2021/09/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にロイスさんが現れました。
ロイス > 王城の廊下を、男が歩く。
あまり、着こなせているとは言えない夜会服を着て、ゆっくりと。
その所作は、優雅であるというよりは、寧ろこそ泥の慎重さの様にも見える。

そう。彼は泥棒ではないが、侵入者なのである。
彼は本来この様な場所に出入りするのも烏滸がましい――冒険者なのだから。

「(とりあえず、ここまではきた。それにしても、何でこんな事に……)」

そろりそろりと歩く男。
その目的は、金品ではなく情報である。
これが、どこそこの国の機密情報というのなら、格好がついたのだが。
彼が求めるのは、もっと俗なものだった。

「(王族の食べ物の好き嫌いを知りたいってさあ……いや、重要性は解ってるつもりなんだけど)」

今回、この情報の入手を依頼してきたのは、男が懇意にしている貴族である。
諸々の事情で、その貴族が仕えてる王を招く事になったという。
そこで困った事になった。
家の誰も、その王の嫌いなものを知らなかったのである。

歓待の場において、嫌いなものを出す。
これは、それだけで相手に対する侮辱となりうる。
例え、その王自身が許しても、周囲の貴族は王族を侮辱したと噂するだろう。
その結果、交易や国防に支障が出れば――多くの民が死ぬ結果にも繋がりかねない。

という様な事を、半泣きの成人男性から説明、説得された。
この手の泣き落としには滅法弱いロイスは、仕方なく承諾したのだが。
伝手をフルに使っても情報が得られず、ついにこの様な行為に出てしまったという訳で。

「(もしバレたら死ぬよな……)」

それも割と酷い死に方をするだろう。
そう考えると、此処は何処のダンジョンよりもよっぽど恐ろしい。
改めて気合を入れ直し、廊下を進んでいく。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からロイスさんが去りました。