2020/05/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にアントワーヌさんが現れました。
■アントワーヌ > 大きくとられた窓から、明るい午後の日差しが燦燦と降り注ぐサロン。
誰の趣味かは知らないが、豪奢な調度に彩られた其の片隅で、
黒一色の礼装に身を包んだ『青年貴族』が一人、ゆったりとソファに腰かけていた。
服装こそ常の如き喪装であるものの、影のように付き従う男の姿は無く、
心なしかぼんやりと、所在無げにも映るやも知れぬ。
微睡んででもいるように細めた眼差しは、組み上げた脚の靴先辺りを眺め、
肘掛けについた左手は緩々と、携えたステッキの頭部を玩んでいる。
己が何故此処に居るのか、心得た妙齢の侍女が歩み寄り、
お茶のお代わりを、と申し出るが。
己は彼女の方へちらと視線を向けて、口許に淡い笑みを滲ませながら頭を振り、
「……いや、結構。
其れより、……未だ、大分かかりそうなのかな。
もし出直した方が良ければ、そうさせて頂くけれど」
怒りも苛立ちも顔には出さないが、其の実、退屈はしていた。
こんな場所で一人、無為に時間を過ごすのはそろそろ限界でもある。
城門近くで待たせている近習のことも、先刻から気になっていた。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にメレクさんが現れました。
■メレク > 王城の大理石の廊下を歩むのはサロンで寛ぐ青年貴族とは正に真逆。
でっぷりと腹肉を蓄えた肥満体型で贅の限りを尽くした衣服がまるで似合わない中年貴族。
否、ある意味では、その体型を維持する為にも湯水の如く金銭が使われる筈なので、
その拵えも似付かわしいと言えば、似付かわしいのかも知れない。
王城の使用人に案内されてサロンへと足を踏み入れれば、先客の姿を視界に収め、
軽く会釈をすれば、其の侭、相手の傍へと絨毯を踏み締めながら近付いていき。
「これはこれは、確かジェラード伯爵でしたな。
生前、御父上には大変お世話になりました。お悔やみ申し上げます。」
先日、先代当主が急死した事で代替わりを果たした若き伯爵。
狭い貴族社会に於いて、舞踏会や晩餐会で顔を見掛けた事はあるが、
先代とは異なり、当の本人とは殆ど初対面の筈の相手。
黒色の衣服が喪服である事を悟れば、故人の死に冥福を祈りつつ、
傍らのソファを示すと座っても構わないかと、許可を問うように視線を投げ掛ける。
■アントワーヌ > 靴音、あるいは纏うコロンの香り、其れとも存在感其の物か。
新たな人物の来訪に気付くのは、其の姿がサロンの入り口へ現れるとほぼ同時。
慇懃な礼をして眼前を辞去する侍女の姿から、其の人物の方へ静かに視線を流し、
やや凭れ気味だった背をすっと伸ばして、組んでいた脚を解いた。
白い顔に浮かべるのは、恐らく誰に向けても、当たり障りの無い微笑である。
「ああ、……父の葬儀の際には、ご挨拶もせず失礼致しました。
有難う御座います、……御覧の通りの若輩ゆえ、今後ともどうぞ、
宜しくお引き回しの程、御願い申し上げます」
此処数週間の間に、幾度繰り返したか知れぬ定型文を、そうと悟らせず口にするのも慣れたもの。
実際、相手が父の葬儀に顔を出していたかどうかは記憶に無いが、
一癖も二癖もある相手であるのは間違い無い。
傍らのソファを目顔で示されると、勿論、と言わんばかりに頷いて。
ステッキを軽く手許へ引き、相手が通る道をさり気無く空けた。
「ところで、……其方も、お人待ちですか?」
飽くまで社交辞令の一環として、そんな問いを投げてみる。
■メレク > 誰もが抱く斯くあるべしという理想の高貴な容貌。
些か、背丈が足りぬ事を除けば、社交界にて子女の話題に挙がらざるを得ない、
端正な面立ちの青年貴族は、若くして、その所作や表情も心得ているらしい。
一つ一つの行動の優雅さに頬肉を歪めながら、値踏みするように相手を眺め。
「喪主は多忙ですから、あまりお気に召さるな。
伯爵はお若いのに出来た御方のようですな。
是非とも、変わらぬ誼を結ばせて頂きたいものです」
さり気なく道を開ける相手に軽く頭を下げながら、正面のソファに腰を下ろす。
拵えの良いソファが男の体重を受け止め、軽く軋みを洩らすも、
気にした様子はなく、改めて目の前の相手の容貌を眺める。
貴族子女が群がるのも頷ける中性的と称されるのであろう美男子。
何処か、中性的を越えて女性めいているようにも見える相手に目を凝らし。
「えぇ、最近、国境での小競り合いが起きておりましてな。
我が領土は辺境故に王国騎士団の派遣を陳情に参ったのですが……、
どうも、王城内がごたついているようですな」
社交辞令の問い掛けに先客が同様に待たされている事を知れば、肩を竦めて見せた。
■アントワーヌ > 「いえ、……私などまだまだ、公の場に出れば赤子のようなものですから」
基本、此方から他人に特段の興味を抱くことは無く、
単なる好奇の目であれ、何某かの感情を秘めた眼差しであれ、
視線を浴びていると認識はすれど、己にはどれも同じこと。
ゆえに此の男からの視線も、何気無い振りで受け流しはするが、
其れにしても少しばかり、粘っこいような気はしていた。
――――勿論、表情にも声音にも、そんな感覚を露呈させることは無い。
色とりどり、煌びやか、相手の装いを好意的に評するならば、
そんなところが無難であろうか。
贅を尽くしたような恰好を誇る者も、王都では見飽きる程である。
だから、そう違和感を覚えることも無い筈だが。
――――ぞく、と背筋に悪寒めいたものが走った気がして、誤魔化すために小さく肩を竦ませ、
「ああ、……貴公の領地は、其方の方面でしたか。
今は彼方此方、きな臭いようですから……騎士団への派遣要請も、
多過ぎて手が回らぬようだと聞いております。
………正規の騎士団以外の手も、借りようという動きが出ているらしいですが、
どうなのでしょうね、……空恐ろしいことです」
ゆる、と首を振って、物憂げに目を伏せる。
何れにせよ、腕に覚えなど皆無の己には、遠い世界の話題にも等しかった。
■メレク > 「またまたご謙遜を。
亡き御父上も跡取り息子に恵まれた事を草葉の陰から喜んでおいででしょう。
お困りの事があれば何なりとご相談下さい。微力ながら力を尽くしましょう」
汗水垂らして日銭を稼ぐ必要のない貴族は、兎角、ゴシップが好きな種族である。
不和が噂された伯爵家の急な世代交代に好からぬ話を囁く輩は多い。
息子が父親を謀殺したなど、誰もが思い付くようなありきたりで悪質な噂。
とてもではないが、汚れ仕事が似合わぬ目の前の相手の様子に片目を眇め、
内心は明かさぬものの、表向きは若き貴族に好意的な立場を示して見せた。
「左様ですな。タナール砦も再び魔族の手に陥ち、
アスピダでは何とかという野盗集団が幅を利かせているとか。
騎士団もてんてこ舞いで、恐ろしい事です」
くわばらくわばら、等と口にしてみせるも、恐怖心など皆無。
飽く迄、自分達には縁なき世事を憂いているような素振りのみを見せて。
「しかし、この分では何時まで待たされるか分かりませぬな。
どうでしょう、伯爵。玉撞きは嗜まれますかな?
ひとつ、若き伯爵に貴族の遊戯でも指南したいのですが、いかが?」
ぽん、と握り締めた拳をもう片方の掌に打ち付ければ、
河岸を変えないか、と斯様な提案。やや強引めな勢いにて相手を誘って見せた。
■アントワーヌ > 「……さあ、其れは如何でしょう」
お困りのことがあれば、との申し出には素直に礼を述べるものの、
相手の立場からして、己と父との不和の噂、そして己が父を弑したという噂すら、
当然、知っていても可笑しくは無い。
何処まで本気で言っているのやら、内心大いに疑問だが、
表情は変わらず穏やかだった。
タナール砦やアスピダの名が出れば憂いの影は落ちるも、
此方も感じているのは恐怖と言うより、漠然たる不安止まりであり。
「―――――え」
確かに待ち疲れつつあったが、出直そうとまで考えていたが。
河岸を変えよう、との誘いには、刹那、戸惑うような間が空いた。
相手が此の男であるから、というよりも、純粋に、貴族の遊戯というものには、
嫌な感覚しか抱かないので。
此れがもし、夜遊びの誘いであったなら、やんわりと、けれどもきっぱりと、
即座に断っていただろう、けれど。
「其れ、は……ええ、生憎、不調法者で、……ルールも、確とは存じませんが。
お誘いは有難いのですが、――――ああ、では、そうですね、
外に、家の者を待たせておりますので、……一度、声を掛けてから」
昼日中の遊びまで断っては、要らぬ敵を作りかねない。
結局はそう考えて、誘い自体は受けることにした。
ただ、何処ぞへ移動する前に、近習の者へひと言告げて行きたい、というのは、
やはり、相手を、というよりも貴族全般を、警戒しているからこその発言。
勘の良い相手ならば、『家の者』というのが、此れもまた噂の種を振り撒いている人物だと、
直ぐに悟ってしまうかも知れないが。
■メレク > 提案に対して、躊躇するような反応を見せる相手に対して、
是非に、と後押しする。
貴族の社交界に於いて人付き合いはそれなりに重要だ。若い貴族であれば特に。
その事を示唆しつつ、相手が諾と肯けば、口端を軽く歪める。
「えぇ、勿論。それでは、折角なので、拙宅にでもお招きいたしましょう。
最近、球撞台を新調致しましてな。これが中々に年代物でして……」
勿論、王城内にも遊戯室が設けられており、貴族であれば誰でも利用する事が可能。
当然ながら、長い間、貴族社会に在籍していれば周知の事実ではあるが、
そんな事はおくびにも出さずに、一度、頷かせた故に
断り難い雰囲気を醸し出しながら、己の領域である邸宅へと相手を誘い。
そのまま、己の馬車にて相手を自らの邸宅へと連れ帰っていき――――。
■アントワーヌ > ――――己が女であれば、此の誘いを断る理由もあろう。
然し、如何に悪い噂も聞かれる相手であるとは言え、
男である己が余り警戒するのも可笑しかろう。
城内に撞球場があった筈だ、という、そんな気持ちで応じたのだが。
相手の邸宅へと誘われれば、内心ではまた少し躊躇ったものの、
心理的に退路を断たれた形で、男の乗ってきた馬車へ乗り込むことになる。
彷徨う眼差しがほんの暫時、近習の男を捉えたか、どうか―――――。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からメレクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からアントワーヌさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 廊下」にリスさんが現れました。
■リス > ―――少女は、商人である。
お金はあっても貴族ではない、故に身分としては平民である、その少女がなぜ、この場所―――王城に居るかと言うと、簡単な話だ。
お金が有るというのが理由であり、少女の商売の中には、貸し付けも有るのだ、貴族にお金を貸して、後で取り立てるというお仕事。
お金を貸した貴族へ、取り立てにやって来たのが今日の少女、放置していても良いのだが借金はどんどん膨らむものだ、他の金貸しよりも利息を少なくしてあっても、金額が多ければ、借りる期間が長ければ、それは、増えて行くものなのである。
そして、証書に関しては、魔法を生業とするものが契約に使う為の羊皮紙故に、改ざんも、滅却も難しい、少女のような、少女の妹のような高位術師が、大量の魔力を使って漸くと言う塩梅だ。
なので、基本的にこの証書は信用できるものであり、証書の数は………数えるのも面倒なぐらいに、多くある。
「何故、お金、返してくれないのかしら。ね?」
王城の大理石の廊下をてふてふ、とのんびりした足取りで進む少女、全員を回るのは難しいから、数人にしておくつもりだが、それでも十分多い。
さて、どの貴族の元へ行きましょうかと、廊下を見やり進む。
とは言え、王城はあまり詳しくないし、誰か、案内してくれる人とか、居ないかしら。
きょろり、と周囲を見回して、人の気配を探る
■リス > 城の廊下を進んでいればふと、足を止める少女。その視線の先には、第二師団の魔導研究所が見えた、とは言え、人の視力のそれよりも良いので、少しばかり歩かねばならないけれど。
それを見て、少女はうん、と頷く。
「久し振りに、ミリーディア様に、ご挨拶もしておかないと、ね。魔法の訓練も、してもらわないといけないし。」
最近はあちらこちらで忙しい状況、正直に言って、今伺うのは迷惑かもしれない、あの女性であれば、開かれるべき時に扉は開かれるから、そう言うのは気にせず来ると良い、とか言いそうでも有るが。
それはそれで、自分の気が収まらないのである、ちゃんとご挨拶とか、そういう事は大事よね、と。
商人として、礼儀は重要なものだと、少女は教えられているし、礼儀のなっていない人がドラゴンの前に立てばどうなるかは誰だってわかる。
なので、彼女が良しと言ってくれても、礼節は持ちたいと思うのである。
「挨拶していきましょう。」
挨拶できなくても、後でアポイントを取るために紙を、扉の下に挟んでくぐらせればいいわと、そんな風に思って。
少女は、魔導研究所の方へと足を運ぶことにする。
途中に借金している貴族が居れば、無論そちらを優先はするけれど。
■リス > 廊下は静かで、特に誰かが居るような気配は―――あるけれど、それは部屋の中とか、壁を隔てた外とかそんな感じである。
此方に来を払っている様子はなさそうだ、というよりも、凄く―――。
「盛んよね。」
なまじ人よりも感覚が良いから、其処彼処でのヤッて、居るそれこれが、判ってしまい、少女は苦笑を零す。
多分こういう事をするためにお金を借りて、行っているんじゃないかと思えるのだ。
するべき仕事を放棄して、性欲にかまけて、金が欲しくなって借りる、そんな連鎖なのだろうと、少女は考えて進む。
幸か不幸か、少女に目を向けて声をかけるような人はいなさそうだ、まあ、少女の服装事体市井のそれ故に、貴族はスルーするのだろう。
ちゃんと欲見れば、その服の生地自体は、彼らの服とそん色のない物―――否、それ以上の高級品ではあるが、それをちゃんとみれるような貴族は少数派なのかもしれない。
しばらく進んで、魔導研究所の扉の近くに到着し、こん、こん、とノックして見せる。
「――――。」
まあ、居ないだろうな、と思い、取りあえず、アポイントの為に軽くメモを残すことにする。
それが終わったら、また、貴族の所に、取り立てに行こうかしら、と。
ご案内:「王都マグメール 王城 廊下」にミリーディアさんが現れました。
■ミリーディア > 魔導研究所、其の室長室の主は滅多に外出はしない。
其れが絶対とは云わないが、居ない時も在るもので。
然し今日という日はそうではなく、訪れた少女のノックに応える様に扉はひとりでに開いてゆくのだ。
「ああ、少し遅れてすまないね。
少し此方に集中していたんだ、好きに入り給え」
正確には扉が開くのに少しばかりの間は在った。
そうして開いた扉の中へと入る為らば、何時もの様に柔らかな椅子に身を委ね資料の一つを手にする少女の姿が見られるだろう。
■リス > 「――――ぇ?」
中に人がいるとは思わなかった、この場所の魔法的な防御の所為なのかもしれないけれど、気配とかは全然しなかったのだ。
余りにも意外な事に、眼をぱちくり、と瞬いて見せるのだった。
取りあえず、だ。一つ深呼吸。そして、扉の先に居る友人を見る、変わらぬ姿の、母の友達にして、己とも友人の女性だ。
外見的に言えば、母よりも自分と友人と言った方がみなが納得するだろう彼女。
それを見て、ゆるり、と足を進めるのだった。
「――――!」
そして、思わずでもなく、何処かに意思を飛ばす、そして、それが帰ってくるまでに数刻。
部屋に入る頃には、少女の左手に藤の籠。
買い物とかする際に少女が好んで身に付けるものだった。
「失礼いたしますわ、ミリーディア様。」
入る前に、軽く会釈をしてから、部屋の中に。
とことこ、と歩きながら、先程書いていたメモを手にしつつ、彼女のテーブルの脇にまで歩いていくのだ。
「お久しぶりです、少し、王城に用事があったもので、ついでで申し訳ありませんが、挨拶にお伺いさせていただきましたわ。」
と、にこやかに笑いながら、今、書いていたアポイントの手紙をそっとテーブルに。
その脇には、町で最近食べられているシェンヤンの甘味を幾つかは行った籠を置くのだ。
■ミリーディア > 先日行われた会議の内容纏めと指示書の作成。
云ってしまえば行っていたのは其れで。
其れに加えて色々と起こっている問題の報告書も在り、少し気が緩んでいたのだろう。
扉の開放がほんの少し遅れたのは、其の為だ。
開いた扉の先に見えたのは友人で在る少女の姿。
パサリと資料をデスクに放り捨て、身を少し乗り出し迎える。
其の手を上げて挨拶代わりとしておこう。
「成る程ね。
君にしては連絡が無くおかしいと思ったが、そう云う事か」
説明を聞けば納得するもので、頷きながら歩み寄って来る少女の姿を眺めて。
小さく笑みを返し乍、デスクへと置かれる手紙を手に目を通す。
尤も、其の視線は直ぐに脇に在る籠へと向けられる事に為るのだが。
■リス > 書類に関しては、少女は視線を向けない、それは基本的に見るべきものが見るものだから、彼女はきっと大事な物は締まっていると信じているけれどあまりそういう物を見たいとは思わない、下手な情報は―――身を亡ぼすのだから。
身を乗り出しての歓迎、軽く手を振ってくれて少女は嬉しく思って笑みを浮かべて、軽く手を振り返す。
ちょこちょこ、と近づいて、自分の方の書類を懐にしまい込むのだ、彼女に見せても面白いものでもないだろうし。
「ええ、ミリーディア様はお忙しいと思いましたし、アポイントを取り付ける積りでも、と。
後で、落ち着いたらでいいので、魔法の訓練を見て戴けたり、お茶でも如何でしょうか?」
彼女の目に入る紙はアポイントのモノであり、少女の空いて居る時間が書き込まれている、ご都合よろしければお願いしますね、と。
そして、籠に向く視線、先程まで持っていなかったものを手にしたのは魔法ではなく。
ただ単に、超スピードの妹に、急いで持ってこさせただけである、因みに、本人は出会いたくないのか逃げるように逃げた。
きっと、今頃遠くに逃げてる。
「これは、シェンヤンの餡子を使ったおまんじゅう、だそうです。
後は、蜂蜜漬けの果物を少々と言った処でしょうか。
フルーツワイン、今回は、葡萄ですが添えてありますわ。」
にこやかに少女は説明しつつ、頭使った後は、甘い物とか、欲しいでしょう?なんて、悪戯な笑みを浮かべた。
■ミリーディア > 彼女がデスクの上に視線を向けないのは理解している。
見られて困るものは無いが、そう云う事をする性格では無いと分かっているからだ。
手を振り合う気軽い挨拶を交わせば、彼女も又自分の資料を仕舞うのを見て其れを気にせずに居るのだった。
「ああ、先日行われていた会議に参加した程度か。
其れ以外はずっと此処に居たが、此れと云って忙しい程では無かったから大丈夫さ」
彼女の言葉に答え乍、受け取った手紙の内容を確認する。
後日、都合を付けるべく幾つかの日付等の書かれたもの。
其れを確かめれば後で答えておこうと手紙は仕舞って。
「そうだね、後で時間を作っておこう。
どれ程に為ったか見ておきたいし、茶も勿論な」
今目の前の資料と指示書はもう少し掛かるだろう。
彼女からの訓練と御茶の話も含めてそう答えておいた。
そうしたものも、自分にとっては詰まらない日常の中の数少ない楽しみなのだ。
彼女の妹に関しては気にしないでおいてあげようと、視線も向けずに終えておく。
「おお、相変わらず良い選択をしてくれる。
そうなんだ、こうした例外的な事が起こると何時もより頭を使ってしまってな。
本当に助かるよ」
籠の中身の説明に、期待の色を含む眼を向けて。
当たり前だと云わんばかりに彼女の問い掛けに頷くのだった。
■リス > 「会議……?もしかして、アスピダ……関連でしょうか?」
国の会議と言う物はどんなふうに行われているのかは知らない、妹であれば潜り込んで聞いたりするのだろうけれど、リス自身はそんなに興味は持っていないし、そもそも、市井の一市民が参加するような物でもなかろう。
だから、取りあえず一番大きな事件、未だに掲示板を騒がせるアスピダの事が思い出されての質問となる。
但し、答えは求めていなかった、何故ならば、彼女が提示できる情報かどうかも知らないのだ。
一般市民が知って良い事かどうか、という意味で。
「はあい。一応、宿題として言われている事等は、ある程度できるようになっては置きましたわ。」
宿題よりも、お茶がメイン、少女の考えはそっちになる、目の前の女性は、見た目は幼い女の子で、人形のように可愛らしい。
こう、自分の太ももに座らせればとっても可愛らしく思えるのだ。そんな風にして可愛がるのも良いわよね、と。
「ああ、でも、シェンヤンの饅頭……でしたっけ、それはお茶と一緒に食べるといいらしいので。
今回はお酒と、蜂蜜漬けにしておきましょうか。」
それでも甘味と甘味でとっても甘い時間になるはずですわ、と言いながら。
勝手知ったる彼女の研究室、ワイングラスと、皿を一対ずつ持ってくるのである。
ワインの詮をきゅぽんと引き抜いて、芳醇な甘い香りを零しつつ、とくとく、とワイングラスに注いで。
そのワインの色は―――白であった。
注いだそれを、彼女に差し出す。