2020/09/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にフローレンスさんが現れました。
フローレンス > ―――――宴はまだこれから、同年配の少年貴族や姫君たちにとっても、
まだまだ宵の口であろうと思われる時間帯。
疲労困憊といった蒼白い顔を俯かせ、逃げるようにドレスの裾を翻し、
夜会の催されている広間から、王族の私室が並ぶ方へ向かう、ひとつの影があった。

否―――――実際、逃げてきたのだ。

どれだけ着飾ろうと、己が『どちらにもなれない』ことを知っている。
美しい姫君にも、凛々しい公達にも、到底及ばないことが分かっている。
だから、人の多いところも、煌びやかな装いも、華やかな宴席も苦手だった。

恐らく大叔父にしたって、己のように見栄えの悪い『姫』など、
出来れば修道院にでも厄介払いしたいに決まっている。
この年頃の姫にはありがちな、釣り合う家柄と年頃の貴族たちと顔を繋ぐ、
などということも、きっと、望まれていないのに違いなかった。

いつものことながら、ヒールの高さ、細さが歩みをたどたどしくし、
人酔いでもしたものか、頭が酷く重かった。
それでも、少しでも早く、自室に戻りたくて。
大好きな本の世界に籠もってしまいたくて、仄暗い廊下を一心に辿っていた。

フローレンス > 誰かに偶然行き会うことすら恐れて、こそこそと歩き続ける様は、
とても、王族に名を連ねる『姫』に相応しい態度とは言えないだろう。
けれど己には、何もかもが恐れ、怯える対象なのだ。
己を注視する者は勿論、あからさまに無視する者も、
下世話な噂の種にした挙句、それを己自身にわざわざ聞かせる者も。

静まり返った廊下に小さな靴音を響かせ、ようやく辿り着いた私室へ、
正しく、逃げるように飛び込んで、ひとつ息を吐く。
着付けを手伝ってくれた侍女の姿は無く、どうやら彼女も、
どこかで夜を楽しんでいるらしい、と考えるも、
―――――居ないなら、居ないで構わない。

散々己を苦しめた靴を脱ぎ捨て、真っ直ぐに向かうのはベッドの上。
そこには読みかけの本があり、ささやかな自由が、安らぎがある。

それだけが、己にとっての『救い』だった。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からフローレンスさんが去りました。