2021/12/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城訓練場」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
■メイラ・ダンタリオ > 王城内建設 訓練場 深夜
日は早く沈み、日は遅く昇る
この季節は白い吐息はもはや当たり前のようにこぼれ出る
王城内の石壁で囲まれた、暖気を囲んでいない空間でもそれは訪れる
応接間や、密会場所 適切な気温で管理されなければいけない場所
そんな愛でられる場所とは違い、この場所には暖炉というものはない
明かりもすでに落とされており、メイラはそんな燭台かランタンを手に歩むべき暗礁のような空間の中
一人、訓練場にてランタンを傍に置き、ギザ歯からは白い吐息をこぼさないよう
愛刀に飛沫を賭けることが無いように白くたたまれた上質紙を一枚食んでいる
手元の作業台では、訓練の一環で使われる剣や防具の手入れ法を学ぶ為の場所としてある壁際位置
メイラは洋燈の火明かりの中、鍔と柄を外した剣身と茎だけの姿を紙で包むように携えながら
手元に持つ刀の手入れで使われる“たんぽ”を用い、砥石の粉を塗したそれを用いて
茎の先を薄く 刀身を細かく 打ち子の丸い痕が付いたなら、その半面が重なる様に打ち粉を重ね、
下から上へと塗していく作業 刀で見られる手入れの作法だ。
廷で眠らず、既に寝静まり見張りか、夜遅くまで書物と錬金を行う研究肌を除けば
今ここに要ること自体が稀だろう
しかし王城内、深夜帯にメイラがうろついていたとしても、自身の実績が誰にも異を唱えさせなかっただろう
「……。」
本人も、眠れぬ夜の中何かしらを終え、こうして稽古場という慣れ親しんだ空間で一人静かな夜の中
刀の手入れをして己の調子を整えるかのように振舞っていた。
刀身の半面が終わったのなら、もう半面 ポン、ポン、ポン、と続くガントレットすら抜いた白指で行うそれ。
最後に綺麗に専用の書紙を用いて下からゆっくり、粉を拭う
粉と共に、刀に纏う血脂の残り 刀自体を保っていた塗り付けていた古くなりつつある油が取り払われていく。
そうすると、なにも身についていない、刀の本当の姿が見える
鋼で鋼を包んだ、凶器のそれが、じっくりと赤い瞳に映り込んだ。
この取り払われた姿が、なにも身に着けていない、本当の刀である。
■メイラ・ダンタリオ > 時間は短い 何も身に纏っていない刀というやつは、本当に命が短い
刹那的な鑑賞を終えると、メイラは絹に浸した油で丁寧に茎から上 刀身に纏わせる
そうして出来上がった、血脂や錆びを弾く真っ当な刀に仕上がれば、再びに身に付けられていく鍔や柄
カシンッとはめ込まれた姿と共に、柄頭を手で整えると、なにも擦れる音の無い
濡れた何かを収めるかのように、黒鞘の中へと戻っていく愛刀
「……フーッ……。」
そこで一度、静かにゆっくり鼻腔で息を深く整えたなら、メイラは今度は大脇差も同様に
粉を纏わせ、古い油とそれにこびりつく刀へ残る死臭を取り払う
総てが終わるころには、作業台に背を向け、寄りかからせながら腰に刀を差し込んでいつもの
左側に重みのある姿へと還った。
唇に挟んでいた、飛沫を防ぐ紙を取り払うと刀に注いでいた意識
それが消えて溶け、目の前の明暗がぼんやりとした境界線で分かれた薄暗い訓練場内部を、紅い瞳が映し出す。
両手の白指には、再び黒鉄の まるで手袋のように手首から指先で覆われるガントレットが身に纏われ
内側の黒革のギチリと締まる音 黒鉄のカチリと鳴る手指に収まりを告げ、メイラ自身も
いつもの姿へと戻る。
「……。」
そのまま、まだ眠るつもりもないかのように、ぼんやりとたった一人の空間
火明かりの洋燈の傍で腕を組み、何もすることもなく冷たく冷えた中で
ギザ歯が唇を開くと共に上下が薄く開き、白い吐息がまるでふわりとした軽さを無くした煙のように
辺りに漂い、煙よりも早く溶け消えていく。
ご案内:「」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。