2020/08/30 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城・廊下」にフォティアさんが現れました。
フォティア > 夜ともなれば、僅かに涼気を含んだ風が流れ、頬を撫で過ぎていく。
吹き乱されて流れる髪を指先で押さえ、丁寧に油紙に包んだ数冊の本を胸に抱くようにして抱えた少女は、物慣れなさを滲ませながら王城の正門をくぐり、登城許可を得て広すぎるフロアで困惑して佇んでいた。

「────……えー、と…?」

細っこい指で今来た廊下方面を、指さし確認。

「今来た方向。……で。……お届け先の、図書館は…あ、ちがう。書庫、だっけ?」

いささか自信無げに、首が斜めに傾ぐ。
修復依頼された稀少本を期限通りに仕上げて、届けに来たのだが。
恐縮して迎えをいらないと断ってしまったことに、若干の後悔が胸を過る。
案内板はないものかと、周囲を首を巡らせて見回し、人気のなさに困惑する。
深閑と、静寂に包まれた石造りの王城の廊下。己の足音だけが木霊のように響く。
誰か、この城をよく知る人はいないものかと、銀の髪の少女は薄緑の瞳を周囲へと巡らせた。
城の奥から、かすかな悲鳴のような声が聞こえてきた気がして、ビクっと身体を小さく跳ねさせるが、風の音だったのだろうか?

ともあれ──迷子。
端的に表現すれば、二文字で表せてしまう、少々情けない現状である。

フォティア > ──やがて、響く足音は硬質な床に吸い込まれるようにして消えていく。
ご案内:「王都マグメール 王城・廊下」からフォティアさんが去りました。