2020/05/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にラディエルさんが現れました。
ラディエル > ―――――地下迷宮を思わせる、細く入り組んだ石造りの通路。
所々に小さなカンテラの灯は揺れているものの、薄暗く、じめじめとして、
お世辞にも快適な空間とは言えない。
己の意思で連れて来られた場所では無く、勿論好んで滞在したいとも思っておらず、
更に、首には黒革の首輪が、靴を奪われた両足首には黒鉄の枷が、
二つの枷の間には重い鉄鎖が繋がっているとなれば、尚の事である。

ジャララララ、ジャララララ―――――

「……っ、くそ、うるっせぇなぁ、此れ……重いしよ」

囚われ人が、囚われていた場所から逃亡を図ろうとしているというのに、
足音を忍ばせる事すら儘ならないとは、全くもって忌々しい。
摺り足でそろそろと進むのが精一杯、大股で歩く事も、走る事も出来ない、
絶妙な長さの鎖が、迅速な移動を妨げている。
序でに言えば、現在、人間で言うところの貧血に近い状態であり、
逃げるにしても、とても好条件とは言えなかったのだが―――――

うら若く活きの良いミレーちゃんたちと違って、此方は力の殆どを封じられたしがない堕天の身である。
彼らと同じペースで搾り取られていては、とてもでは無いが身が保たない。
他の部屋に囚われていたミレーの娘が逃げ出したらしく、『連中』が其方に気を取られているからこそ訪れた、
此の千載一遇の好機を、逃す訳にも行かなかった。
勿論、先に逃げ出した誰かの事が気にならないでも無かったが―――――

「……良くて、共倒れになるだろうからなぁ」

お互い、己の身は己で守るに限る。
溜め息交じりに呟いた其の言葉が、免罪符になどなる筈も無い、のだが。