2021/05/31 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にリュクスさんが現れました。
リュクス > 祖母に呼ばれて夕食を共にしたのは予定のうちだけれど、早々に退散するつもりだった。
やはり己の屋敷でなければゆっくり休めないし、色々と気づまりでもある。
しかし、食後のお茶を一緒に、眠るまでカード遊びのお相手を少し、などと請われて、
無碍に出来る薄情さも、やんわり断れる如才なさも、まだ持ち合わせに欠けていた。

結果、宛がわれた客用寝室のひとつにて、ひとまず湯浴みを済ませ、
祖母の侍女が用意してくれたネグリジェ風の寝間着に身を包んで、バスルームの扉を開き、
――――――ふと、怪訝顔で首を傾げた。

「あれ、……閉めてあったと思ったけれど、忘れていたかな」

白いカーテンがふわふわと、夜風に揺れている。
風呂上がりの上気した頬には、その風は心地良かったけれど、
テラスへ続く窓が開いているというのは、いかにも落ち着かない。
髪の水気を取っていたタオルを肩にかけたまま、室内履きの足で窓辺に近づいて、
カーテンを掻き分け、薄く開いていた窓を閉じようとする。
そのついでに、何気なくテラスを窺い見たのは、異質な気配を感じた―――――
などという、明確な理由ではなく。
ただ単に、小動物でもそこから這い出ていたなら、締め出してしまうのも憚られる、
その程度の軽い気持ちで、だった。

リュクス > 目が慣れるまでに少しばかりの間を要し、ひとわたり。
眺め渡したテラスに、佇む人影も、蹲る何かも居らず。
それではやはり、入浴前から窓は開いていたのだろうか、風で開いてしまったのだろうか、
そんなことを考えながら窓を閉じて施錠し、カーテンを引いて、
寝台へ向かったその足が、途中でぎくりと止まる。

「え、………え、あ………?」

きらり。

金色に光る一対の眼が、闇の中から此方を凝視していた。
黒々とした影が、寝台の上にもっさりと――――――

「―――――――な、何だ……猫、か」

なぁあう、とひと声。
無意識に身構えていた肩から、ふっと力が抜ける。
寝台へ歩み寄り、片隅に腰かけて、もさりとした長毛種の毛玉を抱き上げた。

「おまえ、何処から来たの?
 何処かの部屋で飼われてる子かな、毛艶が良いみたいだし……」

人懐こい反応からして、野良ではないだろう。
しかし、――――――もう、夜も遅い。
今から飼い主を探すのは、あまり現実的な案とは言えなさそうだ。

物怖じしない黒猫を抱え、ともに寝台へ潜り込んで、
今夜は猫と共寝と洒落込むことにした。

翌朝、ご飯を欲しがる黒猫の猛アピールで、早起きを強いられることになるのは、
また、別の話だ。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からリュクスさんが去りました。