2019/07/06 のログ
アマーリエ > ――遠征帰りの歓待というのもは、嬉しいものとそうではないものがある。

此度は後者だ。
昨今連日のように設けられているような宴席のついで、という話題となれば付き合い程度に招待されても素直に酔えるものではない。
殊に紹介はされても、そこそこに流される話題となるとどうだろうか。

「……――興醒めも良い処だわ。
 帰路の同じ品が続く陣中食よりは量だけはあるけど、其れしか見どころないのはどうなのよ」

一先ず挨拶回り程度だけは済ませて、立食で幾つか摘まんではその味わいに柳眉を顰める姿がある。
着飾った様相ではなく、綺麗に洗濯した騎士服と帯剣で宴席に立つのは一貴族ではなく、騎士としての矜持が先に立つ。
一応は招待された故であるが故、直ぐに辞することは無いが此度の宴の料理師の腕を確かめようと何品か摘まんだが、唸るのは少なからず味に拘るが故だろう。

自軍にとって単調かつ粗悪な食事というのは、最早害悪に等しい。
宴というのは戦場と同じく消費の場であるものの、量を作ることに注力した感があるのは疲れからか。
ふと、そんな勘さえも動く。同じことばかりが続けば、疲れもすると。

アマーリエ > 「この位費やす位の糧食があるならこっちにも回して欲しいわね。……あ、これはいけるわ」

ぼやきながらも、左手に持つ酒杯を呷って丁度見かけた品の一つを味わう。
ぱちくりと目を見張ったのは、存外に味わい深かったが故である。
陣中食にするには恐らく手間暇はかかろうが、本拠たる館の食堂のメニューに加えてもよいだろう。
そう思えば近くを通りかかったメイドの一人に声をかけ、この品の作り方を知りたい者が居ると伝言を伝えよう。
知れれば良し。知れなくとも、差し障りはない。残念ねと肩を竦めるだけだ。

「どうせ、もてなすついでならもっとこう……考えて欲しいわね。いい娘でも出して欲しいわ」

ついでにと飲み干した酒杯を渡し、入れ替えりに度の少ない酒を受け取って舌を濡らす。
本拠に戻った配下たちについてはそれぞれ、思い思いの休暇を取っていることだろう。
自分とてそれなりに愉しむ、あるいは羽目を外したい。そうでなければこの世の中、生きている甲斐がない。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にミツフサ ウタさんが現れました。
ミツフサ ウタ > 余り長居しなくて済むように、けれども角の立たない様にそれなりに…。少し遅めに足を運んだが成程そこかしこで腹の探り合いをしている三下貴族の多いこと多いこと。

「招待を蹴ると後に響きそうなんで来たものの私の存在自体あまり公にしたくは無いんですがねぇ。」

そんなことを呟きつつカランコロンと下駄を鳴らし新たに会場に現れるは一見この場に似つかわしく無い狐の少女。
とある貴族に兵站確保の労いにと招待されれば無下に断れないのが立場のある故の宿命というか何というか。

「連日連夜こんな立食会を開くくらいなら民兵に幾らか回せば士気も上がるでしょうに。」

通りすがらのテーブルから何品か摘んではテーブルをめぐり耳聡く立ち聞き。
今後の戦況の動向とか没落しそうな貴族の噂など稼ぐに有用な情報を集めて回るうちにアマーリエが舌鼓を打っているテーブルにも足を運ぶことだろう。

アマーリエ > だが、こうしているのも刹那の間の話となるだろう。
有事となればその足の早さを以て、即応することを求められるのが己が師団の勤めである。
まぐわいの間でも、呼び出されれば師団の長である己であってもその点は変わりない。

「……シェンヤンの女官でも捕まえられるなら、軽くお相手願いたい処だけど――ン?」

館に戻って、街に繰り出すか。贅をただ凝らした饗宴より、冒険者だった頃の猥雑な空気が恋しい。
安酒で量が兎に角ある食事というのは、今のこの場と似て何処か違う。
あの頃の気質が身に染みているのかもしれない。難しいところね、と嘯きながら顔を起こせば訝しげに眉を動かす。

新たな人影が奏でる足音である。その音色もさることながら、真っ先に見えるのは、何と言っても狐耳という部位だ。
シェンヤンから到来したものの中には此方で云うミレー族も混じっていると聞いているが、件の御仁はどうだろう。

「御機嫌よう? ……ただの客ではなさそうね」

此方の卓に近づいてくる姿を捉えれば、一先ずは目礼と共に挨拶の句を投げよう。

ミツフサ ウタ > 「おやおやこれはどうもご丁寧に。何を以って【ただの】と論ずるかはさて置き一応王国軍部の関係者…。とでも言っておきましょう。ウタ、ミツフサウタと申します。どうかお見知りおきを。」

ぺこりと頭を下げ流麗な動作で一礼。一般的な見解では美しいといわれる動作だろうか。

(黒い翼竜の徽章…。確か神速と謳われる第十師団…でしたかね。他に同じ徽章を見かけなかったですしこの方は師団長様ですかね。)

「目見麗しい騎士様に御声掛けいただけるとは些か不本意な宴でしたが参加した甲斐が有ったというものです。」

社交辞令に織り交ぜて受け取り方によっては王国への不忠を疑われかねない軽口を叩く。
情報こそ全てを貫く最強の矛。縁こそ全てを遮断する最強の盾。偶然の巡りあわせに感謝しつつ交流を図るのもまた一興という物だろう。

アマーリエ > 「ふぅん。……謙遜というよりは、韜晦かしら」

相手の動きを見遣りながら、卓に半ばまで干した酒杯を置いて小首を傾げよう。
浮かべる表情がどこか苦笑じみてしまうのは、言葉に幾つか付随する引っかかりだ。
種族で他者を侮る流儀は持ち合わせていないが、斯様な特徴の持ち主が軍議に出ていれば目につく。覚えもする。
その上で己の属する由縁を明らかにしないのは何故だろうか。

「アマーリエ・フェーベ・シュタウヘンベルクよ。お見知りおきを?
 それと私は兎も角、滅多なことは言わない方が身のためね。私は別段慣れてるけど」

そうして引っかかりのある句も聞けば、また然り。
向こうの思考の内は知りようもないが、予想通りの名を告げながら何者であるかという疑念を心中に増す。
仕えるべき王への忠義はあるが、其れ以外については同格、王族であっても知ったことではない。そんな気風を持つ。

ミツフサ ウタ > 「おっと私としたことが失言でしたね。あまり表舞台に出る機会もないのでどうも穿った思考に寄ってしまって。利に聡い貴族ならいざ知らず騎士様ならば隠す必要もないでしょう。王国八八特務師団長を拝命しております。物資や兵站、軍費や用兵。下世話ではありますが金子のご相談ならば是非ご用命ください。」

そっと袖を引き上げ右腕に嵌めた腕輪…。戦場を表す交差した剣と黒き翼の衣装が施されたそれを見せる。

「戦場の裏に潜む事が命題故に少々不敬も働きますがどうかご容赦下さいませ。」

周囲の目を気にして本命である眼前の相手に不信感を抱かれてしまっては本末転倒だ。人目に付きづらいテラスなどへ誘っても良いのだがそれも初対面では中々にハードルが高い。リスクとメリットを秤にかけた結果師団とのパイプを持つメリットを選んだ彼女は己が素性を晒した。

「このようなナリでは悪目立ちしますので余り軍議に出ることも有りませんのでお初にお目に掛ることはそう不思議な事ではないと思いますね。」

と、少し苦笑して見せた。

アマーリエ > 「……――知らないナンバリングね。いつのまに増えたのかしら。
 随分と手広いのね。一応、記憶には留めておくわ」

いつのまに、そんな番号まで膨れ上がったものだろうか?
師団という単位の本来の意味を思えば、思わず首を捻ってしまう。
騙りか? それとも何か特命でも帯びた秘密組織か?と。
相手の所作から見える記章と思しい紋を認めつつ、ある種軍を動かすにあたって頭を悩ますワードの羅列を聞く。
眼を細めた騎士の眼差しに浮かぶのは、疑念か。それともある種の警戒か。

「不敬ねぇ。別に私は気にしないわ。一応、看過できるものであれば聞き流してあげる。
 粋がっている貴族や王族でも居れば、からかって多少痛い目見せるのも愉しいもの。

 ……向こうへ行きましょうか? きっと話辛いでしょ」

国王に仕える騎士として義理は果たすが、さりとて粋がる類が居れば適度に怨嗟を買い過ぎない程度でからかう。
それを粋として弁えているからこそ、七面倒な貴族社会でも肩で風を切って居られる。
竜騎士達と精兵達で織りなす武勇により多少は知られていても、干されるのも白眼視されるのもなんのその、だ。
ただ、何処かしか周囲を憚るような。そんな微かな印象を覚え、ふらりと踵を返して窓側に移ろう。其処からテラスの方へと歩む。

ミツフサ ウタ > 「えぇ、そうして頂ければ助かります。」

先を進むアマーリエの後に続きテラスへ。
人目が切れたことを確認して大袈裟に溜息を吐く。

「はぁー。堅っ苦しいのは性に合いませんねぇ。妙に疲れます。」

と、一応は体裁を保っていた礼儀など何処吹く風。
何時如何なる時でも商人である彼女には会場の雰囲気からして慣れない物だった。

「お察しかも知れませんが私は元々軍に籍を置くような者ではありません。
取引先に軍があったから手練手管を用いて無理やり椅子を用意しただけです。
勿論、義理も役目も全うはしますがね。」

ひらひらと手を振り幾分砕けた口調になった彼女は人目を気にして言い淀んでいた言葉を紡いでいく。

「商人って立場を利用して色々見てきましたよ。
国が音頭を取る戦も、保身しか考えない貴族の権力闘争も。
その内で利権を得て、パイプを得て、権力者へ取り入り。軍部に籍を置くところまで随分掛かりましたねぇ。
いま思えば此処を目指す理由なんてあったかなかったかって話ですけど。」

仕事はこなす。だが国に取り込まれて思想まで染められる気は無い。
あくまで彼女は商人であり続けるという生き方を選んだ。
やっかみや反発は勿論あるだろう。
そこまでして稼いでどうするのだという声もあるだろう。
だがカノジョは歩むことを止める気はないだろう。

「八八は正規の師団のナンバリングとは関係ないですよ。
別に師団を銘打つ必要もなかったんですが、動きやすさと汎用性を鑑みて末広がりの八を掛けて命名しただけです。
上層部には問題児扱いされましたけどねぇ。」

あっけらかんと言ってのけるがそれを強行できるだけの手腕…。
長期的に戦を支援し続けられるだけの有用性があったということだろう。
口に出すわけではないが語る彼女はどこか誇らしげに薄い胸を張っていた。

「人目を憚ったのは貴族様の利権争いの駒になるのを避けたためです。
こう言っては印象が悪いですが帝国との戦争にしても魔族との戦争にしても莫大な金が動きます。
その利権を欲する貴族の多さは口にするまでもないでしょう。
何度その手の貴族共から下心しかない求婚を受けたか…。」

ここでまた溜息を一つ。
こうして隠すことなく饒舌に語る彼女を見れば多少なりともその人となりは見えてくるだろう。

アマーリエ > 「――……なるほど、ね。そんなクチだったのね」

テラスに出れば風が吹く。飲み食いして多少は火照った身体には心地よい。
そして、響く溜息の気配に口元を歪めて肩を竦める。

「そんな気がしてたわ。わざとかどうかは知らないけど、装うには歯切れが悪い気がしてたもの。
 今、それを私に言うのだってそう。」

他の師団と積極的な交流を行うという程、親しい誰かが居るというわけでもない。目立った政敵等が居るワケでもない。
主力の代替や補充が難しい精兵の集団であればいい。必要な時に用を満たす武力装置であればいい。
軍とはそういうものだ。が、人の思惑等が絡めば絡む分だけ、そうも言っていられなくなる。
金はあればあるだけいい。しかし、金銭ではまた購いきれないものも存在する。
一時は凌げても、長期的に見れば継続して投資が必要な事項も多い。
商人に儲けたいという欲求があるのは道理として理解できるが、詰まり何を言うのか。胸の前に手を組みながら言葉の先を聞いて。

「でしょうね。さっき素直にそう思ったわ。
 ……嗚呼、つまり。しがらみなんてどうでもいいから、稼ぎたい、儲けたいってコトよね」

呆れた、とばかりの師団を名乗る所以に目を遣って、口元に手を当てながら思考を巡らせる。
最終的な口舌の要点がどこに行きつくのか。語られた言葉に思考を巡らせれば、最終的な結論には行き着いていないと思う。
しかし、過程と。婚姻などの他者の財的な干渉を厭うとなれば、恐らくはこうであろうと。

ミツフサ ウタ > 「いえ、平時であれば参加自体しないのですが今回は私が軍に入るために尽力してくださった貴族様の紹介でしたので顔は立てねば恩に反することになりますし。」

コンコンと下駄裏で床を叩きながら此処に来た経緯を零す。
恩義と信用を失うは商人にとって死に等しい。
彼女は恩ある人物の頼みとあらばこんな調子で死地にだって往くのであろう。

「儲けたい…。うーん、どうなんでしょう。
あわよくば儲けた先に何があるのか…。商人の行きつく果てを見てみたい。というのが今の気持ちかもしれませんねぇ。」

実際これ以上稼いでも使い道が全く無いほどには蓄えてますし。と付け足す。

「商人が言うべき言葉じゃないかもしれないですが。
お金自体に価値なんてないですよ。
いくら稼いだって一線を越えればごみの山と同義です。
肝要なのはそのお金で何を成すか、です。
今では稼いだ額よりも投資や支援で出ていく方が多いですし。」

金は天下の回りもの。とはどこの国の言葉だったか。
ともあれ、回らない金は死んでいるのと同じ。
窮地に陥った時にそれを脱せる程度の貯えがあれば後は無用の長物だ。

「そうですねぇ。それでは此処で一つ意趣返しと行きましょうか。
騎士様…。アマーリエ様は戦に何を望みますか?
戦の果てに何を夢想しますか?
何を以って戦の果てとするのでしょうか?
仮に帝国や魔族を全て滅ぼしたとしてその先は明るいのでしょうか?」

自分は商人として一種の極地を論じた。
であれば戦に生きる騎士は何処を極地と論ずるのか?
ふとそんな疑問が湧いたのだ。

アマーリエ > 「なら、仕方がないわね。
 でも――敢えて言うなら頭の耳、隠せるなら隠した方が良いわね。良くも悪くも目立つわ」

シェンヤンの者とでも名乗れば多少はごまかしが効くのかもしれないが、角が立たない手段があるならそれが良いだろう。
金はあるという。であれば、その手の用を満たす魔法の物品を都合するのも困るまい。
今の時節は時節であるが故にごまかせても、後々となればまた面倒であろう。

「言うべき相手を誤ったら、怒られるから程々にね。
 ないない尽くしで頭を悩ませる者は知っているだろうけど、多いのよ。
 商人の発想、というのは何か違うわね。……あるからこその道楽でもあるのかしら」

ないない尽くしで困るものは、此処にも居る。
財があればどうにかなるかもしれないが、一時凌ぎであると薄々察しているからこそ適度であることを弁える。
竜を十数頭運用するからこそ、だ。悩みの種であり、それが周囲の信頼を買うための枷でもある。
万一の際、制圧できる/される限度を担保しておかねば、斯様な師団の存続が許される訳もないのだから。

「……夢想の仕様もないわね。
 魔族もピンキリで度し難いのも居れば、冗句も言えるのも居る。
 どうにかしえても最善と言える点に擦り合わせる程度、でしょうね。共倒れにならない程度で矛を収める位が…、と」

紡ぐ言葉は一騎士ではなく、その上に立つものとしての実情が籠るものだ。
生きている間にこの辺りのぐだぐだが収まるのであればいいが、終わるまい。物分かりが良いもの以外を磨り潰さなければ。
そうするにも、まずは力がなければ進まない。故に終わるまい。落としどころをどこに得うるか。
そう思ってれば、懐に入れた懐中時計が震える。本拠から己を呼ぶ魔術通信が。

「悪いけど、私は行かなきゃいけなくなったわ。ごめんなさいね。また時が合えばお話ししましょう?」

是非もないと息を吐き、一礼と共に足を向けよう。途中、指を鳴らせば竜を呼ぶ。
轟、と空が一瞬陰って風が吹けば――女騎士の姿はふっと失せていただろう。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からアマーリエさんが去りました。
ミツフサ ウタ > 「コレを欠いてしまえば私である必要は無くなるでしょう…。
たとえ茨の道であったとしてもそれは譲れませんねぇ。
まぁ、これが一番の道楽なんでしょうけど。」

と、既に聞く者の居なくなった虚空へと呟く。
ふと見れば時期に宴も酣、酒の回って面倒くさくなった貴族の相手を強いられないうちに去るとしよう。
そう決め、最後の言葉を虚空へと放った。

「その果てへの道を作るのもまた商人の務めですよ。
また会える日を楽しみにしてますね。騎士様。」



その後、すんなり帰れず酔ってしつこく求婚してくる貴族を物陰で足蹴にしたりもしたのだがそれはまた別のお話。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からミツフサ ウタさんが去りました。