戦闘に適した思考、精神力を兼ね備えているのは心得ていて。

「今は間に合わないけど、携帯保存食、何か容器に入れて超長期保存できるものを発明家に考えさせるか? 賞金でもかけてさ。
 条件は魔法なし。腐敗防止の魔法はコストかかりすぎるしな。」

 食料に防腐の魔法をかける、それは人材を多く使用することで格段にコストが跳ね上がる現状に対し、
 何か理屈を以て誰でも作成できる案はないかと、一見絵空事のようなことを提案しつつ。

「……それは止めとけ。せいぜい脂取りだよ。食えたもんじゃなかったあれは。
 ありゃ肉でも腐肉食ってる奴等の味だ。やったら引くほど指揮下がるぞ。保証する。」

 などと、自分にしか聞こえない言葉に”経験”を返して

メイラ・ダンタリオ > メイラの思考や呟きはそれほど冴えた発言ではない
メイラは軍師でも経済屋でもない
ただの一兵卒 ただの嵐 ただの災害でいい。

王に貢献できるならば 立場などその程度でいい。
考えていることなど一般兵と変わらない。

そんな戦馬鹿の発言に対し、生真面目に返していく発言や
しゃがむコルボに対し、まだ温もりの残る革の外套コートを被せると
慌てるようにして返す姿 この程度で甘えてたまるかという男の意地も含まれているのだろう。
すぐに返されたそれを再び肩に羽織り、長い後ろ髪をバサリとコートの外へと放り出す仕草。


「わたくしを大将などと呼ぶのは、お前くらいのものですわ。
 わたくしは所詮 王の手の指の一端でいい。」


どこまでも どこまでも 王に尽くす姿勢以外はどうでもいい
王以外は皆平等 その意識は大将と呼ばれると不相応と口にする。
だから普段から、姐さんだの なんだの 塊の先端を指し示すそれで充分なもので受け入れている。


「それにしても、ドワーフがね。」


カロリーポーションや最後の手段の一歩手前に対する答えは当然とし
一番はシチューのような煮込む料理 これは栄養を完全に吸うことができる上に
大量調理と配膳に向いている。

サバイバル環境の中でこそ、丹は活きるだろうからと
やはり思い付き程度のものな中で、ポツリと


「刀。」


暴れ狂う姿と刀が見たい?
そんな発言、戦場を見ていない者の発言だろうと。
刀を下げているのは、街中などのこの黒い衣の姿だからだろう。
それを見て、扱う武具と戦いを見たいと ドワーフの斧の一撃に掛ける猛者らの行動は結局
戦場と特化に対するインスピレーションと刺激を欲する馬鹿な漢共の口。
思い浮かべると、ニッとメイラは、笑みを浮かべて壁を見つめる。

それも、悪くはないと。

今の状況に対して向いた武具や死体を集めるための鉤剣など
いろいろと造りそうだとは思う中で、行きたい馬鹿野郎達だけほしい、とメイラは了承した。


「お前は?」


長ったらしい思考はカットする。
もうすぐ目の前まで準備は進み、迫っているのだから。
活性剤など、後からもたらされる補給の継続隊に対する貢献は必要としながらも
メイラはふとコルボに聞いている。


「城壁の中に潜入して瓦解させるのは現状不可能。
 前のようにわたくしと暴れ狂う気ですの?」


肝心のお前はどうなのだと、メイラは口にしながら腕を組みなおす
視線は壁ではなく、傍でしゃがんでいる、肩に寝床を許した黒い鳥。

コルボ > 「それでも俺は、お嬢が大将だと思ってるよ。」

 ふと、そんな言葉を返し、理由はその時は語らず。

「刀。」

 カラスがオウム返しに言葉を返す。

「お嬢さ、たまにさ、ふと頭に許せない奴のことがよぎったりしない?
 王に対して不敬な奴とか。その時に周囲のざわめきが一瞬消えるの、あれ偶然じゃないからね?」

 武具を打ち、武具を追求し、武具の極限を夢想する。
 故に手を伸ばし、届かず、悶える職人達が目にするは、平和な王都にあって静かな闘気を抱く令嬢。

 武器に導かれるように、嗚呼、と職人達は納得したのだという。

「今のところはお嬢に心酔してるから、修理だけじゃなくて色々作ってくれると思うよ。
 工房って檻に閉じ込められてる奴等の底力を開放してやればいいさ」

 了承を受けて、すぐに手続きにかかると頷いて


「そうだな。今回は、俺も行っていいか?」

 しゃがみ込んでいた男が、やや逡巡して、ゆらりと立ち上がる。

「最近学院で教鞭取ったり、生徒の面倒見たり、色々やってて悪い気はしないんだがな。
 この間頭いい生徒に冒険者止めて教師になればいいのにって言われたよ」

 ケラケラと笑ってから、大きく息を吐いて。

「……すこぉし、最近自分から生臭さが抜けてきてるからな。
 久しぶりに、大将の隣で馬を並べて気持ちよく戦うのも悪かねえ。」

 大将。そう呼ぶのは以前戦った時に痛感したこと。
 大将に必要な素質は何か。後方に陣取って戦い的確な指揮を執る。
 それも必要なこと。

 けれどコルボにとってメイラはその対極。誰よりも先陣を切り、折れない背中を以て永劫に狂気的な士気を引き上げる猛将。

 それほどに心地良かった。
 以前共に戦った時にメイラはコルボを気に入ったが、それは逆の話だと思っていた。
 自分が支援したのではない、理想的な切り込み役、必ず成果を上げる兵士の理想形。

 それにそって自分は補助をちりばめたに過ぎず、それさえも活かせない兵は、将軍は当たり前にいる。

 誰もが思い描く理想の道を切り開く。この国に不可欠な”大将”なのだと

「お嬢が小間使いの一兵卒だろうが、大将だろうが、どっちだっていい。
 俺は、血生臭い戦場なら誰にも出来ないことをやってくれるあんたの隣が一番面白いと思ってる。

 だから行くさ。」

 烏は寝床に戻ってくる。黒い怪物が起き上がり、身を震わせ、苦難ありと見据えれば。
 その苦難を支える要所を射貫き、正面から怪物が打ち崩せるように。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にコルボさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にコルボさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にコルボさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にコルボさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ > 通り過ぎているだけで 肥え豚貴族の鼻を折りその肝臓に拳をたたき込むような真似だけで
周りは冒険者とも勇者とも違う狂人に目を向ける。
メイラの在り方は特定の人物 目の前の男のような交友を結ぶ者がいる。

そのドワーフも同じ口だと言われる
女が、他者に興味を抱かれる それは性的であれ 猛者的であれ
悪い気はしない

とある魔女が言っていた
目の前の人食いと話しているとき 食べ応えの無い私の体を見て
お前にはなんにも沸かないという顔をされたとき
女でいる以上 腹が立った と。

メイラ自身、自身に対する評価などどうでもいい姿勢は貫くものの
一定のこういった相手がいる事実がある以上 悪い気はしない。


「お前と似た者同士が10人いると言った方がわかりやすいですわよ。」


フッと鼻で静かに笑って、三日月の笑みを抱く
ギザ歯を綺麗に噛みしめた、ジグザグフェイス


「そういうの 惚れた って言うそうですわよ。」


女男ではない 在り方に惚れちまったと口にする男のセリフは 時折見かける。
自分に対して、評価を口にするコルボに、からかうように口にしたメイラ。
コロコロと笑みを浮かべて三日月の唇にガントレットの指先を添えて笑う姿。


「暴れ狂う相手の目の前でパタパタ飛ばれたら
 相手はさぞやうっとおしいのでしょうね。」


コルボが何を実行しているかは知っている。
正々堂々と轡を並べるよりも、隙間を付いて頭蓋に横から投擲を繰り出していく
メイラが暴れやすい環境を整えようとする。
それはずるいように見えて 一人で行う行動よりも欠けて見えて
その実 メイラは拘らない。

褒めてもらえればそれでいい。
貌に泥を塗る行為でなければいい。

後で鳥が一手差し込んだからだと囁かれようと、気にしない。


「フフフ」


メイラは笑う。


「ハハ、ハハハ。」


笑みを浮かべる赤い瞳にはアスピダの情景が写り込んでいるよう。
勝ちを妄想するのではなく、王が喜んでくれる姿を想像して、昔から変わらない高揚感に満ち
半魔の血が、黒い髪を一瞬ザワリと波浮かせた。


「ほんと、あの御方の声が恋しくなってしまいますわね。」


そう言って、共に廊下からコツコツと歩き出そうか。
刀を撫でながら、コルボの姿を見つつ そっちの装備は大丈夫なのかと
共についてくる本人の調子も聞きながら都合云々、足そうとしてもいいというかのようにして
王城の夜 主のいない場所 誰も咎められない存在がやっと出ていった。

コルボ > おそらくは感銘。必然的な出会い。そこから湧き上がる想い、衝動。
同じ感銘を受けた烏だからこそ、その衝動に気づき、手を結ぶことが出来る。

この街に令嬢を狂人と呼ぶ者は多いが、その一方で惹き付けられう者もいる。

「お嬢が活かしてくれる、んじゃなくて、お嬢を見てたら勝手に活きてくるって意味じゃ同じかもな。
 何事にも軸ってのは必要でな、この国を視るのも、お嬢って軸を得てから結構頭が回るようになったよ」

 要は誰の為の道筋、誰の為の利益を基準とするか。
 狂人が王を称えるのなら、自分は王に讃えられる大将の後を続こうと、
 その道行きに塞がる障害を打ち崩す為の一手を探して回る日々で。

「惚れて悪いか?」

 片目を閉じて首を傾げ、肩を竦めて端的に言う。
 何ら恥じることはない。惚れている。その在り方に、生き様に。

 だからこそ、令嬢にとってもっとも利益になる選択を、
 飼いならされるのではなくどこまでも羽ばたいて視たもの全てを伝え、時には思わぬ方向から敵を射貫く凶烏になるのだと、抜擢を蹴って、今でも飛び続けて。

 だというのに、目の前の令嬢は、黒い怪物は、当たり前のように寝床を設えてくれている。
 これ以上に惚れこむ理由がありはせず、躊躇などなくそう返して。

「ただ暴れてるだけのクソ雑魚なんぞお嬢の刀にゃもったいねえんだよ。
 殺ってて笑えない相手なんざこっちに押し付けときゃいーんだよ。

 戦場でお嬢が嗤ってる貌、俺は好きだぜ?」

 女性への口説き文句に思えて、その実令嬢にだけ使える戦場に在っての賛辞。
 狂人、戦場にあって血煙巻く中で猛威を振るう令嬢を一人の友として敬意を抱いて。

「んじゃ、そろそろ支度を整えますか。
 お嬢が勝つのは当然だ。こう、後の世に戦記として描かれるぐらいの圧勝が良いな。
 城壁? 引き籠らせて飢えさせりゃそのうち開くし何なら情報仕入れて裏口でも抜け穴でも探してやるさ。」

 狂笑の隣で止み始めた雨模様を見据えてそう呟いて、令嬢が歩き出せば連れ立って。
 装備のことを聞かれれば、こっちだってヴァルケス銘なんだぜと、無銘の業物という烏の爪を懐から覗かせて。

「んでも今回慰安婦連れてかねえの?」

 などと、装備より心配していることをふと口にして。
 勝利を迎えて大将が昂った後の鎮めようがまず必要だと言いながら、その場から共に去っていく。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からコルボさんが去りました。