2021/05/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にフローレンスさんが現れました。
フローレンス > 夜会の類にはまだ縁がない、もしかすると一生無縁かもしれない。
そんな『姫君』に与えられた寝室、白絹の寝間着姿でベッドに潜り込み、
ようやくうとうとし始めた頃に、その音を聞いた。

「――――――――、なに……?」

むくりと上体を起こし、暗がりの中で目を凝らす。
少なくとも同じ部屋の中に、動くものの気配はない、ように思えるが、
扉一枚隔てた次の間には、まだ、侍女が控えているかも知れない。
彼女が何かしたのだろうか―――――何か、それなりに大きなものが落ちる、
または、倒れる音、だったような気がするけれど。

「………………」

どうしよう、と、元来気弱な性分である身としては、とても迷う。
聞こえなかったことにして、眠ってしまうのが正解だろうか。
けれど、もし、逃げた方が良いような危険が迫っているとしたら――――
それよりも、もし、侍女の身に何か起こっているのだとしたら。

助けになるような力は持たない身だけれど、それでも。
暗がりの中で一人、コクリと頷いて、素足のままで床に降り立つ。
灯りが無くとも、部屋の中ならさして不自由も感じない。
そろり、そろりと足を進めて、次の間に続く扉へ手を掛け、

「どうしたの、……なにか、あったの……?」

まずはそっと声を投げかけて、反応を窺う。
物音や声が返ってくるか、侍女が無事ならば、当然向こうから扉を開けてくれるだろう。
そうでなければ―――――こちらから扉を開けて、様子を見なければならない。

フローレンス > しばらく待ってみたが、答える声は無い。

仕方なく、本当に嫌だったけれど、扉をそっと押し開いた。
暗がりに一条、ほの赤い光が差し込んで、思わず目を細める。

テーブルの上でランプの灯りが揺れる、次の間に人影は無かった。
居てはならない何ものかも居ない代わり、居るべき人物も居ない。
動くものが、なにも見当たらないことに安堵すべきなのか、
誰も居ないことに、不安を覚えるべきなのか。
逡巡はほんの一瞬で、『姫君』は小さく首を振り、

「………きっと、誰かに会いに行ったんだわ」

そう、無理やり自分を納得させて。
扉を元通り閉ざし、ベッドへ駆け戻って潜り込むと、
ぎゅっと目を瞑って、両手で耳を塞いだ。

次の間から先、廊下へ出て侍女を探す勇気は持てない。
そうして震えながら縮こまっているうち、再び、睡魔が意識を掠め取りにくるだろう。
見る夢はきっと、穏やかならざるものだろうが――――――。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からフローレンスさんが去りました。