2019/05/16 のログ
■キンバリー > 彼の言葉をうけつつもペンを走らせているが、どうにも書類よりも自分の発した言葉の方が気になる様子で。
彼が資料を求め自分に背を向け、棚に向かう姿をちらちらと横目で見ながら、こっそりと自分の頭をグーで小突いた。
それでも報告書を纏めつつ、彼の声を聞けば、彼は今現在の立場と己の力量の差異に悩んでいる様にも伺えて。
自分自身の力量に悩んでいる人は、それを客観的に見る事が出来る人。だからこそそういう言葉も出てくるのだろう。
そんな事は無い、十分優秀、年齢なんて関係ない…そんな言葉が頭から湧き出るも、これ以上失礼は重ねられないとぐっと堪え。
「いえ、私の方こそ大変失礼を…忘れて下さい。あっ失礼しました…私は…キンバリーと申します。」
彼の方を見ず、只管に書類に視線を向けながら名を伝え終ると、ペンの動きが止まる。
彼の周囲の人物の彼に対する評価は決まって「放っておけない」だ。
その理由が分かった様な気がした。勿論彼の力が不足しているからではない。
「…失礼ついでに…もう一言。どんなに優秀な人物でも体は一つです。ご自愛下さい。」
放っておけないのは多分、彼のようにこうして自分に枷をかけるからだろう。だからこそ助けたい。癒したい。
何もしない上司は文字通り、彼と違って放っておかれるのだから。
■ステファン > 書類に眼を落としているが軽快にペンを走らせる音はしっかり聞こえている
此方に意識を向けながらも滞ること無く職務を熟しているのだから優秀だと思える
彼女のような人材を予備役に置いて、書類仕事をさせ眠らせておくのだろう、と疑問に思わぬでもない
「いえ、ご忠告感謝いたします…キンバリーさん
改めて自己紹介するまでもありませんが、十八師団のステファン・リュングです」
改めてお見知りおきを、と資料から視線を上げれば彼女に頭を下げる
武門の名家の次男にしては武張ったものでなく、どこか頼りなさげにも見える挨拶だったかもしれない
「ははは、心得ておきます…キンバリーさんもあまりご無理を為さらないように
…差し出がましいようですが、軍に戻るつもりはございませんか?」
彼女の気遣いに礼を述べつつ、ついつい聞いてしまう
とりあえずツバを付けておくつもりであったが、自分でそんな事を口にしてから、思考が巡るとサーッと顔から血の気が引いた
三十路過ぎた未婚の子爵が予備役軍人に『軍務に戻らないか?』なんて如何にも権力を傘に着て、
囲い込もうとしているようではないだろうか…、自分のうかつな発言に言葉もなく
そのまま押し黙ってしまうと額に掌を宛てがい、やってしまった…とでも言いたげな様子で
■キンバリー > 改めて名乗る彼に暫くきょとん。お偉い様という感じではなく、気さくにも捉えられるそれに、プッと噴出して。
「はい、重々存じ上げております。」なんて冗談にも似た言葉を発する頃には、視線は報告書へ、ペン先は紙へ。
微かな笑顔のまま、彼のペンが滑らかな音を奏で始めていく。
「有難う御座います。……軍にですか?御座いません。」
彼の思惑が分からない女は、自分の感情のままあっさりと返答する。
宮仕えの悪い所を見てきた女、退役した理由の一部もそこにある。
見れば彼は言葉を無くして額に掌を当てており、まるで先程の自分の様に、しまったとばかりの様相を浮べていた。
その仕草を見て、少しだけなんとなく察した女。
「……どうしてまたそのような事を訊かれるのですか?」
ペンの動きを止め、眼鏡を下げ、彼の姿を裸眼で見ながらそんな事を聞くのは、ちょっとした悪戯心だろう。
■ステファン > 自分が改めて名前を名乗れ彼女に吹き出されてしまう
彼女が何故笑ったのかは自分には判らなかったが、緊張されたり、畏まられるより此方のほうが気が楽だった
軍に戻るつもりがないか尋ねたのは如何にも自分の失態だったが、彼女にその気がないと判ると少し安心する
内心、ホッ、としつつも彼女の事務能力を惜しみつつも、子ほんと咳払いを1つ、気を持ち直して
「もし、その気になればご一報ください」
と口にしようとした矢先、彼女の先手を取られてしまった
正直、この話は蒸し返したくはないし済んだ事にしたかったのだけど
「…噂や何かでご存知かとは思いますが、十八師団は人員が師団編成に達しておらず、
人員も農民や行き場のない戦傷兵がおおく、それらを指揮する士官も全く足りていないのが現状でして…
キンバリーさんなら、軍務経験もあり拝見した所、事務仕事も精通しているようでしたので…」
自分が彼女に声掛けした理由を聞かせる
言い切ったかと思えば、胸の内にしまっておこうと思ったことも言ってしまうことにする
普段の仕事ですら悩みや考え事で一杯である。胸の内の戸棚には考えるべき事案が溢れかえり、許容ギリギリである
「…なんて考えましたが、子爵で軍属の私が予備役とはいえ貴女を復官させるというのはどうも聞こえが悪い…
軍の権力を傘に来て強要しているとも取られかねませんね…私の評判なんてどうでも良いのですが、
貴女に迷惑をおかけしたかもしれませんでした、忘れてください」
苦笑いを浮かべつつ胸の内を吐露すれば深々と頭を下げて陳謝して
■キンバリー > 彼の言葉を要約すれば、スカウトであった。その事実に少々恥ずかしくもあり、なんともいえない表情を浮かべ。
誤魔化すように再び動き始めるペン。響く音。
そんな中尤もな説明を聞けば、納得も出来る。彼の師団は不幸にも彼の言葉通りであり、窓際師団と揶揄される程。
そう揶揄しているのはいけ好かない上司共…いえ、素敵なお偉い様方である為、女としてもそれを額面通りに受け取っては居なかったが。
続けられる彼の本音が耳に届く頃には、女の手は彼のペンを器用に扱い、仕事を終らせている頃だった。
椅子から腰を上げ、頭を下げる彼の元へと歩み寄り。
「…迷惑も何も、私は予備役ですから。召集をかけて頂ければ。
そして、それは強要ではなく命令です。必要の際にはご遠慮なく。」
頭を下げる彼を下から覗き込み、借りていたペンをその胸のポケットへ差し込みながらの言葉。
ありがとうございました、と彼に告げる顔は笑顔で、女のその言葉を肯定している様子だった。
■ステファン > 彼女が近付き顔を覗き込まれると少々面映い
しばらく屋敷にも帰っておらず、不摂生をしているから彼女が気分を害するような事にならないか不安もあった
ペンを胸ポケットへ返してもらえば、そっと一歩だけ後ずさる…机に座っていた時はよく判らなかったが、
元、侍衛で現、予備役の軍人としては言い方は何だが幾分可愛らしい体格であるように思える
「その時は運良く自分の手元にくるよう願っておきます
元侍衛ともなると他の有力な師団に配属になりそうですからね…
そうだ、招集が掛かって最前線送りになりそうだったり、命の危機を感じたらご連絡を…
逃げ道だったり助け舟くらいは出して差し上げますから」
なんのかんのと言いつつ、貸しを作るべく布石は打っておく
その上で引き抜いても良いし、軍を離れたいと言うならそれもまあ良し
優秀そうな人物と渡りをつけておくのは決して無駄にはならないだろう
線が細く士官服を着ていなければ軍人には見えない男だが意外と強かな面もあるようで
「…っと、いけない。そろそろ私も仕事に戻らないと…
キンバリーさん、お帰りでしたら師団の送迎馬車を使っていただいても構いませんよ
深い時間ですし、女性の独り歩きは危ないですから…」
明日も早朝から訓練や会合で忙しい
今日も今日とて屋敷に戻ることはできそうにない…先程、身体をいとえ、と言われたばかりなのに
聞き届けることは難しそうであった
彼女も仕事が終わり帰るというのであれば、そこまでご一緒しませんか、と提案なんかをしてみる
彼女がどうするにしろ、早々と自分の執務室に戻るに違いはないのだけど
■キンバリー > 後ずさる彼の意図はよく解らなかったけれども、ほんの少しだけ、自分の顔を見ていた彼の視線が動いたのが解った。
そんなに見られる様な魅惑のボディ等持ち得ていないのだけれど、なんて自虐めいた思いをそっと忍ばせながら、彼の言葉に返答する。
「侍衛としてはあまりお役に立てないかと思います。この通り、視力が。
…良いのですか?貴方の様な人がこんな一端の予備役などにそんな言葉を。」
下げられていた眼鏡、その中心のブリッジに人差し指を添え、持ち上げながらの言葉。
彼の言葉はかなり遠まわしに言っているが、己の下へ置きたいという願望と、それを可能にする力があるという誇示を含めた言葉である。
世間一般の噂はやはり、当てにならない。やはり上司は上司なのだな、とこちらからも一歩後ろに後ずさり、彼との距離をとった。
「お気遣い有難う御座います。私は大丈夫ですので。お気持ちだけ。」
それでも続けられる彼の提案に乗り、机の上の報告書を片付けるまで待って貰い。
彼の執務室までのほんの少しの時間、一緒に歩みを進め、他愛の無い会話をする。
その会話の中、女は彼の事をこう思っていた。
きっと彼は明日も忙しいのだろうな。
家に帰る暇も無いのだろうな。
色々言いつつも背負い込むのだろうな。
「放っておけない」とは一般の彼への評価。その評価を下す人物が、今宵また、一人増えた。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からキンバリーさんが去りました。
■ステファン > 男からすれば魅惑のボディの有無で彼女の性別が変わるわけでもなし
若い女性に嫌われる、というのは中々堪えるものがある…最後にゆっくりと風呂に入ったのが何時だったか
思い出すことが出来ないから尚更である
視力で侍衛を弾かれたと判ればなるほど、と納得も行く
しかし、だからといって彼女の能力が全て損なわれたかと言えば決してそんな事はないと思う
刃毀れした刃は剣にはならぬが、鏃に作り直せば良いだけのことである
「我が師団の人員はよその半分ほどですから、その分、価値を上がりますよ
指揮官は価値ある部下達に場合によっては『死んでくれ』と命令するわけですから、
幾らでも頭なんて下げますし、困っているのであれば力にもなりますよ」
優秀な部下を手元に置きたい、というのはどんな指揮官でも考えることと思う
引いてはそれが自分の仕事を効率よく熟すためであったり、内外に力を誇示するためであったりする
この指揮官の場合は、もっと切実な理由があったのだけれど
自分の提案に彼女が頷けば彼女を少し待つ
こうした僅かな時間も身体を休めることが出来たし、仕事から離れることが出来る
何より、女性を待つ、というのは中々悪い時間の使い方ではないような気がする
そうして、その後は彼女を自分の部下に引き込むような事は一切せず
未だ年若い自分の甥の事であったりとか、普段の彼女の暮らしぶりだとか聞きつつ、
短い間であったが久々に軍務から離れた会話をして帰宅する彼女を見送れば、ふっ、と短く息を吐いて仕事に戻るのであった
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からステファンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城/中庭」にアルフレーダさんが現れました。
■アルフレーダ > 初夏の日差しが降り注ぐ中庭。
其の真ん中に日除けのパラソルが立てられたテーブルと椅子が用意されてあり、そこで評判の悪い傲慢な王女がお茶を楽しんでいた。
昨今王国を賑わせている帝国との国交について、午前中に城内で会議が行われており
外交の一端を担いたいと自ら挙手した王女も出席するはずなのだが、当人、侍従に任せてこの有様である。
とはいえ気まぐれで王女が出席すれば場を荒らすに違いなく、国のためには彼女が欠席することは悪くないかも知れない。
だが赤い花弁を浮かべたお茶を飲み、一息ついた王女、実に退屈そうだった。
まるで可憐な少女のように桜色のドレスに白いフリルが豪勢にあしらわれたドレスの中、足を組んで、背凭れに凭れて態度が悪い。
王家の血筋に疑うところはなく、良質な物だけに囲まれて育った彼女だが、生まれもっての性格が最悪なのだ。
優雅なティータイムを用意した使用人も、長く共にいるのは息が詰まるようでさっさと屋内に引っ込んでしまった。
もちろん茶菓子やお茶のお代わりの際にすぐ駆け付けられるよう、呼び鈴は残して。
「ペットでも飼おうかしら。丈夫なのが良いわね。」
其れは何気ない独り言だが、性悪な王女が言うと不穏である。
■アルフレーダ > 穏やかで退屈な時間は過ぎていく――――。
ご案内:「王都マグメール 王城/中庭」からアルフレーダさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 夕食時、と言うには些か過ぎた時間。
王城での会議が長引いてしまい、気付けばすっかり遅い時間になってしまった。
日常的に開かれている晩餐会や舞踏会に訪れている貴族達に顔見世程度の挨拶を済ませた後、足音を響かせて一人廊下を歩いていた。
「…やれやれ。金遣いが良いのは結構だが、もう少し生産性を持たせて欲しいものだ」
出逢った貴族達からは時に遠回しに。時に直接的に金を無心されるばかり。金の為ならば己の妻や娘すら差し出す者さえ後を絶たない。
其処まで金に困っているなら無理に夜会等参加せず蓄財していれば良い物を、と思いながら小さな溜息を吐き出した。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > しかして、貴族達の集う王城。
廊下の先には、またもや見知った貴族達の姿があった。
「…これはこれは。御久し振りですな。御父上は息災で?」
こうして、王城での夜は更けていくのだった。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。