2020/09/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にロブームさんが現れました。
■ロブーム > 綺羅びやかな宴の場の中、一際目立つ太った男がいる。
衣装こそ紳士服ではあるが、あまりにも太り過ぎていて、人間と言うよりは肉の塊が服を着ている様にも見える。
尤も、彼は本当に人間ではなく、魔族。それも悪魔であるのだが、今は一応、地方を治める王族の一人として身分を偽ってきている。魔族の痕跡は消しているので、まずそれと解る者はいないだろう。
「さて、一応来ては見たものの、流石にこの様な場に『美しい心の持ち主』など……む?」
嘆息混じりに呟いていた所、この宴に混ざらず、手持ち無沙汰になっている少女を発見する。
どうやら、あまりこの場に乗り気ではない様だ――寧ろ、ため息などついている。
それが少し気になって、声をかけてみることにした。
「もし。そこのお嬢さん。どうなされたかな、そんなに溜息をついて……何か、憂い事か体調に翳りでもおありかな?」
と、聞いてみる。
表情は優しげな笑みを浮かべて。
尤も、この時点では彼に敵意や悪意はない。ただ、純粋に話し相手を欲して話しかけただけだ。
■小藍 > 王都でも有名な楽隊が軽やかな音色を奏でるなかで、不意に恰幅の良い男性から声を掛けられる。
辺りに誰もいないと思い込んで、少し油断してしまったらしい。
まさかため息を聞かれてしまうなんて。
「いえ……恥ずかしい所をお見せしました。
あまりに素晴らしい演奏だったので、つい物思いに耽ってしまいました。」
そっと扇を取り出して、口元を覆い隠す。
優美な音色につい聞き惚れていただけだと、言葉を濁すものの、果たして納得してくれるかどうか。
純粋にこちらのことを心配して声をかけてくれたようなので、申し訳なさもなくはないのだけれど。
だからと言って、正直に「王国貴族の風紀の乱れに呆れていました」など告げるわけにはいかないだろう。
そんなことを口にしようものなら、一介の侍女に過ぎない少女などは、簡単に奴隷堕ちにされてしまいかねないわけで。
自分だけなら、まだどうなっても構いはしない。それは自業自得というもの。
けれども、主である公主にまで非が及ぶは避けなければならない。
そんな思いに駆られ、優美な佇まいを崩さぬようにと心掛けながら、はにかむような笑みを浮かべて見せ。
■ロブーム > 彼女の言は嘘であると、男は直ぐに見抜いた。
人を騙すことがライフワークの悪魔である――相手の嘘など、間のとり方や反応で大凡解る。
とはいえ、それが何であるかまでは解らないが、ある程度警戒されているのは解る。
「ふむ。確かに良い演奏ですな。
演奏者の技量もさる事ながら、全体として上手く纏まっている。
……我が国のようにと、そう言えない事が残念ではあるが」
と、憂いた溜息をついてみせる。
実際、この国の腐敗っぷりは、悪魔をして尚少し呆れ返る程である。
少女と違い、それを堂々と言ってしまえるのは彼があくまでこの国の者ではないからだが。
その様なぼやきを口にした後、ふと男は思い出した様に、
「おっと、私としたことがまだ名乗っても居ませんでしたな。これは失礼を。
私は、ロブーム。マグメールにて、地方領主をやっている者――そちらはどうやらシェンヤンの御方の様だが、ご芳名をお聞きしても?」
恭しく一礼して、名乗りをあげる男。
肩書は嘘であるが、とはいえ魔族の国にて城を持つ身。
例え治めている土地の事を聞かれても、言い抜けられる心算はあった。
■小藍 > 当たり障りのない言葉に対して、相手がどのように思ったのかは分からない。
声をかけてきた男性の身なりにさっと視線を向けて、どのくらいの地位なのか値踏みする。
少しでも情報を仕入れられそうであれば、話に付き合うことも吝かではなく。
「…………え?」
口元を扇で隠したまま、瞳は少し驚いたように見開いてしまう。
それこそ掃いて捨てるほどいるとはいえ、王族が主催する宴なのだ。
それを真正面から批判するようなことをする者が居ようとは。
しかも名乗りを聞けば、王国の貴族だという。
怖いもの知らずなのか、それとも王族に媚びないいわゆる貴族派閥の者なのか。
政治的な人脈は、公主には今後必要になってくるだろうと、居住まいを正して相手に向かい合う。
「ご丁寧にありがとうございます。
私は、帝国公主に仕える侍女で、柳小藍と申します。
今日のところは既に主は失礼させていただいておりますが、主共々よろしくお願いいたします。」
扇をぱちりと閉じると、王国に流儀に倣った礼をして見せる。
侍女であっても礼儀作法は必須の技能。
このような場に足を踏み入れるのであれば、田舎者と陰口を叩かれない程度には洗練された礼を見せ。
「ロブーム様は、どうやら豪胆な方のご様子。
こちらの国では、貴族の方々は皆そうなのでしょうか?」
上手く纏まっていない、とそう評した国の様子に対して、感心したような声音で問いかける。
とは言え、王国を非難したなどと言質は取られぬようにと言葉選びは慎重に。
■ロブーム > 「(ほう?どうやら、"当たった"みたいだな)」
目を見開く少女を見て、男は内心驚きを得る。
何が彼女の琴線に触れたのかはともかく、とにかく相手がこちらの価値を認めたのは確かだ。
それが証拠に、あちらはこちらに真っ直ぐ向かい合い、丁寧な挨拶を返してきた。
「ふむ、小藍嬢か。主の方にお会いできないのは残念だが、別の機会もあろう。それを楽しみにしておこう。
……ほう?」
お互いの自己紹介を終えた所で、少女が面白い問いを出してきた。
勿論、この国の貴族の殆どは彼ほどに自由ではない。それは、少女も解っている筈だ。
その上でこの様な問いを出してくるのは、こちらの力を測る為か、それとも本当に感心しているのか。
「(どちらにせよ……此処は敢えて、大きく出ようか)」
「いえいえ。私は少しばかり、口が過ぎる所がありましてな……。それを放任してくださるやんごとなき方々の器の広さに依るものです」
等と、一旦謙遜して見せてから、少しばかり歯を見せて笑う。
豪胆な、或いは自惚れた様にも見える笑みで、
「とはいえ、無論、ご迷惑だけおかけする訳にも参りませんからな。
王都の外に居る事を活かして、色々と興味深いお話などをお耳に入れているのですよ」
"お話"の内容は彼女の想像に任せる体だが、これもまるっきり嘘ではない。
王宮に潜り込ませた配下を通して、情報操作や情報収集は常に行っている――そうでなければ、魔族であるロブームが王国の腐敗など知り得るはずもない。
「さて……演奏が止みましたな。直、宴も終わる頃でしょう。
今日はお会いできて良かった。今度はゆっくりとお話をしたいところですな」
■小藍 > 少しばかり試すかのような物言いに対して、案の定、男が反応する。
いかに帝国公主の庇護があるとはいえ、その実は平民の小娘に違いはない。
そんな相手からの言葉に、果たしてどのように返答を返してくるのかと、手に扇を再び開き。
「それはまたご謙遜を―――
私も帝国から出たのは初めてで、何分世間知らずの未熟な身。そういったお話には興味があります。
機会がありましたら、ぜひお願いいたします。」
相手の言をそのままに信ずるならば、王族のいずれかと懇ろであるらしい。
先ほどの態度もそれが故なのだろうか。
そう考えれば、このような場であんな発言ができるというのも納得ができるというもの。
そうした相手からの情報であれば、それが真であれ、贋であれ、公主の耳に入れるだけの価値はあろう。
楽団の奏でる曲が終わりを告げれば、闇夜に消えなかった者たちも、それぞれが自室へと引き上げていく。
今日のところは、その流れに乗ってこの場を辞することにして。
「面白いお話をありがとうございました。
この続きは、ぜひ次の機会に―――」
自然な仕草で膝を折ると、人の流れに逆らわぬようにして王城の中へと――
ご案内:「王都マグメール 王城」から小藍さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」からロブームさんが去りました。