2021/05/23 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城敷地内 王国軍演習場」にミシェルさんが現れました。
■ミシェル > 「皆様、この度はようこそお集まりくださいました!」
王城敷地内の演習場の一角、その隅に集まっている王族、貴族、騎士達の前で挨拶するのは、
男装の麗人とその助手と思わしき白衣の者たち。
女男爵、ミシェル・エタンダルは今回、遺跡から発掘した魔導機械、いや魔導兵器と呼ぶべきであろうか、
を復元し、それをお披露目するためこうして王族貴族や軍人達を集めているのだ。
「では早速見てもらいましょう、あちらです!」
そう言ってミシェルが指し示せば、助手の一人がそれを覆っていた布を取り払う。
そこにあったのは、木の骨組みに鋼板を張り付け、車輪を付けたような、
所謂装甲馬車(ウォーワゴン)の類に見えるもの。
しかし、それには馬をつなぎ留める部位もなく、前からは何か筒のようなものが突き出ていた。
「あちらが今回お見せします、火を吐く装甲馬車です!しかも馬いらず!」
そう説明するミシェルに、集まった貴族達から訝し気な視線が浴びせられる。
だがそれを気にするでもなく、ミシェルは指を鳴らした。
すると、ギギギ、と何かが軋む音と共に、装甲馬車がゆっくりと動き出した。
観衆が小さくどよめくのを後目に、馬車は少しずつ速度を増していく。
「武装のほうですが、こちらは魔導火炎を放射するものとなっています。ドラゴンのブレスにも負けませんよ?」
そう言ってまた指を鳴らせば、前から突き出ていた筒から、勢いよく炎が噴き出る。
貴族の何人かが、わっ、と驚きの声をあげた。
装甲馬車は得意気に火を吹きながら、ぐるぐるとその場を走り回っている。
「さぁ皆様、こちらどうでしょう?軍に役立つと思うのですが。
是非とも研究資金を頂ければ、いずれアレの再現及び量産化も…」
その時だった、バキン、と何かが折れるような大きな音が響いて、
ついで装甲馬車が急旋回したかと思えば、それは全速力で走ってきた。
……そう、こちらに。
「……に、逃げよう!」
猛全と火を吹き迫る装甲馬車から、ミシェルが駆けだしたのを皮切りに、王族貴族達は皆散り散りに逃げ出した。
先ほどとはうって変わって、悲鳴が演習場を包み始めた。
■ミシェル > 「は、はは、は……」
焼け野原になり、辺りに機械部品の飛び散った演習場の一角を見ながら、
ミシェルは引きつった笑みを浮かべる。
そして、がくりと項垂れ、地面に手をついた。
結局、暴走は止まらず、せっかく掘り出した魔導兵器は最後には自爆。
奇跡的に死人は誰も出なかったものの…研究成果はパアである。
「強度が足りなかったのかな…うぅ…」
木製の骨組みでは装甲を支えられなかったのだろう。
発掘されたのも機関部や操作部なんかの機械部品と設計図だけ。
後はマグメールの事件でそれらしく補ったのだが、まるで技術が足りなかったらしい。
「……あー、皆さん、見ての通り試作品は粉々になりましたから、
今日はこれでお開きということで」
後ろを振り向いて、見に来ていた貴族王族にそう告げる。誰もかれもが一瞬、ぽかんとした。
そしてすぐさま、どう責任を取るんだだとか、反逆のつもりかなどと怒声が響くが、ミシェルにはどこふく風。
研究に失敗はつきものなのだから、怒るほうがおかしい。
しかし、ここまで派手に失敗されるとへこむのは確かで。
「はぁー…………」
ミシェルは大きなため息をつきながら、いつまでもへたり込んでいた。
ご案内:「王都マグメール 王城敷地内 王国軍演習場」からミシェルさんが去りました。