2021/05/14 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にヴェレニーチェさんが現れました。
ヴェレニーチェ > やや寝不足気味のぼんやりした顔で、あちこちで人に道をたずね、
ようやく辿り着いた広場の前、少女は思わず立ち竦む。

「……ここが、お城………」

見上げる城門、荘厳な佇まいの王城。
その中に住まう人々はきっと誰も彼も、美しく着飾って、優雅に微笑み、
夜ごと、贅を凝らした宴に興じているのだろう。
質素なドレスと野暮ったい靴、という格好の少女は、あまりにも場違いに思える。
祖父が記してくれた、旧友たる貴族に宛てたという書状を胸に、
城門脇を固める守衛に、堂々と取次を願えば良いのだろうとは思うが、

「………どう、しましょう、……本当に、大丈夫かしら」

生まれてから一度も、王都に足を踏み入れたことさえない。
祖父の名前が、どの程度、知られているのかも判然としないから、
もしも怒鳴りつけられたり、門前払いにされたりしたら――――
そんなことばかり考えて、足が動いてくれないのだ。
このまま、こうして立ち止まっている方が、ずっと怪しいかも知れないが。

ヴェレニーチェ > ―――――ふと、目の前に影が差す。

はっと気づいて顔をあげると、恐ろしく近くに、衛兵と思しき
かっちりとした身なりの男が立っており、こちらをぎろりと睨み下ろしていた。

「あ、………あ、ごめんなさ、いっ……」

本当はここで、この人に書状を提示し、取次を願い出るのが正解なのだと思う。
けれどもほとんど反射的に、少女はぺこりと頭を下げ、
慌てて踵を返し、男の前から逃げ出してしまった。

怪しまれるかも知れない、今後、もっとここに来難くなるかも知れない。
なぜ、自分がそんな行動に出たのか、首を傾げて立ち止まったのは、
もうずいぶんと、城から離れてしまった頃のことだった――――――。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からヴェレニーチェさんが去りました。