2022/09/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 天文台」にエファさんが現れました。
エファ > 倦んだ空気が淀む季節が過ぎて、日暮れが訪れた後は虫の音の喧しい季節になった。

王城の敷地の片隅、外とを隔てる堀にほどちかい場所にある天文台は、細い月明りの夜空に溶け込むように聳えて、天辺ちかくにあるただ一つの部屋には今、ひっそりと灯りがあった。
部屋の中は大きなテーブルが中心に一つ。灯りはその上に置かれたランプのひとつだけ。
それが照らしているのは、机にうつ伏せている小さな人影一つ。

王城では夏の暑さの気鬱を晴らすように行われていた舞踏会は、今は月見、あるいは豊穣を祝ってのものに替わって相変わらず毎夜のように開かれている。その音曲もここまでは届かず、只虫の音だけが遠くから届いていて、時折ランプの油が立てる音が入り混じる。

「――――…ンン」

人影が身じろぎひとつ。
次にはがばと上体を起こして、驚いたように目を見開いたまま辺りを見回し、それから椅子を蹴飛ばす勢いで周囲にいくつもある窓のひとつに取り付いた。

(――ああ
 寝過ごして、しまったかも…)

分厚い眼鏡越し、月明かりのほとんどない―――言い換えると星のきらめきが散った漆黒の空を見上げる。
じっと、首をゆっくりうごかして、隅から隅まで。

エファ > どれくらい時間がを掛けたのか解らない。
取り敢えず、その動作が済んだあと首が大層疲れてしまったらしい彼女は、大きな溜息とともにかくりと項垂れる。

(明日、また来ないと…
 今度は、時間のほんの少しだけまえに)

あんまりにも張り切って昼間に出歩きすぎた。机に伏して寝てしまった原因を取り敢えずそう結論付けるととぼとぼと机の元に戻る。
散らばっていた、図面のようなものが描かれた紙を回収してひと揃えにすると大事そうに封筒に仕舞い
ランプと机から取り上げて、地上へ一直線に向かう階段へとまたとぼとぼと歩いて行く。

彼女の姿がその部屋から消えれば、そこには星明りと虫の音が満ちる部屋が残った。

ご案内:「王都マグメール 王城 天文台」からエファさんが去りました。