2022/06/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にヨアヒムさんが現れました。
ヨアヒム > 「……という次第なので、高貴な身分に生まれた卿らの誇りと慈悲心に期待する次第なのです。このまま上水道の整備が進まなければ民草の暮らしぶりに影を落とすこと間違いありません。夏場であれば食あたりからの疫病流行も有り得るでしょう」

 今日も今日とて、太った小男の王族は王城のサロンで貴族達から寄付を募っていた。温和そうな顔立ちで、中年男は言葉を続ける。

「アスピダ攻めは終わりが見えん。物価はますます上がることでしょう。民の不安は暴動の源となる。我々が私腹を肥やしても、それらが軒並み灰となっては元も子もない。悲劇が起きた後で暴徒鎮圧に乗り出したとしても、失われたものは戻りません」

 感情に訴えつつ理屈も解く男は、メイドに運ばせた冷たい紅茶に口を付けた後、柔らかく微笑んだ。

ヨアヒム >  やがてスピーチが終わり、礼儀正しい拍手が起こり、幾人かは慈善団体への寄付を口約束して解散となった後、中年男は額の汗を拭ってサロンの奥まった席に腰掛けた。

「やれやれ。貴族の浪費家にゴルドを吐き出させるのが、こんなにも骨が折れるとは」

 独り呟き喉を鳴らして笑った後、男は背もたれに身体を預け、目を閉じた。寄付を呼び掛けた後にしばらく居残るのは、彼の慣習となっていた。景気が悪く、援助を必要とする者が増えた現状、彼に寄せられる相談は増えつつあった。
 孤児院の運営者、慈善事業の資金繰りを任せてある官僚、あるいは彼らと利害が対立している人々。そうした者達との「相談」は、往々にしてこの太った中年男の、下劣な欲望を満たすのに役立つ。
 だからこそ、今日も今日とて善人の皮を被っているのである。

ヨアヒム > その後、しずしずと歩み寄って来たメイドに何事か耳打ちされ、頷いた後、中年王族はサロンを後にするのだった。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からヨアヒムさんが去りました。