2021/11/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城訓練場」にハヴァン・グレイナルさんが現れました。
■ハヴァン・グレイナル > 王都マグメール 王城 城内訓練場
その日も、やる気のある者だけが訓練場に集まっている
この国の騎士は腐りきっているとは言えど、その腐り方は様々といえた
要領良く他の者の前では程々にこなしながら、賄賂を受け取る者
騎士という剣を捧げた立場にまで上り詰めながら、何者にもなれずに生死の場に居らぬ者
そして、強さだけが総て 計略や立場による悪事から資金繰りすらできず
その身一つだけで王や周りの者らが過ごすような 決して澄んでいない酒池肉林を目指す者
故に、騎士団の中の一団総てではなく 一団の中のやる気のある者らが幾つもばらけて集う
それは自然な道理といえる
剣術の訓練よりも、書類を眺めて過ごすほうが実利に適う者もいれば、剣術稽古をさぼり
酒と女に浸かる貴族出の腐敗息子など 一団全員がやるよりも 複数が集うほうが熱気に満ちている
木剣による見習い以下の稽古ではなく、刃潰しを終えた武器による稽古は
実際の鎧や自身の愛用する防具を身に着ける もしくは同じ程の重量のものを身に着けて行われていた
鋼と鋼がぶつかり合う音が響く中で、私もまた、老いて尚体格と筋量を維持する老兵相手に
もう一人の片割れと二人がかりで剣を交えている
片手剣とダガーの中間に位置する、山刀・マチェット程の短い剣なれど、肉厚なそれを
片手で斬り続けるそれはリーチの差はほぼない
二人の剣撃を捌き、避け、受け止めながら間合いをまた空けるように弾き飛ばしてくる格上の相手
周りが、老いて尚衰えずの老兵相手への訓練に、汗を流し連携術に勤しむ
一対一の 騎士と竜が挑みあうような絵物語などは夢のようなもの
殿同然の出来事や、どうしようもない事態以外では発生しない
人間は弱い生き物だからこそ 弱い故に鍛え上げ、数人がかりで一人を仕留める
重層な騎士の首や胴体の繋ぎ目の隙間に、3人がかりで刃を突き立てること自体
戦場では実にもっともな戦法なのだ
しかし、老兵相手にいくら奮おうと、私も、もう一人も追いつけない
やがては刃を潰し合った剣であるというのに、もう片割れの剣が折れるという事態による
この場は収まることとなっただろうか
「ハッ……ハァッ……ハァッ……。」
汗を掻き、頬が熱を帯びている
良い相手に恵まれたと言えるだろう 体が敗けた悔しさよりも この経験を悦んでいた
「―――ご指導ありがとうございますっ。」
刃を潰した中間丈の肉厚剣を、鞘の中へ納め、互いに老兵へ向かって腰をまげて礼を取る
全員が、この訓練場の熱で身体を浮かせていた。
■ハヴァン・グレイナル > 老兵の衰えぬ筋力 経験 剣捌き
重量剣の相手には獲物を棍に持ち替え、肩や膝を狙うなどして転倒させるなど
老いと衰えは決して比例しないという事態を、目の前に立っていなくても私は見せつけられた
老兵故に、腰や古傷の痛みもあるだろう中、何人かが終わればその日の訓練の老兵相手は終わるだろう
私を含め、一撃 二撃をもらった相手は少なからずいる中、私は手ぬぐいを頭からかぶり
その長い臙脂色の髪に纏わる汗を吸い取っていく その表情は硬く厳しいものではなく、笑みを浮かべている
廻りが、疲労や唯々経験に圧倒される中で、蛇目のような深緑色の縦筋を帯びた私の瞳は 今だ気力充実だった
周りがなぜと聞くのなら、答えは一つでしかない
「私は、腐っていないと実感できる もっともっと強くなれていく行為を、今し続けていると感じれる。
だから、このやりとりがたまらなくうれしい。」
頬の一筋の裂傷痕を持つ貌が笑みを浮かべたまま、まるで騎士を夢見る子供のよう
他の腐りきった貴族や肥えた体を鎧で包む形だけの騎士
それらが忌避する疲労を嫌い、怪我を嫌い、酒と女の悦楽から離れた苦行であろうとも
タナールやアスピダのような延々と続くものがある限り、最前線と王城を行き来する日々であれど
私たちは新たに塗り替わっていくとわかる
それを見た他の男女らも、重い思いの欲望はあれど、強くなりたいという意思だけは繋がっている
だからこそ、圧倒的な経験の差で離されたこの経験が、全員の糧となっているだろうか
此処にいる騎士が、欲望有れど全員騎士で在れ という光景になっている。
ご案内:「王都マグメール 王城訓練場」からハヴァン・グレイナルさんが去りました。