2019/04/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にホウセンさんが現れました。
■ホウセン > 王城は、今日も今日とて大小の宴が催されている。
その内の、最も大きな公主歓迎の会場に、珍しく派手な装束に袖を通した小さな存在の姿。
そろそろ連夜の宴にも食傷気味で、自主的に乗り込もうと思わない今日この頃だが、其れは其れ、付き合いというものだ。
巷を賑わしているシェンヤンムーブメントとやらのとばっちりで、俄かに同伴者としての価値が釣りあがった帝国形質の見目の良い子供。
自身の財を、人脈を誇ろうとする虚栄心を満たすのには打って付けなのだろう。
「それならそれで、王国の貴族だけの催しの方がより稀少性を主張できようものを。」
己の顔立ちを引き立てる為、平素は地味な色合いの服を好んで着用する妖仙とて、今日は様々な色糸と金糸銀糸で紡がれた錦の装い。
挨拶回りに連れ回され、少し喉を潤すと言い置いて人混みから離れがてらに、ポツリと呟きを漏らした。
曰く、この会場には帝国人もある程度いるのだから、それらに埋もれてしまうだろうにと。
■ホウセン > 傲岸不遜な妖仙とて、今はまだ”人間”の時間。
当たり触りは柔らかく、毒にも薬にもならぬ益体のない言葉を吐く。
小賢しく、こまっしゃくれて、其れでいて今一歩詰めの甘い背伸びをした子供。
そんな立ち振る舞いの方が、誰も彼も甘い顔をすることを体験から学んでいる。
「いや、是ばかりをすると儂の精神衛生上、余り宜しくないのじゃが。」
一応、演技は演技であったし、必要なことと割り切っても自尊心とは正反対の所作。
人の目に触れぬ僅かな暇、きっと小さな人外の黒い瞳は、死んだ魚類のそれに似ていたかもしれない。
いっそ、こっそりと抜け出してしまおうかという選択肢は、妖仙にとってとても魅力的に映っていることだろう。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にイルミさんが現れました。
■イルミ > 誰も彼も華美な服装で着飾った宴の場に、似つかわしくないを通り越して異様な存在感を放つ黒一色が、会場のすみっこで芸を披露している。
芸といっても大したことはなく、なんともぼんやりしたアドバイスを送るありふれた占いなのだが、三角帽子の魔女が水晶玉で占うという「いかにも」なビジュアルもあって、そこそこ好評のようだった。
「で、では、私は、この辺で……」
一息つけるタイミングを見計らって、顔を真っ赤にした魔女はぺこぺことお辞儀をすると、慌てた様子で走り出した。
「あっ……!」
しかし、あんまり慌てていたせいか、自分より背丈の低そうな、和装の少年にぶつかりそうになってしまう。
■ホウセン > テコテコと小さな歩幅で進んだ先、軽く左手を挙げてホールスタッフを呼び止める。
場を離れる動機を踏襲しようという訳ではないが、喉に渇きを覚えていたのも事実。
妖仙の容姿から自然に酒精の入っていないものを勧めようとする機先を制して、白磁に入った酒を所望。
少しばかり戸惑いを見せられても、営業用の笑顔で押し通して酒盃をせしめる。
「如何な紛い物が出てくるやも知れぬと思うておったが、公主の持ち込み品かのぅ。
中々に上等な逸品のようじゃが。」
ほぅと感心したような呟き。
帝都付近で作られる色の濃い醸造酒を愛でながら、さて一口といった所で――
「う…ん?」
声と接近の気配、先に察知したのはどちらだったか。
特に深刻な害が起きるものでなければ、この場を抜け出す口実に良かろうとの打算は一瞬。
トンっと軽い衝撃に合わせて足をふらつかせ、零れた酒盃の中身で軽く裾を汚す。
「嗚呼、其方に怪我がなければ良いのじゃが。」
女の方を振り向きつつ、服が汚れた自分の事は二の次という言葉を吐くことで、少しばかり罪悪感を煽ろうと。
■イルミ > 「いたっ……」
と、反射的に口に出してしまったけれど、胸がクッションになったのかなんなのか、当たった衝撃は大したものでもなく、痛みもなかった。びっくりした、と思ったのも束の間、自分の置かれた状況にはすぐに気がつく。
「えっ……あ、私は大丈……夫……ああっ!?だ、だ、大丈夫ですか!?あわわ、ふ、服が汚れて……っ!ご、ごめんなさい私、慌ててしまって、ええっと……」
相手は子供で、しかもいかにもお金持ち。そして、見るからに高価で綺麗な服を着ているのに、自分のせいで汚してしまった。向こうはこちらを気遣ってくれているけれど、この落とし前はどうつければいいのか。弁償?そんなお金はない。借金?するアテもない。悪くすると捕まるかも……もしかして死刑!?……などと、想像は悪い方に膨らんでいくのに、おろおろする以外に何も出来なかった。
■ホウセン > これだけの人間が、酒を口にしながら歩き回る会場だ。
人と人がぶつかることなんてありふれているのだけれど、女の慌てっぷりが人の耳目を引き寄せる。
それらの動きを他所に、妖仙の黒い瞳が怪訝そうに細められ、次の瞬間には霧消する。
「嗚呼、お主に問題がなければ大した話でもあるまいよ。
そう慌てるでない。
儂の方が何かしでかしたように見えてしまうではないか。」
目論みどおり退散する口実は出来た。
寧ろ如何に事態を沈静化させるかが悩ましいぐらい。
中身が殆ど零れた酒盃をテーブルへと置き、少し思案顔。
「というか、お主にも落ち着ける場があった方が良さそうじゃな。」
女の真正面に歩み寄り、背伸び気味で腕を伸ばし、目の前で手を左右に振ってみる。
■イルミ > 「す、すみません、すみません、本当に……私は本当に、なんともないんですけど……」
彼は許してくれているというのはわかったのだけど、それはそれとして平謝りは続ける。少なくとも表面的には慌てたままなのだけど、内心ではかなり安堵していた。こんなところで捕まったらどうなるかわかったものではない。仮に、正体がバレてしまったりしたらと思うと……
「……え、私、ですか?」
確かに、自分はかなり動転していて、落ち着ける場所があるとありがたいのは間違いない。けれど、ただでさえ服を汚してしまったのに、そこまで甘えていいのか?と思いながら、左右に揺れる少年の手を、紫の瞳はおもちゃにじゃれる子猫のように追いかけていた。
■ホウセン > この小さな人外の瞳が、人ならざる何かしらの気配を看取したが故の表情の揺れ。
其れをそうと悟らせないよう、表情を取り繕うのは処世術の一端。
ともあれ、自分一人が退散しても”つまらない”。
「其処な者、控えの間を借り受けることは可能じゃろうか。
儂は着替えねばならぬじゃろうし、この娘っ子も気を落ち着かせねばならぬじゃろうからな。」
騒ぎを聞き付けて現れたホールスタッフに問えば、答えは”可”。
ならば、ここに長居する意味もない。
蜻蛉の前で指で円を描き、それに意識を向けている間に捕獲する手法よろしく、左右に振っていた手はスルリと下がり、女の手を掴む。
「ほれ、こっちじゃ。
迷子になってくれるでないぞ?」
スタッフの後に続き妖仙が、その妖仙に手を引かれて女が。
そんな隊列が向かう先は、宴の間から出て、廊下を少し進んだ先にある一室。
表向き色直しや休憩する場として用意してあるが、不埒な用途に使われるのも暗黙の了解が成立しているような部屋だ。
王城内の施設というだけはあり、富豪向けの上等な宿にも見劣りはすまい。
「さて、これで衆人の耳目から解放された訳じゃが、ちぃとは落ち着いたかのう?」
物怖じせぬ妖仙は、遠慮の”え”の字もなく、ぽふっとベッドの端に腰掛けた。
■イルミ > 「え?え?えーっと、その……」
動揺しておろおろしている間に、話がどんどん進んでいく。とはいえ、それは向こうのペースが早すぎるというより、こちらが遠慮して何もできていないというだけのことなのだけど。
そして、手を掴まれると、心臓のあたりがきゅっとして、息が詰まりそうになった。けれどそれはほんの一瞬のことでしかなくて、心の中の『人見知り』の部分が、彼を受け入れることができたということでもあった。
だから、控え室に二人きりになってもそのことにドギマギしたり怯えたりということもなかったのだけど、
「……あ、あの、いいんですか?こんなところに、こんな……平民の、占い師なんかが入っちゃって……」
別の意味で落ち着かなかった。こんな豪華な部屋、見たことはあっても実際に入ったことなどほぼ皆無だ。少年は慣れた様子でくつろいでいるけれど、こちらは棒立ちのままおどおどしながら、三角帽子のポジショニングを直すくらいしかできない。
■ホウセン > 案内人は決して部屋に足を踏み入れず、二人が室内に収まったのを認めるとそっと扉を閉じた。
控えの間が完全な密室になるのを待って、妖仙は改めて視線を女に向ける。
違和感の検証の為というのが半分。
単に女の見目を観察するというのがもう半分。
「構わぬ構わぬ。
儂とて財はあれども、身分としては市井の者と変わらぬしのぅ。
お主とて宴の参加者なのじゃろうから、遠慮する謂れは無かろう。」
鷹揚に、傲岸に。
ヒラヒラと手を振って、戸惑いの表明を一蹴。
「それにあのように皆の前で動揺したままでは、いつ馬脚を現してしまうかも分からぬじゃろう?」
口調だけはさり気なく。
防音が施されていると思しき静かな室内で、変声期前の高い声が響く。
未だ見通せぬ所も間々あるからこそ、カマをかけて情報を引き出そうという算段。
■イルミ > 「は、はぁ、そ、そうでしょうか……」
自分はとある貴族に気に入られてしまい、宴の場に呼ばれてしまっただけの占い師…兼薬師だ。自分の財で立場を手に入れた彼の家族とは、厳密には違う……とは思ったけれど、わざわざそんなことまで口にして水を差そうとは思わなかった。そこまで自分で判断できていたのは、落ち着かないなりに少し冷静になれていたからなのだけど、
「……ぅええっ!?ば、馬脚って、え、ええっと、な……んの、こと、ですかっ!?」
突然の言葉に大いに動揺すると、頭ではしらばっくれようとしたのに、語調は『何故わかった!』と言いたげなものになってしまう。慌てすぎて体は前のめりになり、三角帽子を落としてしまったくらいだ。
■ホウセン > 己の仕草全般に融通を利かせられる妖仙とは対照的な女。
誤魔化そうとしている意思は感じられるのだけれど、その手法が壊滅的な完成度であることは疑いようがない。
斯様に突き抜けて演技が下手だと、そこはかとなく生温かい視線を向けてしまう。
「あー…ぁー…
うむ、何と言おうか…そうじゃな。
何のことかは、お主自身がよぅわかっておるじゃろう?」
その副産物として、女自身に省みさせる為の台詞が、若干棒読み気味になってしまったかもしれない。
そこはかとなく感じるポンコツ具合とかチョロさ加減とか、その辺りの要素も影響しているやも知れず。
「いやはや、何かの芸事をしておったようじゃし、これも付き合いの一環かも知れぬが、よくも人間の本拠に足を運ぶ度胸があったものじゃ。」
言の葉で包囲網を狭める。
少なくとも、女が純粋な人間以外の存在であるとは、露見していると告げてやる。
これまでにこうやって正体に言及された経験があるか分からぬが、如何な反応を示すかに興味を向けるのは悪趣味だろうけれど。
■イルミ > 「あ、あのー、え、えと、なんていうか……あう……」
いつの間にか、魔女の態度は子供に対するものというよりも、自分が子供になってしまったような……それも、親や先生に叱られる子供のようなものになっていた。もう言い逃れできない。向こうにはバレている。帽子を拾って、しかしそれを被るわけでもなく、手に持ったままもじもじしている。
「な、な、内緒にしてください!私、さ、きゅばす、ですけど……魔力はよわっちいし、仲間からも見放されてるし……な、何も悪いことは……して、ない、はず……です……」
頭を下げたまま、思い切って口に出した言葉は思いの外長くなって、徐々にスローダウン、トーンダウンしていく。
■ホウセン > 萎縮に萎縮を重ねて、縮こまっていく女。
妖仙が座していることもあり、対峙者の方が視線の位置は高い筈なのに、その内逆転してしまうのではないかと錯覚せん程に。
王国滞在暦が決して短くなく、魔族の種についての造詣も相応にあったから、サキュバスが何であるかを反問することはない。
「呵々!
自ら、全てを詳らかに語ってしまうとは、中々に饒舌なものじゃな。
如何に無害を主張すれども、皆が信じてくれるか分からぬというのに。」
然し、素性を明かされれば、成程と合点がいくことも多々。
己の相貌で見飽きている感もあるが、十二分に整っている顔立ちであるとか、前屈み気味になっても主張の激しい胸の膨らみであるとか。
それ故に、悪戯心が働かないでもない。
「誰彼構わず吹聴しようとは思わぬがのぅ。」
内密にという女の要望に沿った言葉で希望を見せ――
「されど、誰にも言わぬというのは、案外労力が要るものじゃ。」
――その希望の残光がある間に、失望へと落とす。
一度は希望が見えたせいで、縋り付き易くするべく感情の落差を生じさせる為に。
そっと誘導の材料は鏤めてる。
沈黙には”労力”要ると。
ならば、”労力”に対して”見返り”を用意すれば――という所まで、思考が及ぶかは女次第だけれども。
■イルミ > 「う、ぅう……そ、そう、ですよね……」
無害であると証明なんて出来はしない。その通りだ。そもそも、『有害無害は関係ない、魔族がここにいるのが問題なのだ』……とでも言われればそれまで。圧倒的に不利、というよりも、事実上彼にすべてを掌握された状態に等しい。交渉にすらならない。だから、こちらは彼の『情け』に縋るしかないのだ。
「……っ、ぅ」
だから、その希望を弄ばれても、文句一つ言えはしない。思考はどんどん卑屈に、奴隷根性に縮こまっていく。
「わ、私にできることなんて……これくらいしか……」
当たり障りのない占い。役立たずの薬作り。
……あとは、性的な奉仕。それも、自分から男を喜ばせるのではなく、男の欲望に身を任せて、捌け口になることくらいしかできない。いつしか、相手が子供だということも忘れて、許しを乞うような、媚びるような視線を送った。