2021/05/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にリュクスさんが現れました。
リュクス > 新築したばかりの邸宅に居を構え、未だ、ひと月と経っていない今。
本来であれば、のんびり庭園散策を楽しむゆとりなど無いのだが、
今日は母方の祖母君に書状で呼ばれ、取り敢えず城を訪ねたところ、
少し待て、との仰せで、ぽかりと空いてしまった時間。

部屋の前で待つのも無作法であろうし、サロンは色々と気詰まりだ。
溜め息交じりに窓の外を眺めたところで、庭園の薔薇が綺麗だと気づいた。

散策の果てに見つけた、木陰の四阿に足を踏み入れ、
ひんやりとした石造りのベンチへ腰かけて、緩く足を組み上げる。
携えていた帽子とステッキを傍らへ置き、組み合わせた両手を膝の上へ乗せて、
四阿の丸い天井を仰ぎ、ほう、と肩で息を吐く。

常に人目に晒される立場を、選んだのは己自身。
しかし時には、誰の眼からも逃れて、ぼんやりと過ごしたいものだ。

「それにしても、……お祖母様のお話とは、一体何なのだろう」

引っ越し祝いか、世間話か、あるいは縁談、それとも。
何にしても、少し、身構えてかかる必要はありそうだった。

リュクス > 少なくとも、己の視界へ入る範囲に、人影らしきものは見当たらず。
涼しい日陰でほんの少し寛いだ気分にもなりながら、
祖母が己を呼んだ、用事、の中身に思いを馳せる。

例えば縁談の類ならば、未だ若年であるから――――
そう言ってやんわりと断ることは、出来る、だろうか。
祖母はあの悲劇から数か月も経たないうちに、もう、
最初の縁談を持ち掛けてきたである以上、聊か難しそうだ。
ならば他に、心に決めた相手が居る、とでも―――――

「………無理、だろうな。
 きっと、何処の何方なの、って、根掘り葉掘り訊かれる」

その全てを、嘘とでっち上げで切り抜けるのは骨が折れそうだ。
いっそ、女性に興味が無いのだと打ち明けたらどうだろう、などと、
埒も無いことを考えて、そっと苦笑を洩らし、

「きっと駄目だな、……恋愛と結婚は別物です、って、
 ますます熱心に勧められるだけだ」

様々に特殊な性癖を持つ者が、存外、多いのが貴族というもの。
男が好きでも、妻を娶ることは出来るだろうと、押し切られるのが落ちだ。
では、さて、どうしようか――――――。

リュクス > ―――――ふと、何処からか己の名を呼ぶ声が聞こえた。
己の名、いや、兄の名だ。

視線を城館の方へ戻すと、お仕着せを纏った侍女が一人、
此方へ小走りに近づいてくるところだった。

「ああ、……お祖母様が、お呼びですか。
 どうぞ、そのままで、……私が、其方へ参ります」

軽く片手を挙げて応じ、ステッキと帽子を携えて立ち上がる。
考えても仕方ない、とにかく何より避けねばならないのは、
祖母を必要以上に待たせて、機嫌を損ねることだろう。

意図して大きな歩幅を駆使し、庭園を横切り侍女の下へ向かう。
彼女の案内を受けて、祖母の待つ部屋へ――――――。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からリュクスさんが去りました。