2021/04/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にナディアさんが現れました。
ナディア > 未だ新婚と言っても良い時期だが、とある夫婦の夜はとても早い。
夫婦は同じ寝室に入るが、夫と妻が睦言を交わすことは無く、
広いベッドへ無邪気に寝そべる夫に、妻がすることは本の読み聞かせ。
その本の中身はと言えば、勿論、子供向けのお伽話だ。

数ページほども読めば、夫は眠ってしまう。
おやすみなさいの接吻をその額へ落とし、そろりと寝室を抜け出せば、
いつも、薔薇色の唇からは溜め息が零れた。
今夜もそうして溜め息を吐き、ふと思いついて足を向けたのは、
後ろ暗い噂には事欠かない、城の地下へ続く細く長い通路。
擦れ違う人も無く、灯りも点されておらず、手にした燭の焔だけを頼りに、
暗さに怯え慄くでも無く、悠然と歩を進めながら、

「全く……こんな時間に、お子ちゃまと一緒に寝る、なんて、
 そんなの、はなから無理なのよ。
 そうでなくても、ここじゃ色々と息が詰まるし……」

地下にミレーが集められているだとか、王家への反逆者が囚われているとか。
この際、そんな連中を摘まみ食いでもしてやろうか、というのは、
まあ、冗談ではあるけれども。
せめて何か、魔族である己の好奇心を満たしてくれる見世物でもあれば、と、
その程度の期待は抱いていた。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にトーラスさんが現れました。
トーラス > 薄昏い通路の先、石造りの階段を降り始めると、
何処か遠くから、何かの声らしきものが聞こえてくる。
それは男の絶叫であり、女の嬌声であり、或いは、獣の唸り声に聞こえたかも知れない。
ただ一つ、確かなのは階段を一歩一歩と下るに従って、
仄かな空耳を疑うような声が、少しずつ輪郭を露わにして現実感を帯びていく事だろう。
やがて、階段を下り切った先には重厚な扉が松明の灯りに照らされている。

「――――ん……?」

その扉の前、見張り役なのだろうか、一人の中年男性が立っている。
彼は階段を降りてきた女の姿を認めると、すん、と鼻を鳴らして、
ドレス姿の淑女の姿を値踏みするように不躾な視線を送り。

「こんな場所に珍しいお客さんだな。
 此処から先は公爵様の許可がなければ通れないんだが、
 ……それとも、招待されたのかな、お嬢さん?」

頭の天辺から爪先迄、視線を一巡させて、その左手の薬指を飾る指輪に
僅かばかりに双眸を瞬かせるも、扉の取っ手に片手を掛けながら、
彼女に奥へと押し通る意志があるのか否かを尋ねて見せた。

ナディア > 突き当たりの階段を降り始める頃、ソレ、が耳に届き始めた。
悲鳴なのか、嬌声なのか、断末魔の叫びなのか、獣の咆哮なのか。
まともな神経を持つ貴婦人であれば、当然、足を止めるべきソレに、
己は軽く瞬いたのみで、歩みは更に前へ、下へと向かう。

前方に、松明の辺りが揺れていた。
閉ざされた扉、声は、音は、その向こうから聞こえるものに相違なく。
見張り然として佇む男の姿を、手燭を軽く掲げることで確かめ、

「公爵様……さあ、どちらの公爵様にご招待頂けばよろしいのか、
 残念ながら、わたくし、存じませんけれど……」

招かれざる客であることを、悪びれもせずに明かしながら。
心なし、濡れたような艶を増した双眸で、男をじっと見つめ、

「その公爵様の御名前と、カルテネルの名と、
 ここでは、どちらの方が上なのかしら……?」

ねぇ、と語尾を上げると同時、薔薇色の唇が甘く弧を描く。
更に一歩、足を踏み出しながら、燭を持たぬ方の手を、
指輪を填めた左手を、男の胸元へ差し出し。

「貴方が、諦めた方が良いと仰るなら、そうしても良いわ。
 もっと楽しいことを、貴方が、教えてくださるなら、ですけれど」

トーラス > 招かれざる客である事をあっさりと暴露する女の様子に、
扉の取っ手から片手を離すと、彼女が名乗る家名に肩を竦めて苦笑して見せる。
ハッタリでなければ関係者なのであろう、彼女が口にした王家の名前。
王族と貴族の最高位である公爵、何れかが上なのかと問われれば、当然――――、

「生憎と俺は雇われている身なんでね。
 王様だろうが、皇帝だろうが、びた一文払わないお偉いさんよりも、
 金を払ってくれる方が偉い、な」

依頼を受けた冒険者として優先すべきは雇い主の方。
王宮内の序列など、雇われ者の彼にして見れば無関係の話で。
招待も受けていない彼女を門前払いにしよう、とし掛けるも、
胸元に伸ばされる手と、次いだ言葉に双眸を瞬かせると、口端をにんまり、と歪め。

「はっ、……悪い若奥様だな。
 好いぜ、こんな薄暗くてジメジメした所で貴族の悪趣味を覗くよりも、
 もっと愉しい火遊びを教えてやるよ。」

指輪を嵌めた左手を掴むと女の手を引いて、彼女が下ってきた階段を登り始める。
背徳と享楽にまみれた、もっと楽しい事を相手に教える為に、何処かへと姿を消して。

ナディア > 己にとっては、どちらでも構わないのだ。
王家であれ、公爵家であれ、己からすれば単なる餌。
その点に関しては、目の前の男も同等、である。

「そう、……そうね、お金をくれるかどうか、それは重要ですわね。
 わたくしだって、何もくれない方よりは――――…」

ふふ、と小さく吐息で笑ったのは、男が己の手を取ったその時。
己の掌ひとつ、容易く握り込んでしまえる大きな掌から骨張った手首へ、
それから力強い曲線を窺わせる腕、肩と、細めた視線で辿りながら、

「まあ、随分な自信家ですこと。
 でもわたくし、強気な殿方は好きよ、……中身が伴っていれば、ですけれど。
 つまらなかったら、大声で衛兵を呼んでしまうかも知れないわ、
 ――――期待しても、良いのでしょうね?」

男が何処へ向かうつもりか、問い質すほど野暮でもない。
脅しめいた物言いも、ひどく楽しげに、笑い交じりに。
刺激的な遊戯の予感に、豊かな胸を弾ませながら―――――何処かへ、と。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からトーラスさんが去りました。
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