2021/04/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にイスラさんが現れました。
イスラ > 落ち着く事が出来なかった。此処暫くずっとそうだ。

「 ふ――は…」

そっと硝子戸を閉じたのなら。背後で続く喧噪が、ある程度小さくなってくれた。
肌寒さ一歩手前の涼しい空気も、酒気と熱気を孕んだ身体には心地良い。
何より…これで。少しは他人の気配から遠離る事が出来る。

「 どうしちゃったんだろうな。 …まったく…」

ぐずぐずとした疼く物が。頭の中と腹の奥とで這い回っているようだ。
正確には。腹というより、胎と呼ばれる場所。この半端な肉体で、紛れもなく女性由来である臓器。

先日久方ぶりにそちらを用いた。今させられている格好に相応しく、女として振る舞った。
おかげですっかり、その胎が目覚めてしまったらしい。
今夜会を抜け出し、このテラスに出て来たのも…その為だ。
人目に紛れて睦み合う男女。物陰での奉仕を命じる貴族、命じられる侍女。
そんな物に目を惹かれ、意識が取られて…男としてより、女として。熱い物を覚えてしまった。
堪らず逃げ出し、ようやく…落ち着き始めた、気もするが。

「 暫くは、このまま…なのかもね――」

望ましいような。難しいような。
矢張り、偏ると困惑せざるを得ないらしい。
手すりに肘を、続いて上腕の上に頬を載せ。一先ず…落ち着くまでは此処に居ようと。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にブレイドさんが現れました。
ブレイド > 今日も宴やらで、また見回りに使われている。
だれもこんな馬鹿げた王侯貴族様の乱痴気騒ぎの見回りなど
好んでやりたいなどと思うわけもないのだ。
身分の低い衛兵などはとくに。まったく、副業というのも困りものだ。
所属する師団が解体されてもまだ便利に使われているが、今着ている鎧と槍の代金だと思おう。

会場そのものは宴もたけなわと言ったところ。
多くのやんごとなき方々がお盛りになっておられる。
全く気楽なものだ。他の衛兵もうんざりといった様子を見せており
自分もそう。

今は廊下を歩いて周辺の警備にあたっている。
そうしていると、風の流れを感じた。
誰かが外に出ているのか…テラスの方へと足を運べば窓が空いていた。
外の方へと視線を向けるとドレスの令嬢。

「宴の方はよろしいんで?風邪引く…きますぜ…」

どうも丁寧語というのは慣れない。

イスラ > もう暫く涼んでから戻ろう。そう決めた。
ある程度時間が経てば、始まってしまった男女のアレコレも収まるか…
もしくは場を移して本格的に、という事になり。何れにせよ広間からは人も捌けていくだろうから。
そうして頬肘を着いたまま。暫し時間を潰そうと考えていたのだが。

「 ――――…?」

背後から声が掛かった。テラスに人が居る事に気が付いて、見に来た者が居るらしい。
続いて掛けられた言葉からして。なるほど、気を使われたらしい。目の前へと垂れた髪を払いつつ顔を上げ。声のした方へと振り返る。

「 大丈夫、そう長居する気はな―― 、ぃ、よ ?」

さらりと流すつもりだった声が。半端な形で跳ね上がった。
それはもう明らかに、動転した声である事を。自分自身認めざるを得ない声。

だが、仕方ないだろう。この数日の、違和感めいた変調は。紛れもなく――其処に立つ彼によるものなのだ。

「 ぶ、れい、ど…?」

ブレイド > 振り向いてみせた顔はやや中性的にも見えるが
薄く化粧の乗ったその顔は気の強そうだが凛としたお嬢さんと言った風体。
白い肌に濃紺のドレスはよく似合っている。
どうにも退屈そうな、というか…鬱屈とした様子をみせていたが
宴の中に居場所がなかったのだろうか?

「見回り中に貴族のお嬢さんになんかあったら
オレも困っちまうんで…まぁ、あそこに居づらいってのはわかる…わかりますけど」

返事を返す令嬢の声が、少し上ずった。
白目がちな強気そうな目を丸くしているようで…
そして名を呼ぶそれを見れば、自分もハッと気づく

「イスラか?」

名を呼び返せば歩み寄って、顔をよく見てみる。
前に見たときは少年らしい姿だったため、遠くからでは
一瞬、見違えてしまった。

イスラ > 「 そう。冒険者って――こういう仕事もするんだね、知らなかったよ」

もう一度声を聞けば。間違いではないと確信出来る。
こちらからも、しっかりと相手の顔を見てみたのなら。兜の向こうに覗く顔には、確かに見覚えが有った。
何れ再会するとは思っていたものの。流石に、この王城でというのは想定していなかった為に。
まるっきり不意打ちを受けた頭が…まだ。ぐるぐると混乱しかかっている。
そういえば、どうだっただろう。夜会だとか、こういった場では。お嬢様として通っている事を。
先日説明していたような…出来ていなかったような。
そんな記憶もしっかりと出てこない辺り。現在進行形の当惑と。
先日の嵐のような時間とが、どれだけ大きかったか…という所。
くしゃくしゃと髪を掻き。少し視線を逸らす形で首を傾けながら。二度、三度…何度も呼吸を繰り返し。
それでようやく。しっかりと、向き直す事が出来るようになる。

「 取り敢えず、先日振りだね?
――まぁ、うん……絶賛。お仕事サボっている真っ最中だよ。
キミの言う通り、ちょっと…居辛くて。」

ブレイド > 「冒険者というか…まぁ、少し前に王国軍の師団に世話になってな
それから、王城での面倒事も、たまに受けてる。
めんどうだけど、まぁ…こういういいこともたまにはあるもんだ」

兜を脱げば素顔と耳が晒される。彼女にとっては見覚えのある顔だろう。
声から判別してもらえたのだから、顔を忘れられているということはないだろう。
とはいえ、イスラの方はかなり面食らっているようだ。
たしかに、貧民地区でウロウロしていた冒険者がこんなところにいれば驚いてしまうだろう。
着飾り、美しくセットされた髪をかき乱せば
こちらとしても目に焼き付いた、いつかの彼女。

「サボりか。
たしかに、ああいうとこは苦手かもな。イスラは。
男の姿だったら多少は楽しめたか?」

少し意地悪を言ったかも知れない。
だが、前にあったときに女としての経験は薄いと聞いた。
男としてならそれなりに経験があったということだろう。
こういう席では娘として扱われていたようだから、そんな彼女にとっては
退屈な席にはちがいない。

イスラ > 「 器用だね。…正直、羨ましく感じるよ。」

素直な褒め言葉でもあり。…ほんの少しだけ、言葉通りの羨ましさも含ませての答えだった。
彼のように上手い事立ち回る事、生きる事が出来たなら。
それこそ貧民地区のままでも生きて行けたかもしれない。もっと…ずっと、自由に。

彼の方も、他に此処を見ている者が居ないからだろう。兜を脱ぎ、きちんと顔を見せてくれた。
顔だけではない。兜のお陰で隠されていたのだろう、ミレー族らしい耳についても。
二つの特徴から、間違い無く彼である事を確認出来たなら。
…少しずつ気が緩んで来たのだろう。先程まで肘を着いていた手すりに、今度は背中を預けて凭れ掛かる。
あまりお嬢様らしくない行儀の悪さだが。見られていないなら良いだろう。

「 ――割と?
ぅ、ん。愉しめたかもね。…まぁあんまり大勢でって得意じゃないから。
どうせなら誰かと一緒に抜け出して…とか。してたかも。
けれど、流石にこの格好だと、ね。きっちり釘を刺されてるって所だ――よ。」

彼の言う通り。男としての経験の方が、近年は多いから。
実際何処かの、本物のお嬢様お姫様にでも。手を出していたかもしれないと、あっさり肯定してみせる。
ただ。今夜はドレスを着せられたから。女として振る舞わなければいけないのだ。
それが当主…父親の意向でもあるのだろう。羽目を外させない為、も。有るかもしれず。
大袈裟に首を竦めてみせた後。軽く、裾を持ち上げてみせて。
「似合うかい?」などと問い掛けてみる。

ブレイド > 「ソロの冒険者ってのは何でも出来るようになんねーとな。
器用貧乏って言われんのもしかたねーけどな」

魔法とこういうのは苦手だが。と、苦笑して
槍を肩で支えるように担いで見せる。
ついでにいえば、丁寧語もうまく出来たとは言い難いのだがそれはそれ。
彼女が穏やかに接してくれたことを考えれば、アレでも問題はないのかと
少しばかり思い違いをしてしまう。

手すりにもたれる彼女は貴族の令嬢というよりは
貴族の格好をしているものの、市井のすこしばかり活発な少女という感じだ。

「はは、オレもそうだけどな。
ってか、オレの場合はこれだからな。無礼講って言われてもなんも出来やしねぇ」

耳を指差し、彼女の姿を頭の天辺からつま先まで
撫でるように目を通す。
肯定する言葉に反して、似合うかと問う少女の姿は美しくあって。

「おう、おかげさんで見違えちまったよ。
綺麗だぜ?」

イスラ > 「 良い事じゃない。なにも出来ないよりはずっと良いと…思うよ?」

貴族の生き方というものは。思ったより自由ではなかった。
力が有るかのように見えて…実際にその恩恵に与る事が出来るのは極一部。
半人前の子供達は寧ろ窮屈さばかりを強いられるし、それを乗り越え成人と見なされるようになっても…
末弟ともなれば、受け継ぐ事の出来る実入りは、決して豊かとは言えそうになく。
それはもう、機会が有れば羽目を外したい。鬱屈を晴らしたい。そういう者が居るのも仕方ないかもしれないと思えてしまう。
…勿論。それは自分自身の視点、貴族側の視点でしかなく。外から見たなら、また違うという事は。きちんと把握しているつもり。

今こうして、彼へと向けてみた問い掛けも。
気紛れや気晴らしの一つだったのかもしれないが。

「 ……っ、ん。……ぉ…ぉぅぅ…」

思っていたよりも真っ直ぐに。きっちりと。返されてしまった。
誇張でもお世辞でもないのだろうと、それも悟れてしまうような声で。
…そういえば。女の姿を褒められる事に弱かった、という自覚を。今更思い出してしまうのだが。
その時にはもうきっと。彼の前で、すっかり色を帯びた頬を。
照れ臭さと気拙さとで、何とも所在なさ気に視線を彷徨わせる様子を。晒してしまっているのだろう。

ブレイド > 「羨ましいってのは、自分はなんも出来てねーとでも?」

そうおもっているのだろうか?
確かに貴族の…いわゆる社交界というやつや、お家の都合は
彼女にとっては窮屈なものなのだろう。
大人になったとしても、今の…彼女いわく、中途半端なことが周囲に知られるわけにもいかず
生き方を変えることもそう簡単にはできまい。
だが、貧民窟の生まれでありながら、今ここで生きながらえている。
彼女が出来ることをやったということだろう。

それに、気晴らしであれ何であれ
彼女と会えたということは、少女にとっては何でもないことだろうが
こちらにとっては幸運だっただろう。

「なんだよ、感想言っただけだってのに。
照れたのか?」

彼女の頬は夜闇でもわかるほどに朱に染まっている。
しかし、構わず歩み寄ってその頬に触れようと手を伸ばす。

「オレの前ではオンナでいるんじゃねーのか?」

なーんて、と冗談めかしながら、いつかの睦事のさなかの言葉をおもいだして。

イスラ > 「 それこそ。ボクの方こそ器用貧乏。中途半端さ。
――どっち着かず。言われた通りの側になりきるだけ…なんだから。」

男と女。どちらでも居られるといっても。それもまた、自由とは限らない。
好きな時に、好きな側で。好きな風に振る舞える…という訳でもないのだから。
考えてみれば。普段、男のようにしている時の方が多いのは。
女でいる事を強いられる、今のような状況への。反動が多々有るのかもしれない。

彼との会話で改めて。此処数年の…貧民街から貴族社会へと、拾い上げられた後の自分自身を。
客観的に分析する事が出来た。
残念ながら、決して楽しい結論が出た訳ではない為に。少し、ふて腐れたように。頬を膨らませてしまう。

「 ちょっとは、ね。…キミの場合…は……キミが、ボクを女として見てくれるのは。
何ていうか、それこそ――他の人とは意味合いが違うから。」

そう。政争の為でもないし、社交界に於ける立場などもない。
女として振る舞う事を強制されるのではなく。最初から、女として見られて、扱われるのだから。
正直、その事を思い出しただけで居たたまれなくなって。情事の始まりつつある場所から、逃げて来てしまう位。

だから、そんな元凶と行っても良い彼に。するりと頬を撫でられたなら。

「 っ、っひゃ、 っぅ」

警戒していたつもりだが。思わず声が出てしまった。
きっと。色付いているだけでない。しっかりと熱を孕みつつある事にも。気が付かれてしまった事だろう。
思わず、その頬を掌で押さえ。ぶるりと大きく頭を振って。
不自然に上体が大きく揺れたのは。凭れた手すりの存在を忘れ、半歩でも下がろうとした為に。
…腰が退けた、というのは。きっとこういう状態をいうのだろう。

「 …そ、うだね。……でも――此処じゃぁ駄目だよ、女のボクは――…」

小さく、小さく。ミレーである彼の聴覚でなければ届かないような声音が紡ぐ。

「 …あんまり、皆に…見られたくない。…どうせなら、こっそり…掠ってくれるかい?」

ブレイド > 「変なこと気にすんなよ、今は
どっちでもいい、好きな方をやれよ。
そのカッコで男を名乗ってもいいさ。この間言ったことを守ったままでもいい
イスラをやりゃいい」

彼女は自分の前では女でいるとはいった。
だが、それを強いるつもりはない。
彼女が彼女をやればいいのだ。
お互い正体をしる間柄だ。何かを演じる必要はないのだ。

何を思ったかは自分にはわからないが
膨れたままの頬を撫でる。その様子が少し子供っぽく見えて、おかしくて…
笑ってしまった。

「もったいないもんだな。
社交界ってのは、無駄遣いが好きで困るぜ」

自分とは違う意味合いでしか彼女をみないというのであれば、それこそもったいない。
彼女が今ここに逃げてきていることを思えば
貴族連中も、彼女の父親も…また損をしていると思えてしまう。

腰の引けた少女に腕を回し支えて、耳に届く囁きに
腰に回した手をするりとほどき、彼女の手を取る。
エスコートというものの作法はそう詳しいわけではないが。

「そっか、じゃ…いこうぜ?イスラの親父さんには悪いが
娘さんの帰りは遅くなるって…な」

イスラ > 「 好きな方。…それを、自分じゃ決められないんだよ。
そうだね、せめてキミくらいは――好きにして良い、好きな方で良いって、言ってくれる。
誰かそういう人が居てくれると…少しは。気が楽になる、かも。」

改めて。彼との約束を思い出すが。
それすら、決して守り続けなければいけない訳ではないらしい。
彼の言葉を借りるなら、好きな方で良いのだと。
しかし、どちらが好きか。…最終的にどちらになれば良いか。それを決める事は出来なかった。
どちらを求められる事も、命じられる事も有るから、とは言うものの。
それすら口実であって、矢張り本当は。自分自身が決められない。どちらかに決める事が出来無い、中途半端なのだろう。

だが、今は。

「 言ってあげないでよ。
父からすれば、きっと――息子ばかりだった中に、初めて唯一、産まれた娘としてみなしたい…それも。
有るんだと思うから。
娘として紹介された人達が。いざ、本当の事を知った時、どう思うのかは。解らないけれど。」

( 嫌っているようでいて。少しだけフォローしてしまうのも。
中途半端なのかもしれないし…
どうあっても、親子の縁は切れないという事でもあるのだろうか。
兎も角。そこらの悩みを、今夜の所は。これ以上考え込まないようにしたい。
手を取られたのなら、それに合わせて。テラスから歩き始めつつ。

「 本当に色々有るんだ。けれど――そうだね。
キミが見ていてくれるなら、ボクは、キミと約束した側で居たい。
…こればっかりは誰に言われたからでもなく。自分で決めた事だと思う――よ…?」

やりたい側で良いというなら。今やりたい側は、決まっている。
広間を通り抜ける際は。少し気分を悪くしたので、休ませて貰う、などと。
その為衛士に案内して貰うのだ、と。いけしゃぁしゃぁと言ってのけ。
良からぬ宴が盛り上がる中を、まんまと脱してしまおうか。

「 ……う、ふ。そう言うからには娘扱い…女扱い。宜しく頼むよ――ブレイド?」

イスラ > 【移動致します。】
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からイスラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からブレイドさんが去りました。